この記事でわかること
- 遺産整理とは何をどのように進める手続きかがわかる
- 遺産整理をする際に誰に依頼したらいいかがわかる
- 遺産整理を行う際に発生する費用の相場を知ることができる
遺産整理とは,相続が発生した場合に、亡くなった人が保有していた財産を確認し,相続人間で分配し,相続税申告をしたり,名義変更など各種の手続きを行ったりするという、相続にともなう手続き全般を指す言葉です。
なお,遺産整理は,一般的に使われる言葉ではありますが,法律上の用語ではありません。
遺産整理を行う必要があることは多くの人が理解しているかでしょうが、実際にどのように進めればいいのでしょうか。
また、遺産整理を専門家などに依頼すると、どのようなメリットがあり、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
ここでは、遺産整理の手続きに関して解説していきます。
目次
遺産整理とは
遺産整理とは,相続財産を確認し,相続人間で分配し,相続税申告をしたり,名義変更など各種の手続きを行ったりすることです。
相続した財産の金額が大きな場合には、相続税の計算を行い、申告書の提出と相続税の納税を行わなければなりません。
被相続人が残した遺産の中には、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産があるかもしれません。相続財産の確認には,マイナスの財産の確認も含まれます。
この場合には、相続放棄や限定承認などを選択すべき場合もあり、これも遺産整理の手続きの一環といえます。
遺産整理の手続きには期限があるものも多いため、期限内に確実に行えるように準備しなければなりません。
遺産整理の流れ・必要書類
遺産整理を行う際には、どのような手順で進めていけばいのでしょうか。
その時にどのような書類が必要になるのかも含めて、確認していきましょう。
遺言書の有無を確認する
被相続人が作成した遺言書がある場合、その遺言書に従って相続に伴う名義変更などの手続きをしなければなりません。
そのため、まず遺言書があるかないかの確認を行います。
遺言書がある場合は、その遺言書に従って遺産を相続する人が決定され、名義変更などの手続きを進めることとなります。
なお、遺言書の有無を確認するには、様々な場所を調べる必要があります。
というのも、遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があるからです。
ただ、一般的には秘密証書遺言が作成されていることはほとんどなく、自筆証書遺言か公正証書遺言で作成されています。
自筆証書遺言は被相続人の自宅、特に自室の他、銀行の貸金庫などに保管されている可能性があります。
また、自筆証書遺言は、自筆証書遺言書保管制度を用いて法務局などに保管されている可能性もあります。
自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所での検認の手続きを行わなければならず、すぐに開封してはいけません。
また、公正証書遺言は公証役場で作成され保管されているため、公証役場に保管されていないか、確認するようにしましょう。
公正証書遺言として作成されている場合は、検認の手続きは不要であり、すぐに遺言書の中身を確認することができます。
これらの場所を探して遺言書がなければ、被相続人は生前に遺言書を作成していなかったと判断することができます。
遺言書がなければ、すべての遺産は相続人同士の話し合いである遺産分割協議により、遺産を分けることとなります。
相続人を調査する
被相続人が亡くなり相続が発生した時に、遺産を分割する際のポイントとなるのは、誰が法定相続人になるのかということです。
誰が相続人になるのかを正しく把握しないと、相続人の法定相続分や遺留分の計算を誤る原因となります。
そのため、遺言書の有無にかかわらず、誰が法定相続人になるのかを調査する必要があります。
被相続人の子供など相続人となる人の情報を把握しているつもりでも、必ずしもすべてを正しく把握しているとは限りません。
そのため、戸籍謄本などを取り寄せて、誰が相続人になるのかを正しく把握する必要があります。
法定相続人となる人の決め方
法定相続人となる人は、被相続人との関係によって決まります。
配偶者は、原則として、すべての相続において法定相続人になります。
一方、配偶者以外の法定相続人については、下記の順に該当する人がいないかどうかを確認していきます。
- ①被相続人の子
- ②被相続人の直系尊属
- ③被相続人の兄弟姉妹
たとえば、被相続人に子がいるのであれば、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹が法定相続人になることはありません。
子がいなくても、その子(被相続人の孫)がいると代襲相続が発生することとなります。
