この記事でわかること
- 相続税の未申告は必ずばれる
- 相続税調査は贈与税調査にもなる
- 罰金として重加算税が課される場合が多い
- 遺産分割で困ったときには相続弁護士に相談
相続開始は、「被相続人が死亡した日」または 相続人が「被相続人の死亡」を知った日から起算されます。
そして相続人たちは遺産をどのように分けるかを協議し、相続税申告へ向かっていきます。
ところが、相続税を納めたくないから、悪知恵を絞ってうまく隠して、ばれないと思ったら間違いです。
相続税の無申告に関するペナルティの厳しさを解説します。
目次
相続税の未申告がばれる理由
相続税の未申告がばれる理由は、調査権限が国家にあるからです。
国家権力は、調査対象を絞って公的機関、金融融機関などの民間機関に調査権を行使できますから、調査協力を拒む機関は存在しません。
税の公平負担もあり、真面目に納税してきた納税者に対して、不公平なことができない仕事が、権力機構の職務であり、権限が委ねられているからです。
未申告をあばくのは税務調査から
税務調査は、租税法律主義に基づくため、法令を逸脱する調査は許されません。
相続税は、法改正により、相続税控除額が減額されたり、配偶者居住権が創設されたりと、より複雑になってきています。
このことから、相続案件における調査は増加傾向にあります。
国家権力側の税収確保の面から考えるとき、相続税収は稼ぎ頭の一つになっています。
未申告をあばくために税務調査があるといっても過言ではありません。
権力側が行う税収確保は国家財政の歳入面からすると、税の公平なる徴収に繋がるため、未申告は申告・納税義務違反と判断され、法令に引っかかる悪事をあばくために調査権限があるといえます。
贈与税と抱き合わせて調査される
相続税調査は贈与税調査と一体化します。
税務署セクションでは相続・贈与に関して、資産税部門が担当しますから、同じ部門で対処する業務になっているため、セクショナリズムの連絡・連携不足は考えにくい実情です。
相続税を納めたくないから、相続財産を生前贈与したり、不動産賃貸業に切り替えて、節税するやり方はよくあります。
ところが、相続税より生前贈与を理由として取られる場合もありますから、注意してください。
タンス貯金などもばれる
税務署は、情報収集・資料を集め、ターゲット(調査対象者)に「お尋ね」通知を送達して、返信された情報を集約してから臨場します。
相続財産のなかで、特に把握しにくい財産は現金です。
現金の隠しどころは、タンス貯金や隠し金庫だけではないことを調査官はよく知っていますから必ずばれます。
手渡しならば、ばれないと思うでしょうが、相続人関係者などから情報が流れてしまっていたとしても、調査対象者は知る由もありません。
タンス貯金は現場調査しか判明できない
銀行調査と違い、タンス貯金は現場を調べなければ判明しませんから、税務調査官は相続が発生した家に臨場することになります。
調査官は臨場すると、まず仏壇の故人に線香をあげ挨拶し、調査開始を行う場合が多いです。
聞き取り調査が始まりますと、相続人は黙っておけば、ばれないと思いがちになります。
また、調査官は隠し場所をよく知っていますが、任意調査の段階では強制力を実行できません。
しかし、強制調査になりますと、捜索手続きを踏んでいますから、相続人の許諾は不要で、令状を見せてガサ入れを実行します。
タンス貯金の隠し場所の例とは
現預金は、郵貯や銀行口座になければ、必ず手元に隠していると調査官は睨んでいます。
株券などの債券も同じ扱いです。
タンス貯金だからといって、タンスに隠すだけではありません。
仏壇の中、隠し金庫、畳の下や天井裏など、家の中には多くの隠し場所があります。
調査官のノウハウは過去の事例に基づき、多方面に渡る調査箇所をよく知っています。
家の中をあら捜しさせられる状態になりますから、当初から正直に言ったほうが、よほどマシだったという結果になります。
税務署から「お尋ね」が来なくても注意
税務調査は「お尋ね」通知が届くところから、相続人たちは調査対象になっていると知ります。
しかし「お尋ね」通知書が届かなくても、いきなり訪問・調査することは税務署にはできます。
なぜなら、「お尋ね」通知書は法的にはアンケート調査と考えられているため、相続人宅に突然、調査訪問を行うことができます。
ただし、強制捜索令状が示されない限り、まだ、あくまで任意調査段階です。
「お尋ね」がなくても調査される理由
