この記事でわかること
- 相続人不存在の概要
- 相続人不存在となるケース
- 相続人不存在だった場合の遺産の扱い
- 相続人不存在のときの手続き
- 相続人不存在の場合に準備しておきたいこと
未婚で兄弟姉妹のいない方がなど死亡すると、相続人不存在になる場合があります。
相続人不存在の状況は特に珍しくありませんが、「自分が亡くなったら財産はどうなるのか?」といった疑問が生じてくるでしょう。
身寄りのない方の財産は国庫に帰属するため、親しい友人などに遺産を渡したい場合や、寄付を考えている方は生前の準備が必要です。
法定相続人がいるケースでも、全員が相続放棄したときは、相続人不存在となってしまいます。
今回は、相続人不存在となるケースや財産の帰属先、必要な手続きなどをわかりやすく解説します。
目次
相続人不存在とは
相続人不存在とは、被相続人(亡くなられた方)の財産を引き継ぐ人がいない状況です。
被相続人に配偶者や子どもがいても、相続の辞退や相続放棄などがあると、相続人不存在となります。
相続人不存在の場合、被相続人の遺産を国庫に帰属させるため、相続財産清算人の選任が必要です。
従来制度では相続財産管理人を選任していましたが、2023年4月1日の民法改正で相続財産清算人が新設となり、国庫帰属の手続きも簡略化されました。
では、どのような状況で相続人不存在となるのか、具体例をみていきましょう。
相続人不存在となるケース
相続人不存在となるケースには以下の3パターンがあります。
- 法定相続人がいない
- 法定相続人全員の相続放棄
- 相続の欠格や廃除
法定相続人がいる状況でも、以下のように相続人不存在となる場合があるでしょう。
法定相続人がいない
被相続人に以下の法定相続人がいなかった場合は、相続人不存在となります。
- 配偶者:必ず相続人となる
- 子ども:第1順位の法定相続人(死亡している場合は孫)
- 父母:第2順位の法定相続人(死亡している場合は祖父母)
- 兄弟姉妹:第3順位の法定相続人(死亡している場合は甥や姪)
法定相続人は順位が決まっているため、上位の人がいる場合、下位の人は相続人になれません。
高齢者が亡くなると、法定相続人もすでに死亡しているケースがあるため、相続人不存在となってしまうでしょう。
法定相続人全員の相続放棄
法定相続人がいる場合でも、全員が相続放棄すると相続人不存在となります。
相続放棄した人は相続権を失うため、全員が相続に関わらなくなると、遺産の帰属先がなくなります。
被相続人の遺産には借金や未払金、未納の税金なども含まれており、法定相続人は返済義務を引き継がなくてはなりません。
特定の相続人が借金をすべて相続した場合でも、債権者は法定相続分に応じた金額を各相続人に請求できます。
高額な借金が残っていると、全員が相続放棄する可能性があるため、相続人不存在になるでしょう。
相続の欠格や廃除
法定相続人が欠格や廃除となった場合、相続人不存在になるケースがあります。
相続の欠格とは、被相続人を強迫して都合のよい遺言書を書かせる、または被相続人を殺害するなどの行為があった場合、相続権をはく奪する制度です。
被相続人が法定相続人から重大な侮辱や虐待などを受けている場合も、被相続人の意思によって相続の廃除になったときは、法定相続人の地位を失います。
欠格や廃除で法定相続人がいなくなった場合、相続人不存在の状況になるでしょう。
相続人不存在だと遺産はどうなる?
相続人不存在の状況では、預貯金や不動産などが放置されないよう、以下のように帰属先を決定します。
- 受遺者または特別縁故者が相続財産を引き継ぐ
- 国庫に帰属させる
受遺者と特別縁故者がいない場合に限り、遺産を国庫に帰属させます。
相続人の存否がわからないケースもあるため、遺産がどのような扱いになるか、以下を参考にしてください。
遺言書で受遺者が遺産を取得する
被相続人が遺言書を作成している場合、相続人不存在でも受遺者(じゅいしゃ)が遺産を受け取ります。
受遺者は第三者や法人でも構わないため、介護でお世話になったヘルパーに遺産を渡す、またはボランティア団体などに寄付してもよいでしょう。
遺産の承継者を自分で決めたいときは、遺言書が有効手段になります。
身寄りのない方は遺言書を発見してもらえないリスクがあるため、受遺者には遺言書がある旨を生前に伝えておきましょう。
特別縁故者が遺産を取得する
相続人不存在で遺言書もない場合、特別縁故者が遺産を受け取るケースがあります。
特別縁故者とは、被相続人と特別に親しかった人や、同一生計だった人などが該当します。
特別縁故者が家庭裁判所に財産分与の申立てを行い、被相続人との特別な関係性を証明できれば、遺産の一部または全部を受け取れるでしょう。
財産分与の申立先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になっており、申立人の戸籍謄本や財産目録などの書類を提出します。
国庫に帰属させる
相続人不存在で受遺者と特別縁故者もいなければ、被相続人の遺産は国庫に帰属します。
国庫帰属の手続きは後述しますが、被相続人と利害関係にあった人が家庭裁判所に申立てを行い、相続財産清算人を選任しなければなりません。
また、財産分与の申立てにより、特別縁故者が一部の遺産を取得したときも、残りの遺産を国庫に帰属させます。
特別縁故者も相続財産清算人の申立人になれますが、予納金などの申立て費用を準備しなくてはならないため、金銭的な負担を考慮する必要があるでしょう。
相続人の存否が不明な場合
法定相続人が行方不明で存否がわからない場合は、相続人不存在とはなりません。
捜索しても存否がわからないときは、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。
