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最終更新日:2022/12/13

遺産相続の手順VOL13 相続税対策⑤配偶者控除、小規模宅地等の特例、不動産寄付による相続税節税の方法まとめ

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続税というとたくさんの税金が発生するものというイメージを持たれる方もいますが、今回ご紹介する租税上の控除や特例措置を利用するとかなりの節税となります。

ただし、適用されるには条件を満たす必要があり、利用する際には注意すべきポイントもあります。

そこで、そのような控除や特例措置と利用時の適用条件や注意点などについてご紹介していきましょう。

相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減制度)

以下に節税効果の高い配偶者控除と注意点についてお伝えします。

配偶者控除とは?

配偶者の税額軽減制度とも呼ばれる配偶者控除は、被相続人の配偶者のみが利用できる控除です。

配偶者控除が適用されると、被相続人の配偶者が相続する財産の取得額に対し、「法定相続分あるいは1億6,000万」のいずれか大きい金額まで控除することができます。

つまり、配偶者が相続する財産がいずいれかの金額よりも小さければ、相続税が発生しないことになるというものです。

控除金額が大きいために適用されると大きな節税となり、多くの相続で相続税ゼロになります。

相続税法では、法定相続人がだれであっても適用が認められている基礎控除(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)がありますので、基礎控除を上まわる相続が発生した場合にはじめてこの控除を適用すれば効果があります。

配偶者控除と注意したい二次相続について

配偶者控除は節税効果が非常に高く、また被相続人の配偶者のみしか適用されないために二次相続対策も考慮しておかないと子供の相続税の納税額が大きくなる恐れがあります。

相続には一次相続と二次相続があり、夫あるいは妻が死亡し、生き残った配偶者が相続する場合は一次相続、その配偶者も亡くなってその子供が相続する場合が二次相続と呼ばれています。

一次相続では配偶者控除適用により配偶者には多くの節税効果があるものの、配偶者は被相続人と年齢が近いことが多いため、次の子供の世代の相続が早くやってくる傾向があります。

しかし、子供が相続する二次相続の段階では、子供は当然のことながら配偶者控除の適用はありませんし、被相続人の配偶者(二次相続する子供の父親または母親)も亡くなって法定相続人の数も1人分減ることから、非課税枠も縮小します。

結果として、子供の世代に多くの税務負担が重くのしかかる結果となる可能性があります。

このような二次相続において子供に多額の相続税が課税されると相続した配偶者を含め、一つの家族内で結果的に多くの税金が発生し、配偶者控除の効果はすぐに薄れてしまう可能性があります。

このようなリスクを避けるため二次相続対策が非常に重要になってくるのです。

二次相続対策としては、まず一次相続の際に配偶者だけでなく、その子供も含めた家族全体で最も節税効果が高い方法を考えることが重要になってきます。

つまり、一次相続の際に配偶者の相続割合を減らし、その分を子供達に相続させることで、二重課税される割合を減らすことがまず考えられます。

その他にも配偶者が相続する財産の中で現金化できるものを一次相続時に現金にして、二次相続時の納税資金を用意しておくという対策もあります。

また、配偶者が相続する財産に多額の現金や預金がある場合には、その資金で子供をカバーする生命保険に入っておくことも有効な対策になる場合があります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例も節税効果の高い制度です。

以下にその概要と適用要件についてお伝えします。

小規模宅地等の特例とは?

この特例とは、一定の要件を満たす居住用や事業用の小規模宅地を相続する場合、総面積330㎡までの課税評価額を50%から最大80%まで減額させることができる制度です(総面積が330㎡を超える部分については減額の対象にはなりません)。

評価額を下げることで相続財産が減りますので、結果的に相続税額も減少させる効果があります。

例えば、この特例が適用された場合、9,000万円の宅地の評価額は1,800万円となります。

したがって、相続財産の価格は7,200万円(=9,000万円-1,800万円)も減らすことが可能です。

なお、小規模宅地等の特例の要件が満たされると以下の3種類の宅地を対象として課税評価額の減額を受けることが可能になります。

  • ・特定居住用宅地等(被相続人が居住していた宅地)
  • ・特定事業用宅地等(被相続人が事業に供していた土地)
  • ・貸付事業用宅地等(被相続人が賃貸アパートやオフィスビルなどの用途に供していた土地)