市役所などの地方自治体は、提出された死亡届の有無を税務署に提出しなければならず、調査側は被相続人の死亡を知りますから、相続人を調査対象に選定します。
自治体は、固定資産税に関係する不動産など財産調査、戸籍上の親族の関係資料提供などにも協力しなければなりません。
「お尋ね」は自治体が提供した死亡届を根拠とするアンケート調査ですから、税務署にとって義務ではありません。
だからこそ、予告なしで任意調査を実行できる法的仕組みがあります。
任意調査は、法人税・所得税調査と同じく、突然なる訪問は法的に許されています。
「お尋ね」より、先に財産調査されている
税務調査は、臨場し聞き取り調査を行う前、すでに調査対象者(相続人)の財産資料を握っています。
相続人宅に訪問する理由は、聞き取り調査、家の中の調度品に高価な物(書画骨董品の類など)を観察
チェックする必要があるからです。
訪問は、すでに調査済みの資料にはない端緒があるかどうか目視で確認するためであり、調査の幅を広げるためにあります。
申告しない場合のぺナルティ
相続開始から税務署が知るまでにはタイムラグがありますから、相続税を申告せずしてばれなかったという事例はまずありません。
法的には時効期間が関係しますが、国税側が知ったとき、必ず時効中断措置を取ってきます。
時効期間経過後まで、ばれなかったという事例はありません。
結局、相続開始から税務調査開始の間における年月が長いほど、ペナルティとして驚くべき納税金額を決定されます。
税務調査は法定納期限のあとに実行されますから、調査が入った時点において、すでに加算税と延滞税は課税計算式に乗っている仕組みです。
本税だけではなく、重加算税と延滞税を徴収
税には、本来納めるべき本税、罰金の性格を持つ加算税(悪質と判断されれば重加算税)、利息に相当する延滞税があります。
加算税には、過少申告加算税、未申告ですと無申告加算税になります。
国税側は、未申告の場合、悪質なる脱税と認定したがります。
「仮装隠蔽」したと判断されれば40%の重加算税を決定してきます。
法制度による悪質とは、「故意または重大なる過失」があるかどうかで判断されます。
租税法律主義といっても、無理な課税決定も少なくなく、未申告は悪質と見なし重加算税を決定する傾向はあります。
相続税だから重加算税を課税されやすい
相続税に関して、重い罰金として加算税を科せたら、今後二度と悪質な「仮装隠蔽」はしないだろうという法的抑止効果は、説得力としては弱いです。
なぜならば、相続人にとって、相続税を受け取るのは一生のうち、何度あるでしょうか。
年に一度だけという、所得税や法人税とはまったく違う申告・納税義務です。
だからこそ、重加算税を決定されやすい理由があります。
正しい申告が一番の節税
税務調査が入って、追徴課税されると加算税・延滞税を含め、多額の納税を強いられてしまいます。
相続税は計算過程において、税理士などに黙って財産を隠すと、まったく納税額が変わってしまいます。
少しの計算ミスでもあれば、税務署があばいて否認し、多額の税金を取ろうとします。
生前贈与など節税対策はありますが、正しい申告が一番の節税対策です。
税務申告の基本は自主申告・自主納税ですが
税務申告は自主申告・自主納税です。
しかしそれは建前論です。
相続税を納税したくないからといって、未申告状態にしておくと、自動的に調査対象に選定されます。
税法の建前だけで貫くと、行政機関は執行権限を失いかねませんから、調査実務が存在しています。
いうなれば、日本国憲法において、「納税の義務」があるという根拠が成り立つからです。
自主申告・自主納税を行うには専門家の手助けが必要です。
嘘をつかないことと、信頼できる専門家を選んでください。
申告前の遺産分割で揉めている場合は、相続弁護士に依頼
相続税申告には多くの書類を添付する必要があります。
専門性が高い知識が要求されます。
税理士は申告計算のプロですが、遺産分割協議で揉めると思ったら、相続弁護士に依頼してください。
協議が整わなければ、申告計算できませんから、揉めている間、すぐに申告期限がやってきます。
法定納期限が過ぎると、自動的に未申告状態になりますから、注意を要します。
まとめ
相続税の無申告は、税務調査において、重加算税の賦課決定が行いやすいものの一つです。
相続税と同時に生前贈与まで調査でき、税額が多額になる場合があるからです。
税務署側は財産調査のプロですから、相続関係に強い弁護士を選ぶことがよいでしょう。
結果として、正しい申告をすることが一番の節税になります。