メニュー

閉じる
無料相談0120-211-084
メール

最終更新日:2023/6/28

相続財産管理人とは?必要なケース・選任の流れ・費用を解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

相続財産管理人とは?必要なケース・選任方法・選任後の流れを解説

この記事でわかること

  • 相続財産管理人の役割と必要なケースがわかる
  • 相続財産管理人の選任方法と選任後の流れがわかる
  • 相続財産管理人の選任にかかる費用や必要書類がわかる

人が亡くなると、ほとんどの場合は何らかの相続財産が発生します。

通常は相続人がその財産を引き継ぎ、必要に応じて管理し、処分します。

しかし、相続人がいない場合は相続財産を管理したり処分したりする人がいないことになります。

このような場合には「相続財産管理人」を選任することになります。

この記事では、相続財産管理人を選任する方法や選任後の流れ、必要な費用などを解説します。

相続財産管理人とは?

相続財産管理人とは?

相続財産管理人とは、相続財産を管理・精算する役割を持った人のことです。

通常は相続人が相続財産の管理を行いますが、相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合は、相続財産を管理する人がいなくなるため、さまざまな不都合が生じます。

たとえば、相続財産からお金を支払ってもらえるはずの債権者は、お金を支払ってもらえなくなります。

また、亡くなった人が住んでいた家を空き家のまま放置しておくと治安が悪くなり、倒壊すれば近隣の家屋や人に損害が及ぶ危険性もあります。

このような不都合を防止し、財産を適切に管理するために相続財産管理人が選任されます。

相続財産管理人は、管理する人がいない相続財産を適切に管理した上で、債権者には相続財産の中から債務を支払い、売却できる相続財産は換価・換価価値のない相続財産は処分し、最後に残った財産は国庫に帰属させる手続きを行います。

相続財産管理人の選任申し立てが必要になるケース

相続財産管理人が必要となるのは、相続人がいない場合です。

相続人がいない場合とは、次の2つのケースです。

  • (1)もともと相続人がいない場合
    被相続人に法定相続人が1人もおらず、遺言によって遺贈を受ける人も不在で相続財産を管理・処分する人がいない
  • (2)相続人の全員が相続放棄をした場合
    被相続人に法定相続人がいる場合でも、その全員が相続放棄をしているため、相続財産を管理・処分する人がいない

管理すべき相続財産には、プラスの財産もマイナスの財産も含まれるので、人が亡くなった場合に相続財産が何もないというケースは滅多にありません。

そのため、本来は相続人がいない全てのケースで相続財産管理人が必要になります。

中でも相続財産管理人を選任する必要性が高いケースは、以下の3つです。

相続財産管理人を選任する必要性が高いケース

  • 相続人全員が相続放棄したケース
  • 特別縁故者がいるケース
  • 被相続人の債権者がいるケース

相続人全員が相続放棄した

相続人であった人は、相続放棄をした後も相続財産の管理義務からは免れられません

相続放棄をした人は、誰かが相続財産を管理するようになるまでは、自分の財産の管理責任と同等の相続財産の管理責任を負うことになります(民法第940条1項)。

たとえば、被相続人が住んでいた古い家屋が空き家となって残っているような場合です。

空き家を放置すると老朽化が進みやすくなるので、ちょっとした地震や台風で屋根などが吹き飛んだり倒壊する恐れもあります。

このような事態になって近隣の住民に被害が及ぶと、相続人だった人が管理義務違反により損害賠償義務を負うことになってしまうのです。

ただ、相続放棄をしたにもかかわらず、いつまでも相続財産を管理するのは大変でしょう。

このような場合、相続財産を管理・処分してもらうために相続財産管理人が選任されることが多いです。

特別縁故者がいる

相続人がいない被相続人にも、特別縁故者がいるケースは珍しくありません。

特別縁故者とは、相続人ではないけれど、被相続人と特別な関係があった人のことです。

たとえば、被相続人の介護を親身に行っていた人や、内縁の配偶者など被相続人と一緒に生活をしていた人、生計をともにしていた人です。

このような特別縁故者は、相続人がいない被相続人の相続財産を相続できる可能性があります。

しかし、勝手に相続財産を持ち出すことはできません。

相続財産を特別縁故者が相続するためには、まず、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることが必要です。

