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最終更新日:2024/8/30

換価分割時には譲渡所得がかかる?誰が払う?計算方法・申告方法も解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 換価分割時の譲渡所得税・住民税の計算方法
  • 換価分割時の譲渡所得税の申告方法・必要書類
  • 換価分割時に譲渡所得税を計算・申告する際の注意点

換価分割には、手続きが簡単で、不動産の売却代金を相続人間で公平に分配できるメリットがあります。
他方で、売却代金に対して課せられる譲渡所得税や、その他の税金のことが気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、不動産の換価分割を行う場合の譲渡所得税について、誰が払うかの問題や、計算方法・申告方法などとあわせて解説します。

換価分割とは

換価分割とは、遺産として残された不動産や株式を、相続人が売却して現金に換えた上で、相続人間で分割して相続することをいいます。

換価分割を行う場合、まず法定相続人全員による遺産分割協議で換価分割による相続を行うことを決定します。
相続人が合意した内容を遺産分割協議書に記載して、全員が署名捺印を行った後、相続登記(名義変更)を行った目的物を売却し、入金された代金を遺産分割協議書の内容に従って分割します。

不動産を売却する場合、仲介会社に支払う手数料、印紙代、測量費用、境界画定費用などの経費がかかります。
これに加えて、購入時の価格よりも売却価格の方が高い場合は譲渡所得税がかかります。
また、相続した不動産を売却した場合、住民税も課税されます。

換価分割時の譲渡所得税・住民税を計算する方法

ここでは、換価分割時の譲渡所得税や住民税を計算する方法をご説明します。

例として、以下のケースで譲渡所得税と住民税を計算します。

  • 相続財産は土地のみ
  • 相続人は子ども2人
  • 土地の購入時の価格は8,000万円
  • 購入時の諸経費及び譲渡費用はそれぞれ200万円
  • 相続税の申告期限までに、土地を1億円で売却して換価分割(2分の1ずつ)

譲渡所得税の計算方法

上記の例で換価分割を行う場合、所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられます。

「短期譲渡所得」は、相続開始時の年の1月1日現在で所有期間が5年以下の場合です。
「長期譲渡所得」は、同時点で所有期間が5年超の場合です。
相続により取得した財産の場合、被相続人の所有期間も含めて判定するため、多くの場合長期譲渡所得になります。

それぞれ、税率の計算式は以下の通りになっています。

  • 短期譲渡所得:【売却代金-(取得費※1+譲渡費用※2)】x39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
  • 長期譲渡所得:【売却代金-(取得費+譲渡費用)】×20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
  • ※1取得費:購入価格+購入時の諸経費
    ※2譲渡費用:売却時の仲介手数料などの諸経費

なお、所得税には復興特別所得税が含まれます

これらの計算式を、上記の例にあてはめると、相続人1人あたりの譲渡所得税額は以下のようになります。

  • 短期譲渡所得の場合
    1人あたりの譲渡所得:【1億円-(8,000万円+200万円+200万円)】×1/2=800万円
    譲渡所得税額:800万円×39.63%=317万400円
  • 長期譲渡所得の場合
    譲渡所得税額:800万円×20.315%=162万5200円

住民税の計算方法

譲渡所得税と同時に課税される住民税の税率は、短期譲渡所得と長期譲渡所得で異なります。

  • 長期譲渡所得の場合:税率5%(道府県民税2%+市町村民税3%)
  • 短期譲渡所得の場合:税率9%(道府県民税3.6%+市町村民税5.4%)

換価分割時の譲渡所得税の申告方法・必要書類

換価分割時に譲渡所得税が発生する場合は、所得税と分離して課税されるため、換価分割を行った年の翌年2月16日~3月15日の間に確定申告を行い、譲渡所得税を納税する必要があります。

換価分割で譲渡所得が発生する場合、売却を行った代表者だけでなく、代金を受け取った相続人全員に発生することになるため、譲渡所得税の申告は、代金を受け取った全員が行わなければなりませ

ここでは、換価分割時の譲渡所得税の確定申告の方法及び必要書類を説明します。

譲渡所得税の申告方法

譲渡所得税の確定申告は、以下の流れで行います。

  • 1.確定申告に必要な書類を準備する
    次項に挙げる書類を準備します。
  • 2.譲渡所得と譲渡所得税を計算する
    譲渡所得税に対して適用される減税特例に該当するかを確認した上で、計算式に当てはめて譲渡所得と譲渡所得税を計算します。
  • 3.確定申告書に計算式を記載する
    確定申告書B様式・確定申告書第三表・譲渡所得の内訳書に計算式を記載します。
  • 4.確定申告書を提出し、所得税を支払う
    用紙を税務署の窓口に提出するか、電子申告を行います。
    期限までに所得税を支払えば手続きは終了です。
  • 譲渡所得税の確定申告の必要書類

