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最終更新日:2025/4/21

未登記建物の相続手続き方法!注意点や登記費用・必要書類まで

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 未登記建物について
  • 未登記建物を相続したときの手続き方法
  • 登記しないことのリスク

古くから代々相続してきたような不動産では、未登記の建物だったケースが少なくありません。

未登記の建物を相続する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
登記をせずに放置することにはリスクが伴うため、未登記の建物を相続したら速やかに手続きを行いましょう。

今回は未登記建物の概要と放置するリスクとともに、未登記建物を相続した際の手続き方法を詳しく解説します。

未登記建物とは

未登記建物とは、登記簿に登録されていない建物のことを言います。
なぜ未登記建物が存在するのでしょうか。

ここでは登記の概要と、未登記建物を相続するときの詳細について解説します。

登記とは

登記とは、不動産の情報や権利を公示する制度です。
国が管理する登記簿に不動産の情報を登録(登記)することで、土地や建物に関する権利を公的に主張することができます。

登記簿の内容は、大きく分けて表題部と権利部があります。
表題部は不動産の所在・地番・面積・構造など、物理的な情報が記載されている部分です。
一方、権利部は所有者の氏名・住所や権利取得日、権利の目的など、不動産の権利に関する情報が記載されています。

権利情報だけで登記をすることはできません。
登記には、必ず表題部にあたる物理的な情報が必要です。

また、表題部だけ登記されていて、権利部が登録・変更されていないことがあります。
このような場合、第三者に対して所有権を主張できません。
先に第三者が登記を済ませてしまえば、知らないところで売却される可能性もあるため、注意が必要です。

未登記建物が存在する理由

新築や売買により不動産を取得したら、登記をすることは義務とされています。
それではなぜ未登記建物が存在するのでしょうか。

住宅ローンを利用すると、金融機関が抵当権設定のため必ず登記をするので、手続きを忘れることはないでしょう。
しかし、古い建物ではローンを利用せずに、自費で建設した例も多々あります。
すべて自費で建築した場合、登記をしなくても問題なく進んでいくため、登記を失念したケースもあるでしょう。

一方で、意図的に申請しなかった可能性も考えられます。
登記がなければ固定資産税など納税を免れられる、と考えた人もいるかもしれません。
実際は登記がなくても、住民票などから所有者として判断され、課税されます。

未登記建物も相続財産

未登記建物は「そもそも登記をしていないのに、相続の対象になるのか?」という疑問がありますが、未登記建物も相続財産です。

不動産を相続した場合、被相続人から相続人へ登記の名義変更をする必要があり、これを相続登記と言います。
未登記建物を相続したら、早急に登記申請を行い、相続登記を済ませましょう。

相続登記の義務化

今まで相続登記は任意とされてきましたが、2024年4月の法改正で義務化されました。
相続の開始および不動産の取得を知った日から3年以内に手続きをしなければいけません。
もし期限内に手続きができなければ、10万円以下の過料の対象となります。

未登記建物も、相続すれば義務化の対象です。

未登記建物を放置するリスク

相続登記が義務化されたことで、未登記建物を放置すると罰則のリスクがあります。
ただ、罰則以外にも様々なリスクがあります。

  • 不動産を処分できない
  • 融資が受けられない
  • 相続関係が複雑になる
  • 所有権が主張できない

一つずつ見ていきましょう。

不動産を処分できない

未登記建物は所有者が明確でないため、処分ができません。

売却する場合、不動産業者にしてみれば売主が本当に建物に関する権利を取得しているか確認できないため、リスクが大きく取り扱いが困難です。
他の相続人が未登記のまま第三者に売却している可能性も考えられるため、建物の権利がはっきりしなければ売却はできません。

また、未登記建物を解体することはできますが、他に所有権を主張している相続人がいない場合に限られます。
相続人が確定していればよいですが、古くからの未登記建物は相続人の把握が難しい場合も少なくありません。
誰のものかはっきりしない状態で処分をすることは、控えたほうがいいでしょう。

融資が受けられない

建物を担保に借り入れをする場合、金融機関が建物に抵当権を設定します。
抵当権は登記の権利部に記載されるものですが、権利部のみで登記をすることはできず、必ず表題部の記載が必要です。