誰が法定相続人になるのか、慎重に調査を進める必要があります。
相続人の調査に必要な書類
誰が法定相続人になるのかを決定するためには、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」が必要になります。
これは、被相続人が婚姻しているのか、子がいるのか、何人兄弟なのかといった情報を確認できる書類です。
調べてみたら誰も知らなかった隠し子がいた、あるいは前妻との間に子がいたということもあり得ます。
他の場面でも必要になる書類なので、必ず取得して確認しましょう。
相続財産を調査する
被相続人が亡くなった時に保有していた財産は、基本的にすべて相続財産になります。
相続財産のうちは、名義変更を行うべきものについては、相続人の名義に変更する手続きを行う必要があります。
また、相続税の対象となる財産は相続税評価額を求め、相続税の計算を行う必要があります。
被相続人が保有していた財産は、配偶者や子であってもすべてを把握していない場合もあります。
被相続人の部屋にあるものや郵送物、過去の確定申告などの情報から必要な書類を集め、どのような財産があるか確認しましょう。
相続財産になるもの・ならないもの
相続財産になるものとしては、以下のようなものがあげられます。
相続財産になるもの
- 現金や預貯金
- 土地や建物などの不動産
- 上場株式や投資信託などの有価証券
- 自動車
- 貴金属や骨とう品
一方、相続財産に含まれないものとして、以下のようなものがあります。
相続財産に含まれないもの
- 受取人が指定された生命保険金
- 受給者が特定された死亡退職金
- 相続人に対する遺族給付金
- 一身上の権利義務(養育費の請求権など)
- 香典
また、墓石や祭具などの祭祀財産は、相続税がかからない財産として規定されています。
これらの祭祀財産は、相続とは異なる形で承継されるものとされています。
相続財産の調査に必要な書類
相続財産には色々な種類のものがあるため、それぞれに必要な書類が異なります。
一例として、以下のようなものがあげられます。
預貯金に関する書類 | 通帳のコピーや残高証明書 |
---|---|
不動産に関する書類 | 登記簿謄本や固定資産税課税明細書 |
有価証券に関する書類 | 証券会社からの残高明細 |
相続が発生した時の残高や、相続税評価額を確認するための書類を準備しておきましょう。
債務の調査をする
本来は相続財産といった場合、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産の両方を含みます。
しかし、相続財産の調査を行っている間に、借金など債務の調査を忘れてしまうことがあります。
そこで、相続財産の調査を行った後に、借金など債務の調査を行うようにしましょう。
債務の調査を行うには、銀行の残高証明書などを使って、相続発生時の残高を調査する必要があります。
もし債務の残高がプラスの財産の残高を上回るような場合は、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。
なお、被相続人が借金を残していた場合に、相続人が借金を返済する際は注意が必要です。
借金を返済すると単純承認が成立し、その後に相続放棄や限定承認ができなくなることがあります。
借金の額が非常に大きな場合は、相続放棄や単純承認の手続きを進めるため、借金の返済ができないことを伝えておきましょう。
遺産分割協議書を作成する
相続人と相続財産の内容がすべて確定したら、すべての相続人による話し合いを行います。
この話し合いのことを遺産分割協議といい、その相続財産を誰が引き継ぐのか、財産ごとに具体的に決定していきます。
すべての相続財産について、誰が引き継ぐのかを決定したら、その内容を遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書には、具体的な財産の名称など、財産を特定する内容を記載します。
また、その相続財産を誰が相続するのかを記載します。
なお、遺産分割協議書に記載された内容は、すべての相続人がその内容に合意していなければなりません。
相続人がその内容に合意していることを証明するため、遺産分割協議書には署名・押印されます。
なお、遺産分割協議書は相続税申告書の提出の際には、写しを税務署に提出しなければなりません。
また不動産の相続登記や、銀行での払い戻しの手続きを行う際には、遺産分割協議書が必要となります。
各相続人が必要になる書類であることから、相続人の人数分作成しておくのがおすすめです。
名義変更の手続きを行う
遺産分割協議書を作成したら、その遺産分割協議書を使って、様々な財産の名義変更などの手続きを行います。
土地や建物などの不動産については、相続登記を行い、その不動産の所有者の登記を実際に相続した相続人に変更します。
また、被相続人名義の預貯金口座は解約となり、相続人の口座に払い戻しを受ける必要があります。
