この記事でわかること
- ローンの繰り上げ返済の資金を贈与するとばれることがわかる
- 贈与税の申告漏れや無申告となった時のペナルティがわかる
- 贈与税がかからないように繰り上げ費用を受け取る方法がわかる
目次
繰り上げ返済費用の贈与がばれる理由
ローンの繰り上げ費用を贈与する場合、親が子に現金や預金を渡すのが一般的な方法となります。
現金や預金を動かすだけにもかかわらず、贈与がばれるのはどうしてなのでしょうか。
不動産購入時に税務署からお尋ねがくる
親子間で贈与が行われやすいのは、不動産などの大きな買い物をする時です。
マイホームを購入する時には、自己資金の他に銀行などからの借り入れや贈与された資金を利用することが多いです。
そのため、税務署は不動産を購入した人に対して、どのように資金調達して不動産を購入したのか、文書を送付して問い合わせを行います。
この時、贈与された資金を適切に申告していなければ、贈与税の申告漏れを指摘されることとなります。
また、住宅ローンを利用して購入した後、ローンの返済を自身で行っていなければ、やはり贈与を指摘されます。
相続発生時にお金の動きを調べる
贈与が行われるタイミングとして、相続が発生する直前もあげられます。
亡くなりそうな人がいると、その人の預金を子どもなどに移しておくということは頻繁に行われます。
このような資金の動きは、贈与税や相続税の申告漏れに該当することがあるため、税務署も詳しく調査を行います。
相続発生前に行われた資金移動を調べる中で、ローンの繰り上げ費用が贈与されていると発覚することが少なくありません。
贈与税の申告漏れ・無申告がばれたときのペナルティ
贈与税の申告漏れや無申告であることがばれた場合、どのようなペナルティを科されることとなるのでしょうか。
本来、贈与税として負担しなければならない金額以外にも、多額のペナルティが発生することとなります。
無申告加算税
本来であれば贈与税が発生するにもかかわらず、その申告を行っていない場合に科されるのが、無申告加算税です。
贈与税の申告・納付期限は、贈与が行われた年の翌年2月1日~3月15日とされています。
しかし、この間に申告も納税も行っていない場合には、無申告加算税が科されることとなります。
無申告加算税として発生する金額は、以下のように計算されます。
納付すべき税額が50万円を超える部分については20%
なお、申告納付期限を過ぎてから申告した場合でも、税務署に指摘される前に自主的に申告した場合は、5%で計算されます。
重加算税
無申告加算税が科されるような事案の中には、納税者が悪質なケースも少なくありません。
たとえば本来作成しなければならない書類を作成していない、あるいは作成した書類が事実と異なるような場合です。
このような行為を税務上は「仮装隠蔽」といい、通常の無申告加算税より重いペナルティが科されることとなります。
重加算税として発生する金額の計算方法は、以下のとおりです。
ただし、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を科されたことがある場合は、税率が50%になります。
延滞税
本来の納期限より遅れて税金を納付することについての罰則として、遅延利息に相当する延滞税が科されます。
利息と同じような計算方法になるため、納付が遅くなればなるほど、延滞税の金額は大きくなります。
延滞税の額の計算は、「納付すべき税額×税率×完納するまでの日数÷365日」の算式で行います。
なお、税率は納期限からの日数により、次のように定められています。
(1)納期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%
ただし、令和4年中は年2.4%となります。
(2)納期限の翌日から2か月を経過した日以後は年14.6%
ただし、令和4年中は年8.7%となります。
ローンの繰り上げ返済費用にかかる贈与税計算方法
ローンの繰り上げ費用を贈与された場合、贈与税の対象になるため、贈与税の申告が必要になります。
しかし、贈与税の申告を忘れてしまった場合には、税務署から指摘を受けて贈与税の期限後申告を行うこととなります。
ローンの返済に関する贈与税の計算にはいくつかのパターンがあるので、その内容を確認しておきます。
贈与された資金でローンの返済を行った場合
ローンを組んだ人は、そのローンを返済する義務を負っています。
毎月決まった時期に返済を行う他、繰り上げ返済を行う際も、自身の預金口座から支払いを行う必要があります。
もし、毎月の返済が苦しくなったために、返済のための資金を贈与された場合には、実際に贈与された金額が贈与税の対象となります。
繰り上げ返済を行うために贈与された場合も、この資金が贈与税の対象になります。
