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最終更新日:2022/12/13

遺産分割協議書の提出先5つ【コピーの提出は原則不可】

弁護士 福西信文

この記事の執筆者 弁護士 福西信文

東京弁護士会所属。
相続手続等の業務に従事。相続はたくさんの書類の作成が必要になります。
お客様のお話を聞き、それを法律に謀った則った形式の文書におとしこんで、面倒な相続の書類を代行させていただきます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/

遺産分割協議書の提出先5つ【コピーの提出は原則不可】

この記事でわかること

  • 遺産分割協議書が必要となる5つの提出先がわかる
  • 遺産分割協議書の提出が必要ないケースがわかる
  • 遺産分割協議書の原本を返してもらう方法がわかる

家族が遺言書を遺さずに亡くなられたときは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、誰が・何を・どれだけ相続するのか決めなければなりません。

話し合いが決着したら遺産分割協議書を作成し、被相続人(亡くなられた方)名義の預金口座解約や、不動産の名義変更などに使用します。

しかし、相続手続きは多岐に渡るため、遺産分割協議書の使い回しが必要になるケースも考えられます。

遺産分割協議書は原則としてコピー提出ができないので、どのような相続手続きに必要なのか、原本の返却が可能なのか、ぜひ知っておきたいところですね。

今回は遺産分割協議書の提出先5つを解説しますので、相続手続きを効率的に進めるときの参考にしてください。

また、遺産分割協議書の原本を返してもらう方法もわかりやすく解説しています。

遺産分割協議書の提出先5つ

代表的な相続手続きには以下の5つがあり、いずれも遺産分割協議書の提出先になります。

  • 金融機関:預貯金の解約など
  • 法務局:不動産の相続登記
  • 証券会社:株式の相続手続き
  • 陸運局または運輸支局:車の相続手続き
  • 税務署:相続税申告

具体的な手続きの内容や提出期限、遺産分割協議書以外の必要書類は次のようになっています。

金融機関

預金口座の相続手続きを行うときは、以下の書類を金融機関へ提出します。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 預金を相続する人の実印
  • 預金通帳、証書、キャッシュカード

遺産分割協議書の提出期限はありませんが、相続発生を伝えると口座が凍結されるため、預金の払出しや光熱費等の引き落としができなくなります。

住宅ローンなどの引き落としもできなくなるので、定期的な口座振替が設定されているときは、早めに引落し口座の変更手続きを行ってください。

なお、相続発生時の残高がわからないときは、残高証明書の発行を金融機関に請求しましょう。

法務局

不動産を相続する場合、土地や建物の住所地を管轄する法務局へ以下の書類を提出します。

  • 遺産分割協議書
  • 登記申請書
  • 登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)および印鑑証明書
  • 不動産を相続する人の住民票
  • 収入印紙(登録免許税の納付用。税率は不動産価格の0.4%)
  • 委任状(司法書士等へ手続きを依頼する場合)

相続登記にも遺産分割協議書の提出期限はありませんが、2024年4月1日以降は義務化が決定しています。

違反した場合は罰金などのペナルティも予定されているので、できるだけ早めに手続きを済ませてください。

証券会社

上場株式については、以下の書類を証券会社に提出して相続手続きを行います。

  • 遺産分割協議書
  • 口座開設者死亡届出書
  • 相続上場株式等移管依頼書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 証券口座開設依頼(相続人の証券口座がない場合)

株式の場合、相続して保有し続けるか、売却して換金することになりますが、いずれも相続人名義の証券口座へ移管しなければなりません。

相続人名義の証券口座がないときは、被相続人と同じ証券会社で口座開設が必要になります。

遺産分割協議書の提出期限はありませんが、預金口座の相続よりも手順が多いため、早めの手続きをおすすめします。

相続財産に非上場株式があったとき

非上場株式は証券会社が関わっていないため、株式の発行会社へ以下の書類を提出して相続手続きを進めます。

  • 遺産分割協議書
  • 株式名義書換請求書兼株主票
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書

なお、非上場株式は相続税評価額の計算がかなり複雑です。

相続税額にも影響するので、必ず税理士に相談しておきましょう

陸運局または運輸支局

被相続人の車を相続するときは、まず車検証で車の名義を確認してください。

被相続人名義になっていれば、以下の書類を陸運局または運輸支局に提出します。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 車検証
  • 車庫証明
  • 相続する人の実印と印鑑証明書