有価証券については、被相続人名義から相続人名義に変更する手続きを行います。
さらに車なども、その名義を相続人に変更するための手続きを行う必要があります。
被相続人の借金を相続し、相続人がその借金の返済を行うこととした場合も、名義変更の手続きは発生します。
借金を引き継いだ場合は、銀行での手続きにより借金の名義人を変更します。
また、土地などの不動産を借金の担保としている場合は、抵当権設定登記の変更手続きを行わなければなりません。
遺産分割協議により遺産を引き継ぐ人を決定した場合、遺産分割協議書がなければ名義変更ができません。
遺産分割協議書を作成したら、できるだけ早く名義変更の手続きを行うようにしましょう。
名義変更に必要な書類
遺産分割協議書を使って名義変更などの手続きを行う場合、遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書が必要とされる場合が多いといえます。
また、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本も必要な場合があります。これについては、
登記官の認証した法定相続情報一覧図によって代用が可能な場合もあります。
これらは、どの手続きにおいてもまず間違いなく必要とされるため、事前に準備しておくようにしましょう。
銀行で預貯金口座の払戻しを受ける際には、遺産分割協議書などの他、被相続人・相続人の戸籍謄本や住民票が必要になります。
この他銀行の用意している書類に記載して、払い戻しの手続きを進めていきます。
不動産の相続登記を行う際は、基本的に司法書士に依頼することが多いでしょう。
被相続人・相続人の戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などの書類を準備する必要があります。
法務局に提出する申請書などの書類は、法務局のホームページや法務局の窓口で取得することができます。
有価証券の名義変更を行う場合は、各証券会社において株式名義書換請求書などの書類が準備されています。
この書類に必要事項を記載して、証券会社での名義変更手続きを進めていきます。
相続税の申告を行う
相続税は、すべての相続において発生するわけではありません。
そのため、まずは相続税が発生するかどうかを確認する必要があります。
また、相続税が発生しなくても、相続税の申告だけは行わなければならない場合があるので、その点も注意が必要です。
相続税の計算においては、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」により計算される基礎控除の額があります。
相続財産の額が基礎控除の額を下回る場合は、相続税の申告義務も納税義務もありません。
また、相続財産の額が基礎控除の額を上回る場合でも、特例などを利用して相続税が発生しないことがあります。
この場合は、相続税の納税義務はありませんが、相続税の申告書だけは税務署に提出しなければなりません。
相続税申告の必要書類
相続税の申告を行う際は、番号確認書類としてマイナンバーカード(裏面)あるいは個人番号の通知カードの写しを添付します。
また、身元確認書類としてマイナンバーカード(表面)あるいは運転免許証、パスポートなどの写しを添付します。
この他、法定相続情報一覧図か、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を提出します。
さらに、遺言書の写し又は遺産分割協議書の写しを添付する必要があります。
なお、相続時精算課税制度、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例などの適用を受けた人がいる場合は、別に書類が必要です。
遺産整理の依頼先4つ
遺産整理をすべて相続人だけで行うのは、かなり大きな負担となります。
そこで、遺産整理を第三者に依頼して行うことがあります。
どのような依頼先があるのか、その特徴などを確認しておきましょう。
弁護士
弁護士に遺産整理を依頼すると、相続人間で発生するトラブルに全面的に対応してもらうことができます。
そのため、トラブルを未然に防ぐことができる他、仮にトラブルが発生しても解決に導いてもらうことができます。
弁護士に依頼することのデメリットと考えられるのは、費用が高くなる傾向にある点です。
この点は、後ほど解説していきます。
弁護士に遺産整理を依頼することで、トラブルの対応の他にも様々な内容を専門家として対処してもらえます。
- 遺言書の検認手続き
- 相続放棄の手続き
- 相続人や相続財産の調査
- 遺産分割協議の調整
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金や株式の名義変更
司法書士