相続財産管理人が選任されると、相続人を捜索する公告が行われます。

相続人の不在が確定した後、家庭裁判所に特別縁故者の申立・相続財産分与請求を行い、特別縁故者と認定されると、相続することができます。

なお、特別縁故者が相続財産を相続するには、相続人の不存在が確定した後3ヶ月以内に、特別縁故者への財産分与申し立てを行う必要があります

相続人の不存在が確定するのは、相続人捜索の公告で定められた期間が終了したときとなります。

この日から3ヶ月以内に申立てを行わなければ、特別縁故者は相続財産を受け取ることはできなくなります。

被相続人の債権者がいる

被相続人にお金を貸していた債権者は、相続財産からお金を支払ってもらう権利を持っています。

相続人がいれば、必要に応じて相続財産を処分するなどしてお金を工面し、債務を支払うことができます。

しかし、相続人がいない場合、債権者はお金を支払ってもらえなくなってしまいます。

もちろん、債権者も勝手に相続財産を持ち出すことは許されません。

相続財産を換価して債務の支払いを受けるためには、相続財産管理人の選任が必要です。

相続財産管理人を選任する流れ

相続財産管理人を選任するまでの流れ

相続財産管理人は自動的に選任されるものではありません。

家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要があります。

ここでは、相続財産管理人を選任する方法を解説します。

申立人となる人

家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立てをすることができる人は、利害関係人または検察官です(民法第953条1項)。

利害関係人にはさまざまな人がいますが、代表的なのは上で述べた相続放棄をした人、特別縁故者、被相続人の債権者などです。

相続財産管理人の選任申し立てをする

相続財産管理人を申し立てる方法は、家庭裁判所に「相続財産管理人選任申立書」を提出することです。

申立書の書式は家庭裁判所に置いてありますし、裁判所のホームページからダウンロードして使うこともできます。

参考:裁判所:相続財産管理人の選任の申立書

申立書に必要事項を記入したら、800円の収入印紙を貼り、添付書類と予納郵便切手と一緒に家庭裁判所に提出します。

申し立てはどこの家庭裁判所でもいいわけではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があるので注意しましょう。

相続財産管理人の選定申し立ての必要書類

相続財産管理人の選任を申し立てる際には、以下のとおり数多くの添付書類が必要になります。

必要書類被相続人が亡くなったことを証明する書類

  • ・被相続人の住民票の除票かまたは戸籍の附票

相続人がいないことを証明する書類

  • ・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
  • ・被相続人の父母の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
  • ・被相続人の直系尊属(祖父母など)の死亡が記載されている戸籍謄本
  • ・被相続人の子どもや代襲者で死亡しているものがいる場合には、その人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
  • ・被相続人の兄弟姉妹で死亡しているものがいる場合には、その人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
  • ・甥や姪などの代襲者ですでに死亡している人がいる場合には、その人の死亡の事実が記載されている戸籍謄本

相続財産を疎明する書類

  • ・預貯金通帳
  • ・不動産の登記事項証明書
  • ・保険証券など

利害関係を疎明する書類

  • ・戸籍謄本
  • ・金銭消費貸借契約書(写し)
  • ・賃貸借契約書など(写し)

その他

  • ・相続放棄をした場合は相続放棄申述受理証明書
  • ・相続財産管理人の候補者がいる場合はその人の住民票または戸籍の付票

相続財産管理人を選任する際にかかる費用

家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる際には、以下の費用がかかります。

相続財産管理人を選任する際にかかる費用

  • 収入印紙 800円分
  • 予納郵便切手 1,000円前後
  • 官報公告費用 4,230円

申し立てと同時ではありませんが、上記の費用とは別に予納金を家庭裁判所に納める必要があります。

予納金は、相続財産管理人の報酬にあてられる予定の費用です。

相続財産管理人の報酬は、相続財産を処分して換価した金銭の中から支払われますが、不足する場合もあるので、あらかじめ家庭裁判所が概算した金額を納めておく必要があります。