    譲渡所得の確定申告の際に必要となる書類は、主に以下の9種類です。

    必要書類 入手場所 備考
    1譲渡所得の内訳書 税務署 確定申告書類
    2確定申告書B様式(譲渡所得がある場合) 税務署 確定申告書類
    3確定申告書第三表(分離課税用の申告書) 税務署 確定申告書類
    4売買契約書のコピー 自分で用意 売却時の書類
    5売却費用(仲介手数料など)の領収書コピー 自分で用意 売却時の書類
    6売買契約書のコピー 自分で用意 取得時の書類
    7取得費用の領収書のコピー 自分で用意 取得時の書類
    8売却した土地の全部事項証明書 法務局
    9源泉徴収票(給与所得者の場合)
    マイナンバーなど本人確認書類
    自分で用意

    以下、順にご説明します。

    確定申告書類(表1・2・3)

    1譲渡所得の内訳書・2確定申告書B様式・3確定申告書第三表(分離課税用の申告書)は、不動産を売却した場合の譲渡所得を申告するための書類です。

    これらの書類は、税務署に備え付けてあるほか、国税庁のHPからダウンロードできます。

    売却時の書類(表4・5)

    売買契約書のコピーや、売却の際の経費(仲介手数料など)がわかる領収書類のコピーを用意してください。

    取得時の書類(表6・7)

    売却した不動産を購入したときの価格や経費を証明できる書類です。

    前項と同様、売買契約書のコピーや経費がわかる領収書類のコピーを用意しましょう。

    売却した土地の全部事項証明書(表8)

    全部事項証明書とは、法務局の登記簿に記載されている情報の謄本をいいます。

    全部事項証明書には、当該土地の所在地や所有者などが記載されています。
    当該土地を管轄する法務局の窓口で取得するか、オンラインでの請求が可能です。

    一般的に確定申告に必要な書類(表9)

    上記の必要書類の他に、マイナンバーや保険証・運転免許証などの本人確認書類を用意してください。

    また、給与所得者の場合は、申告する年度の源泉徴収票も必要となります。

    換価分割時に譲渡所得税を計算・申告する際の注意点

    換価分割時に譲渡所得税を計算・申告する際には、以下の点に注意する必要があります。

    居住用不動産の特別控除の特例が適用される場合

    売却する不動産に居住していた場合は、居住用不動産の特別控除の特例(租税特別措置法第31条1項)の適用対象となります。
    この場合、所有期間に関係なく、譲渡所得から最大3,000万円まで控除を受けられます。

    当該特例の控除制度を利用する場合は、確定申告時に当該不動産に居住していたことを証明する資料(戸籍の附票など)を一緒に提出してください。

    空き家の特別控除の特例が適用される場合

    空き家の特別控除の特例とは、相続または遺贈によって取得した家屋または敷地を売却し、かつ一定要件を満たす場合に、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる特例です(租税特別措置法第35条3項)。

    当該特例の控除制度を利用する場合は、売却した空き家の所在地である市区町村役場に「被相続人居住用家屋等確認書」の取得申請を行いましょう。

    また、家屋を売却した場合は、指定検査機関の「耐震基準適合証明書」または「建設住宅性能評価書」を提出する必要があります。

    取得費加算の特例が適用される場合

    取得費加算の特例とは、相続した財産を、相続開始後3年10カ月(相続税申告期限10ヶ月+3年間)以内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる特例です(租税特別措置法第39条)。

    当該制度を利用する場合、取得費に加算できる金額の計算明細書を税務署または国税庁から入手して、自身で記入する必要があります。

    遺産分割協議書の書き方に注意

    換価分割を行う場合、被相続人名義のままでは売却手続きができないため、相続人の名義に変更した上で売却します。

    相続人名義に変更する際に、共同相続人全員の共有とするか、相続人の代表者の単独名義にするかを遺産分割協議で決定して、遺産分割協議書に明記しなければなりません。
    また、売却代金を贈与とみなされないために、いずれの場合も「換価分割を行うため」という文言を入れるようにしてください。

    【共有名義にする場合の遺産分割協議書記載例】

    第〇項 財産目録に記載の不動産は、換価分割を行うため、相続人甲及び相続人乙がそれぞれ法定相続分の割合にて共有取得するものとする。
    第〇項 相続人甲及び相続人乙は、共同して前項の不動産を売却し、売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残額を、それぞれの共有持分割合の通りに取得する。

    【代表者単独名義にする場合の遺産分割協議書記載例】

    第〇項 財産目録に記載の不動産は、換価分割を行うことを目的として、相続人甲が取得する。
    第〇項 相続人甲は、前項の不動産を速やかに売却し、売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を、それぞれの共有持分割合の通りに分配する。

    まとめ

    換価分割は、相続した不動産を売却して代金を公平に分配したい場合には適していますが、売却や相続登記、譲渡所得税が生じる場合の確定申告など、かなりの労力がかかります。

    また、手続きを相続人自身で行うと、ミスがあったときに税法上のペナルティを受けることや、相続人間でトラブルが起こる可能性もあります。

    換価分割を検討される場合は、弁護士・税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

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