この記事でわかること
- 成年後見制度の概要
- 任意後見制度と法定後見制度の違い
- 成年後見制度のメリット、デメリット、費用
- 成年後見制度の手続きの流れと準備すべき資料
- 成年後見制度の利用時の注意点
「令和5年版高齢社会白書」では、65歳以上の人口比率は29%に達しており、2060年には高齢者の35%近くが認知症になるという推計があります。
認知症、病気、ケガ等により自立して過ごせなくなると、財産の管理や自分の身のまわりのことで困る可能性があり、このような課題を法的に支える制度として、成年後見制度があります。
この記事では、成年後見制度の概要とメリット、デメリット費用、手続き等について解説致します。
目次
成年後見人制度とは
平成12年(2000年)から成年後見制度が施行されました。
この制度では未成年、認知症、知的障害、精神障害等が発症等によって判断能力が低下した方(以下、「本人」)に対し、家庭裁判所の審判により選任された者が以下のような支援をします。
- 本人の不動産や預貯金等の財産を管理や支払などを行う
- 意思に寄り添い、身体の状態を考慮し医療・介護・福祉など福祉サービスや医療契約を締結する
(身上監護)
ただし、食事の世話や実際の介護などは、支援内容に含まれません。
この成年後見制度には、大きく分けて二つの種類があります。
任意後見制度
本人の判断能力が正常な時に、判断能力が低下した時に財産管理と身上監護という後見事務を委任できる人とあらかじめ契約を結ぶ方法です。
実際に保護・支援してもらう時は、家庭裁判所が選任した監督人が付きます。
法定後見制度
本人の認知が低下して日常生活に支障が出てきた時に、本人や関係者が家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所が後見人を選任する方法です。
法定後見については認知の低下の程度によって、重度の方から「後見」、「保佐」、「補助」と三種類の類型があります。
類型ごとに権限の大きさが異なり、後見が一番強い権限を有します。
後見は本人の代わりに契約を締結する本人の締結した契約を(一部の軽微な契約を除く)解除する、また代理権を持つといったすべての法律行為が可能となります。
保佐・補助の与えられる権限の範囲は家庭裁判所(一部、本人の同意が必要)が決定します。
ただし、いずれも医療同意は認められていません。
令和4年度の申立て実績全体数38,840件の内、約72%は法定後見類型であるため、本解説では単純化するため以後、三種類の類型を纏めて「法定後見人等」と呼ぶこととします。
同年度の利用開始の原因は認知症が約63.2%と最も多く、次いで知的障害の約9.4%、次は統合失調症の約8.7%となっています。
成年後見人制度を申立てできる人
成年後見制度の任意後見制度と、法定後見制度を申立てできる人は以下のようになっています。
任意後見制度
任意後見契約に関する法律によって、申立て人は以下のように定められています。
- 本人
- 配偶者
- 契約締結した任意後見人
- 四親等内の親族
- 任意後見監督人(任意後見契約が登記されている場合のみ)
家庭裁判所に申立てを行い、審判が下りると任意後見事務を開始します。
法定後見制度
法定後見人等の申立て人は、以下のように定められています。(民法7条、11条、15条)
- 本人
- 配偶者
- 市区町村長
- 検察官
- 四親等内の親族
- 法定後見人候補及び後見監督人
- 保佐人候補及び保佐監督人
- 補助人候補及び補助監督人
なお、四親等内の親族とは以下の通りです。
- (1)親、祖父母、子、孫、ひ孫
- (2)兄弟姉妹、甥、姪
- (3)おじ、おば、いとこ
- (4)配偶者の親・子・兄弟姉妹
令和4年の申立て実績は、以下のようになっています。
2位:本人 21.0%
3位:子 20.8%
4位:兄弟姉妹 11.3%
5位:その他親族 10.9%
任意・法定後見制度を利用したいと思い、自力で家庭裁判所のホームページを見て手続きするのには、かなりの時間や手間がかかります。
お住まいの市区町村、社会福祉協議会、弁護士、司法書士等に相談するのもおすすめです。
成年後見制度のメリット・デメリット
制度のメリット、デメリットについて任意・法定後見共通、個々の順で解説していきます。
任意・法定後見制度共通のメリット