この場合、他に贈与された財産がなければ、年間110万円を上回らないケースが多いでしょう。
贈与された財産の合計額が110万円を超えなければ、贈与税の基礎控除以下となるため贈与税は発生せず、申告書も不要です。
自身でローンの返済を行っていない場合
ローンを組んでも、はじめから自身で返済する意思のないことも考えられます。
毎年の返済額が110万円以下となる場合に、返済資金を毎年贈与してもらい、贈与税の申告もしないことが可能なのでしょうか。
実は、ローンを返済する意思がない場合には、実際に贈与された金額より大きな財産を贈与されたものとみなされます。
この場合、贈与税の対象となるのはローンの返済資金ではなく、肩代わりしてもらった時点でのローン残高となるためです。
たとえば、3,000万円のローンを組んだものの、返済資金は親から贈与を受けることとし、最初の年に100万円を贈与されたとします。
この場合、100万円の贈与となれば贈与税は発生せず、贈与税の申告も不要です。
しかし、実際にはこのケースでは、100万円の贈与ではなく3,000万円の贈与とされます。
そのため、多額の贈与税が発生しますし、贈与税の申告も必要となります。
贈与税がかからないローンの繰り上げ費用の贈与方法
ローンの繰り上げ費用を贈与されれば、贈与税が発生することとなります。
しかし贈与税を支払うこととなれば、せっかく贈与されたとしても大きな負担となってしまいます。
そのため、繰り上げ費用を贈与されても贈与税が発生しない方法を考える必要があります。
実際にどのような方法があるのか、ご紹介していきます。
肩代わりした分の不動産の所有権を移転する
ローンの繰り上げ費用が贈与となるのは、不動産の購入資金だけを負担し、実際の不動産を保有していないためです。
そこで、繰り上げ費用の支払いと不動産の所有権が一致するように、不動産の所有権の一部を変更し、その登記を行います。
こうすれば、贈与税が発生することはありません。
ただし、この方法では注意しなければならないことがいくつかあります。
まず、登記を行う際には登記費用や登録免許税、不動産取得税が発生することです。
これらの費用の金額を考えると、贈与税を支払う方がより負担が少なくなるということも考えられます。
次に、不動産の所有権が親に移転すると、将来的に相続財産になることです。
贈与税がかからないようにした結果、親が所有する不動産が増え、相続税の負担が大きくなってしまいます。
このような注意点を考慮すると、不動産の所有権を移転するのが最善の策なのか、よく考える必要があります。
相続時精算課税制度を利用する
相続時精算課税制度は、60歳以上の祖父母や父母から、孫や子に対して贈与を行った場合に、贈与税が非課税になる制度です。
相続時精算課税制度により贈与税が非課税となる上限額は、2,500万円までとされています。
上限額に達するまでの金額であれば、どのような種類の財産でも無税で贈与することができます。
また、贈与された財産はどのように使ってもいいこととされており、用途に制限はありません。
そこで、繰り上げ費用を相続時精算課税制度で贈与すれば、贈与税はかからなくなります。
ただし、相続時精算課税制度で贈与された財産は、贈与者が亡くなった時に相続税の課税対象となります。
そのため、相続時精算課税制度を利用すれば、トータルの税負担も軽減されるとは限りません。
相続財産に含まれる財産の金額や、誰がどの財産を相続するのかといったことも考えて、適用について考える必要があります。
親子間で金銭消費貸借契約を結ぶ
繰り上げ費用を贈与して贈与税がかかるのは、結果的に贈与者が不動産購入費用を負担しているためです。
そこで、一度は受け取った繰り上げ費用を、その後何年かにわたって返済するようにします。
こうすれば、繰り上げ費用のために受け取った資金は、借入により一時的に増えたものと言うことができます。
この場合、金銭消費貸借の契約書を親子で交わします。
ここで重要なのは、返済方法や利息の計算方法について、契約書面に明記しておくことです。
また、そこに書かれたとおりにきちんと返済を行うことです。
返済方法が曖昧で毎月きちんと返済していない場合は、借入ではなく贈与と判定されることとなります。
贈与と判定されないよう、契約書を作成し、毎月の返済も確実に行うようにしましょう。
まとめ
ローンの返済は、借入をした人にとって大きな負担となります。
そこで、繰り上げ返済を行って、少しでも利息の負担が軽減されるようにしたいと考えることが多いようです。
しかし、繰り上げ費用を自身で用意することは簡単ではなく、親などの助けを借りたい場合もあることでしょう。
繰り上げ費用を受け取ると、手元にお金が残らなくても贈与となってしまうため、そうならないような対策をしておきましょう。