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最終更新日:2022/12/9

遺言書よりも効力あり!遺留分侵害額請求が遺言書を覆すケース

弁護士 山谷千洋

この記事の執筆者 弁護士 山谷千洋

東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/yamatani/

この記事でわかること

  • 遺留分侵害額請求権の基本的事項ついて理解できる
  • 遺留分侵害にまつわるトラブルの予防が自分でできる
  • 遺留分の計算の方法についてわかる

遺留分侵害額請求とは、どのような制度なのでしょうか。

場合によっては、遺言書を覆してしまうこともあります。

今回は、遺留分請求とはどのような制度なのかについて、ご紹介します。

どうすれば遺留分請求をされなくて済むのかということも、考えていきましょう。

遺留分・遺留分侵害額請求とは?

たとえばという話でご説明します。

生前まで親の面倒を自分が見ていて、自分こそきちんと遺産をもらうべきだと思ったとしましょう。

親もあなたに感謝していて、財産を全部あなたに渡そうとしていました。

具体的には、自分が死んだら、残った財産は全部息子の○○に渡すということが、はっきりと遺言書に書いてあったとしましょう。

「自分が死んだときには、息子の○○に全部残してあげて欲しい」ということは、その他の相続人は一銭も遺産をもらえないことになってしまいます

遺言書を書いた本人ももちろんそのことについては了承済みです。

むしろ、何ももらえない人が出るけれども、遺言書に書いたのだから大丈夫だろうと思っていたようです。

実際に親が亡くなってしまい、遺産相続の話し合いの場になりました。

あなたは話し合うまでもなく、当然自分が全てもらえるものと思っています。

ところが、遺産相続についての話し合いでは、よく聞くとそれぞれが一定金額を自分がもらうべきであると主張していて、両者譲る見込みがありません。

何ももらえない側の人は言いました。

「自分には、遺留分があるので、遺留分だけは絶対にもらえるはずだ!くれないなら訴えてやる」。

さて、遺留分とは一体何のことを言っているのでしょうか。

遺留分とは

遺留分とは、簡単に言えば、遺産相続の中でも、絶対にもらえる最小限の部分を言います。

遺留分はどのように計算するのかというと、まずは法定相続人の人数と、法律に規定された割合に沿って、法定相続分を計算します。

法定相続分とは、法律にのっとって分けた場合についての、分け方です。

法定相続分通りに絶対に分けなければいけないということでは決してありません。

遺留分は、最低限もらえる遺産のことを言います。

冒頭部分で出てきた遺言書は、最低限もらえる権利の部分を侵害していると言えます。

というのも、遺留分すらもらえない人が出てきている状態なので、何ももらえなかった人としては最低限の部分をもらう権利を主張できるということなのです。

最低限もらえる部分については、民法に以下の通り規定されています。

総体的遺留分は相続財産の1/2(配偶者や子供が含まれる場合)、もしくは相続財産の1/3(相続人が直系尊属のみの場合)となります

(遺留分の帰属およびその割合)
第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

引用:電子政府の総合窓口 e-Gov 民法

注意すべき点としては、兄弟姉妹には遺留分がないということです。

たとえば、夫や妻、子供もいないままにお亡くなりになった人がいたとして、その人の親もすでに他界しているということになれば、兄弟姉妹の間での相続になります。

兄弟姉妹間での相続には、遺留分はありません。

ご注意ください。

遺留分の算定方法については、以下の通り規定があります。

被相続人が相続開始のときに置いて有した財産の価値に、贈与した財産の価値を加えて、債務を差し引きます。

(遺留分の算定)
第千二十九条 遺留分は、被相続人が相続開始のときにおいて有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。

2 条件付きの権利または存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

引用:電子政府の総合窓口 e-Gov 民法

被相続人がした贈与についても、遺留分侵害額請求の計算の中に入れることができます。

第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

引用:電子政府の総合窓口 e-Gov 民法

遺留分請求権者は、遺留分を保存するために、贈与の減殺を請求できます。

(遺贈または贈与の減殺請求)
第千三十一条 遺留分権利者およびその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈および前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

引用:電子政府の総合窓口 e-Gov 民法

遺留分侵害額請求とは

遺産相続について、最低限もらえる部分を主張することを、遺留分侵害額請求と言います。

遺留分侵害額請求は、本来持っている権利を行使することですから、たとえば事前に遺留分侵害額請求をしないでほしいとお願いすることはできたとしても、遺留分侵害額請求をやめさせることはできません。

遺留分の時効は、相続があったことを知ったときから1年、または相続の発生から10年です。

つまり、いつまでも遺留分請求される可能性が残るという訳ではなくて、相続があったことを知ってから1年か、相続が発生してから10年経過してしまえば、遺留分侵害額請求をすることはできなくなります

