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相続問題を専門家に相談する方法を学ぼう
相続の問題のために専門家へ相談しようか検討している人は多いのではないでしょうか。
なるべく自分の希望どおりに、また、親族間でもめごとがなく、皆が納得した形で遺産を相続したいですよね。
専門家へ相談したほうがいいかなと思っていても、なかなか相談するまでにはいたらない方が多いです。
相談したいことがあっても、「自分の相続問題なんて専門家に相談するほどではないし、家庭のことだから気がひける」、「相続問題はあるが誰に相談するべきかわからない」などと悩んでいませんか?
相続問題は普段の生活でなかなか学ぶ機会がないので、相談することの意味や相談するべき専門家に迷うかもしれません。
だからといって、相続について専門家へ相談せずにいるのは大変もったいないことです。
相続問題を専門家へ相談すれば、相続問題において紛争防止になり、また、金銭的、時間的コストを削減できるなどメリットはたくさんあります。
そこで、この記事では、
- ・相続問題を専門家へ相談しないことのデメリット
- ・相続問題を専門家に相談するメリット
- ・問題別の相談先となる専門家
について説明していきます。
最後までお読みいただければ、相続問題を専門家へ相談することのメリット、デメリット、および相談するべき専門家について知ることができます。
相続問題を専門家へ相談しないことのデメリット
相続問題を専門家へ相談しない場合には、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
相続問題が実際に発生してから専門家へ相談するようでは、相続に関するさまざまなリスクがすでに増大してしまった後となりがちです。
ここでは、専門家へ相談しない場合にどのようなことになるか具体的に説明していきます。
相談にかかる費用が増大する
相続問題を専門家へ相談することに抵抗ある理由の1つとして、「相談料が高いのでは?」、「相談料がもったいない」といったように、相談料をなるべく負担したくないということが挙げられます。
確かに専門家に相談すると相談料はかかりますし、その後の専門的な手続きまで依頼するとなると、それなりの費用を負担することになるでしょう。
しかし、専門家へ相談することなしに相続が発生し、遺産をめぐる争いが起きてしまうと、結局、専門家へ相談しなければならないことが増えて、結果的に費用が余計にかかることとなりかねません。
相続問題がこじれていない段階で専門家に相談することで、将来的な相談費用の負担を抑えることになるのです。
相続問題がこじれると余計に相談しづらくなる
専門家へ相談することに引け目を感じている場合、問題を放置することによって後々より大きな問題へと発展してしまい、相続問題を第三者へ余計に相談しづらくなる可能性があります。
確かに親族内での問題を第三者へ話すことは恥ずかしいと感じるでしょうし、ましてや裁判沙汰になるようであれば、世間にも知れ渡る可能性もあるわけですから、相談する気がおきないかもしれません。
日本人は裁判することに対して抵抗感があると言われてますので、裁判するということがまだまだ一般的ではないという事情があります。
かといって問題を放置した結果、相続問題が表面化して、骨肉の争いが激化した状態となってしまった場合、専門家へ相談することがより恥ずかしくなり、相談すること自体のハードルがさらに大きくなってしまうのです。
実際に、訴訟には勝てる状況であるのに、裁判することの抵抗が大きすぎて、専門家へ頼むことができなかったケースもあります。
早く相談していれば、裁判にはならなかったケースもあるのです。
相続問題を専門家へ相談したり、裁判によって主張することに引け目を感じてはいけません。
また、専門家には守秘義務がありますので、相談者の相談内容やその他秘密にしたいことが第三者へ漏れることは基本的にないのです。
相続問題については、自分の正当な権利を主張するものだと自信をもって、親族間でこじれる前に専門家へ相談しましょう。
相続問題を専門家に相談するメリット
ここまで専門家に相談しないとなぜ損をするのか見てきましたが、逆に専門家に相談することでどのようなメリットがあるんか見ていきましょう。
