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最終更新日:2022/12/15

【記載例付】遺産分割協議書に預金の分け方を記載する方法

弁護士 福西信文

この記事の執筆者 弁護士 福西信文

東京弁護士会所属。
相続手続等の業務に従事。相続はたくさんの書類の作成が必要になります。
お客様のお話を聞き、それを法律に謀った則った形式の文書におとしこんで、面倒な相続の書類を代行させていただきます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/

【記載例付】遺産分割協議書に預金の分け方を記載する方法

この記事でわかること

  • 遺産分割協議書の概要がわかる
  • 遺産分割協議書に預金額を書かなくてもよい理由がわかる
  • 預金の分け方を遺産分割協議書に記載する方法がわかる
  • 預金の相続手続きに必要な書類がわかる

相続財産には預金が含まれるケースが多く、金融機関で相続手続きを行うことになります。

普通預金は基本的に解約となり、定期預金は名義変更によって満期日まで保有できますが、いずれも金融機関に遺産分割協議書を提出しなければなりません。

遺産分割協議書には、誰が相続するのか、いくら相続するのかを記載し、その他の必要書類とともに提出しますが、預金の場合は書き方に注意が必要です。

相続の状況に合わせた書き方にしておかなければ、金融機関が相続手続きを受け付けてくれない可能性もあります。

今回は、遺産分割協議書に預金の分け方を記載する方法を解説します。

ケース別の記載例もわかりやすく解説しますので、家族の預金を相続した方はぜひ参考にしてください。

遺産分割協議書とは

相続人全員で遺産の分配方法を話し合い、最終的な結果を記載した書類が遺産分割協議書です。

遺言書があれば遺言内容に従いますが、遺言書がなく、かつ相続人が複数いるときは、基本的に遺産分割協議書を作成します。

具体的には、誰がどの財産を相続するのか記載し、被相続人(亡くなった方)名義の預金解約などに使うため、第三者にもわかる内容で作成しなければなりません。

また、作成時には相続人全員の署名捺印も必要になります。

遺産分割協議書には預金額を書く必要はない

預金額の記載は遺産分割協議書の必須条件ではないため、預金額(相続発生時の預金残高)を書く必要はありません。

ただし、状況次第では書いた方がよい場合もあるので、ケースバイケースの判断となります。

具体的には次のような判断基準で書く・書かないを決めるとよいでしょう。

預金額を書いた方がよいケース

相続財産が預金と現金だけの場合や、誰がいくら相続するのか明確にしておきたいときは、遺産分割協議書に預金額を書いた方がよいでしょう。

また、遺産分割協議書の本文ではなく、別に作成する財産目録に預金額や口座情報を記載しておけば、記載内容に誤りがあっても修正がスムーズです。

ただし、名義人が亡くなったときの残高が遺産分割の対象になるため、当日分の記帳がない場合は、金融機関に残高証明書の発行を請求しましょう。

取引金融機関が複数あるときは、それぞれの金融機関へ残高証明書の発行を請求しますが、1口座あたり800~1,000円程度の手数料で取得できます。

定期預金は経過利息の計算書を取り寄せておく

被相続人の財産に満期前の定期預金があり、相続後に解約するときは解約日までに発生した利息を把握しておく必要があります。

この利息を経過利息(または既経過利息)といい、各金融機関に請求すれば経過利息の計算書を発行してもらえます。

なお、経過利息の計算書は発行手数料が2,000円程度かかり、請求する際には被相続人との関係がわかる戸籍謄本や、本人確認書類などが必要になります。

請求時の必要書類は金融機関によって若干異なるので、事前に確認しておくとよいでしょう。

預金額を書かない方がよいケース

遺産分割協議書に書いた預金額と、支払時や解約時の残高が異なる場合は、預金額を書かない方がよいでしょう。

各金融機関では2月と8月、または3月と9月頃に預金利子を入金するので、遺産分割協議書の作成後に利子が発生すると、記載内容と預金額が異なってしまいます。

実際の預金額と遺産分割協議書の記載内容に差異があると、金融機関が遺産分割協議書を受け付けてくれない可能性もあるので注意しましょう。

また、相続発生時の預金額を書いてしまうと、「利子(利息)や配当が発生したとき、誰が受け取るのか?」といった問題も生じてきます。

必要最低限の情報のみ記載した方が、トラブル防止になるケースもあるでしょう。

預金の分け方を遺産分割協議書に記載する方法

預金の分け方を遺産分割協議書に記載する方法

被相続人の財産に預金があるときは、1人ですべて相続する、または複数人で分割する場合があり、ケースごとに遺産分割協議書の書き方も異なります

また、遺産の配分に偏りが出てしまう場合、1人の相続人が預金をすべて相続し、配分の少ない相続人に現金を渡す代償分割にも利用できます。

預金の分け方にも様々なケースがあるので、次の記載例を参考に遺産分割協議書を作成してください。

1人の相続人が預金すべてを相続する場合

預金口座の全額を1人で相続する場合、遺産分割協議書には以下のように記載します。

【記載例】
1.相続人 金田銀太郎は以下の遺産を取得する。

(1)預貯金
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 1234567
口座名義人 金田金之助
残高 3,000,000円および相続発生後に生じた利息とその他の果実

