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最終更新日:2022/12/15

遺産相続の手順VOL16 『相続争いにつながるかもしれない5つの前兆』

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

遺産相続に伴うトラブルは、一朝一夕で起こるものではありません。

長い年月を経てヒビが大きくなってから起こるものです。

その当事者の間には本来あるはずの信頼関係がない、あるいは破壊されている状態です。

ですので、いったんトラブルが発生すると事態は深刻な状況に陥ります。

場合によっては、法廷闘争はおろか、殺人事件にまで発展することもありうるのです。

ところで、何でもそうですが大きな事件の前には何がしかの前兆があります。

それを安易に見過ごしてしまうからこそ、大きな事態を招くと言ってもいいのかもしれません。

これから見ていく相続トラブルについても、争いの予兆になるようなものが現れます。

信頼関係が破壊されている、それが何がしかの形となって姿を出すのです。

それでは、相続争いの兆しとなるものにはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、5つの前兆について見ていくことにします。

5つの前兆

もともと信頼関係がない

相続トラブルというと、まとまった資産がある場合を想像しがちですが、必ずしもそうとは限りません。

仮に大きな遺産があったとしても、相続人間で信頼関係がきちんと構築されていれば、円満に事は解決するものなのです。

他方で相続人間にある何らかの事情により信頼関係がない、または壊れている、このような場合は遺産の大小に関わらず相続トラブルに発展する可能性が高いです。

もともと相続人の間で通常の話し合いもできる状態でないのに、より繊細な内容を扱う遺産等をどう分けるかの場面だけ話がまとまるということは皆無に近いでしょう。

幼少時代の子どものしつけと称した虐待、育児放棄、または過度なまでの子どもへの干渉、これらの事実が積み重なっていくと親と子の間に亀裂が生じます。

その亀裂が広がっていくほど、信頼できる関係から遠ざかりこういった場面でトラブルとなって現れるのです。

子どものためをと思ってしたことが裏目に

我が子を大切にしたい、育てたい、そして立派に成長して欲しいと思うのは親として当然のことでしょう。

そのため、子どもに色々と要求をしてしまうかもしれません。

それを子どもがすんなりと受け容れてくれるのであれば特に問題はないのですが、子どもが嫌がっているにもかかわらず、ゴリ押ししてやらせたりすると、子どもは親に対して心を開かなくなります。

また、兄弟がいて他の兄弟とやらされていることが違うのであれば、なぜ自分だけこんなことしなければならないのだろうという気持ちが出てくるかもしれません。

それが親への不信感に繋がるのです。

親は子のためにと思っていても子は嫌々やっているという状態であれば、後で手痛いしっぺ返しにつながるかもしれません。

子どもの将来は子ども自身で決めるものであり、親が手取り足取りするべきことではないのです。

そのときのわだかまりが増幅して相続のような場面で子どもから反撃を受けることもありうるのです。

子どもが成人しても信頼関係が壊れる場合もある

自分たちの子どもが学校を卒業し、大人になっても信頼関係が崩れることはありえます。

親といえども人間ですので、ちょっとくらいはという気持ちが出てくるのはやむを得ないことです。

ところが、それが頻繁であったり、他の兄弟と不公平であったりすると子どもの親に対する気持ちに変化が現れます。

例えば、成人して他の兄弟には結婚や引っ越しの際に、祝儀等の形で多額の現金を渡しているのに、自分の時には全くそれがない、または明らかに低いというのであれば、その子にとってはアンフェアに写ります。

その頃には子どもも成長していて、親に対してもある程度客観的に見る目がついています。

ですので、ちょっとした気持ちでしたことが子どもに大きな不信感を与え、それが積み重なっていくことで信頼関係の破壊に繋がることもあるのです。

子どもから信頼関係が破壊される場合もある

大事に育てた子どもが成長し、その子どもが家庭を持つようになった。

そうすると子どもも親の気持ちがわかってくる頃です。

ただ、このような環境になったとしても信頼関係にヒビが入ることがあります。

どのような場合でしょうか。

遺産分け等の場面で親と子が話し合うのが、それにあたるでしょう。

親と子でしか話し合いができないナーバスなものにまで、子のパートナーが口を挟んだりすることがあります。

親と子だけであれば解決できる問題が、他の者が入ることで話を複雑にしてしまうのです。

このような場合は、「口を出さないで欲しい」と言えば多少は介入の度合いが緩和されるかもしれません。

ですが、遺産分けともなると相続人に財産が入ってきますから、口を挟むパートナーも目の色を変えていることが多いでしょう。

子もパートナーと喧嘩をしてもめるよりは、自分の親の方がいろいろ言いやすいかもしれません。

加えて生活上の問題や親の介護のことなどさまざまな問題が絡んできますので、実際のところはなかなか難しい問題です。

このような問題に第三者が口を出すことで、親と子の間に溝ができ、それが深まっていくこともありうるのです。

親も子も介護が必要になった場合

歳を取ると考え方が保守的になり、新しいことへの挑戦が疎くなってきます。

他方で近年は医療や社会のめざましい進歩により平均寿命が延びてきております。

その結果、親の介護をする子どもも歳を取ってしまい、疲労を溜めて親を虐待することが間々あります。

このような場面で相続が発生するとどうなるのでしょうか。

相続は新しいことだらけで、論点もたくさんあります。

このようなことに高齢の方の判断を求めるのはかなり難しいのではないかと思います。

介護や日頃の疲れと煩雑な諸々の手続きへの気持ちから、親に八つ当たりをしたりして信頼関係にヒビが入ることもありうるのです。

高齢になってからの相続に関する問題はこれだけにとどまりません。

認知症や重い病気にかかっていて相続の話し合いすらままならないことがあるのです。

遺産分割の場面で内容を理解できないのに協議書に署名押印をしたとしても、それは無効です。

そうすると、成年後見人を選任したりする必要が出てくるのですが、場合によっては親族ではない第三者が成年後見人に選ばれて相続手続きが難航する、または新たなトラブルに発展するリスクが潜んでいます。

争いのリスクを減らすために

相続争いの前兆は色々な形となって見えてきます。

しかし、どのような形であれ、根底にあるのは信頼関係が失われているという状態です。

これを修復しようとするのが理想的ですし、そうあって欲しいのですが、一度失われた信頼関係を復元するのは現実的にはかなり困難です。

自分が亡くなった後に相続トラブルが起こりそうだと思われる方は遺言の作成をおすすめします。

それも相続人の遺留分を意識した遺言書です。

できれば第三者の介入した公正証書遺言がいいでしょう。

これを作成することで相続人の遺留分も確保され、後々に裁判所を巻き込んだ法廷闘争に発展するリスクを減らせることでしょう。

まとめ

これまで相続争いの5つの予兆を中心に見てきました。

相続争いに本格的に発展すると、終わりなき戦いを強いられるかもしれません。

その戦いの果てにあるのは何も残らないという残念な結末です。

「備えあれば憂いなし」ということわざがありますが、もし遺産相続の場面でもめそうだという方は遺言など適切な方法を備えて、後でしこりを残さないようにしたいものです。

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