表題部の情報がない未登記建物では、権利部の記載ができないため担保とすることができず、融資を受けることは難しいでしょう。

相続関係が複雑になる

登記をしないまま相続を繰り返すと、当該建物を取得する権利のある相続人がどんどん増えていくことになります。

相続登記は相続人全員で遺産分割協議を行い、同意を得なければ申請や手続きができません。
相続人が増えることで相続人全員の把握や遺産分割協議が煩雑になり、取りまとめることが極めて困難になります

登記できなければ処分や融資などの活用ができず、負の遺産となる可能性が高いでしょう。

所有権が主張できない

不動産の所有権を第三者に主張するためには、正式に登記されていなければいけません。

たとえば未登記建物に住んでいる場合、居住の実態から表面的には所有者として認められます。
しかし第三者が先に登記を済ませた場合、法的に所有権が認められるのは第三者です。
登記をした第三者が建物を売買した場合、登記をしていない状態では、たとえ居住していたとしても、所有権を認められない可能性があります。

資産を守るという点からも、未登記建物を放置することのリスクは大きいでしょう。

未登記建物の相続手続きを自分で進める流れ

未登記建物を相続した場合、速やかに登記をしなければいけません。

ここでは未登記建物の相続手続きを、自分で進める方法について解説します。

未登記建物について調べる

まずは相続対象である未登記建物の所在と、建物の詳細を確認しましょう。
登記をしていない未登記建物は、法務局の登記簿謄本で情報を調べることができません。

そのため未登記建物の存在を調べる方法として、まずは固定資産税の納税通知書を確認しましょう。
役所は登記がなくても、居住の実態などをもとに所有者へ納税通知書を送ります。
通知書には家屋の所在、床面積などが記されているので、これをもとに登記手続きを進めます。

もし納税通知書が確認できない場合は、名寄帳を取り寄せるといいでしょう。
名寄帳は、市区町村が管理している固定資産課税台帳をもとに、固定資産税が課税されている不動産を所有者別にまとめた一覧のことです。
名寄帳は、未登記建物の所在地である市区町村の役所で閲覧できます。

相続人を確定させる

相続人を確定させるには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本をたどります
途中、転籍している、あるいは相続人が亡くなっている場合は、さらに戸籍をたどっていく必要があるでしょう。

特に相続人が亡くなっている場合、その子どもが代襲相続人となることもあり、相続関係はより複雑になります。
相続人全員を確定させるまでには、数千円程度の証明書取得実費がかかる他、調査に数カ月の時間が必要になることもあります。

遺産分割協議をする

相続登記をするには、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成して申請する必要があります。
なお、遺言があれば協議をせずに遺産分割することも可能です。
ただし、未登記期間が長く、相続人が多数いる場合は、遺言で解決することは困難でしょう。

遺産分割協議では、未登記建物を相続する人と相続割合を決定します。
不動産は預貯金などのように分割が容易でないため、以下のような方法で分割協議を進めます。

共有 不動産を複数の相続人で共有する
現物分割 不動産はA、預貯金はBのように特定の財産を特定の相続人が相続する
代償分割 不動産を相続する相続人が、他の相続人に代償金を支払う
換価分割 不動産を売却して現金化し、相続人で分配する

相続が発生してから時間が経っていない場合は、現物分割とすることが一般的です。

しかし未登記建物の相続は、相続発生から時間が経っていることが多く、相続人が多数いる場合は現物分割では困難です。
その場合、代表する人が未登記建物を相続し、代償分割とするケースが多いでしょう
代償金は登記にかかる登録免許税や、その他実費を加味して支払います。

換価分割は未登記建物を処分する場合に有効です。
相続人を指定して相続登記を行い、不動産を売却した後、相続人で代金を分配します。
この時も登録免許税など、実費を差し引いて清算しましょう。

どのように分割するか協議し、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、必ず相続人の実印の押印と印鑑証明が必要です。

「全員がそろって遺産分割協議をすることが難しいから」と、勝手に登記申請することはできません。
勝手に申請すると、相続分を侵害されたとしてトラブルになる可能性や、私文書偽造などにつながる恐れもあります。
時間がかかっても遺産分割協議を行いましょう。

登記申請する

未登記建物を管轄する法務局へ申請をして、まずは表題部を作成する表題登記をします。
申請には、次のような資料が必要です。

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の住民票
  • 建物の図面や平面図
  • 建築確認済証(検査済書)など