司法書士も法律に関する専門家ですが、特に登記について司法書士は主要な専門家といえます。
また、裁判所に提出する書類の作成なども依頼できるため、裁判所での手続きを控えている方は、選択肢となり得ます。
司法書士に遺産整理を依頼するメリットは、多くの人に関係する相続登記を一任することができる点です。
相続登記は2024年4月から義務化されるため、司法書士の果たす役割は大きなものとなります。
一方、司法書士は法律の専門家ですが、紛争解決のために何でもできるというわけではありません。
そのため、遺産分割の際にトラブルが発生した場合には、弁護士に依頼する必要が出てくるケースもあります。
司法書士に遺産整理を依頼すると、相続登記の他、相続人や相続財産の調査、家族信託の設定などで多くを頼れる存在となるでしょう。
税理士
税理士は税金に関する専門家であり、特に相続税などの税金について主要な専門家といえます。
相続税が発生する場合だけでなく、相続税が発生するかどうか分からない場合にも、税理士に遺産整理を依頼する意味はあります。
税理士に遺産整理を依頼するメリットは、相続税の計算を確実に行うことができる点です。
相続税の払い過ぎを防ぐだけでなく、本来支払うべき相続税の計算を適切にしてもらうことができます。
その結果、相続税の申告漏れにならないよう、適切な処理を依頼することができます。
税理士に遺産整理を依頼するデメリットは、税理士のできる業務がそれほど多くないことです。
特に遺産分割協議で揉めた場合、その解決は弁護士に依頼しなければならなくなります。
また相続登記は司法書士に依頼する必要があり、いずれも税理士の専門外となります。
税理士に遺産整理を依頼した場合は、相続財産の調査や相続税の申告などを依頼することができます。
銀行
銀行、特に信託銀行は、遺産整理などの相続手続きをサポートするサービスを積極的に行っています。
そこで、銀行に遺産整理を依頼するという選択をする方もいるでしょう。
銀行に遺産整理を依頼するメリットは、相続後の財産の活用方法について銀行からのアドバイスをもらえる点です。
信託銀行との接点は少なく、遺産整理を依頼するまではまったく関わりがないという人も多いでしょう。
こうした場合でも、遺産整理を依頼することで信託銀行との接点を作っておくことができます。
またその他のメリットとして、相続の手続きが格段に楽になることがあげられます。
様々な手続きはすべて銀行から専門家に依頼されるため、相続人の負担は最小限で済みます。
相続登記、相続税の申告・納税、相続人同士の争いなどに、銀行は直接か関わることはありません。
しかし、必要な手続きのたびに銀行から専門家に依頼され、相続人は自身で依頼先を探す必要はありません。
銀行に遺産整理を依頼するデメリットは、費用負担が大きくなる傾向にあることです。
相続人としては楽に遺産整理を進められる一方、費用の負担が大きくなるため、費用と業務のバランスを考えておきましょう。
遺産整理の依頼先別の費用相場
遺産整理を依頼すれば、その分の費用を支払わなければなりません。
依頼先によってどれくらい費用に違いがあるのか、その相場を解説していきます。
弁護士
弁護士に遺産整理を依頼した場合、様々な業務を依頼することができ、それぞれについて費用が発生します。
主な依頼内容と、それに対する弁護士費用の一例を挙げると以下のようになります。費用は、具体的な事例や依頼する弁護によって異なりますので、ご注意ください。
依頼内容 | 費用相場 |
---|---|
相続放棄 | 10万円程度 |
相続人調査 | 10万円程度 |
相続財産調査 | 20~30万円程度 |
遺産分割協議書の作成 | 10万円程度 |
相続財産の名義変更(不動産以外) | 10万円程度 |
相続に関するトラブルが発生した場合は、これとは別に費用がかかります。
着手金として20~200万円程度、報酬金として4%~16%の割合を乗じて計算された金額の費用が発生するのが通例です。
なお、弁護士に対する費用の額は、他より高くなる傾向にあります。
ただ、相続トラブルを解決できるのは弁護士だけであるため、どうしても大きな金額になってしまいます。
司法書士
司法書士に遺産整理を依頼した場合、相続登記についての報酬の支払いを請求されることとなります。
自宅だけを相続登記した場合は、一例として、5~8万円程度の費用となります。
ただし、遺産分割協議書の作成や戸籍収集代行、相続人や相続財産の調査を依頼すれば、その費用は大きくなります。
同じような不動産を所有している場合でも、相続人が大勢いる場合は、費用が大きくなる可能性があります。
また、相続登記だけを依頼した場合でも、対象となる不動産の数が多くなれば、司法書士報酬も大きくなっていきます。
税理士
税理士に遺産整理を依頼した場合、相続税の申告に関する報酬としての請求を受けることとなります。
税理士の報酬金額は、遺産総額の0.5%~1%程度が目安になるといわれています。
