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最終更新日:2024/9/13

親から100万円もらったら確定申告は必要?贈与税はどうなる?

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 贈与税の基礎控除と計算方法
  • 親から100万円以上もらったときに贈与税がかかるケースとかからないケース
  • 親から100万円の贈与を受けるときの注意点

贈与とは、贈与者が無償で財産を与える意思を伝え、受贈者が受諾すると成立する契約の一種です。

受贈者は、受け取った贈与の価格に応じて税務署に贈与税を納めなければなりません。

では、親から子どもに学費などを渡した場合にも贈与は成立し、受贈者である子どもは贈与税を納めなければならないのでしょうか。
結論として、親子間でも贈与は成立します。
ただし、贈与額が基礎控除の範囲内に収まる場合や、一定の目的の場合は贈与税がかかりません

贈与の目的によっては様々な控除や特例を利用でき、納税しなければならない金額を大幅に軽減できるケースもあります。

ここでは、親子間の贈与で必要となる手続きや、贈与に関する各種控除や特例などをご紹介します。

親から100万円もらうと確定申告は必要?

親から100万円の贈与をもらった場合、贈与税の基礎控除内に収まるため贈与税はかからず、確定申告も必要ありません。

まずは、贈与税の計算方法について確認していきましょう。

贈与税の基礎控除とは

前述したように、暦年贈与(れきねんぞうよ)といって、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)の贈与額が110万円以下の場合、贈与税がかかりません

この贈与税がかからない110万円の枠を基礎控除といい、非課税で毎年110万円以下の財産を移せるため、生前に親族などの相続人へ財産を渡す方法としてよく利用されています。

贈与税の計算方法

贈与税は次の式で計算し、財産を受け取った側が税務署に申告して贈与税を納めます。

贈与税 =(贈与を受けた財産の合計額 - 基礎控除110万円)× 贈与税の税率 - 控除額

なお、贈与者と受贈者の関係によって「特例贈与」と「一般贈与」に分かれ、贈与税の税率と控除額が異なります。

【特例贈与】

直系尊属(両親など)から18歳以上の直系卑属(子や孫など)への贈与税は次の速算表で計算されます。

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

【一般贈与(上記以外の贈与)】

上記の特例贈与以外で、たとえば兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、両親から18歳未満の子どもへの贈与などが該当します。

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

引用:国税庁 「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

相続時精算課税制度の改正について

相続時精算課税制度とは、生前に贈与した人が亡くなったとき、贈与した財産を相続財産に持ち戻して相続税を計算するという制度です。

暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できず、どちらかを選択して利用します。

当事者である親子間で相続時精算課税選択届出書を提出すると、相続時精算課税制度の対象となり、生前贈与をしても特別控除の累計2,500万円までは贈与税がかかりません

ただし、相続が開始した後はこの非課税として扱われていた贈与分も相続税の対象となるため、実質は納税の先延ばしでした。

この状態を打開するために、相続時精算課税制度では改正により2024年1月から年間110万円までの基礎控除が新設されました。
こうして、現在では年間110万円までは相続税への持ち戻しや税務署への申告は不要となっています。

親から100万円以上もらったときに贈与税がかかるケース

ここからは、親から100万円以上の贈与を受け取ったときに贈与税がかかるケースについて解説します。

両親からそれぞれ100万円ずつもらった場合

贈与額が基礎控除の110万円に収まるかどうかは、贈与ごとに計算するのではなく、受贈者が1年間にもらった合計額で判断します。

1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、贈与税額を計算します。

1年間に両親それぞれから100万円ずつの計200万円をもらった場合、基礎控除110万円を超えてしまうため贈与税がかかります。

子どもの借金などを親が払った場合

たとえば子どもが金融機関からの借り入れた借金200万円を親が返済したようなケースです。

借金の肩代わりは、実質的には「借金と同じ額のお金を贈与したのと同じ」とみなされて贈与税の課税対象となります。

もしあくまで一時的な立替払いであり、返済する予定がある場合は贈与税がかかりません。
返済の予定がない場合、実質的な贈与とみなされる可能性があります。

これは借金の立替払いだけでなく、本来子どもが負担する各種税金やその他支払いを親が負担した場合も同様です。

とはいえ、たとえば県外への大学進学など、収入がない子どもの家賃や公共料金を親が負担するケースも多くあるでしょう。
そのため、詳細は後述しますが親からの支払いすべてが贈与とみなされるわけではなく、生活費や教育費を目的とする場合は贈与税がかからないとされています。