遺留分侵害額請求が遺言書よりも強い効力を持つ場合

遺留分侵害請求は、権利ですので、遺言書よりも強い効力を持つことがあります。

具体的には、遺留分を侵害するような遺言書であった場合については、遺留分を請求することがあります。

最低限もらえる部分についての権利であって、法律で守られていますから、遺留分の請求の効力は強いのです。

遺留分侵害をするような遺言書よりも、遺留分侵害請求の方が強いので、たとえば誰か一人に全部財産をあげるような遺言書があったとしても、遺留分についてはそれぞれの相続人がもらうことができます。

遺留分を巡るトラブルを回避するために気をつけたいこと

協議の際に気をつけたいこととしては、遺留分を放棄するように相続人に迫らないことです。

遺留分という権利があることはきちんと認めつつ、どのような方法であれば納得してもらえるのか、道を探りましょう。

たとえば、遺産が家しかないという場合で、家に住む予定の子供に、親が家をあげたかったとします。

そのような意図で親が書いた遺言書でしたが、何ももらえない人からすれば不公平感があります。

家は分けにくい財産ですから、遺留分請求をされたら、もう家を売却して得たお金で分け合うしかなくなるかもしれません。

それだと、親の意図は達せられなくなります。

そこでどうするかというと、遺産が家しかないので、他の方法で何ももらえない人にも何かしら行き渡るように手配しましょう。

たとえば、家を相続する人がいくらか相続できない人にお金をあげるなどして、納得してもらえるように努力することはできます。

また、遺留分を主張することで、親が本来思っていたことと違うことになってしまうことについても、相手の心情に訴えかけることができます。

遺留分でモメないための遺言書の書き方

親が遺言状を作成する際に、後の遺留分のトラブルを避けるための方法としては、遺留分を侵害しない形で遺産の分割方法を決めることです。

確かに、遺言書は一方的なものなので、誰か特定の一人に財産を一切やらないとか、逆に誰かだけに財産をたくさんあげるといった内容を書くこと自体は自由です。

そのような遺言書を残すことはできます。

しかし、それでは後から遺留分侵害額請求をされて、遺言書通りの結果とならないことがあります。

最初から遺留分侵害額請求をされないように、遺言書にもひと工夫しておくのがベターです。

たとえば、何ももらえない人が出ないように、遺留分侵害額請求分は、財産を分配しておくと良いでしょう。

家は長男に残すが、遺留分侵害額に相当する部分は保険金として入るように準備しておくこともできます。

もし遺留分侵害請求をされたとしても、お金で解決できるということです。

遺言書に、付言事項を書いておくのも良いでしょう。

付言事項の部分については、法的な効力はありません。

しかし、効力はないものの、どうしてそのような内容の遺言書になったのかということについては説明を尽くすことが可能です。

なぜ、自分には遺産がもらえないのかと疑問に思ってしまう相続人に対して、このような理由で全財産を誰々にあげるのだということを説明できます。

付言事項では、文句をつらつらと書いてはいけません。

あくまで、残される人への感謝と、遺言書への理解を求める内容にしてください

兄弟間で遺留分トラブルが発生した時の対応策

兄弟間で遺留分のトラブルが発生した場合は、まずどうしたら良いでしょうか。

最初に、財産の把握や権利の確認等をします。

決して喧嘩腰になってはいけません。

遺留分を請求してきている相手は、当然の権利を行使しようとしているだけなのです。

兄弟間での遺留分トラブルが発生した場合は、なぜそのような遺言書になっているのかをきちんと説明しましょう。

親の意図としては、こうだったということを理解してもらうのです。

それでもダメそうな場合は、お金で解決する方法を探ります。

遺産の中のお金の部分については兄弟姉妹にあげるなどして、相手に納得してもらいます。

それでもダメな場合ももちろんあります。

遺留分トラブルが長引きそうな場合は、迷わず弁護士に相談してみてください。

いきなり訴訟にせずに、まずは話し合いから、弁護士にサポートをしてもらいましょう

まとめ

今回は、遺留分侵害額請求が遺言書を覆すケースもあるということをご紹介しました。

遺留分侵害額請求は、それほどに強い権利であるということです。

遺留分侵害額請求権を、事前に放棄させることはできません。

放棄する自由はありますが、それは本人が決めることであって、周りが強制するものではありません。

遺留分侵害額請求権を行使されないためには、どうしたら良いのかというところもご紹介しました。

できれば、生前に遺言書を残すところから、遺留分についてはきちんと各相続人へ行き渡るようにしておくことが、本来であればベストです。

しかしそうではなかった場合については、相続人同士の話し合いとなります。

決して喧嘩腰にならずに、なぜそのような内容の遺言書になっているのか、また落とし所としては何を希望しているのかを丁寧に話し合ってください。

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