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最終更新日:2024/9/6

遺産相続は弁護士に相談すべき!依頼する費用相場やタイミングについて

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

遺産相続は弁護士に相談すべき!依頼する費用相場やタイミングについて

この記事でわかること

  • 遺産相続問題に強い弁護士に相談すべき理由
  • 遺産相続問題に強い弁護士の選び方
  • 弁護士に相談する費用相場

遺産分割は、法律で定められたルールに従って行います。
もし誤った対応をしてしまうと、次のような失敗をしてしまうかもしれません。

  • 本来、請求できるはずの相続分に気付かず、損をしてしまった
  • 相続人で遺産を隠していた者がおり、争いに発展した
  • 手続きの方法を調べるのに時間がかかり、法律で定められた期限を過ぎてしまった

適切に対応するには、遺産相続問題に強い弁護士へ相談するのが良いでしょう。
ただし、ケースによってはご自身のみで対応できる場合や、他の専門家に相談した方が良い場合もあります。
ここでは、弁護士に相談した方が良いケースや依頼した場合の費用などを詳しく解説します。

遺産相続問題に強い弁護士に相談すべき理由

遺産相続を弁護士に相談すべき理由は、以下のとおりです。

  • 遺産分割で損をしないため
  • 遺産隠しを防止するため
  • 手続きの労力を減らせるため

それぞれの理由について詳しく解説します。

遺産分割で損をしないため

遺産分割では、相続人間の不公平を是正するための制度が定められています。

代表的な制度は次の通りです。

<寄与分>
遺産の維持や増加に貢献した場合に相続分を加算する制度
<特別受益>
生前贈与などで特別の利益を得た相続人がいる場合、遺産に合算して分配する制度
<遺留分>
法定相続人に最低限相続できる割合を定めた制度
<相続人の廃除>
不正な手段で遺産を多く得ようとした相続人などを除外する制度

これらの制度は、自分から主張しなければ認められません。

本来は認められるケースであっても、知らないままだと主張できずに損をしてしまう恐れがあります。

遺産隠しを防止するため

弁護士の介入により、遺産隠しを未然に防いだり、既に隠された遺産を発見できる場合があります

弁護士は、次のような方法で遺産隠しを調査します。

<相続人への確認>
財産隠しが疑われる相続人や、他の親族にヒアリングを行い、財産目録との整合性を確認します。
<預貯金口座やクレジットカードの履歴の調査>
弁護士の職権で預貯金口座やクレジットカードの取引履歴を開示請求し、不自然な入出金履歴がないか調査します。
<不動産名義人の調査>
登記事項証明書や固定資産税納税通知書、名寄帳(なよせちょう)などで、被相続人が名義人となっている不動産を確認します。

手続きの労力を減らせるため

相続には多くの手続きがあり、一例として次があります。

  • 被相続人の戸籍調査と法定相続人の確定
  • 遺産の調査や評価など
  • 遺言書の確認や検認
  • 遺産分割協議書の作成
  • 遺留分の侵害がある場合の請求
  • 特別寄与分がある場合の請求
  • 相続税の計算や申告
  • 名義人の変更(不動産など)

たとえば法定相続人の確定には被相続人の出生から死亡までの戸籍を調査しますが、相続関係が複雑な場合、時間や手間がかかります。

また、手続きに期限がある場合、気付かずに過ぎてしまうと後から取り返しがつきません。

弁護士へ依頼すると、手続きで失敗がなく、労力を大幅に削減できるのは大きなメリットでしょう。

弁護士に遺産相続を相談した方がいいケース

遺産相続について「相続人間で争いが発生する可能性が高い」場合は、弁護士に相談しましょう。
遺産相続で揉める主な原因は、以下のとおりです。
相続の際に相続人間で揉める原因