金額は数十万円の場合が多いですが、相続財産が多かったり複雑な事情があったりする場合は、相続財産管理人の報酬も高額になるため、100万円を超えるケースもあります。

相続財産管理人の報酬を相続財産でまかなうことができれば予納金は戻ってきますが、不足する場合は戻ってこないので注意が必要です。

相続財産管理人が選任された後の流れ

相続財産管理人選任方法

相続財産管理人が選任された後、最終的に管理する人がいない相続財産がなくなるまでの流れは以下のとおりです。

相続財産管理人が選任された後の流れ

  • 1. 相続財産管理人が選任されたことが公告される
  • 2. 相続債権者や受遺者に公告
  • 3. 相続人を捜索する公告
  • 4. 特別縁故者への財産分与
  • 5. 換価できる相続財産は換価する
  • 6. 残余財産を国庫に帰属させる

相続財産管理人が選任されたことが公告される

相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所によって官報で公告されます。

相続人がいる場合には申し出てもらうことや、相続財産に対する債権を持っている人に対して相続財産の管理・整理が開始したことを知らせるのが目的です。

また、相続財産管理人は相続財産の調査や管理を行います。

相続財産を調査して財産目録の作成を行うほか、不動産の相続登記による「亡○○○○相続財産」名義への変更や複数の預貯金口座の相続財産管理人名義の口座への一本化、債権の回収といった業務を担います。

相続債権者や受遺者に公告

2ヶ月経っても相続人が現れなかった場合、相続財産管理人は被相続人の債権者や遺贈を受けた人に対して、債権を届け出てもらうよう公告します。

一定期間内に債権者や受遺者による届出が行われた場合、相続財産の中から債権額の割合に応じて支払いが行われます。

相続人を捜索する公告

2ヶ月待っても債権者や遺贈を受けた人が現れず、相続債権者や受遺者に支払いなどをしてもなお相続財産が残っている場合は、相続財産管理人の申し立てによって、家庭裁判所は相続人を捜すための公告します。

この期間は6ヶ月以上と定められています。

特別縁故者への財産分与

相続人を捜索する公告の期限内に相続人が現れない場合は、相続人がいないことが確定します。

相続財産が残っている場合、公告の終了から3ヶ月以内に、特別縁故者に該当すると考えられる人は、家庭裁判所に対して「特別縁故者に対する財産分与の審判」を申し立てます。

家庭裁判所は、この申し立てを受けて内容を調査し、特別縁故者として認めるのが相当であると判断した場合は、具体的な事情に応じてその人に分与する財産の額を決定する審判をします。

その審判が確定したら、相続財産管理人が審判の内容に従って相続財産を特別縁故者に引き渡します。

換価できる相続財産は換価する

相続管理人は必要に応じて随時、家庭裁判所の許可を得て、不動産や株などの有価証券を売却して換金します。

残余財産を国庫に帰属させる

相続財産管理人に対する報酬を支払っても、相続財産が残っている場合は、国庫に帰属することになります。

相続財産管理人は、残余財産を国に引渡す手続きを行うと業務が終了するため、家庭裁判所に管理終了報告書を提出します。

まとめ

相続財産管理人とは、管理する人がいない相続財産を適切に管理し、清算する人のことです。

相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄した場合に、相続財産管理人が必要になります。

相続財産管理人が必要になったときは、家庭裁判所に選任の申し立てをしましょう。

相続人がいる場合には、相続放棄をして相続財産管理人を選任した方がいいのか、普通に相続をして自分たちで相続財産を管理・処分した方がいいのか迷うこともあるかもしれません。

相続財産の処理で困ったら、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

テーマから記事を探す

弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所ならではの専門性

多数の相続案件の実績のノウハウで、あなたにとって一番の頼れる味方となります。
ご自身でお悩みを抱える前に、ぜひ一度お気軽にご連絡ください。親切丁寧な対応を心がけております。

当サイトを監修する専門家

弁護士 川﨑 公司

弁護士 川﨑 公司

相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

弁護士 福西 信文

弁護士 福西 信文

相続手続等の業務に従事。相続はたくさんの書類の作成が必要になります。お客様のお話を聞き、それを法律に謀った則った形式の文書におとしこんで、面倒な相続の書類を代行させていただきます。

弁護士 水流 恭平

弁護士 水流 恭平

民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

弁護士 山谷 千洋

弁護士 山谷 千洋

「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。 初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。

弁護士 石木 貴治

弁護士 石木 貴治

メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

弁護士 中野 和馬

弁護士 中野 和馬

弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。 お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。 お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。