残念ながら、任意・法定後見人等が不適切な事務をしてしまうことがあります。
予防するために家庭裁判所が(時によっては監督人を介して)、通帳のコピー、出納帳や活動報告を提出させて監視することとされています。
任意後見制度のメリット
次に任意後見制度のメリットは、以下のようになっています。
自分が信頼できる人に依頼できる
本人の判断能力が正常な時に、自分が信頼してお願いしたい親族や知り合い、法人にもしもの時に財産管理と生活・医療・介護・福祉など、身のまわりの事柄に目を配りつつ、身上監護を行う契約をできます。
そして受任する側も本人がどのようなことを期待していて、判断能力低下後もどのような事務をすればよいかを事前に理解して、双方合意しています。
このように、関係の近い人に後見事務をしてもらえる安心感があり、本人の意思の尊重もスムーズに行いやすくなります。
契約内容の自由度が高い
判断能力が前述したように、正常な時点で本人が任意後見人を選任し、本人の意思を反映させた契約を締結できます。
そのため、具体的にどういった権限を与えるのか、報酬はいくらにするのか等の諸条件決定の自由度がかなり高いことがメリットといえます。
迅速に本人を支援する体制が作れる
法定後見は申立てや候補者の決定から始めなければならないのに対し、任意後見人が法務局より登記事項証明書を入手するだけで、後見事務が開始できます。
法定後見制度のメリット
次に、法定後見制度のメリットは以下が挙げられます。
本人に身寄りがなくても選任してもらえる
本人に身寄りがいなくても、市区町村長・検察官の申立てにより家庭裁判所が法定後見人等を選任してくれます。
本人のために年金も代行で受け取れますし、保有する有価証券や預金、定期預金の管理、不動産等の売却を行ってくれます。
月々の生活費の支払い、必要なサービスの契約もしてくれます。
本人の親族が、本人や法定相続人の同意なく勝手に財産処分してしまった場合、法定後見人等が本人の財産を保全してくれます。
不要な契約を締結しても取消しをしてくれる
これは後見類型のみですが、本人が判断能力の低下によって高額な契約を結んでしまった場合や、売るつもりのなかった不動産を判断能力低下により売却した場合に、後見人は本人の契約を取消し可能です。
任意・法定後見制度共通のデメリット
次に任意・法定後見制度の共通のデメリットです。
報告の提出が煩雑
最低年1回(監督人によって毎月・隔月・半期)本人の現金及び口座の出納帳及び活動状況に纏めて、財産目録や活動報告等を家庭裁判所に提出が必要となります。
横領リスク
家庭裁判所や監督人が付くとはいえ、任意・法定後見人等による横領リスクがあります。
専門職の方が後見人等としては安心だと思いがちですが、2023年にも残念ながら専門職の後見人が高額な本人の財産を着服した事例が発覚しました。
財産の積極的活用不可
家庭裁判所及び監督人の監督下におかれ、任意後見人は資産運用など積極的な財産活用することは出来ません。
任意後見制度のデメリット
では、任意後見制度の特有のデメリットにはどんなものがあるでしょうか。
監督人への報酬が発生
法定後見制度では、監督人の選任は任意ですが、任意後見制度では必ず家庭裁判所が監督人を選任します。
自分が契約した任意後見人だけでなく、任意後見監督人への報酬が発生する場合があります。
高額契約等の取消権はない
法定後見人等の後見類型のように、判断能力の低下によって高額契約や売却の取消し権限はありません。
法定相続人や福祉関係者との関係が円滑でなくなりやすい
任意後見人が財産を管理していると、法定相続人他の親族や本人関係者から任意後見人が勝手に財産を使用・処分しているように見え誤解を受けることがあります。
このことが原因で他の法定相続人や福祉関係者との関係が円滑でなくなる場合があり、場合によっては訴えられてしまうケースもあります。
法定後見制度のデメリット
次に、法定後見制度のデメリットについて見ていきましょう。
誰が法定後見人等に選ばれるかわからない
親族・知り合い以外の法定後見人が選任された時、他人に財産を任せることになります。
この時、以下のトラブルが発生する可能性があります。
- 法定後見人等と法定相続人(親族等)、又は本人の福祉・サービス提供者が信頼関係を構築できない
- 信頼できない人に報酬を払うことに抵抗感がある