古い未登記建物は、書類の準備が難しい場合もあるでしょう。
建築確認済証は、代わりに固定資産評価証明書や、工事完了引渡証明書などの証明書でも代用できます。

代用できる書類は、個別のケースにより異なります
書類の準備が難しい場合は、あらかじめ法務局で相談しましょう。

所有権保存登記をする

表題部ができたら、所有者情報を記載する所有権保存登記を行います。

  • 申請書
  • 新しい所有者の住民票
  • 住宅用家屋証明書など

所有権を登記しなければ、第三者に権利を対抗できません
必ず申請するようにしましょう。

未登記建物の相続手続きにかかる費用

未登記建物を相続登記するには、様々な費用がかかります。
自分で手続きをした場合の実費と、専門家に依頼した場合の報酬について解説します。

相続手続きにかかる実費

登記前の相続手続きにかかる実費は、以下のようなものがあります。

  • 戸籍謄本など証明書の取得費
  • 遺産分割協議のための交通費など

戸籍謄本など証明書は、相続人が多くなるほど取得費用が多くなります。
1通300円ほどですが、総額で数千円かかる場合もあるでしょう

また、遺産分割協議のために相続人が集まる必要があれば、交通費などの実費も必要です。

登録免許税などの登記費用

遺産分割協議がまとまり、相続手続きが完了すれば実際に登記をします。
未登記建物の所在地を管轄する法務局へ申請します。

登記には登録免許税として、固定資産税評価額の0.4%が必要です。
もし遺言によって法定相続人以外が相続をした場合は、割合が2.0%になります。

また、登記に必要な図面や建築確認証などの取得費用も必要でしょう。
古い建物では証明書類が準備できない場合、補う資料が必要であるため、取得費用が多くなります。

専門家の報酬

相続手続きは複雑な上、相続人が多いほどトラブルになるケースが多くなります。
また、未登記建物の登記は、通常の相続登記より必要書類などが複雑で難しい手続きです。
自分で手続きをすることもできますが、初めから専門家に依頼したほうがスムーズにいくでしょう。

専門家に依頼する場合は、前述の実費に加えて報酬が必要です。
登記のみであれば10万円前後が相場です。
相続人調査から登記申請まで相続手続き全般を任せると、遺産額にもよりますが、総額で50万円前後が報酬として必要になるでしょう。

未登記建物を相続するときの注意点


未登記建物を相続する場合、注意しておくべき点がいくつかあります。

解体する場合は登記不要

未登記建物を相続しても、すぐに解体する予定であれば登記は不要です。
解体工事は、建物が登記されているかどうかは関係ありません。

解体したら必ず家屋滅失届を役所へ提出しましょう。
通常、未登記建物を解体しても役所へ通知されることがないため、固定資産税が課税され続ける可能性があるからです。

家屋滅失届には解体業者の証明も必要なため、解体が終わったら速やかに届出に記入してもらいましょう。
届出は役所の窓口、またはホームページでダウンロードして入手できます。

権利部の登記を忘れずにする

登記は、建物の物理的な情報を記載する表題部のみでも成立します。
しかし所有権保存登記をして権利部の記載をしておかなければ、第三者に所有権を主張することができません
先に第三者が権利部を登記してしまえば、所有権を奪われることになります。

新しく登記を作成する場合、権利部の記載も忘れずに行いましょう。

相続のやり直しはできない

相続した不動産が未登記であることを知らなかった、という理由でトラブルになるケースもあります。

遺産分割協議は基本的に、一度取りまとめた後やり直すことはできません
未登記建物の登記手続きの煩雑さや、登録免許税の必要性などを知らずに相続してしまった、となると後味の悪い結果になってしまいます。

特に相続人が自ら手続きをする場合、すべての相続財産の詳細を確認し、見落としなく進めなければいけません。
不安な場合は、専門家に相続手続きを依頼することをおすすめします。

まとめ

古い建物の中には登記をしないまま相続が繰り返され、未登記建物として現存しているものが数多くあります。
未登記建物はそのまま黙っていればいいものではなく、登記の義務があり、相続財にも含まれるものです。

しかし未登記建物の相続手続きは、通常の相続登記よりも複雑になります。
相続人の間でトラブルになることもあるため、登記申請も含め、相続手続きは専門家に依頼することをおすすめします。

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