この記事でわかること
- 経済的利益とは
- 具体例を用いた経済的利益の考え方
- 経済的利益の課税について
弁護士費用について調べていると、経済的利益という言葉を目にすることがあります。
しかし経済的利益と聞いても、あまりピンとこない人が少なくないでしょう。
弁護士費用における経済的利益は報酬額に影響するため、依頼を考える際に理解しておいた方がいい重要なものです。
今回は経済的利益と、その考え方について解説していきます。
【簡単に解説】弁護士費用の経済的利益とは
弁護士費用の経済的利益とは、弁護士に依頼することで依頼者が得られると見込まれる利益のことです。
たとえば100万円の返済を求めて訴訟を起こす場合、訴訟により返還されると見込まれる利益100万円が経済的利益ということになります。
なぜ弁護士費用の経済的利益を理解しておく必要があるかというと、着手金や成功報酬を算定するための基準として用いられているからです。
これは弁護士報酬規程が一律で定められていた頃にできた考えた方です。
今現在、一律の報酬規程は撤廃されていますが、この規定を参考に報酬を定めている事務所が多くあります。
経済的利益の計算方法
経済的利益の考え方は、着手金と成功報酬でそれぞれ意味合いが少しずつ異なります。
着手金を算定する場合の経済的利益とは、弁護士に依頼することで見込まれる利益のことをいいます。
たとえば相手方に100万円の返済を求める訴訟では、返済してもらえる見込みの100万円が経済的利益です。
反対に相手方から100万円を返還請求される訴訟についても、100万円が経済的利益となります。
これは100万円返済しなければいけないところ、弁護士に依頼することで返済額を0円にできる、と仮定して考えるとわかりやすいでしょう。
着手金はこの額を基準に、弁護士事務所ごとの任意の割合で算定されます。
一方、成功報酬の基準となる経済的利益とは、実際に弁護士に依頼をしたことで得られた利益のことです。
100万円の返済を求める訴訟において、結果的に50万円を回収できた場合、経済的利益は50万円ということになります。
もし100万円の返還請求を受け、100万円全額を支払うことになった場合、減額できた金額は0のため、利益を得られなかったとして経済的利益無しとなり、その場合は成功報酬も0です。
その他の債権についての経済的利益は、以下の目安で算出します。
動産・不動産(所有権) | 時価相当額 |
動産・不動産(賃借権、使用権など) | 時価の2分の1 |
遺産分割請求 | 相続分の時価相当額 |
遺留分減殺請求 | 遺留分の時価相当額 |
賃料増減額請求 | 7年分の増減額 |
もし具体的な金額が算定不可能な場合は、経済的利益を暫定的に800万円とみなして算定する場合もあります。
しかしそうなると、非常に高額な弁護士費用を支払うことにもなるため、経済的利益について不明な場合は、依頼する弁護士とよく相談しましょう。
弁護士費用の経済的利益に所得税はかかる?
基本的に債権の元本回収は、所得税の対象ではありません。
そのため弁護士に依頼し、回収できた経済的利益に所得税はかからないということなります。
ただし遅延損害金については、雑所得とされるため、所得税の対象です。
特に金銭貸借において、返済の滞納が長期にわたっている場合、遅延損害金が相当額になっていると課税金額も大きくなるため、注意しましょう。
まとめ
弁護士費用における経済的利益は、報酬額の基準となる重要なものです。
経済的利益により、着手金や成功報酬が大きく変わることもあるため、その仕組みをよく理解しておきましょう。
金銭貸借以外の債権では、経済的利益の額が大きくなるケースが多く、弁護士報酬も高額になることがあります。
その場合、紛争の難易度等を考慮し、適正額を提示してもらえる弁護士に依頼することをおすすめします。