この記事でわかること
- 名寄帳の取得方法(窓口、郵送、代理人)
- 名寄帳を取り寄せるための必要書類と費用
- 名寄帳の見方と注意点
- 2026年から始まる所有不動産記録証明制度のメリットと注意点
相続手続きを進めるには、名寄帳の取得が必要です。
名寄帳とは、被相続人が所有していた不動産を一覧で確認できる公的な書類で、遺産調査の際に役立ちます。
本記事では、名寄帳の概要や取得方法について詳しく解説します。
窓口、郵送、代理人を通じた取得方法、必要書類、費用についても説明します。
また、名寄帳の見方や注意点にも触れ、相続手続きがスムーズに進むようサポートします。
さらに、2026年に開始予定の「所有不動産記録証明制度」についても紹介します。
この新制度では、全国の不動産情報を一括で確認できるようになるため、相続手続きの負担軽減が期待されるでしょう。
相続手続きを効率よく進めるために、ぜひ参考にしてください。
目次
名寄帳とは
名寄帳は、市区町村が管理する固定資産課税台帳を所有者ごとにまとめた一覧表です。
土地や家屋などの不動産情報が記載されており、相続手続きの際に被相続人の所有不動産を把握できます。
名寄帳には、所有者の氏名や住所、不動産の所在地、地番、地目、地積などの基本情報に加え、固定資産税の評価額や課税標準額、税額も記載されています。
名寄帳を請求できるのは、不動産の所有者本人、その相続人、利害関係人、そして委任状を持つ代理人に限られます。
取得場所は不動産が所在する市区町村の役場で、窓口での申請のほか、郵送やオンラインでの申請も可能な市区町村があります。
名寄帳には毎年1月1日時点での情報が記載され、被相続人の財産を正確に把握するための重要な資料となるでしょう。
名寄帳の取得方法
名寄帳取得方法は3つあり、窓口での取得、郵送での取得、そして自治体によってはオンラインでの取得が可能です。
委任状があれば、代理人が取得することもできます。
ここでは、それぞれの方法について詳しく説明します。
窓口で取得する場合の必要書類と費用
名寄帳を窓口で取得するには、所有する不動産が所在する市区町村の役場へ出向く必要があります。
申請時に必要な書類は、名寄帳交付申請書と本人確認書類です。
その他の書類は請求者の立場によって異なり、市区町村によっても違いがあるため、事前に役場のウェブサイトや電話で確認しましょう。
以下に、標準的な必要書類を請求者ごとにまとめましたので、参考にしてください。
請求者 | 必要書類 |
---|---|
不動産所有者本人 (納税義務者) |
・名寄帳交付申請書 ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) |
相続人 | ・名寄帳交付申請書 ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・被相続人が死亡したことを証明する書類(除籍謄本、住民票の除票など) ・相続人であることを証明する書類(戸籍、法定相続情報一覧図など) |
利害関係者 | ・名寄帳交付申請書 ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・利害関係を証明する書類(賃貸契約書など) |
代理人 | ・名寄帳交付申請書 ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・委任状 ・委任者が名寄帳の請求権者であることを証明する書類(被相続人の相続人であることを証明する書類など) |
手数料は市区町村によって異なり、1通あたり200円~300円程度が一般的ですが、無料の市区町村もあります。
窓口での申請では、即日交付されることが多いですが、市区町村によっては即日交付が難しい場合もあるため、予め確認するとよいでしょう。
郵送で取得する場合
郵送で名寄帳を取得する場合、まず、不動産が所在する市区町村のウェブサイトから名寄帳交付申請書をダウンロードし、必要事項を記入します。
申請書に加えて、以下を準備します。
- 申請者の本人確認書類の写し
- 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
- 返信用封筒(宛先記載、切手を貼付)
- 不動産の所有者でない場合は、申請者が請求権者であることを証明する書類(前述の表を確認)
これらを同封し、該当する市区町村の担当部署に郵送しましょう。
代理人が申請する場合は、委任状と代理人の本人確認書類の写しも必要になるため、忘れずに同封してください。
郵送申請では、名寄帳が手元に届くまでに少なくとも1週間程度かかるため、余裕を持って申請しましょう。
オンラインで取得する場合
一部の市区町村ではオンラインでの名寄帳取得が可能となっています。
オンライン申請には、ICカードリーダーを使用する方法とスマートフォンを使用する方法があります。
ICカードリーダーを使用する場合は、パソコンにICカードリーダーを接続し、マイナンバーカードを読み取ります。
一方、スマートフォンを使用する場合は、NFC機能に対応したスマートフォンと「マイナサイン」などのアプリが必要です。
まず、不動産の所在地の市区町村のウェブサイトで、名寄帳の取得がオンライン申請に対応しているかを確認しましょう。
対応していた場合は、システムにアクセスし、必要事項を入力、本人確認を行い、手数料をクレジットカードや電子決済で支払います。
ただし、オンライン申請は現在のところ、不動産所有者本人に限られている市区町村もあります。
そのため、相続人や代理人が申請する場合は確認が必要です。
オンライン申請は24時間可能で便利ですが、対応している市区町村は一部のため、必ず事前に確認することをおすすめします。
名寄帳を見るポイント
名寄帳には、相続手続きに必要な不動産の重要な情報が記載され、所有者情報、不動産情報、固定資産税関連の情報に分けられます。
ここでは、名寄帳を見る際のポイントを解説します。