なお、借金の立替払いであっても子どもが生活に困窮しており、借金によって生活が成り立たなくなるような場合は贈与とみなさない取り扱いがされています
ただし、子どもが明らかな債務超過状態で自力返済が難しい場合でなければ認められません。

高額なものを格安で譲渡された場合

たとえば300万円で購入した腕時計を、10万円で譲ってもらったような場合です。

この場合、格安ではあるものの子どもからも一部を支払っているため、贈与税がかかるのは差額の部分になります。

  • 課税される金額 = 譲渡時点での財産の時価 - 受贈者から支払った金額

上記の例では、300万円-10万円=290万円に贈与税が課税されます。

親が子どものために保険料を負担している場合

親が子どもを受取人とする生命保険の保険料を支払っている場合、満期や解約、被保険者の死亡などで子どもが保険金を受け取ると、その額に贈与税がかかります。

この場合、子どもは保険料を負担していないため、受け取った保険金は親の贈与によるものと考えられるからです。

生命保険のほか、子どもが支払うべき国民年金年金保険料を親が肩代わりして支払った場合も贈与にあたります。
例外的に、子どもがケガや病気などを理由に医療保険の入院給付金や手術給付金などを受け取った場合は非課税です。

子どもが所定の高度障害状態になった場合に支払われる高度障害保険金も、非課税とされています。
所得税法上、身体の傷害に起因して支払われる給付金は、金額に関わらず非課税とされているためです。

親から100万円以上もらったときに贈与税がかからないケース

基礎控除の枠を超える年間110万円以上の贈与であっても、次の場合は贈与税の対象外となります。

生活費や教育費を目的とした贈与の場合

家族の生活費や教育費の支払いを目的とした贈与は、贈与税がかかりません。

家族とは、次の民法上の扶養義務者をいいます。

  • 配偶者
  • 直系血族(子ども、孫、両親、祖父母など)
  • 兄弟姉妹

通常、子どもは学費などを支払う資力がなく、親が子どもに教育を受けさせるのは日本国憲法にも掲げられた義務となっています。
そのため、大学の入学金や授業料を親が子のために支払った場合、110万円以上でも贈与税はかかりません。

親が子どもへ贈与する場合だけでなく、成人した子どもが親の生活費として仕送りをする場合にも贈与税はかからないことになっています。

なお、親が生活費の目的で贈与しても、子どもが遊興費などに使った場合は贈与税がかかるため注意しましょう。

親の経営する会社から贈与を受け取った場合

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかるため、法人から財産を贈与されたときはかかりません
法人から贈与を受けたときは、所得税や住民税がかかります。

よくあるケースとして、子どもが親の経営する会社の役員や従業員になっている場合に受け取る贈与があります。
受け取った金銭は贈与ではなく「役員賞与」や「給与所得」として扱われ、所得税や住民税の課税対象となります。