一般的には口座名義人の情報までを記載しますが、遺産分割協議の後に利子(利息)が発生するようであれば、最後の一文を書き足しておきましょう。

この利子や株式配当金、あるいは不動産の賃料などのことを「果実」と呼びます。

ただし、預金残高は必ず残高証明書で確認するようにしてください。

複数の相続人で預金を分割する場合

被相続人の配偶者と子どもなど、複数の相続人で預金を分割するときは、遺産分割協議書へ以下のように記載してください。

振込手数料の扱いも記載しておくとよいでしょう。

【記載例】
1.以下の遺産については、相続人 分割一郎が3分の1、相続人 分割花代が3分の2の割合で取得する。

なお、以下の遺産について、分割一郎は相続人を代表して解約および払い戻し、または名義変更の手続きを行い、分割花代の取得分については、別途指定する口座へ振込みによって引き渡すものとする。

このときの振込手数料については、分割花代の負担とする。

(1)預貯金
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 2345678
口座名義人 分割金雄

金融機関には振込みの対応を確認しておく

被相続人の預金口座を解約、または一部払い戻しをする場合、解約金などは相続人名義の口座へ振り込む扱いが一般的です。

ただし、各相続人の口座へ個別に振り込みしてもらえるケースや、代表者の口座にのみ振込可能なケースなど、金融機関によって扱いがまちまちです。

個別振り込みに対応していない場合は、ひとまず代表者口座に振り込みしてもらい、その後各自の口座へ振り込むようにしてください。

この場合の振込手数料についても、受取人が負担する、または双方で折半するなど、扱いを決めておくとよいでしょう。

代償分割に預金を活用する場合

代償分割とは、Aが高額な財産を相続する一方、Bがわずかな預金しか相続できない、といった状況のときに、不公平を解消するためにAがBに代償金を支払う方法です。

主な遺産が不動産しかない場合に使われる方法ですが、預金解約でも代償分割の手法を使うケースがあります。

たとえば、複数の金融機関に預金口座があり、代表者が1人で解約や分配を行うと負担になってしまう場合、代償分割の方式で事務負担を軽減できます。

この場合、遺産分割協議書は次のような記載例になります。

代償分割するときの遺産分割協議書の記載例

代表者がまとめて預金を相続し、その後代償分割する場合、遺産分割協議書は以下のように記載します。

【記載例】
1.相続人 分割一郎は以下の遺産を取得する。

(1)預貯金
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 1234567
口座名義人 分割太郎

△△信用金庫 △△支店 普通預金 口座番号 2345678
口座名義人 分割太郎

2.分割一郎は上記の預金を取得する代償金として、分割花代に対し金300万円を支払う。

代償金の支払いは税務署が贈与とみなす可能性もあるため、最後の一文は必ず記載してください。

また、代償金の扱いを明記することで、支払いを巡るトラブルも防止できます。

預金の相続手続きに必要な書類

預金の相続手続きに必要な書類

相続した預金の解約や一部払い戻し、または名義変更する場合は、以下の書類を金融機関に提出します。

遺言書あり

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外のとき)
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 預金を相続する人の実印と印鑑証明書
  • 預金通帳、証書、キャッシュカード
  • 遺言執行者の選任審判書(遺言執行者の選任があるとき)

遺言書なし

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(改製原戸籍等)
  • 相続人全員の現在戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 預金を相続する人の実印
  • 預金通帳、証書、キャッシュカード

有効期限付きの書類もあるので、次のポイントにも留意してください。

遺言書があるときの必要書類

被相続人が遺言書を遺していた場合、預金の相続手続きには以下の書類が必要です。

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外のとき)
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 預金を相続する人の実印と印鑑証明書
  • 預金通帳、証書、キャッシュカード
  • 遺言執行者の選任審判書(遺言執行者の選任があるとき)

基本的にはすべて原本提出となり、印鑑証明書は発行日から3ヶ月や6ヶ月以内などの期限が設定されています。

遺言書が公正証書遺言以外の場合は、事前に家庭裁判所の検認が必要になるため、すぐには開封しないように注意してください。

なお、法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍謄本は不要になります。

遺言書がないときの必要書類

遺言書がないときは、遺産分割協議書とともに以下の書類を金融機関へ提出します。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(改製原戸籍等)
  • 相続人全員の現在戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 預金を相続する人の実印
  • 預金通帳、証書、キャッシュカード

遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印が必要なため、提出前には記入漏れや実印以外を使用していないか、必ずチェックしましょう。

また、遺言書がないケースでも、法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍謄本の提出は不要になります。

まとめ

遺産分割協議は1回だけでまとまらないケースもありますが、預金の相続だけでも決着していれば、預金専用の遺産分割協議書を作成しても構いません。

預金は葬儀費用の支払いや相続人の生活費に充てられるので、優先的に分割方法を話し合うとよいでしょう。

ただし、預金額を書いてしまったために遺産分割協議書が無効になるケースもあるので、書き方は慎重に検討しなければなりません。

遺産分割協議書の作成に不安がある方や、書き方がわからずに困っている方は、相続に強い弁護士へ相談してみましょう。

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