この記事でわかること
- 遺留分侵害額(減殺)請求について理解できる
- 遺留分侵害額請求を弁護士に依頼した場合の費用相場がわかる
- 費用を抑える方法がわかる
もし、あなたが知らないうちに、あなたの親が「あなた以外の相続人に全部遺産を相続させる」という遺言を書いていた場合、何もしなければ、遺産はすべて他の相続人に相続されてしまいます。
でも、あなたが「遺留分侵害額(減殺)請求」をすれば、少しでも遺産をもらえるかもしれません。
遺留分侵害額請求は自分でも手続きできますが、専門的知識が必要なので、弁護士に依頼するのがおすすめです。
では、遺留分侵害額請求を弁護士に頼む場合には、どのくらい費用がかかるものでしょうか。
目次
遺留分侵害額(減殺)請求とは
遺留分は、 法定相続人に最低限保障される遺産取得分のことです。
遺言で「他の相続人に遺産すべてを相続させる」、あるいは「他人に遺贈する」と書いてあったとしても、遺産を受け取ることが認められています。
この最低限保障されている遺留分を侵害された場合、相続人が他の相続人に請求することができる権利を遺留分侵害額請求権といいます。
遺留分侵害額請求権と遺留分減殺請求権は何が違う?
遺留分侵害額請求権は、2019年の民法改正により規定されました。
改正前は、遺留分減殺請求権という権利が相続人に認められており、遺留分に満たない遺産しか相続できなかった人が主張できました。
この遺留分減殺請求権は、実際の遺産の中から遺留分に満たない分を請求する現物返還が原則とされていました。
例えば、遺留分に満たない財産を受け取るために、自宅の持分の一部を受け取るというような形です。
一方、遺留分に満たない分を現金で請求するのは、例外的な方法とされていたのです。
しかし、すでに他の相続人が手にしている財産を受け取ることは非常に手間がかかり、簡単なことではありません。
そこで、新たに設けられた遺留分侵害額請求権では、金銭請求に一本化されています。
遺留分侵害額請求の弁護士費用の相場
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼しようと思ったとき、一番気になるのが、弁護士費用です。
弁護士に依頼するとどのくらいかかるのでしょうか。
遺留分侵害額請求にかかる弁護士費用の項目は次の通りです。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- その他手数料など
それでは1つずつ見ていきましょう。
相談料
弁護士に遺留分侵害額請求を依頼する場合、まず発生するのは相談料です。
弁護士に相談するのは、弁護士に自身の状況を知ってもらうと同時に、弁護士がどのような人かを知る意味合いもあります。
相談料として、1時間当たり1万円程度の費用が発生します。
時間の区切りを30分として設定していることもありますし、もう少し安い金額に設定している事務所もあります。
また、相談料は無料としている弁護士事務所もありますが、無料となるのは1回30分限りなどと制限を設けているのがほとんどです。
相談料の金額には、はっきりとした相場があるわけではないため、その金額や決め方はまちまちです。
どのような条件になっているか、よく確認してから相談するようにしましょう。
着手金
着手金は、相手方に請求する金額に応じて金額が設定されています。
また、着手金であっても、単に交渉だけで終わるのか、調停になるのかによっても金額が変わってきます。
着手金は請求金額の5%から8%程度で設定されていますが、請求額が300万円以下のように低額の場合は最低額として10万円程度になる場合もあります。
遺産が不動産などの場合は、不動産の評価額で算定されます。
報酬金
遺留分侵害額請求が認められ、他の相続人から遺留分を受け取ることができれば、弁護士に依頼した内容は成功となり、着手金とは別に報酬金を支払う必要があります。
弁護士事務所の中には、着手金がなく報酬金だけとなっている事務所もありますが、この場合は報酬金の金額が高くなります。
報酬金の金額の計算方法は、弁護士事務所によってさまざまです。
獲得した遺留分の金額の10~16%とシンプルに計算する事務所がある一方、遺留分の金額×数%+100万円などとして最低金額を設けている場合もあります。
この計算方法の違いにより、報酬金の金額は大きく変わります。
そのため、事前にどのような計算方法になっているのかを確認しておく必要があります。
報酬金については、相手方からもらえた金額の10~16%程度が設定されています。
その他の費用
着手金と報酬以外にも、相手方への郵便料や必要な書類の取り寄せなどで、実費として数万円かかる場合があります。
ケースバイケースですが、遺産に不動産などがあり、現地調査などが必要な場合は、弁護士の調査料や日当などの実費もかかります。
弁護士費用を安く抑えるための方法
遺留分侵害額請求は弁護士に依頼してでも請求した方がよいとわかっていても、弁護士費用が支払えず断念してしまうこともあるでしょう。
ここからは、弁護士費用を安く抑えるための方法をご紹介します。
こちらの方法を活用し、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼してみましょう。
法律事務所の初回無料相談を利用
多くの法律事務所では、初回無料相談などを行っています。
まずは、無料相談を利用して、請求可能なのかどうか、費用はどれくらいかかるのかなどを相談してみましょう。
弁護士費用は、弁護士が各自自由に決めることができるため、弁護士によって、多少の差があります。
無料相談で話を聞き、トータル費用が安いと思う弁護士に依頼することで、弁護士費用を安く抑えることができます。
また、ある程度自分で交渉し、相続に関する資料や遺産に関する資料を自分でそろえることによって、費用を抑えることもできます。
着手金の分割ができるか相談する
弁護士によっては、着手金の分割をしているところなどもありますので、そういった弁護士を探すこともできます。
ただし、着手金の支払いを分割払いとした場合、利息が加算されることがあります。
利息が加算されれば、分割払いの期間が長くなるほど支払う金額が増えてしまいます。
そのため、分割払いとした場合にどのような条件になるのか、その支払総額はいくらになる見込みなのか、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、着手金を払えない場合に、遺留分侵害額請求により獲得した遺留分の金額から清算できる弁護士もあります。
法テラスを利用する
弁護士費用が工面できない場合は、国によって設立された「法テラス」という弁護士費用を援助してくれる機関があります。
法テラスは一定額以内の収入や財産であれば利用できます。
着手金、報酬金が決められており、通常の弁護士費用よりは比較的安価に設定されています。
また、無料相談や着手金の分割払いもできるので、費用をできるだけ抑えたい場合は利用を検討してみるといいでしょう。
参考:法テラス
遺留分侵害額請求に強い弁護士を探す
費用だけを考えて安い弁護士に依頼しても、結局はうまくいかずにお金をもらえなかった、となってしまっては意味がありません。
また、争いが長期化してしまうと、費用も時間もかかってしまいます。
そのため、遺留分侵害額請求に慣れた弁護士を探すのがおすすめです。
遺留分侵害額請求は、相続に関連する手続きのため、相続に詳しい弁護士を探すとよいでしょう。
まとめ
遺留分侵害額請求とは、遺留分を持つ相続人が、他の相続人に請求することができる権利です。
自分で相手に請求することも可能ですが、相手方との争いや法律的な判断、資料の収集など、自分でやろうとすると大変なことが多々あります。
弁護士に依頼すれば、相手方との交渉を代理で行ってくれるため、相手方もスムーズに応じてくれるかもしれません。
弁護士費用と比較し、弁護士費用を除いても手元に残る遺留分が十分あれば、弁護士に依頼するメリットは大きくなります。