相続の際に相続人間で揉める原因

  • (1)遺言書が本物かどうか疑わしい
  • (2)遺産分割協議で相続分を強硬に主張する人がいる
  • (3)相続人に想定外の異母兄弟が現れた
  • (4)遺留分に満たない相続人がいるため遺留分侵害額請求を主張している など

法定相続人(兄弟姉妹を除く)は、遺産のうち一定の割合は最低限相続できると保証されています
この最低限相続できる分を遺留分といいます。
たとえば遺言書ですべての遺産を一部の相続人にだけ相続させるケースを考えてみましょう。
この場合、他の相続人は遺留分を侵害されているため、承継した相続人に遺留分侵害額請求できます。

相続が発生した場合に多少の争いは珍しくありませんが、ほとんどの場合は当事者同士の話し合いによって解決します。
しかし、争いが激しくなると当事者間で話し合いができなくなるため、早めに弁護士に依頼して、トラブルを未然に防ぎましょう。

相続を相談できる弁護士以外の専門家

相続手続きを依頼できる専門家は、弁護士のほかに司法書士、行政書士、税理士がいます。

司法書士

不動産を相続する場合、相続登記をして名義人を変更しなければなりません。

相続登記をするには法務局に遺産分割協議書などの書類を提出しますが、司法書士に依頼すると手続きを代行してくれます。

行政書士

遺言書、戸籍、遺産分割協議書など、相続手続きに必要な書類の作成や収集を依頼できます。

相続登記や相続人間の紛争解決などは依頼できません

税理士

相続税や確定申告などを相談できます。

相続税の計算は複雑であり、正しく計算するのは困難かもしれません。

ただし、相続財産の額によっては相続税の納付が不要となるため、必ずしも税理士に依頼する必要はありません

遺産相続問題に強い弁護士の選び方

遺産相続に強い弁護士を選ぶときは、以下のポイントをチェックしてください。

遺産相続問題に強い弁護士の選び方

それぞれの選び方のポイントについて解説します。

遺産相続問題を解決した実績があるか

弁護士事務所などのホームページには、遺産相続問題を解決した実績が記載されている場合があります。
解決実績が多いほど、遺産相続問題に積極的に取り組んでいるため、より実績の多い弁護士を選びましょう。
とはいえ、すべての弁護士がその実績をホームページに掲載しているわけではないため、あくまで目安と考えてください。

弁護士としての経験年数がどれくらいか

実績の数と同じくらい重要なのが、弁護士として活動している年数の長さです。
弁護士となってからの年数が長いほど、多くの遺産相続を経験している可能性が高く、いざという時に頼りになります。
弁護士になる前に、弁護士事務所の職員やその他の職業で様々な経験を積んでいる場合もあります。
しかし、遺産相続の手続きを円滑にすすめるために大事なのは、弁護士として相続人や他の弁護士と交渉を行った経験です。
弁護士としての経験年数や担当した事案などは事前にチェックしておくと良いでしょう。

費用を明確に説明するか

実際にかかる弁護士費用の総額は、相続の手続きがすべて終わらない限り確定しません。
正式な依頼の前に、弁護士費用の見込み額や計算方法を明らかにしてくれる弁護士をおすすめします。
依頼者としては、見込み額や計算方法もわからなければ最終的な弁護士費用がいくらになるか不安になってしまうでしょう。
依頼者の不安に寄り添い、弁護士費用についても丁寧に説明してくれる弁護士であれば、相手との交渉段階でも親身な対応をしてくれるはずです。

依頼者に不利な情報も含めて教えてくれるか

弁護士は依頼者の味方であり、遺産相続の依頼を受任した場合依頼者の利益を最優先に行動します。

しかし、法律上どうしても依頼者の希望が認められないケースや、やむを得ず依頼者に不利な状況となるケースもあります。
弁護士を判断する基準の一つは、依頼者にとって不利な情報も隠さずに教えてもらえるかどうかです。
依頼者にとって本当に良い弁護士は、不利な情報もきちんと伝えた上でで、さらにその対策を考えます。
依頼者にとって都合の悪い情報を伝えない行為は、結果として依頼者に不利益をもたらす恐れもあるため、本当に良い弁護士とはいえないでしょう。