- 全部の通帳を預けるのに抵抗感がある
- 勝手に不動産を売却される
- 通帳の履歴を見せてくれず不信感が募る
法定後見人等の変更が難しい
一度、法定後見人等が選任されると、本人が死亡するまで継続します。
もし、当該法定後見人等が辞任、又は(何らか不正による)解任の場合には法定後見人等は変更となります。
仮に選任された法定後見人等と本人・親族との間に信頼関係が構築できていない場合には、家庭裁判所に対して変更の申立ても可能です。
ただ、当該法定後見人等の不適切な事務や身上監護を明示する情報等を収集し申立てを行い、家庭裁判所が「変更が必要と判断」した時に限ります。
法定成年後見人の変更の申立てをしても変更になるとは限らず、関係構築に苦労している場合、任期の長さがデメリットとなり得ます。
高額取引の管理が親族にはできない
本人の財産や身上監護のために10万円を超える取引(例:アパートの引き払い、不動産の売却等)が発生した場合、必ず裁判所に申立てを行い、許可を得る必要があります。
法定相続人に後見がついた場合、遺産分割協議等の合意が難しい
法定後見人等の事務の目的が本人の財産を極力減らさない、本人の利益になるように行動するため、分割協議が容易に合意しない場合があります。
ちなみに相続財産放棄する場合でも、法定後見人等が家庭裁判所からの許可を得る必要があります。
成年後見人になれる人物
任意後見制度で任意後見人となるのは、本人が事前に契約した判断能力低下した時に財産管理・身上監護をお願いした人です。
一方、法定後見制度では法定後見人等は家庭裁判所が申立てに基づき選任します。
選任される人は以下の人となります。
- 親族
- 専門職(弁護士、行政書士、司法書士、社会福祉士、行政書士等)
- 家庭裁判所が選任した市区町村の研修受講者、社会福祉協議会、生活相談員等の一般の人、法人
親族が実際に受任された件数は令和4年の統計実績によると19.1%です。
ただし、親族の申立て件数は全体の23.1%と、もともと低くなっています。
親族の法定後見人等への申立て件数の少ない理由
親族の申立て件数が少ない理由として、以下のようなものが挙げられます。
法定後見人等が財産を勝手に処分しているように見える
一人の親族が本人の財産を管理していると、他の親族から受任者が勝手に財産を使用、処分しているように見え、誤解を受けることがあります。
実際に、選任された親族が、自分自身のために財産を使ってしまったケースもあります。
報告書類が煩雑
本人のために使った収支や活動内容を、パソコン等を使用して記録・報告する義務があり、作成を負担に感じる人もいます
親族が選任された場合のメリット・デメリット
親族を選任する場合にメリットとデメリットがあります。
メリット
親族なので本人の財産を把握しやすく、財産目録を作成しやすいことです。
さらに判断能力が正常な時の本人と生活や経験を共有しており、本人の意思・趣味・嗜好を理解している場合が多く、意思を尊重した後見事務や支援が行いやすくなります。
デメリット
後見事務では本人の口座からお金を引き出し、本人のために使った経費や請求の支払いをします。
必要な場合は本人のためにサービスを契約し、また設備を購入できます。
他の親族にとって、法定後見人等がこの支払や購入をしている後見事務の様子が把握しやすいが故に、勝手に財産を使用、処分しているのではないかと誤解を招きやすいこともデメリットです。
また、他の親族から後見事務への批判的な意見を受けやすくなります。
一番選任されるのは専門職
一番選任が多いのは専門職です。
実績値では以下の割合で選ばれています。
- 弁護士27.1%
- 司法書士 36.8%
- 社会福祉士18.3%
- その他士業5.2%
専門職を選任する場合も、メリットとデメリットもあります。
メリット
財産管理だけでなく、献身的に本人の身上監護もしてくれます。
また、法務にも詳しく事務手続きを円滑に進めてくれることが期待できます。
デメリット
専門職の本業が忙しく、支払い等の財産管理はしてくれても、身上監護や本人への意思確認が疎かになってしまう場合があります。
一般が選任された場合
親族や専門職以外の一般では、社会福祉協議会などの生活相談員や市区町村の研修を受けた一般の方、法人が選任されます。
実績では、社会福祉協議会が4.5%、市民後見人が0.8%、その他法人が7.1%です。