相続問題は専門家に相談しなくても解決できると考えている人もいると思いますが、専門家に相談することで、より多様で複雑な問題に対して対応できますし、将来的な問題を未然に防ぐことが可能となるのです。
ここでは、専門家に相談するメリットについて一つ一つ解説していきます。
経験を踏まえたアドバイスをもらえる
専門家は相続問題に関して類似の事例を経験しており、その原因と対応策について的確なアドバイスを与えることができます。
専門家は、ただ専門的な知識を有しているだけではなく、業務を通じてさまざまな相続に関する相談を常日頃から受けていますので、相続問題に関して事例の蓄積が大量にあるのです。
そのため、相続の相談をすれば、問題点を余さずヒアリングしますし、多くの経験を踏まえた適切な解決策を提案してくれます。
前例のない事例に対しても対策可能
相続問題には一般的な事例もあれば、極めて複雑で特殊な事例もあるでしょうが、特殊な事例の場合であっても、専門家であれば対策案を出してくれます。
書店でも相続問題やその他法律問題一般に関する書籍は多くあり、一般人でも相続問題に関して一定の知識を得ることはできます。
しかし、本を読んだ知識だけで問題に取り組んだ場合、少しでも特殊な事例であれば、対応策を誤ったり、問題点に気づかなかったりする危険性があるのです。
そのため、複雑で特殊な相続問題をしっかり解決するためにも、無理に自力で解決しようと思わず、専門家へ相談することをおすすめします。
第三者が加わることで紛争防止となる
専門家という第三者が相続問題に関わることによって、親族間の争いを抑制し、紛争が激化することを未然に防止することができます。
相続問題は身内間の争いですので、感情的になりがちであり、いざ話し合おうとしても、冷静に意見を聞かなかったり、一方的に自己の主張をしてしまうことが少なくないです。
しかし、第三者である専門家が間に入れば、自分の感情をぶつけることは少なくなりますし、身内以外からの客観的な意見ということもあって、話し合いが穏便に進む可能性が高くなります。
もちろん、専門家は相談者側につきますので、全員に対して平等な形での主張とはなりません。
ただし、相談者があまりに倫理的、法律的に問題ある言動をする場合は、専門家として指摘することになるでしょう。
そのため、相談者が専門家を通すことにより、その主張に信頼性、中立性が増しますので、より穏便に相続問題を話し合えるようになるのです。
以上から、専門家が第三者的な役割を果たすことによって、相続問題の紛争防止という効果を得ることができるでしょう。
問題別の相談先専門家を紹介
ここまで相続問題を専門家へ相談することについて解説してきましたが、具体的にどの専門家へ相談するべきか知りたい方は多いのではないでしょうか。
相続問題というと、弁護士を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、相続問題といってもさまざまな問題があり、問題ごとに担当するべき専門家は異なるのです。
ここでは、問題ごとに分けて、相談先とするべき専門家を一つ一つ紹介していきます。
相続上の紛争に関する相談先は弁護士
相続問題がすでに紛争となっている場合は、弁護士へ依頼します。
弁護士は権限上すべての法律問題を扱うことができる法律家です。
そのため、相談先に困った場合はとりあえず弁護士に相談すれば適切なアドバイスをもらえるでしょう。
まだ紛争が発生していない場合でも、弁護士は相続をめぐるトラブルに関して多くの知識と経験を有しているので、紛争防止のための対策を講じてくれるはずです。
また、紛争が発生しているものの、争いの対象となっている金額が140万以下である場合は、司法書士にも依頼することができます。
ただし、相談の途中で140万を超える可能性が高い場合は、最初から弁護士に相談したほうがスムーズに進むでしょう。
その他、具体的に問題は発生していないものの、相続全般に関して疑問点や不安に思っていることを聞きたい場合にも、まず弁護士へ相談すれば、総合的にアドバイスをしてくれるはずです。
相続税に関しての相談先は税理士
相続税に関して相談したい場合は税理士が相談先となります。
税理士に相談することによって、相続税の計算と手続きを行ってもらったり、節税や減税するためのアドバイスを受けたりすることができます。