相談や質問がしやすいか

依頼者は、手続きを進めながら弁護士にさまざまな相談をします。
その際に、誠実に質問や疑問に答えてくれるか、あるいは対応が早いかどうかも、弁護士選びの大きなポイントです。
質問や疑問にすぐ回答してくれない、あるいは満足のいく対応をしてもらえないと感じる場合は、その後もあらゆる場面で不満を感じるでしょう。

契約書を作成してくれるか

弁護士に遺産相続問題の解決を依頼するときは、契約書を取り交わしましょう。
契約書には、以下のような内容が記載されています。

  • 業務内容
  • 弁護士費用の計算方法
  • 弁護士費用を払うタイミング

契約書がなければ、思いもよらぬ追加費用が発生したといったトラブルが発生する恐れがあります。

相続税のアドバイスができるか

遺産分割の方法によって相続税の負担が変わるのを考慮せずに遺産分割を行うと、多額の相続税を納付しなければならない恐れがあります。
相続人同士の争いを解決しつつ、相続税の負担も考慮したアドバイスをくれる弁護士の方が、依頼者にとっては良い弁護士といえるでしょう。

遺産相続を弁護士に相談するタイミング

相続人間で揉める要素がある場合、遺産相続はできるだけ早く弁護士に相談しましょう。

揉める要素がある相続とは、次のような場合です。

  • 遺産に不動産がある
  • 疎遠になっている相続人がいる
  • 異母兄弟や認知した子供がいる
  • 相続人で生前贈与や金銭的な援助を受けた者がいる
  • 被相続人への介護や経済的な援助を長年続けていた相続人がいる

相続が開始する前は円満にまとまると思っていても、いざ遺産分割協議をすると思わぬトラブルが発生するケースは珍しくありません。

被相続人が存命であれば遺言書を残すなど生前にできる対策もあるため、早めに弁護士へ相談しましょう。

遺産相続問題における弁護士費用の相場

相続手続きの弁護士費用は、旧報酬規定では次の通り決まっていました。

報酬規定はすでに撤廃されていますが、現在でも報酬の参考にしている弁護士は少なくありません。

相続額 着手金 弁護士報酬
300万円以下 8% 16%
300万円超~3,000万以下 5%+9万円 10%+18万円
3,000万円超~3億円以下 3%+69万円 6%+138万円
3億円超 2%+369万円 7%+738万円

現在、多くの弁護士事務所では次のような計算基準を設けています

  • 相談料:30分5千円ほど(初回無料の場合もあり)
  • 着手金:固定額(20万円〜200万円以上)
  • 報酬金:相続額×一定割合(5%~10%ほど)
  • 手数料や実費精算など:数万円程度(裁判所の申立て費用など)

相続額について、争いの対象となっていない財産の分は減額される場合もあります。

遺言書の作成、相続放棄、遺産分割協議など、個別の報酬額は次のページを参照してみてください。

まとめ

遺産分割手続では、思わぬトラブルがつきものです。

親族間で仲が良かった場合や、生前に話し合っていた場合でも、相続開始後に揉めてしまうケースは珍しくありません。

相続人間で争いが起きてしまった場合、時間や手間だけでなく精神的な負担も重くなります。

もし適切な対応をとれないと、相続人間の争いが長期化して将来にも遺恨が残るような結果になりかねません。

弁護士は相続手続きだけでなく、紛争解決や交渉のプロフェッショナルでもあります。

依頼すると弁護士報酬は発生しますが、遺産相続で揉める要素がある場合、報酬以上のメリットがあるケースがほとんどです。

できるだけ早く遺産相続問題に強い弁護士に相談し、円満な相続をめざしましょう。

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