本人の財産が少ない場合が多く、高い確率で監督人が選任されるようです。
メリット
一般が選任された場合のメリットは、比較的本人の気持ちに寄り添った支援をしやすいことです。
デメリット
一方で、法的な事務処理に慣れておらずスピード感が足りない、あるいは法律に疎いため、使える制度を知らずに活用できていないといった点が挙げられます。
法定後見人等になれない人
法定後見人になれない人についても、整理しておくと良いでしょう。
(2)家庭裁判所で成年後見人、保佐人、補助人等を解任されたことがある人
(3)破産開始決定を受けたが、免責許可決定を受けていないなどで復権していない人
(4)現在、本人との間で訴訟をしている又は過去に訴訟をした人
(5)現在、本人との間で訴訟をしている又は過去に訴訟をした人の配偶者、親又は子
(6)行方不明である人
成年後見人制度を利用する流れ・必要書類
成年後見制度を利用する流れを任意、法定の順に分けて説明します。
任意後見制度の場合の利用する流れ
任意後見制度を利用する手続きは、以下の通りです。
1)本人の判断能力が正常な時に、公証役場にて任意後見契約公正証書を作成します
2)本人の断能力が低下後、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者が、管轄する家庭裁判所に書類一式を準備し、申し立てます。
書類等としては次のものが必要です。
- 任意後見監督人選任申立書等6種
- 診断書(成年後見制度用)及び付票
- 本人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本・3カ月以内)等6種と申立て費用
なお、任意後見人に関しては、契約を結んでおいても申立てをする必要はありません。
3)審査(事案に応じて、本人調査、受任者調査、精神鑑定を実施)
4)審判
5)任意後見事務の監督人が選任された旨を登記
6)任意後見人が法務局より登記事項証明書を入手し、後見事務開始
※定期的に監督人経由家庭裁判所に報告業務
7)任意後見監督の終了(本人の死亡による)
法定後見制度を利用する場合の流れ
1)書類一式を準備
準備しなくてはならない書類等は、以下のものが挙げられます。
- 後見・保佐・補助 開始等申立書等7種類
- 診断書(成年後見制度用 詳細後述)及び付票
- 本人情報シート
- 本人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)等証明書5種類
- (交付されている方のみ)療育手帳のコピー
- 申立て費用
なお、上記の「診断書」とは、本人の福祉関係者に発行してもらった本人情報シートを主治医に所定の診断書と付表とともに渡し、診断書および診断書付表を発行してもらったものをいいます。
2)申立て及び家庭裁判所との面接
家庭裁判所に面会の電話をし、面接の予約をとります。
その面接予約日時と予約番号を提出シートに記入し郵送します。
この一連を申立てといいます。
3)親族への意向照会
家庭裁判所が、本人の親族に意向の照会をする場合があります。
4)鑑定
家庭裁判所に依頼された医師が、本人の判断能力を鑑定します。
診断書を作成した医師以外の医師が鑑定に選ばれるときもあります。
※診断書の記載等から明らかに必要がないと認められる場合には、鑑定は不要とされています。
5)本人・候補者調査
家庭裁判所が本人の意見を直接確認する「本人調査」をする場合があります。
「保佐」や「補助」の代理権付与については、本人の同意が必要となります。
法定後見人等候補者の適格性調査もあわせて行う場合があります。
6)審判
通常1~2カ月程度で審判が下ります。
後見人候補人以外の人が選任される場合もあります。
ただし、審判で下りた選任者について、不服を申立てることができません。
7)後見開始
法務局に登記事項証明書の準備状況を確認し、登記事項証明書を申請し後見事務を開始します。
定期的な監督人経由家庭裁判所への報告業務も開始します。
8)法定後見等・法定後見監督の終了(本人の死亡による)
法定後見等・法定後見監督は原則として本人が亡くなった場合、辞任、(何らかの不正による)解任によって終了します。
亡くなることによって終了となる場合、東京法務局に「終了の登記」の申請を行います。
