この記事でわかること
- 不在者財産管理人の辞任について
- 不在者財産管理人の終了事由とは
- 不在者財産管理人を辞める方法
不在者財産管理人を引き受けたものの、生活との両立が難しくなることや、精神的にもつらいと感じている人もいるのではないでしょうか。
不在者財産管理人は簡単に辞任できないルールのため、途中で辞めることは原則として認められていません。
この記事では、辞任ができない理由と、どうすれば役割を終えられるのか、その方法をわかりやすく解説します。
目次
不在者財産管理人は辞任できない
不在者財産管理人は、原則として途中で辞任することはできません。
家庭裁判所に選任された以上、その役割には法的な責任と義務が生じます。
たとえ本人の都合や事情があったとしても、自分の意思表示だけで一方的に辞めることは許されていません。
不在者財産管理人は、不在者の財産を守るために家庭裁判所が選任する、いわば法定代理人に近い立場です。
もし自由に辞任が認められると、不在者の財産が誰の管理下にも置かれない状態になり、大きな損失やトラブルにつながるおそれがあります。
そのため、法律上は辞任が認められず、管理を途中で投げ出すことはできないしくみになっています。
不在者本人が戻ってくるか、他の終了理由が発生するまでは、基本的に管理を継続する必要があります。
不在者財産管理人の主な終了事由
不在者財産管理人は、原則として自分の意思では辞めることができませんが、法律上の特定の事情が発生すれば、役割を終了することができます。
ここでは、不在者財産管理人の主な終了事由について、具体的に解説します。
管理する財産がなくなった
不在者の財産の管理費は、管理財産から支払われます。
たとえば負債があれば管理財産を返済に充て、不在者財産管理人の報酬も管理財産から補います。
管理する対象がなくなれば、役割自体が不要になるため当然、管理人の役割も終了します。
- 不在者の不動産を売却して債務を清算した
- 預貯金を支払いなどで適正に使い切り、残高がゼロになった
- 不在者の財産を供託した
- 遺産分割の結果、管理する財産がなかった
しかし財産がなくなったからといって、自然に終了するわけではなく、家庭裁判所に報告した上で、終了の確認を受ける必要があります。
不在者本人が管理できる
不在者本人が見つかり、自分で財産を管理できる状態に戻れば、管理人を置く必要がなくなるため役目は終わります。
ただし、本人が戻ったからといって、すぐに財産を引き渡してはいけません。
必ず家庭裁判所に報告し、手続きを行う必要があります。
勝手に財産を引渡すと、管理者の管理責任が問われることもあります。
委任管理人を選任した
不在者財産管理人は、不在者本人が任意で選任することもできます。
これを委任管理人といいます。
家庭裁判所の許可を得て、不在者本人が選んだ委任管理人に財産管理を任せると決定した場合は、不在者財産管理人の業務は終了します。
ここでも当然のように終了するわけではなく、家庭裁判所の手続きを経て、委任管理人に財産を引き継ぎ業務を終了します。
不在者の死亡を確認した
不在者本人の死亡が確認された場合、相続が発生します。
管理していた財産が相続財産にかわるため、相続人に財産を引き継ぎ、財産管理人の役目も終了します。
もし不在者に相続人がいない場合は、管理財産は相続財産法人となり、相続財産清算人の選任を申し立てることになります。
清算人が選任されたら財産を引き継ぎ、不在者財産管理人の業務は終了します。
この場合も、家庭裁判所への報告と確認手続きが必要です。
不在者の失踪宣言をした
不在者について失踪宣言が出された場合も、財産管理人の任務は終了します。
失踪宣言とは7年以上、生死不明の状態が続いたときに、死亡したとみなす制度です。
失踪宣言は、不在者と法律上の利害関係にある人が、家庭裁判所に申し立てることができます。
失踪宣言が認められれば、不在者は死亡した者として扱われるため、相続が開始され、財産管理の役割も終わります。
不在者財産管理人を辞める方法

不在者財産管理人を辞めるには、終了事由に該当する、もしくはやむを得ない事情がある場合に限られます。
相応の理由がある場合、家庭裁判所に認められれば辞任できます。
ここでは不在者財産管理人を辞める場合の、取消しと改任の2つの制度とその違いについて解説します。
不在者財産管理人の取消し
不在者財産管理人の取消しとは、終了事由が発生し、不在者財産管理人自体が不要になったときに行う手続きです。
不在者が戻ってきた場合や、死亡が確認された場合など、終了事由に該当する状況になった場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人選任処分の取消し審判申立書を提出します。
申立てを行うと、家庭裁判所が終了事由について調査を行います。
調査の結果、終了事由が認められれば、不在者財産管理人に取消しの告知が行われます。
その後、管理財産の引き継ぎを行い、家庭裁判所に管理終了報告書を提出すれば、業務は終了です。
不在者財産管理人の改任
不在者財産管理人の改任とは、現在の管理人本人に業務継続が困難な事情がある場合に、別の人に管理者を交代するための制度です。
主に以下のような事情が該当します。
- 高齢や病気で管理業務ができなくなった
- 介護・家庭の事情により継続が難しくなった
- 遠方への転居などで財産管理が現実的に不可能になった
- 精神的・身体的負担が大きく、職務遂行が困難になった
改任を希望する場合は、家庭裁判所に上申書を提出する必要があります。
内容が認められ、新しい不在者財産管理人が選任されたら、管理財産を引渡し、業務は終了です。
なお、新しい不在者財産管理人は、任意の人を候補者として推薦することができます。
ただし、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。
もし推薦したい人がいる場合は、事前に家庭裁判所に相談しておきましょう。
まとめ
不在者財産管理人としての責任を感じながら、業務継続は難しいと悩んでいる人もいるでしょう。
原則、辞任できないと言われる不在者財産管理人ですが、状況によって辞めることは可能です。
まずは、今の状況が改任や終了事由に当たるかを確認してみましょう。
しかし裁判所での手続きであるため、判断が難しい場合もあるでしょう。
迷ったときや一人で解決することが難しい場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。















