この記事でわかること
- 遺産分割協議書が必要となる5つの提出先がわかる
- 遺産分割協議書の提出が必要ないケースがわかる
- 遺産分割協議書の原本を返してもらう方法がわかる
目次
遺産分割協議書の提出先5つ
代表的な相続手続きには以下の5つがあり、いずれも遺産分割協議書の提出先になります。
- 金融機関:預貯金の解約など
- 法務局:不動産の相続登記
- 証券会社:株式の相続手続き
- 陸運局または運輸支局:車の相続手続き
- 税務署:相続税申告
具体的な手続きの内容や提出期限、遺産分割協議書以外の必要書類は次のようになっています。
金融機関
預金口座の相続手続きを行うときは、以下の書類を金融機関へ提出します。
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 預金を相続する人の実印
- 預金通帳、証書、キャッシュカード
遺産分割協議書の提出期限はありませんが、相続発生を伝えると口座が凍結されるため、預金の払出しや光熱費等の引き落としができなくなります。
住宅ローンなどの引き落としもできなくなるので、定期的な口座振替が設定されているときは、早めに引落し口座の変更手続きを行ってください。
なお、相続発生時の残高がわからないときは、残高証明書の発行を金融機関に請求しましょう。
法務局
不動産を相続する場合、土地や建物の住所地を管轄する法務局へ以下の書類を提出します。
- 遺産分割協議書
- 登記申請書
- 登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)および印鑑証明書
- 不動産を相続する人の住民票
- 収入印紙(登録免許税の納付用。税率は不動産価格の0.4%)
- 委任状(司法書士等へ手続きを依頼する場合)
相続登記にも遺産分割協議書の提出期限はありませんが、2024年4月1日以降は義務化が決定しています。
違反した場合は罰金などのペナルティも予定されているので、できるだけ早めに手続きを済ませてください。
証券会社
上場株式については、以下の書類を証券会社に提出して相続手続きを行います。
- 遺産分割協議書
- 口座開設者死亡届出書
- 相続上場株式等移管依頼書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 証券口座開設依頼(相続人の証券口座がない場合)
株式の場合、相続して保有し続けるか、売却して換金することになりますが、いずれも相続人名義の証券口座へ移管しなければなりません。
相続人名義の証券口座がないときは、被相続人と同じ証券会社で口座開設が必要になります。
遺産分割協議書の提出期限はありませんが、預金口座の相続よりも手順が多いため、早めの手続きをおすすめします。
相続財産に非上場株式があったとき
非上場株式は証券会社が関わっていないため、株式の発行会社へ以下の書類を提出して相続手続きを進めます。
- 遺産分割協議書
- 株式名義書換請求書兼株主票
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
なお、非上場株式は相続税評価額の計算がかなり複雑です。
相続税額にも影響するので、必ず税理士に相談しておきましょう。
陸運局または運輸支局
被相続人の車を相続するときは、まず車検証で車の名義を確認してください。
被相続人名義になっていれば、以下の書類を陸運局または運輸支局に提出します。
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 車検証
- 車庫証明
- 相続する人の実印と印鑑証明書
車の査定額が100万円以下であることを証明できる査定証があれば、遺産分割協議書に代えて、遺産分割協議成立申立書のみで相続手続きが完了します。
遺産分割協議成立申立書の提出であれば、相続人の署名捺印(実印)のみ必要となります。
車の相続手続きにも期限はありませんが、被相続人名義のままでは売却や廃車手続きができないため、なるべく早めに対応しておきましょう。
税務署
相続性が発生する場合、以下の書類を提出して相続税の申告・納税を行います。
申告先は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続税申告書
- 相続人全員の戸籍謄本と住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続財産の関係資料(登記事項証明書は葬儀代の請求書など)
相続税の申告・納税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月が期限となっています。
また、基礎控除は以下のように計算します。
基礎控除の最低額は3,600万円(3,000万円+600万円×1人)になるため、相続財産が3,600万円以下であれば相続税はかかりません。
遺産分割協議書の提出が必要ないケース
以下のような状況であれば、遺産分割協議書を提出する必要はありません。
- 被相続人が遺言書を遺している
- 相続人が1人しかいない
- 自分以外の相続人が相続放棄している
- 法定相続分どおりに遺産分割する
遺言書があれば、原則として遺言内容どおりに財産を取得するため、遺産分割協議書の提出は不要です。
また、もともと自分1人しか相続人がいない場合や、他の相続人の相続放棄によって自分1人だけが相続人になったときも、遺産分割協議書の提出は不要です。
法定相続分どおりに預金を相続するときや、不動産を共有相続するときも、遺産分割協議書は作成・提出ともに不要です。
遺産分割協議書の提出は原本のみ可能
金融機関や法務局で相続手続きを行うときは、遺産分割協議書の原本提出を求められます。
コピーの提出は不可となっているため、相続人の人数分だけ原本を作成し、各自1通ずつ遺産分割協議書を持つようにしておきましょう。
なお、相続手続きが複数あり、遺産分割協議書の使い回しが必要なときは、各機関に原本還付を申請しましょう。
金融機関の場合は窓口に提出した時点でコピーを取り、その場で原本を返却する扱いが一般的ですが、相続登記の場合は申請しなければ原本は返還されません。
具体的には、次の要領で遺産分割協議書の原本還付を申請します。
遺産分割協議書の原本を返してもらう方法
相続登記の完了後に遺産分割協議書の原本を返してもらう場合、以下の手順で原本還付を申請してください。
- (1)遺産分割協議書をコピーする
- (2)コピーの余白部に「原本と相違ありません」と記入し、申請者が記名押印する
- (3)原本とコピーを提出し、原本還付を希望している旨を伝える
コピーへの押印については、相続登記の申請書に押印したものと同一の印鑑を使用します。
原本還付を申請すると、遺産分割協議書だけではなく、戸籍謄本や住民票などの原本も返還されるので、手続きの度に再取得する必要がなくなります。
ただし、提出先の各機関によって原本還付の申請方法が異なるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
相続関係説明図があれば戸籍謄本も原本返還される
相続関係説明図とは、家系図のようなイメージで相続関係を著した書類です。
相続登記の際に戸籍謄本と一緒に提出すれば、登記完了後に戸籍謄本の原本は返還されるので、次の相続手続きに使用することができます。
なお、家族構成が複雑な場合や、戸籍謄本が古くて読み解きが難しいときは、弁護士などの専門家に作成を依頼することをおすすめします。
相続人が1人でも欠けた状態で遺産分割協議書を作成すると、無効になってしまうので要注意です。
まとめ
今回は遺産分割協議書の提出先5つを解説しましたが、現在の法律では、相続税申告(税務署)のみ提出期限が設定されています。
ただし、相続登記は2024年4月1日から義務化がスタートし、被相続人名義のまま車を使用すると、事故が発生したときに保険が適用されない可能性があります。
相続手続きを先延ばしにすると様々なデメリットが生じるため、遺産分割協議書の原本還付を活用して、効率的に相続手続きを進めていきましょう。
遺産分割協議書の書き方がわからない方や、仕事が忙しく必要書類を集める時間がないという方は、相続問題に強い弁護士へ相談しておくとよいでしょう。