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最終更新日:2023/12/13

限定承認の手続きの流れ・必要書類についてわかりやすく解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 限定承認とはどのようなものかメリットとデメリットがわかる
  • 限定承認を行う際の手続きの流れを知ることができる
  • 限定承認の手続きにかかる期間や注意点を知ることができる

相続が発生した場合には、遺産を誰が相続するのかを決定しなければなりません。

ただし、遺産の中にマイナスの財産である負債があると、相続しない方がいいと考えることもあるでしょう。

そこで、限定承認を行って負債を引き継がないように手続きをすることができます。

限定承認を行う際に必要な手続きの流れや、必要な書類・費用について確認しておきましょう。

限定承認とは

限定承認とは、遺産に含まれるマイナスの財産(負債)を、プラスの財産の金額の範囲内でのみ相続する制度です。

遺産に含まれるマイナスの財産の方が多い場合には、遺産をすべて相続することはできません。

その代わり、被相続人が残した負債を相続人が引き継いで、債権者に対して返済する必要はなくなります。プラスの財産の金額の範囲内で相続したマイナスの財産(負債)が、プラスの財産をもって、弁済されることになるからです。

一方、遺産に含まれるマイナスの財産よりプラスの財産の方が多い場合は、その差額を相続することができます。

限定承認をするには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から」(一般的には、相続の開始(自分が相続人となったとき)を知った時と、相続開始の日と一致することがほとんどです。)から3カ月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。

また、相続人全員で一緒に手続きをしなければならないことも大きな特徴となっています。

限定承認のメリット・デメリット

限定承認は、家庭裁判所で手続きをしなければ利用することのできない制度です。

複雑な手続きを行う必要があるので、どのようなメリットとデメリットがあるのか、事前に把握しておきましょう。

限定承認のメリット

限定承認の一番のメリットは、遺産に含まれるマイナスの財産を相続人が引き継ぐことは絶対にないということです。

もしプラスの財産の方が大きな場合は、マイナスの財産を差し引いた後の財産を相続することができます。

また、マイナスの財産の方が大きな場合は、遺産を何も相続しない代わりに、マイナスの財産を引き継がないこととなります。

マイナスの財産の方が大きくても小さくても、マイナスの財産を引き継ぐことがないという点は変わりありません。

また、限定承認を行うと、マイナスの財産の方が大きくても特定の財産は引き継ぐことができる場合があります

遺産に含まれるマイナスの財産が大きな場合には、相続放棄を選択することもできます。

ただ、相続放棄を行うと、一切の財産を引き継ぐことはできません。

これに対して、限定承認の場合は自宅や事業用不動産など、どうしても引き継ぎたい財産を引き継ぐことができる余地が残ります

限定承認のデメリット

限定承認のデメリットは、その手続きが非常に複雑なことです。

そもそも、家庭裁判所での手続きを行わなければ、限定承認を行うことはできません。

また、限定承認の手続きは相続人全員で一緒に行わなければなりません。

もし、相続人の中に限定承認に反対する人がいると、すべての相続人は限定承認を行うことができなくなるということです。

また、限定承認で引き継いだ財産がある場合、その財産は被相続人から譲渡されたものとみなされます。

そのため、相続税ではなく譲渡所得に対する所得税が課されることがあります。

この場合、相続税より大きな税負担になることがあるため、注意しなければなりません。

限定承認の手続きの流れ・必要書類

限定承認を行う際は、家庭裁判所での手続きを行う必要があります。

どのような手続きを行い、どのような書類が必要になるのか、確認していきます。

相続人の調査を行う

限定承認を行う場合だけではありませんが、相続が発生したら相続人の調査を行わなければなりません

これは、この後どのような手続きを行うにしても、相続人全員で行わなければならないことがあるためです。

限定承認の場合も、相続人全員で家庭裁判所に申述を行う必要があるため、まずは相続人の調査を行います。

配偶者以外に被相続人の子だけが相続人になる場合、基本的には誰が相続人になるのかわからないことはありません。

しかし、被相続人に前妻との子や隠し子がいるケースもあり、後から別の相続人がいることが発覚することもあり得ます。

本当にわかっている人以外の相続人がいないか、必ず確認するようにしましょう。

この時、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて、生前の婚姻歴や子の有無について確認していきます。