さらに未清算の後見事務費用等を清算するなどして本人の相続財産を確定させた上で、本人の相続人に管理していた財産を引き継ぐことになります。
成年後見人制度を利用するときにかかる費用
任意後見制度と法定成年後見制度等の契約時、申立て時、維持費も分けて、費用についてご紹介します。
報酬額の申立てを受けて、家庭裁判所が審判により本人の財産の中から報酬が与えられます(民法862条)。
任意後見制度の費用
契約時、申立て時、維持費用によって、おおよそ下記の通りとなります。
契約時(目安)
公証役場の公正証書作成手数料:1契約ににつき11,000円程度
※4枚を超えた時は1枚ごとに250円加算
本人が病床にあって公証人が出張する場合:病床執務加算5,500円
申立て時の費用(目安)
申立手数料:800円
登記手数料:1,400円
書類、証明書発行費用:診断書及び付票作成費用、本人と任意後見受任者の住民票又は戸籍の付票代等、登記事項証明書発行代
維持費用
任意後見人報酬費用:任意後見契約書に記載された報酬
任意後見監督人報酬:家庭裁判所は、任意後見監督人の報酬の付与は申立てがあった場合に、裁判官の審判によって決定されることになっています。
管理財産が5,000万円以下 月額5,000円~20,000円程度
管理財産が5,000万円超 月額25,000円~30,000円程度
法定後見人等の費用
こちらも申立て時、維持費用に分かれ、おおよそ下記の通りとなります。
なお、監督人については任意ですが、今回は監督人が付いた条件で記載致します。
維持費用の報酬について、申立てをしないことも可能です。
申立て時の費用
申立手数料(収入印紙代):800円
登記手数料(収入印紙代):2,600円
※保佐人・補助人が代理権や同意権付与の申立てする時は各々800円追加
郵便切手(送達・送付費用)
後見の場合:3,270円
保佐・補助の場合:4,270円
本人情報シート、診断書及び付票作成費用
本人、後見人候補の戸籍抄本代発行代
鑑定代
審判書発行後諸経費、維持費用
登記事項証明書発行代
報酬:家庭裁判所が審判した費用ですが、以下が目安です。
2)法定後見監督人報酬: 家庭裁判所が審判した金額
目安:管理財産が5,000万円以下 月額5,000円~20,000円程度
管理財産が5,000万円超 月額25,000円~30,000円程度
成年後見人制度を利用するときの注意点
成年後見制度を利用する時の注意点には、以下が挙げられます。
候補者決定の合意形成
前述の通り、任意後見人等を受任した人に対して、法定相続人(親族)等の関係者からの誤解や軋轢は意外と多いものです。
任意後見制度の契約者や候補者を決定する時、また契約や候補者を申し立てする前に、法定相続人等を集めて話し合う機会を持つことをおすすめします。
制度の内容やその人を選任するにあたり、相続人の間で合意形成をつくるのがとても大切です。
後見人と本人関係者の信頼関係構築
現状では残念ながら、誰が法定後見人等を受任されたかによって、財産管理や身上監護の質や満足度が変わってしまうのが実情です。
そのため、任意・法定後見人等と親族、関連する福祉・介護・医療従事者といった関係者とのコミュニケーションを通じた信頼関係づくりもとても大切になります。
本人が意思を残す
本人の判断能力が正常な時に、エンディングノート等に、万が一の時の財産管理や身上監護をどのようにしてもらいたいのか記録を残し、契約を結ぶ任意後見制度が安心かもしれません。
法定後見制度の場合であって、必ず申立て候補者を家庭裁判所が選任されるとは限りません。
しかし、本人の来歴や趣味・好み等、思い出の物やエンディングノート等を法定後見人等に提示し、本人の気持ちに寄り添った財産管理や身上監護に努めてもらえるように働きかけることも大切です。
まとめ
成年後見制度が本人の財産を守り、身上監護をする制度であることを解説してきました。
制度を利用するには相当の時間と手間、そして費用がかかります。
本人の判断能力が正常なうちに相続対策や遺言、エンディングノートと一緒に任意後見制度を利用するか検討を行うのがよいでしょう。
利用にあたっては、自力で導入も可能ですが、弁護士、司法書士等の専門職等へ相談するのもよいでしょう。
家族信託や金融機関の判断能力低下時の制度等との比較検討や併用等も合わせて相談するのがおすすめです。