この記事でわかること
- 自筆証書遺言と公正証書遺言の作成費用がわかる
- 弁護士に遺言書作成を依頼するときにかかる費用がわかる
- 遺言書作成ができる専門家の違いがわかる
遺言書にはいくつか種類があり、どの種類であってもその効力に違いはありませんが、一般的に広く利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。
遺言書の種類によってかかる費用も変わるため、遺言書作成にいくらかかるのか、それぞれ比較しておく必要があります。
また遺言書に関する相続トラブルを防ぐために、弁護士に遺言書作成を依頼することも視野に入れておくといいでしょう。
この記事では、遺言書作成にかかる費用について、自筆証書遺言・公正証書遺言を作成する場合、弁護士に依頼して作成する場合に分けて解説します。
目次
自筆証書遺言の作成
自筆証書遺言は、文字通り遺言者が自分で作成する遺言書です。
自筆証書遺言を選択した場合のかかる費用とメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
自筆証書遺言の作成にかかる費用
自筆証書遺言の作成に使う用紙や封筒以外に、特に費用はかかりません。
ただし、遺言書補完制度を利用すると、保管料3,900円がかかります。
遺言書保管制度とは?
自筆証書遺言を法務局に預け、画像データを保管してもらう制度が2020年に設けられました。
この制度により、
- ・遺言の形式的な不備を防ぐことができる
- ・遺言書の偽造や変造を防ぐことができる
- ・遺言書の存在が通知される
といったメリットがあります。
一方で、
- ・遺言書保管制度の利用には費用がかかる
というデメリットもあります。
自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言のメリット |
|
---|---|
自筆証書遺言のデメリット |
|
自筆証書遺言の最大のメリットは、遺言書の内容を誰にも知られないことです。
公正証書遺言の場合は公証人などに遺言書の内容が知られてしまいますが、自筆証書遺言の場合は内容を知られる心配がありません。
ただし、紛失や偽造などのリスクもあります。
公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、公証役場で作成する遺言書です。
公正証書遺言を選択した場合にかかる費用とメリットとデメリットを解説します。
公正証書遺言の作成にかかる費用
公正証書遺言を作成する際には、必要書類をそろえる費用のほか、(1)作成手数料と(2)証人手数料がかかります。
(1)公証役場に支払う「公正証書作成手数料」
公正証書遺言を作成する際に公証役場に支払う作成手数料は、遺言書に記載する財産の価額によって決まります。
公正証書遺言を作成する際は、財産の金額に応じた手数料を公証役場に支払います。
例えば、財産の金額が1億円の場合は43,000円となります。
多くの場合は10万円以内に収まります。
(2)証人手数料
公正証書遺言を作成するためには、証人2人以上の立会いが必要です。
公証役場で証人を紹介してもらうこともできますが、証人1人につき6,000円程度の費用がかかります。
公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言のメリット |
|
---|---|
公正証書遺言のデメリット |
|
公正証書遺言は、公証役場に出向いて公証人に作成してもらうため、自分で遺言書を書く必要がないのがメリットのひとつです。
ただし、誰にも知られずに遺言書を作成したいと考える人にとっては、ややハードルが高いと感じるかもしれません。
弁護士への遺言書作成依頼にかかる費用
相続に関する手続きを、まとめて弁護士に依頼することがあります。
遺言書の作成に関する依頼をした場合、弁護士費用はいくらかかるのか、その具体例をご紹介します。
相談費用
弁護士に遺言書の作成を依頼する際は、初めに遺言の内容について相談します。
弁護士への相談料は、多くの場合30分5,000円で計算されます。
実際に相談すると1時間程度かかることが多いので、1万円が目安となります。
なお、初回の相談料は無料としている弁護士も多いので、確認しておくといいでしょう。
遺言書作成費用