生前贈与の特例を利用した場合

親から子どもへの生前贈与には様々な控除や特例が用意されており、活用すれば贈与税を大幅に軽減できます。

主に次のような控除や特例があります。

  • 相続時精算課税制度
  • 教育資金の非課税措置
  • 結婚、子育て資金の非課税措置
  • 住宅取得等資金の非課税措置

それぞれについて確認していきましょう。

相続時精算課税制度

60歳以上の親や祖父母が18歳以上の子どもや孫に贈与をする場合に、合計2,500万円まで非課税となる制度です。

先述の通り、制度改正により2024年1月からは毎年110万円の基礎控除も新設されました。

教育資金の非課税措置

子どもが親から教育費用の目的で受け取った資金は、最大で1,500万円まで非課税となります。

対象範囲は幅広く、以下のようなものが該当します。

  • 幼稚園、小中高校、大学(院)、専修学校、認定こども園や保育所などの入学金
  • 授業料
  • 学用品費
  • 給食費 など

ただし、受贈者の所得金額が1,000万円を超える場合、この非課税制度の対象外です。

結婚、子育て資金の非課税措置

子どもの結婚・子育て資金として両親や祖父母などから贈与された場合、1,000万円までの金額が非課税となります。

たとえば、以下のような費用が対象となります。

①1,000万円枠

  • 不妊治療や妊婦検診にかかる費用
  • 分娩や産後ケアにかかる費用
  • 子どもの医療費、幼稚園や保育所などの保育料など

②300万円枠

  • 挙式や衣装代など、婚礼にかかる費用(婚姻から1年前の日より後に支払われるものに限る)
  • 新居に引っ越すための転居費用、家賃、敷金など

18歳以上50歳未満の子どもや孫1人につき、上記①②に関する費用が合計1,000万円まで非課税となります。
ただし、上記②の婚礼や転居にまつわる費用は300万円が上限です。

なお、教育資金と同じく受贈者の所得金額が1,000万円を超える場合、この非課税制度の対象となりません。

住宅取得等資金の非課税措置

親が子どものマイホームを購入・建築するための資金を贈与した場合、非課税となる特例があります。

非課税となる金額は住宅の種類によって変わり、省エネ等住宅の場合は1,000万円まで、それ以外の住宅の場合は500万円までの贈与が非課税です。

親から100万円の贈与を受けるときの注意点

親から子へ100万円の贈与を行う場合、次のようなポイントに注意しましょう。

契約書で贈与の内容を記録する

親子間の贈与であれば、わざわざ契約書を用意しなくてもよいのではと考える方もいるかもしれません。
しかし、たとえば次のような理由から契約書を作成しておくのが望ましいといえます。

第三者への贈与の証明となる

当事者同士では、お互いが納得していれば口頭の約束のみでよいと考えるかもしれません。

しかし、贈与契約書を作成すると合意した内容が記録され、贈与が行われたという事実を客観的に証明できます

たとえば税務署に証拠資料として提出を求められた場合など、契約書がなければ第三者に贈与の事実を客観的に証明することは困難になります

贈与内容について認識のズレを防ぐ

口約束のみで贈与契約は成立しますが、どうしても認識のズレや言った言わないで後からトラブルになる可能性が高くなります。

約束についてお互いの認識を合わせるためにも、贈与契約書で合意内容を明確に記録しておきましょう。

履行前の撤回を防ぐ

「書面によらない贈与」と「書面による贈与」では、法律上、解除の要件が異なります。

書面によらない贈与は、すでに履行済の部分を除き、各当事者がいつでも解除できます
一方、書面による贈与の場合、原則として解除は認められません

贈与を受ける前に関係が悪化し、約束を反故にされるような事態を防ぐためにも、契約書を作成して「書面による贈与」として扱われるようにしておきましょう。

相続対策の場合、できるだけ早い時期から贈与を行う

贈与者の死亡前7年以内に財産を贈与された相続人がいる場合、贈与された財産を相続財産に含めなければなりません(※令和5年12月31日以前の贈与では相続発生後3年以内)

もし相続対策として生前贈与を行う場合、相続はいつ開始になるか予測が難しいため、できるだけ早い時期から贈与しておく方が望ましいでしょう。

まとめ

たとえ親からもらった贈与であっても、場合によっては贈与税を納めなければなりません。

ただし、進学、結婚、マイホームの取得など、ライフイベントで多額の出費が必要となる場合に親世代から援助できるよう、様々な控除や特例が設けられています。

制度を利用するためにはその要件を満たした上で申請する必要があり、要件が複雑な場合もあるため、自分が適用できるかどうかわからないケースもあるかもしれません。
贈与税の申告や特例の利用などで不安がある場合は、まずは専門家に相談し、的確なアドバイスを受けた上で制度を利用するとよいでしょう。

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メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

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