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最終更新日:2023/3/28

親から子どもへ住宅を生前贈与するとかかる税金【非課税にする方法とは】

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 子どもに住宅を生前贈与するとかかる税金を知ることができる
  • 親が子どもに住宅を生前贈与する際の流れや必要な書類がわかる
  • 住宅を生前贈与する際に発生する贈与税を節税する方法がわかる

自宅を保有したまま亡くなると、自宅の土地・建物は相続財産となり、相続税の対象になります。

そこで、相続税の負担を軽減するために、自宅を生前贈与しようと考えている方もいるでしょう。

自宅を生前贈与すると、贈与された子どもにはどのような税金が発生するのでしょうか。

また、その税負担を軽減できる方法にはどのようなものがあるでしょうか。

親から子どもに住宅を生前贈与するときにかかる税金

親が所有している自宅を子どもに生前贈与すると、贈与税の対象になるということは、多くの方が知っていることでしょう。

ただ、実際にどれくらいの税額が発生するのかまで把握している方は、少ないかもしれません。

また、生前贈与すると、贈与税以外にも税金が発生します。

それらの負担がどれくらいになるのか、確認しておきましょう。

贈与税

自宅に限らず、財産を贈与された人には贈与税が発生します。

贈与税の額は、毎年1月から12月までの1年間に贈与された財産の合計額から計算します。

財産を受け取った人については、その財産を誰から受け取ったかに関係なく、すべての財産が対象となることに注意が必要です。

贈与税の計算方法

贈与税の計算は、以下のような流れで行います。

①1年間に贈与された財産をピックアップする

贈与税の計算は、1年間に他の人から贈与により受け取った財産の合計額から求めます

預貯金の通帳の動き、あるいは不動産の登記の情報から、贈与の事実がないか確認しておきます。

また、現金を受け取った場合も、贈与の対象になるものがあるため、漏れのないようにしておきましょう。

住宅を生前贈与された場合は、法務局で登記しなければならないため、登記事項証明書の内容を確認しておきます。

もし、住宅を贈与されたにもかかわらず登記が行われていない場合は、まず法務局で登記を行いましょう。

②贈与された財産の評価額を計算する

贈与された財産が預貯金や現金であれば、すぐにいくらの贈与が行われたかがわかります。

しかし、土地や建物などの財産を贈与された場合、その財産がどれだけの価値があるのか、わからないこともあります。

そこで、贈与された財産の相続税評価額を計算し、どれだけの贈与が行われたのかを求めます

親から住宅を生前贈与された場合、土地と建物の相続税評価額を求める必要があります。

このうち土地については、国税庁が公表している路線価か、市町村が公表している固定資産税評価額から計算します。

路線価と固定資産税評価額のいずれによるかは、国税庁ホームページにある路線価図を確認する必要があります。

路線価図にかかれている土地の所在地について、路線価が設定されている場合は、路線価で計算します。

また、路線価図に路線価が設定されていない地域は、固定資産税評価額をもとに計算を行います。

実際には、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算しなければならないため、倍率表も確認しておきましょう。

また建物は、固定資産税評価額をそのまま相続税評価額となります。

固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に記載されているため、必ず事前に確認しておきましょう。

また、課税明細書を紛失してしまった場合は、市区町村役場で入手することができます。

③贈与された財産の評価額の合計額を計算する

土地や建物の相続税評価額を計算したら、他に贈与された財産の金額とあわせて、贈与財産の合計額を求めます。

贈与税の計算対象となる金額は、「贈与財産の合計額-110万円」で計算されます。

そのため、1年間に110万円を超える贈与を受けた場合、贈与税の納税義務が発生します。

④税額を求める

贈与財産の合計額-110万円で計算された金額に対し、税率を乗じて、贈与税の金額を計算します。

贈与税の税率は一律ではなく、贈与財産の金額が大きくなるほど税率が高くなります。

そのため、以下の速算表のいずれかを使って、贈与税額の計算を行います。

(特例贈与財産用)

直系尊属である祖父母や親から、成人の子や孫に対する贈与に適用されます。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

(一般贈与財産用)

特例贈与財産に該当しない場合に適用されます。

兄弟間、夫婦間、成人年齢に達していない子や孫に対する贈与が主なケースです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