この目安にしたがうと、たとえば、遺産総額が2億円の場合、報酬の額は100万円~200万円になる計算です。
ただし、相続税の申告の難易度には違いがあり、複雑なケースではこの金額の報酬が加算されることがあります。
逆に、非常にシンプルで時間を要しない申告であった場合は、報酬が低額なる可能性もあります。
銀行
銀行に遺産整理を依頼した場合は、相続財産の合計額に一定の率を乗じて、銀行に対する費用の額を計算します。
以下にあげる表は、その費用の計算の一例です。
相続財産の額 | 費用相場 |
---|---|
5,000万円以下 | 2.2% |
5,000万円超1億円以下 | 1.65% |
1億円超2億円以下 | 1.1% |
2億円超3億円以下 | 0.88% |
3億円超5億円以下 | 0.55% |
5億円超 | 0.44% |
相続財産の合計額が2億円の場合、銀行に対する費用は220万円となります。
遺産整理をする際の注意点
遺産整理を行う際に、その方法を間違えてしまうと大きな損をすることがあります。
そこで、遺産整理で失敗しないために注意すべき点をいくつかご紹介します。
相続の内容にあった相続を行う
相続が発生した場合、相続人は当然のように遺産を引き継ぐと思っているかもしれません。
しかし、実際は遺産を引き継ぐ以外の選択肢もあり、状況次第では他の選択をする方がいい場合もあります。
相続の方法として定められている3つの方法は、以下のとおりです。
①単純承認
被相続人の遺産を、相続人全員で引き継ぐ相続の方法です。
一般的に遺産を相続するという場合、この単純承認を指します。
プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続人が引き継ぎます。
そのため、相続人にとって引き継ぎたくない財産がある場合には、単純承認すべきか検討する必要があります。
②限定承認
被相続人の遺産を、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も引き継ぐこととなる相続の方法です。
どうしても引き継ぎたい自宅などの遺産がある場合、借金も引き継ぐこととなる代わりに、自宅を残すことができます。
限定承認の手続きは、相続人全員で一緒に行うものとされています。
一部の相続人だけで限定承認することはできません。
③相続放棄
被相続人の遺産をまったく相続しないこととする手続きです。
相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったものとみなして、その後の手続きを進めることとなります。
単独で相続放棄を行うこともできるため、債務を引き継ぎたくない場合、あるいは相続トラブルを回避するために行われます。
この3つの方法のいずれかを選択して、相続の手続きを行います。
限定承認や相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要であり、何もしなければ、一定期間経過後、単純承認が自動的に成立します。
法定相続割合を目安として遺産分割を行う
遺産分割の方法は、相続人同士の話し合いによって自由に決定することができます。
ただ、何らかの目安がないと、どのように話し合いを進めればいいか、そのきっかけもありません。
そこで参考にすべきものが、法定相続割合です。
法定相続割合は、誰が法定相続人になるかが決定すれば、自動的に計算できるようになります。
誰が法定相続人になるのかを確認したら、各相続人の法定相続割合を計算するようにしましょう。
期限を守る
相続に関する手続きの多くは、手続きを行うべき時期が定められています。
特に重要なのは、相続放棄や限定承認の期限(自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内)、準確定申告(相続開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)などです。
また、相続税の申告や納税の期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)も、相続の手続きに関する重要な期限です。
期限を守らないと、手続きできなくなるものや特例などの恩典が適用されなくなるものもあります。
その結果、相続人は大きな損をしてしまうこともあるため、必ず期限を守るようにしましょう。
まとめ
相続が発生したら、被相続人の遺産を相続人が引き継ぐための様々手続きを行わなければなりません。
しかし、相続の手続きは面倒なものも多く、また話し合いが必要なため、なかなか思い通りに進まないこともあります。
ただし、こうした手続きを進めなければ、その後の相続放棄や限定承認の判断、あるいは相続税の申告に間に合わない可能性があります。
必ず期限を守って、早めにこうした手続きを進められるように準備をしておきましょう。