遺言書の作成を依頼すると、作成手数料が発生します。
遺言書の作成には細かなルールがあるほか、財産の内容を間違えないように記載する必要があるので、時間をかけて念入りに作成され、チェックされることとなります。
そのため、作成費用は10万円~20万円程度となります。
財産の金額の大きさ、あるいは財産の種類の多さによっては、それ以上の金額になることもあります。
遺言書保管費用
作成した遺言書を自宅で保管するとリスクがあるため、弁護士にその保管を依頼することができます。
弁護士に遺言書の保管を依頼すると、おおよそは年間で1万円程度の費用が発生します。
遺言書保管制度が始まった現在では、弁護士に依頼すると費用が高くなりますが、ほかの依頼とあわせて利用するメリットもあります。
遺言執行にかかる費用
遺言執行者を遺言書に記載しておく必要があります。
遺言執行者は、遺言書に書かれた遺産の手続きを実際に行う人です。
相続人の中から遺言執行者を指定することもありますが、トラブルを避けるために弁護士に依頼することもあります。
この場合、、少なくとも30万円程度の費用がかかり、中には100万円にもなることもあります。
その他雑費
弁護士に依頼した内容を遂行するために遠方に出張する必要がある場合、交通費のほかに日当が発生します。
交通費は実費ですが、日当は1日あたり3~5万円程度となります。
また、公正証書遺言を作成する場合は、公証役場に支払う金額が実費で発生します。
金額としては、すべてあわせて10万円以内となるものと考えられます。
【費用や向いているシーン】遺言書作成における専門家の違い
遺言書の作成を専門家に依頼する場合、弁護士だけでなく他の専門家に依頼することもできます。
専門家によってどのような違いがあるのか、確認していきましょう。
弁護士
弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、弁護士が本人の代理人となることが大きなメリットとなります。
相続が発生して様々なトラブルが発生した場合、弁護士は本人の代わりに相続人や第三者との交渉にあたることができます。
また、裁判所での手続きになった場合には、裁判所への出廷や、書類作成ができます。
このように弁護士には大きな権限が認められているので、相続に関するトラブルの解決を任せることができます。
ただ、弁護士に依頼する場合の費用は高く、遺言書の作成費用は10万~20万円となります。
司法書士
遺言書の作成を、司法書士に依頼することもできます。
司法書士も法律の専門家ですが、弁護士と違い本人の代理権は有していません。
基本的に、書類の作成や登記などに対応しているのみです。
ただ、司法書士は登記の専門家であることから、遺産に多くの不動産がある場合は、遺言書の作成も登記もスムーズに進めることができます。
なお、司法書士の中でも認定司法書士は、少額の裁判手続きに対応できますが、その上限額は140万円となっており、相続に関するトラブルではこの金額では収まらないケースがほとんどです。
司法書士に遺言書の作成を依頼した場合の費用は、弁護士より少し安く、5万~10万円程度となります。
行政書士
行政書士は、官公庁に提出する書類の作成、あるいは契約書などの作成を行う専門家です。
遺言書もこのような重要な文書の1つであり、形式的に問題のない書類を、他の専門家に依頼した場合と比べて安く依頼することができます。
行政書士に遺言書の作成を依頼した場合は、一般的に5万~10万円程度となり、司法書士よりさらに低い金額に抑えることもできます。
ただ、行政書士は法律に基づいた紛争の解決といった権限は有していません。
相続が発生した場合に相続人間のトラブルを解決することはできず、トラブルが発生した場合には別の専門家に依頼する必要があります。
まとめ
遺言書の作成は、多くの人にとっては一生に一度あるかどうかです。
それだけ実際に関わることが少なく、周りの人からの体験談を聞くこともないので、自分だけで作成せず、専門家の力を借りることが遺言書の作成には欠かせません。
専門家に依頼することで、遺言書を有効に作成するだけでなく、相続の際に揉めそうなポイントをアドバイスしてもらい、そのための対策を実行することもできます。
残された相続人が争いによってバラバラになることのないよう、まずは専門家に相談してみましょう。