この記事でわかること
- 遺産分割調停を申し立てる裁判所がどこかわかる
- 遺産分割審判を行う場合の管轄裁判所がどこかわかる
- 遺産分割調停の裁判所が遠方にある場合の対処法がわかる
目次
遺産分割調停はどこの裁判所に申し立てるの?
遺産分割協議が成立しない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、解決を図ることがあります。
遺産分割調停を申し立てる裁判所
この場合、日本全国にある家庭裁判所のうち、どこに申立てを行うのでしょうか。
遺産分割調停を申し立てる場合、原則として話し合いを行っていた相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
家事審判法によると、遺産分割調停は「相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所」で手続きを進める必要があるとされています。
自分の住所地や被相続人の住所地にある裁判所では調停を受け付けてもらえないので注意しましょう。
複数人が関わる調停を申し立てる裁判所
複数人が関わる遺産分割調停の場合は、相手方の住所地にある家庭裁判所の中から自由に選択できます。
たとえば、申立人が東京都内、相手方が大阪市内と福岡市内に住んでいたとすると、大阪家庭裁判所と福岡家庭裁判所のどちらかを選んで申し立てをします。
申立人は裁判所に行く必要があるため、自宅に近い裁判所を選ぶと交通費の負担も抑えられるでしょう。
遺産分割調停の裁判所は変更できる
相続人が遠方に住んでいる場合はお互いに不便な思いをしないよう、調停を行う裁判所を相続人同士で決めることができます。
このことを、管轄合意といいます。
管轄合意があれば、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所ではなく、双方で取り決めた家庭裁判所に申立てを行うことができます。
なお、管轄合意をした際には、管轄合意書を作成して家庭裁判所に提出する必要があります。
どの家庭裁判所を管轄裁判所にするかを記載して、当事者が署名押印すれば管轄合意書は成立します。
遺産分割調停の管轄裁判所の調べ方
相手方が住む場所はわかっても、その住所地を管轄する家庭裁判所まではわからない人が多いでしょう。
ここで相手方の住所地を管轄する家庭裁判所を調べる方法を確認しておきましょう。
裁判所の管轄区域の調べ方
- 1.裁判所のホームページから「裁判所の管轄区域」のページを開く
- 2.遺産分割調停の相手が住んでいる都道府県をクリック
- 3.相手方の住所の市町村を確認
- 4.市町村ごとにその地域を管轄する家庭裁判所の名称が表示されているので該当する家庭裁判所を探す
遺産分割調停が不成立になったら?
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて調停を行った場合でも、必ずその調停が成立するわけではありません。
遺産分割審判に移行する
すべての相続人が納得できなければ、その調停も不調に終わり、その解決策として次に行われるのが遺産分割審判です。
遺産分割審判になると、これまで行われてきた双方の話し合いによる協議とは異なる解決が図られます。
さまざまな証拠書類や資料が裁判所に提出され、それぞれの相続人がどのような考えを持っているのか聞かれます。
そして裁判官は、それらの資料や聞き取りの内容をもとに、遺産の分割方法を決定します。
ここで下された内容は、法的な強制力があるため、たとえどのような理由があっても覆すことはできません。
このように、遺産分割審判は、話し合いでは成立しない遺産分割を成立させるための最終手段となっています。
決定された内容は非常に強い力を持っており、すべての相続人はそれに従う必要があります。
遺産分割審判を申し立てる裁判所
遺産分割審判の場合は、原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行われます。
つまり、遺産分割審判を行う裁判所は、遺産分割調停とは異なる可能性があるということです。
相続人が離れて暮らしていた場合などは、管轄の家庭裁判所が変わることになります。
ただし、遺産分割審判の裁判所についても、当事者で合意した場合は被相続人の最後の住所地以外の裁判所でも問題ありません。
なお、状況によっては裁判所を変更することなく、調停が行われた裁判所でそのまま審判が行われることもあります。
遺産分割調停の管轄裁判所が遠方だったときの対処法
遺産分割調停の相手方が遠方に住んでいる場合、申立てを行う裁判所も遠くなり、手続きには時間とお金がかかってしまいます。
できれば管轄合意で、少しでも近い裁判所に遺産分割調停を申し立てるのが望ましいといえるでしょう。
しかし、実際には相続人間で合意できない場合もあります。
遺産分割調停の管轄裁判所が遠方だったときの対処法
- 電話会議システムを利用する
- 弁護士に依頼する
- いきなり遺産分割審判を申し立てる
どうしても遠方の裁判所となってしまう場合、上記のような対処法があります。
電話会議システムを利用する
遺産分割調停を行う裁判所が遠方になる場合、電話会議システムを利用できることがあります。
申立人は、管轄裁判所に行くのではなく、自宅の最寄りの裁判所に出かけて、電話会議システムを利用します。
この方法であれば、移動にかかる費用と時間を大幅に節約することができますし、手続き上の負担も軽減できます。
ただ、一度も管轄裁判所に行かなくてもいいとは限らず、また裁判所の許可がなければ利用できません。
絶対に利用できるわけではないことを理解した上で、裁判所にその利用を申請する必要があります。
弁護士に依頼する
電話会議システムは、基本的に最寄りの裁判所に出かける必要がありますが、弁護士に依頼すれば、弁護士事務所の電話を使って電話会議システムに参加できます。
裁判所に行くのと、弁護士事務所に行くのとどちらが便利かを検討し、弁護士事務所で電話会議システムを利用することが可能です。
あるいは、弁護士を代理人として、調停に出席してもらえます。
特に調停の初回は裁判所に出かけなければならないことがあるため、このような対応が必要となります。
いきなり遺産分割審判を申し立てる
遺産分割調停を行わず、いきなり遺産分割審判を申し立てることも認められています。
遠方の裁判所に遺産分割調停を申し立てるのではなく、より近くの裁判所に遺産分割審判を申し立てることもできるのです。
ただ、いきなり遺産分割審判を申し立てても、裁判所は遺産分割調停を行うように求めてきます。
そして、実際にほとんどのケースでは遺産分割調停を行う裁判所に移送され、調停の手続きが行われることとなります。
また、遺産分割審判での決定は覆すことができないもので、調停とは大きく異なるものであると理解しておきましょう。
まとめ
遺産分割調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。
管轄裁判所が遠方になる場合は管轄合意をするという方法もありますが、相手が同意してくれなければ裁判所の変更はできません。
電話会議システムの利用や遺産分割審判についても検討して、何が最善の方法なのか考えてみましょう。
弁護士に依頼すると、代理人として弁護士が調停に出席できます。
自分の主張をより正確に伝えることにもつながるため、調停の負担を軽くしたい方は相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。