自宅を贈与する場合は、特例贈与財産に該当することが多いでしょう。

同じ金額の財産を贈与した場合、特例贈与財産に該当する方が適用される税率が低くなり、贈与税が少なくなります。

子どもに自宅を贈与する場合、子どもが未成年の場合は成人年齢に達するまで待つのも、1つの考え方となります。

不動産取得税

土地や建物を新たに取得した人には、不動産取得税がかかります。

ただ、相続により不動産を取得した場合には、不動産取得税はかかりません。

一方、土地や建物を贈与された人は、原則として固定資産税評価額×4%の計算により、税額が計算されます。

なお、不動産取得税には軽減措置が設けられており、土地の場合、相続税評価額を2分の1にした後、3%を乗じて計算します。

また、住宅の場合は相続税評価額×3%で計算されます。

登録免許税

法務局で土地や建物の登記手続きを行う際に、法務局に納める税金です。

親の自宅を贈与された場合、土地や建物の名義を変更する手続きを法務局で行います。

この時、法務局に名義変更にあたっての税額を納めなければなりません。

贈与があった場合、土地・建物の固定資産税評価額×2%が登録免許税の税額となります。

この税率は、相続があった場合の0.4%の5倍にもなります。

親から子どもに住宅を生前贈与するときの流れ・必要書類

親から子に住宅を贈与する場合、どのような流れで手続きを進めていけばいいのでしょうか。

贈与の事実を確認するため、あるいは申告手続きをスムースに進めるため、書類の準備も忘れずに行いましょう。

①贈与契約書を作成する

贈与は、財産を所有する人と財産を受け取る人との契約により成立します。

単純に財産を渡せば贈与は成立しますが、登記や贈与税の申告にあたってトラブルがないよう、契約書を作成しておきます

特別に難しい内容の契約ではないことから、自分で作成することもできます。

作成した贈与契約書には、双方が署名・押印を行いましょう。

実印を使って契約書を作成すると、トラブル回避にはより効果的と言えます。

②登記申請に必要な書類を集める

贈与の登記申請を行う際には、多くの書類が必要となります。

登記しようとする直前にこれらの書類を収集しようとしても、時間がかかることが予想されます。

中には、年末間際に贈与しようとして、年内に間に合わないケースも考えられます。

そこで、贈与の登記申請に必要な書類は、早めに収集をしておくことをおすすめします。

この時、必要になるのは以下の書類です。

必要な書類

  • 土地や建物の登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票
  • 登記済証

この他の書類が必要になるケースも考えられるため、確認しておくといいでしょう。

③法務局で名義変更を行う

法務局で、土地や建物の名義変更を行います。

登記申請書と必要書類を提出すると、1~2週間程度で登記が完了します。

登記が完了すれば、自宅の名義変更に関する手続きはすべて終了したことになります。

④贈与税の申告・納税を行う

自宅を贈与された場合、贈与税の申告が必要になると考えられます。

贈与税の計算と申告書の作成を行い、発生した税額を納付します。

なお、贈与税の申告時期は、贈与があった日の翌年2月1日~3月15日となっています。

住宅にかかる贈与税を節税する方法

贈与税の税額は、贈与された財産が高額になるほど、その税額も高額になります。

しかし、住宅を贈与された場合は、現金が増えたわけではないため、納税資金の確保に苦労することもあり得ます。

このため、贈与を行いつつ、節税を行うことを考えるのが望ましいと言えます。

では、贈与税の節税にはどのような方法があるのでしょうか。

相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度は、最大2,500万円までの財産の贈与を無税で行う制度です。

ただし、完全に無税になるわけではなく、相続が発生した時には相続税の課税対象に含めなければなりません。

そのため、贈与税の節税にはなるものの、相続税の節税にはならないというデメリットがあります。

それでも、相続税が発生しない場合には、結果的に無税で自宅を子どもに譲ることができます。

トータルのメリット・デメリットをよく検討した上で、メリットがある場合には利用するといいでしょう。

何年にもわたり少しずつ贈与する

贈与を行うと、1年あたり110万円の基礎控除が適用されます。

基礎控除以内の金額であれば、毎年少しずつ贈与することが可能です。

5年では550万円、10年では1,100万円の財産が無税で贈与できることとなります。

この基礎控除内の贈与を毎年行えば、1年あたりは少額でも、トータルでは大きな金額の財産を無税で贈与できることになります。

まとめ

土地や建物といった不動産の贈与は、あまりなじみがないかもしれません。

登記が必要になることから、費用と手間がかかるというイメージがあるためです。

しかし、現金や預貯金を贈与しても、相続が発生した際には名義預金などの問題が発生し、大きなトラブルになることがあります。

相続税を軽減するために確実に財産を贈与するには、自宅の贈与は最適と言えるため、ぜひ検討しておきましょう。

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