小規模宅地等の適用要件

小規模宅地等の特例の対象となるのは、基本的に亡くなった被相続人が相続開始の直前まで住んでいた宅地などとなり、以下の適用要件を満たしている必要があります。

  • ・配偶者によって相続されること
  • ・被相続人と同居していた相続人によって相続されること
  • ・「家なき子特例」の要件を満たすこと

この中で家なき子特例について少し解説します。

家なき子特例とは、被相続人と同居していなかった親族が一定要件を満たすことで小規模宅地等の特例を受けることができるというものです。

家なき子特例を受けるには以下の全ての要件を満たしていることが必要になります。

要件 概要
・要件その1: 亡くなった方に配偶者や同居の親族がいない もし、被相続人に配偶者や同居していた他の親族がいた場合はこの特例が受けられなくなります。
・要件その2: 相続開始前の3年以内に相続人が自己所有の家に住んでいない 相続開始前の3年以内に相続人が自己所有の家に住んでいた場合、この特例が受けられなくなります。
・要件その3:相続開始前の3年以内に相続人が3親等以内の親族の家に住んでいない 相続開始前3年以内に3親等以内の親族が所有する家に相続人が住んでいた場合、この特例が受けられなくなります。
・要件その4: 相続開始前の3年以内に相続人と特別な関係がある法人の所有する家に住んでいない 「特別な関係の法人」とは親族が経営する法人などが該当し、そのような法人所有の家に相続人が住んでいた場合、この特例が受けられなくなります。
・要件その5:相続開始時点で過去に住んでいる家の所有がない 相続開始時点で過去に一度でも住んでいる家を所有していた場合、この特例が受けられなくなります。
・要件その6:相続により受けた土地を相続してから10ヵ月以内に売却していない もし、被相続人が亡くなってから10ヵ月以内に被相続人の所有していた土地を売却していた場合、この特例が受けられなくなります。

不動産の寄付

他にも利用しない山林等の不動産を申告期限までに国や地方自治体、公益法人などに寄付することで、非課税扱いとなり、相続財産の合計から差し引くことができる場合があります。

ただし、不動産ならどのようなものでも寄付の対象にできるわけではありません。

基本的に利用価値のない不動産については寄付を拒否されることもあるので、注意が必要です。

贈与もうまく活用しよう

相続税を抑えるには、相続だけでなく贈与の活用もおすすめです。

下記では節税に繋がる贈与方法を紹介します。

毎年110万円の暦年控除

贈与には、毎年110万円が非課税になる暦年控除があります。

金額はそこまで大きくないですが、年数をかけたり、贈与対象の人数が多かったりすれば、それだけで控除の効果は大きくなります。

例えば毎年110万円を10年間・3人に贈与した場合は、3,300万円を非課税で贈与できます。

相続税の軽減を考えているなら、暦年控除を活用して、うまく贈与しましょう。

ただし毎年決まった金額を贈与していると「定期贈与」とみなされるかもしれません。

定期贈与になると、贈与した合計金額に対して贈与税がかかります。

上記の例だと、合計3,300万円を贈与しているため、3,300万円に対して課税されます。

定期贈与にならないためには、毎年贈与する金額や時期を変えたりする必要があるため、不安な場合は弁護士への相談がおすすめです。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、2,500万円までの贈与なら課税されない特例制度です。

例えば2,500万円の不動産を持っており生前贈与したら、20%の贈与税がかかります。

ここで相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円の不動産に対して贈与税はかかりません。

ただし相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、相続財産としてカウントします。

上記のように2,500万円の不動産を贈与した場合でも、相続になれば課税対象になるかもしれません。

つまり相続時精算課税制度は非課税になるわけではなく、贈与税を先送りにして、相続時に支払う仕組みになります。

相続税の控除・特例で気をつけるべきこと

ここからは相続税の控除・特例を使いたい人が、気をつけるべきことを紹介します。

申告をしないと特例は利用できない

相続税の特例は申告が必要になります。

もし「配偶者控除を利用すれば、相続税がかからないから大丈夫」と思って申告をしないと、課税される可能性があります。

ただし相続の基礎控除に関しては、申告が必要ありません。

基礎控除しか利用しないなら申告は必要ありませんが、特例を使いたいなら申告が必要なので覚えておきましょう。

相続税の納付は相続開始から10ヶ月が期限

相続税は納付期限が相続開始から10ヶ月以内と決められています。

期限を過ぎてしまうと、余分な税金を払うことになります。

相続税の特例申請・申告には、書類や手続きが必要になることもあり、できれば早めに動きましょう。

相続税の納付が期限内にできなさそうな場合は、期限を伸ばす方法もあるので、弁護士への相談がおすすめです。

まとめ

今回の記事では、相続税について節税効果の高い「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」、さらに「不動産の寄付」といった制度や特例措置についてご紹介しました。

特に配偶者控除を申請する場合、一次相続だけでなく、二次相続までを含めて節税効果の最も高い遺産分割が重要になってきます。

相続対象となる遺産の額が大きい場合など少しややこしくなるケースも考えられます。

もし、自信がなければ早目に税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。

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