所有者情報と不動産情報
名寄帳の最初に記載されているのは、所有者である納税義務者の氏名と住所です。
被相続人の情報が正確に記載されているかを確認しましょう。
次に、不動産情報を確認します。
土地の場合は、所在地・地番・地目(宅地、田、畑など)・地積(面積)が記載されています。
建物の場合は、所在地・家屋番号・構造・床面積などが記載されています。
名寄帳には固定資産税がかからない私道や農地などの不動産も記載されているため、固定資産税納税通知書では把握できない不動産も確認できます。
名寄帳の情報を把握することで、相続財産の全体像を明確にし、適切な相続手続きにつなげることができるでしょう。
固定資産税評価額と課税標準額
名寄帳には、固定資産税に関する重要な情報も記載されています。
まず確認しなくてはならないのは、固定資産税評価額です。
これは、市区町村が算出した不動産の価値を示すもので、相続税評価額を算出する際の基礎となる重要な指標です。
次に、課税標準額を確認しましょう。
これは実際に固定資産税が課税される金額で、評価額より低く設定されることがあります。
特に土地の場合、負担調整措置により課税標準額が評価額より低くなるケースがあるため、注意しましょう。
最後に、年間の固定資産税負担額が把握するために固定資産税額も確認しましょう。
これらの情報は、遺産分割の判断材料や相続税申告に役立ちます。
名寄帳を確認するときの注意点
名寄帳を確認する際には、記載されている情報がどの時点のものか、複数の市区町村にまたがる不動産をどのように把握するかに注意が必要です。
ここでは、それらのポイントについて詳しく解説します。
いつの情報が書かれているか
名寄帳には、その年の1月1日時点での不動産情報が記載されています。
これは1月1日が固定資産税の課税基準日であるためですが、相続手続きではこの点に注意が必要です。
たとえば、1月2日以降に売却された不動産や新たに取得した不動産は、名寄帳には反映されません。
そのため、名寄帳に被相続人の名義が記載されていても、実際にはすでに売却されている可能性があるでしょう。
相続財産を正確に把握するためには、名寄帳だけで判断せず、他の資料と照合することが大切です。
まずは登記簿謄本を確認し、名義が被相続人のままになっているかどうかを確かめる必要があります。
もし新たな不動産を取得している可能性がある場合は、売買契約書を探すなどして、所有状況を確認しましょう。
複数の市区町村にまたがる場合
被相続人が複数の市区町村に不動産を所有している場合、それぞれの市区町村で名寄帳を取得する必要があります。
名寄帳は市区町村単位で管理されており、一つの市区町村で全国すべての不動産情報を確認することはできません。
まずは固定資産税納税通知書や被相続人の資料を確認し、不動産が所在する可能性のある市区町村を特定しましょう。
また、遠方の場合は郵送で申請できますが、市区町村ごとに申請方法や必要書類が異なるため、事前に問い合わせて確認しておくことをおすすめします。
このように複数自治体にまたがる場合は手間がかかりますが、漏れなく確認することで相続財産を正確に把握できるでしょう。
【2026年】所有不動産記録証明制度がスタート
2026年2月2日から、相続手続きや不動産調査を大幅に簡略化する「所有不動産記録証明制度」が始まります。
この制度では、不動産名義人の住所や氏名をもとに、日本全国の所有不動産を一括で検索し、一覧化した証明書を取得できます。
これにより、相続登記の漏れを防ぎ、手続きの負担を軽減することが期待されています。
ここでは、所有不動産記録証明制度の概要やメリット、注意点について詳しく解説します。
所有不動産記録証明制度の概要
所有不動産記録証明制度は、特定の名義人が全国で所有している不動産を一括で把握できる仕組みです。
従来、相続時に被相続人の所有不動産を確認するには、市区町村ごとに名寄帳を取得しなければならず、多くの時間と労力を要しました。
さらに、名寄帳は各市区町村単位で管理されているため、所有不動産を漏れなく把握することが難しいケースもありました。
しかし、この制度を利用すれば、法務局での一度の申請で、全国の不動産情報が一覧化された証明書を取得できるため、迅速かつ正確な調査が可能になります。
これにより、従来よりも相続登記の漏れや調査ミスのリスクが大幅に軽減されるでしょう。
所有不動産記録証明を請求できるのは、不動産名義人本人、その法定代理人、相続人、および代理人です。
法人の場合も、自社が所有する物件の一覧を取得できます。
所有不動産記録証明制度のメリットと注意点
所有不動産記録証明制度は、相続手続きの効率化に大きなメリットをもたらします。
被相続人が所有していたすべての不動産情報が一括で把握できるため、相続登記の漏れを防止できるでしょう。
また、遠方にある不動産の確認作業が容易になることもメリットのひとつです。
注意点は、未登記の古い不動産は登録されていない可能性があることです。
それについては、登記権利証を探すなどして個別に対応する必要があるでしょう。
もう一つの注意点は、不動産登記後に名義人の住所や氏名が変更された場合です。
その場合、最新の情報として所有不動産記録証明に反映されません。
この点は、2026年4月1日から住所や氏名の変更登記が義務化されるため、徐々に解消されていくことが期待されています。
まとめ
相続手続きにおいて、被相続人が所有する不動産を特定する作業は欠かせません。
そのため、名寄帳の取得は避けて通れない重要な手続きの一つです。
特に、相続案件が複雑な場合や、複数の市区町村にまたがる不動産がある場合は、より慎重な対応が求められるでしょう。
不動産の数が多い場合や、相続人間で意見の対立がある場合は、専門家に相談し、早めにサポートを受けることをおすすめします。
適切な手続きを進めることで、相続のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな手続きが可能になるでしょう。