遺産の調査を行う

相続人となった人は、遺産を相続するかどうかを自身で判断することができます。

遺産を相続するか、あるいは限定承認や相続放棄するかを判断するためには、遺産の調査を行わなければなりません

被相続人となった人は、相続人にとってはかなり身近な人であることが多いでしょう。

しかし、どのような財産を保有していたのか、そのすべてを把握していることはほとんどありません。

そのため、被相続人の遺産の調査をしっかりと行うようにしましょう。

預貯金や有価証券は、被相続人名義のものをすべて洗い出す必要があります。

金融機関や証券会社の書類や郵送物が、被相続人の家に残されていないか、確認するようにしましょう。

土地や建物などの不動産は、登記簿謄本や固定資産税の課税明細書で確認することができます。

複数の不動産がある場合は、法務局で被相続人名義により登記されている不動産を詳細に調べましょう。

この他、自動車や書画・骨董などの美術品が遺産となることがあります。

これらは財産の評価額がわかりにくいため、査定や鑑定をしてもらう必要があります。

相続人全員で話し合いを行う

すべての遺産の調査を終えたら、その遺産を相続するか、あるいは限定承認するかを決定する話し合いを行います。

限定承認は相続人全員が一緒に行う必要があるため、まずは相続人全員で限定承認するかどうかを話し合いましょう

すべての相続人が限定承認するという結論になれば、次の段階に進んでいきます。

一方、すべての相続人が限定承認するという結論にならない場合があります。

このような場合には、限定承認とはどのようなもので、なぜ限定承認した方がいいのかを説明しなくてはなりません。

それでも限定承認しないという相続人がいる場合は、単純承認するのか相続放棄するのかを、それぞれの相続人が決定します。

なお、限定承認をすることについて話し合いを進めている間に、相続人のうちの一人が単純承認してしまうことがあり得ます。

すると、限定承認することはできなくなるため、注意が必要です。

限定承認の申述書と財産目録を作成する

限定承認することについて、すべての相続人が合意した場合、家庭裁判所での手続きを進める必要があります。

家庭裁判所に限定承認の申述書と相続財産目録を提出する必要があるため、これらの書類の作成に取りかかります。

限定承認の申述書は、限定承認を認めてもらうための申請を行う書類で、家庭裁判所でその書式が定められています。

裁判所のホームページから「家事審判申立書」を入手し、限定承認を認めてもらうための内容を記載します。

記載例も裁判所のホームページで確認することができるため、必要な項目を記載していきましょう。

また、限定承認の手続きを行うには、相続財産目録を家庭裁判所に提出しなければなりません。

相続財産目録とは、財産の種類や評価額などを一覧にして記載した書類です。

プラスの財産もマイナスの財産もあわせて記載する必要があり、その合計額も計算しておきましょう。

相続財産目録は限定承認だけでなく、相続手続きを進める上でも重要なものとなります。

添付書類を収集する

家庭裁判所に限定承認の申述を行う際には、限定承認申述書と財産目録以外に、下記の書類が必要です。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 申述人(相続人)全員の戸籍謄本

また、代襲相続が発生している場合は、代襲相続人となった人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。

この他、直系尊属が相続人となった場合、相続人を決定するのに影響した子の死亡の記載のある戸籍謄本が必要です。

配偶者のみが相続人となる場合、あるいは兄弟姉妹が相続人となる場合にも、相続人の決定に関する戸籍謄本が必要となります。

限定承認の申述を行う

限定承認申述書や相続財産目録を作成し必要な書類を収集したら、家庭裁判所に提出します。

限定承認の申述を行うのは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

提出する裁判所を間違えないよう、あらかじめ確認しておきましょう。

限定承認の申述受理の審判が行われる

限定承認の申述を行うと、家庭裁判所から照会書が送付されてきます。

送付されてきた照会書の内容を確認し、質問に回答した上で返送します。

もし不足の書類がある場合には、追加で書類を提出するように求められることもあります。

照会書への回答が送付されると、家庭裁判所で審判が開始されます

審判で限定承認の申述が受理されると、家庭裁判所から限定承認が受理された旨の通知書が送付されてきます。

限定承認の手続きに必要な費用

家庭裁判所で限定承認の申述を行う場合には、手数料に相当する収入印紙を準備しなければなりません。

相続人の人数にかかわらず、限定承認申述書には800円の収入印紙を貼付することとされています。

また、家庭裁判所からの郵便物を送るのに必要な郵便切手も準備する必要があります。

なお、必要な切手の料金は裁判所によって異なります。

必ず事前に、それぞれの裁判所で確認してから準備するようにしましょう。

限定承認の手続きにかかる期間

限定承認の手続きは、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所で行う必要があります。

この3カ月という期限に間に合わせるために、相続人や相続財産の調査などを行い、相続人全員の合意を得る必要があります。

限定承認の申述を行ってからは、家庭裁判所でそれぞれの手続きを行うこととなります。

相続放棄の申述が受理されるまで、平均2~3カ月の期間を要します。

そのため、限定承認が確定するのは、相続が発生してから5~6カ月程度後になるケースが多くなっています。

限定承認を行う際の注意点

限定承認を行う際には、多くの注意点があります。

相続放棄の熟慮期間を伸長できる

限定承認は、相続開始を知ってから3カ月以内に行わなければなりません。

しかし、3カ月という期間は非常に短く、相続人全員の合意を得られない場合もあります。

そこで、熟慮期間を延長するための手続きを行うことができます

家庭裁判所に、熟慮期間の伸長の申立てを行い、その申立てが認められれば3カ月を経過した後でも限定承認を行えます。

ただ、熟慮期間の伸長は必ず認められるわけではない点に注意しましょう。

単純承認が成立してしまうことがある

すべての相続人が一緒に限定承認しなければ、家庭裁判所で限定承認を行うことは認められません。

ところが、知らず知らずのうちに単純承認が成立するような行動をしてしまう相続人が現れることがあります。

たとえば、被相続人の預金を勝手に引き出し、自身のために使った場合があります。

また、被相続人の負債を返済してしまった場合にも、単純承認が成立する可能性があります。

単純承認が成立した場合、限定承認を行うことはできなくなります。

限定承認するかしないか判断に迷う場合は、単純承認が成立しないように注意しましょう。

専門家に手続きを依頼することも検討する

限定承認の手続きは、単に書類を家庭裁判所に提出すればいいというものではありません。

限定承認が成立するには、家庭裁判所での審判を行い、認められる必要があります。

限定承認の申述は、相続開始から提出するまでの期限が非常に短い上、手続きでミスが許されません

必要となる書類を確実に準備する必要もあるため、弁護士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

まとめ

限定承認という制度は、相続放棄と比較するとその知名度は低く、あまり知られていない制度といえます。

ただ、遺産にどれだけの負債があるかわからないなど、限定承認をした方がいいケースは数多くあります。

そこで、限定承認することのメリットとデメリットを知った上で、限定承認を行うことも検討しておきましょう

相続開始から3カ月という期限が非常に短く、相続人全員で行う必要があることは注意しなければなりません。

確実に限定承認をするためには、専門家に依頼して手続きを進めるようにしましょう。

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