不在者財産管理人は本人に代わって遺産分割協議に参加し、財産管理や不動産売却などに対応しますが、あくまでも「本人が生きている」という前提です。
行方不明から7年経過しており、本人が死亡したとみなす場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てましょう。
相続人不存在のときの手続き
相続人不存在のときは遺産を国庫帰属させるため、以下の手続きが必要です。
(2)相続財産清算人の選任と相続人および債権者捜索の公告
(3)相続人不存在の確定
(4)特別縁故者への財産分与
(5)相続財産の国庫帰属
従来制度では(2)の公告に10カ月以上かかっていましたが、2023年4月1日以降は同時公告になっており、最短6カ月に短縮されました。
国庫帰属までの具体的な流れは、以下を参考にしてください。
相続財産清算人の選任申立て
相続人不存在の場合、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続財産清算人の選任を申し立てます。
申立人は被相続人の利害関係人(受遺者・債権者・特別縁故者)、または検察官です。
手続きの際には申立書や800円分の収入印紙、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などが必要となり、予納金も準備しなければなりません。
予納金は相続財産清算人の報酬に充てられるため、財産の種類によって数十万~100万円程度の金額になるでしょう。
相続財産清算人の選任と相続人および債権者捜索の公告
相続財産清算人が選任された後は、家庭裁判所が以下の公告を官報に掲載します。
(2)相続人捜索の公告
(3)債権者捜索の公告
相続人不存在でも、法定相続人や受遺者が判明する場合もあるため、6カ月以上の公告期間が定められています。
債権者捜索も同時公告になっており、(1)と(2)の期間が満了するまでに公告しなければなりません。
なお、法定相続人の申し出によって遺産の承継者が決定した場合、相続財産の清算手続きは完了します。
受遺者と債権者の届出があった際は、「債権者・受遺者」の順に遺産から弁済し、残りがなくなった場合も清算手続きは完了です。
相続人不存在の確定
官報公告を掲載しても、相続人の申し出がなかったときは相続人不存在が確定します。
相続人不存在の状況では、遺産をひとまとめにして法人化するため、不動産の登記情報も相続財産法人の名義に変更します。
法人化した不動産は相続財産清算人が売却し、現金化して国に納めますが、共有名義の不動産だった場合は持分の移転登記が必要です。
土地・建物が共有名義であれば、他の共有者に持分を移さなければなりません。
特別縁故者への財産分与
家庭裁判所に特別縁故者として認めてもらう際は、相続人不存在の確定から3カ月以内に財産分与を申し立てます。
審判によって特別縁故者となった場合、相続財産清算人から遺産を受け取ります。
なお、遺産に借金が含まれていると、債務の清算が優先されるため、遺産の一部しか受け取れない場合もあるでしょう。
相続財産の国庫帰属
特別縁故者への財産分与などがすべて完了すると、家庭裁判所が相続財産清算人に報酬を支払います。
報酬を支払っても財産の残りがあるときは、相続財産清算人が国庫に帰属させるため、相続人不存在の手続きはすべて完了です。
旧民法の制度では相続財産の清算に1年以上かかる場合もありましたが、現在は3種類の公告を同時に行うため、手続きに要する期間はかなり短縮されるでしょう。
相続人不存在の場合に準備しておきたいこと
相続人不存在の場合、親しい人などに遺産を渡したいときは、生前の準備が必要です。
特別縁故者は家庭裁判所で審理されるため、事実上の配偶者などがいても、遺産を渡せるかどうかはわかりません。
遺産の承継者を自分で決めたい場合は、以下の方法を検討してください。
遺言書を作成する
遺言書で受遺者を指定すると、相続人不存在でも意図したとおりの遺産相続を実現できます。
法的に有効な遺言書にしたいときは、公証役場に「公正証書遺言」の作成を依頼するとよいでしょう。
遺言書は自分1人でも作成できますが、わずかなミスでも無効になる恐れがあるため、専門家による作成が理想的です。
公証役場では公正証書遺言の原本を保管しており、改ざんや紛失などのリスクも回避できます。
健康上の理由で外出が難しい方は、公証人に出張を依頼してください。
遺言執行者を決めておく
遺言書で遺言執行者を指定しておけば、相続手続き全般に対応してもらえます。
遺言執行者には資格要件がないため、未成年者や破産者以外であれば、友人などを指定しても構いません。
ただし、相続税申告や相続登記など、複雑な手続きにも対応しなくてはならないため、高度な専門知識が必要です。
身近に適任者がいないときは、弁護士などの専門家に遺言執行者を依頼してみましょう。
生前贈与する
相続人不存在の状況でも、財産を渡したい人がいる場合は生前贈与を検討してください。
相続財産清算人が選任された場合、財産の帰属先を選べなくなりますが、生前贈与は受贈者(贈与を受ける人)の指定が可能です。
生前贈与で財産の所有権を移転しておけば、預貯金や不動産などを有効活用してもらえるでしょう。
高額な財産を渡すと贈与税がかかるため、税理士のアドバイスも参考にしてください。
まとめ
相続人不存在の場合、受遺者や特別縁故者がいなければ、遺産は国庫に帰属します。
先祖から引き継いだ不動産などがあり、親しい人に有効活用してほしいときは、遺言書や生前贈与を検討してみましょう。
弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所では、相続に関するお悩みを解決できるよう、無料相談を受け付けています。
相続人不存在や遺産の承継に困ったときは、いつでもお気軽にご相談ください。