車の査定額が100万円以下であることを証明できる査定証があれば、遺産分割協議書に代えて、遺産分割協議成立申立書のみで相続手続きが完了します。

遺産分割協議成立申立書の提出であれば、相続人の署名捺印(実印)のみ必要となります。

車の相続手続きにも期限はありませんが、被相続人名義のままでは売却や廃車手続きができないため、なるべく早めに対応しておきましょう。

税務署

相続性が発生する場合、以下の書類を提出して相続税の申告・納税を行います。

申告先は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続税申告書
  • 相続人全員の戸籍謄本と住民票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続財産の関係資料(登記事項証明書は葬儀代の請求書など)

相続税の申告・納税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月が期限となっています。

また、基礎控除は以下のように計算します。

相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

基礎控除の最低額は3,600万円(3,000万円+600万円×1人)になるため、相続財産が3,600万円以下であれば相続税はかかりません

遺産分割協議書の提出が必要ないケース

遺産分割協議書の提出が必要ないケース

以下のような状況であれば、遺産分割協議書を提出する必要はありません。

  • 被相続人が遺言書を遺している
  • 相続人が1人しかいない
  • 自分以外の相続人が相続放棄している
  • 法定相続分どおりに遺産分割する

遺言書があれば、原則として遺言内容どおりに財産を取得するため、遺産分割協議書の提出は不要です。

また、もともと自分1人しか相続人がいない場合や、他の相続人の相続放棄によって自分1人だけが相続人になったときも、遺産分割協議書の提出は不要です。

法定相続分どおりに預金を相続するときや、不動産を共有相続するときも、遺産分割協議書は作成・提出ともに不要です。

遺産分割協議書の提出は原本のみ可能

金融機関や法務局で相続手続きを行うときは、遺産分割協議書の原本提出を求められます。

コピーの提出は不可となっているため、相続人の人数分だけ原本を作成し、各自1通ずつ遺産分割協議書を持つようにしておきましょう。

なお、相続手続きが複数あり、遺産分割協議書の使い回しが必要なときは、各機関に原本還付を申請しましょう。

金融機関の場合は窓口に提出した時点でコピーを取り、その場で原本を返却する扱いが一般的ですが、相続登記の場合は申請しなければ原本は返還されません。

具体的には、次の要領で遺産分割協議書の原本還付を申請します。

遺産分割協議書の原本を返してもらう方法

相続登記の完了後に遺産分割協議書の原本を返してもらう場合、以下の手順で原本還付を申請してください。

  • (1)遺産分割協議書をコピーする
  • (2)コピーの余白部に「原本と相違ありません」と記入し、申請者が記名押印する
  • (3)原本とコピーを提出し、原本還付を希望している旨を伝える

コピーへの押印については、相続登記の申請書に押印したものと同一の印鑑を使用します。

原本還付を申請すると、遺産分割協議書だけではなく、戸籍謄本や住民票などの原本も返還されるので、手続きの度に再取得する必要がなくなります。

ただし、提出先の各機関によって原本還付の申請方法が異なるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

相続関係説明図があれば戸籍謄本も原本返還される

相続関係説明図とは、家系図のようなイメージで相続関係を著した書類です。

相続登記の際に戸籍謄本と一緒に提出すれば、登記完了後に戸籍謄本の原本は返還されるので、次の相続手続きに使用することができます。

なお、家族構成が複雑な場合や、戸籍謄本が古くて読み解きが難しいときは、弁護士などの専門家に作成を依頼することをおすすめします。

相続人が1人でも欠けた状態で遺産分割協議書を作成すると、無効になってしまうので要注意です。

まとめ

今回は遺産分割協議書の提出先5つを解説しましたが、現在の法律では、相続税申告(税務署)のみ提出期限が設定されています。

ただし、相続登記は2024年4月1日から義務化がスタートし、被相続人名義のまま車を使用すると、事故が発生したときに保険が適用されない可能性があります。

相続手続きを先延ばしにすると様々なデメリットが生じるため、遺産分割協議書の原本還付を活用して、効率的に相続手続きを進めていきましょう。

遺産分割協議書の書き方がわからない方や、仕事が忙しく必要書類を集める時間がないという方は、相続問題に強い弁護士へ相談しておくとよいでしょう。

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