相続税の申告期限は、相続開始を知ったときから10ヵ月以内と決まっているので、状況によってはタイトなスケジュールです。
仕事等で忙しかったり、相続財産が多くて1人で処理すると期限内に申告できるかわからない場合などは、税理士のサポートがとても有効となるでしょう。
できるだけ相続税の負担を減らし、手続きに時間を取られたくない人は税理士に依頼しましょう。
登記に関しての相談先は司法書士
相続上登記が問題となっている場合には、登記を独占業務としている司法書士が相談先となります。
弁護士も権限上は登記業務を行うことは可能ですが、登記申請は専門性が高いので、登記の専門家である司法書士へ依頼するのが一般的です。
登記自体は専門家へ依頼せずに独力でできないことはありませんが、何回も修正することになって多大な時間を要しかねませんし、相続登記をするためには非常に多くの書類が必要となりますので、
司法書士へ依頼すれば間違いがなく、時間も大幅に節約できます。
相続上登記をすることになる代表的な例としては、遺産の中に不動産が含まれていて、不動産の名義を死亡した被相続人から相続人に変更を行う相続登記が挙げられます。
相続登記自体は法律上の義務ではありませんが、登記をしない場合にはデメリットがあります。
まず、不動産の場合は売却できず、また担保にもできません。
さらに、相続登記前の不動産は相続人同士で共有している状態なので、そのまま放置をしていると相続人が増えて、相続関係がより複雑化してしまう危険性もあるのです。
以上から、相続財産が不動産のような登記絡みの問題を有している場合は司法書士に依頼するようにしましょう。
不動産の評価に関する相談先は不動産鑑定士
相続財産が不動産であり、不動産の評価が必要な場合は不動産鑑定士に依頼します。
なぜ相続時に不動産の評価が必要となるかというと、不動産の金額を時価で正確に評価し、その時価に基づいて相続財産を相続人に分配したほうがよいケースがあるからです。
例えば、遺産が2,500万と評価されている不動産と現金2,500万だとします。
相続人がAとBの2人いて、相続財産を2分の1ずつ分けるものとして、Aには不動産を、Bには現金2,500万を相続させるとしましょう。
この時、不動産の時価が実際には4,000万だとすると、Aが得をして、Bが損をすることになってしまうのです。
このように相続財産が不公平な分配となると、相続トラブルとなる可能性があるので注意しなければなりません。
特に土地が高騰している地域などでは時価が上昇している可能性があります。
もし、相続財産に不動産があり、時価が大きく変わっている可能性がある場合は不動産鑑定士に依頼するようにしましょう。
相続関係図などの書類作成に関する相談先は司法書士か行政書士
相続関係図や遺言書、遺産分割協議書など相続関係の書類作成は司法書士、行政書士に依頼できます。
ここで注意しなければならないのは行政書士は紛争の代理人にはなれず、書類作成しかできないということです。
そのため、書類は作成したものの、その後紛争が発生した場合、行政書士は対応できず、弁護士へ依頼することになります。
こういったことから、紛争の発生があらかじめ予想される場合などは、最初から弁護士に依頼したほうが無難と言えるでしょう。
まとめ
ここまで相続問題を専門へ相談することのメリット、デメリット、相談すべき専門家について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは、
- ・相続問題を専門家へ相談しないとより相談しづらくなり、費用と時間等のコストも増えてしまう
- ・相続問題を専門家へ相談することで複雑な問題でも対応でき、将来的な紛争の抑止にもなる
- ・相続はその問題ごとに専門家がいるので、問題に応じて専門家を選ぶべき
となります。
まだまだ専門家へ相談することの心理的ハードルがあるという方もいらっしゃるでしょうが、相続問題を専門家に相談しないことで、さまざまなリスクとコストが増えてしまうことがおわかりいただけたかと思います。
問題別の専門家を紹介させていただいた通り、ご家庭の資産状況によっては、様々な専門家を活用していく必要があります。
円満な相続を実現するためにも、1つ1つの相続問題に関して積極的に専門家を活用していきましょう。
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