この記事でわかること
- 相続人調査の必要性がわかる
- 相続人調査の手順がわかる
- 相続人調査は自分でできるかどうかがわかる
- 相続人調査を専門家に依頼した場合の費用がわかる
親族が亡くなると相続が発生します。
相続が発生すると、避けては通れないのが、相続手続です。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議も必要になります。
相続手続きや遺産分割協議の際には、一番始めに相続人調査を行います。
相続人は子供一人だけであっても、その人だけが相続人であることを確認するため、戸籍謄本の収集が必要です。
相続人調査は、自分でもできるのでしょうか。それとも、専門家に依頼した方がいいのでしょうか。
相続人調査の具体的な方法と専門家に依頼するメリットをご紹介します。
目次
相続人調査の必要性とは
相続人調査は、相続手続きに欠かせないものです。
相続人は明らかなのに、なぜそれが必要なのでしょうか。
相続人調査の必要性について解説します。
相続人調査は相続人確認のため
父母と子2人の家族で、父が亡くなったとします。
この場合、相続人は母と子の2人だけであるように思いますが、本当にその2人だけが相続人なのか、確認する必要があります。
たとえば、父が再婚で、前の妻との間に子供がいた場合は、その子供も相続人になります。
また、母と子2人に知らせずに、婚外子を認知していたケースもあります。
あるいは、養子縁組をしていた、というケースもあります。
このように、相続人調査をすると新たな相続人が判明することがあります。
相続手続きや遺産分割協議を行うには、相続人全員の同意が必要になるため、本当に相続人はこれだけしかいないか、を確認する必要があります。
相続人の人数が違うと、分け方や手続きも変わってきます。
そのため、相続人調査は重要です。
相続人調査は戸籍謄本を収集すること
そもそも相続人の調査とは、戸籍謄本を収集することです。
被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集します。
戸籍には、出生、婚姻、子の出生、養子縁組、認知などが記載されています。
それらの戸籍を読み取って、被相続人の相続人は誰になるのか、戸籍をたどっていきます。
相続人調査の手順
相続人を調査するには、戸籍謄本を収集していくことになります。
どのような手順で調査するのでしょうか。
被相続人の出生から死亡までの戸籍
亡くなった人の配偶者や子供が相続人の場合、親や兄弟が相続人の場合、あるいは甥や姪が相続人の場合など、様々なケースがあります。
相続人が誰かによって、収集する戸籍謄本も異なりますが、すべてに共通するのが被相続人の出生から死亡までの戸籍です。
相続人調査をするには、まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得します。
戸籍の種類
戸籍には、現在戸籍、改製原戸籍、除籍の3種類あります。
現在戸籍は、現在生きている人が記載されている最新の戸籍です。
戸籍は筆頭者とともに、配偶者と子供が記載されていますが、筆頭者が亡くなっても、配偶者や子供が生きていれば、現在戸籍となります。
戸籍は、戸籍法の改正で書式などが変更されて、その都度新しい戸籍が作成されています。
法律改正前の古い書式で作成された戸籍を改製原戸籍(かいせいはらこせき/かいせいげんこせき)と言います。
書式の変更ではありますが、原戸籍の時にすでに除籍になっていた人は、新しい戸籍が作られる際には省略されます。
そのため、新しい戸籍には現在事項しか記載されず、原戸籍謄本を取ってみて、初めて子供が判明することもあります。
原戸籍謄本も、相続調査には欠かせない戸籍謄本です。
除籍は、戸籍に記載されている人全員が死亡したり、結婚や転籍などで別の戸籍に移ったりして、その戸籍に誰もいなくなって閉鎖された戸籍です。
出生時に入籍された親の戸籍や転籍前の戸籍などは、除籍になっています。
請求する時は、戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本が順を追ってつながるように取得します。
戸籍謄本の取り方
戸籍謄本は、本籍地を管轄する市区町村で取得できます。
近くであれば、戸籍謄本を直接取りに行くことができますが、遠方の場合は、郵送請求をすることができます。
最近では、各自治体のホームページなどに請求方法が記載されています。各自治体の請求書や請求に必要な書類が掲載されています。
一般的には、請求する人の身分証明書の写しや、請求する人との関係を示すものなどが必要になります。
子や孫などが、直系尊属である父母や祖父母の戸籍を取得することはできますが、兄弟姉妹などの傍系親族を取得する際には、兄弟姉妹の委任状を求められることがあります。
また、被相続人の本籍地が分からない場合には、被相続人の除票(亡くなった人の住民票)で本籍が記載されたものを取得すると、本籍地が分かります。
出生から死亡までの戸籍謄本の取り方
被相続人が出生から死亡まで、本籍が同じ市区町村内であれば、出生から死亡までの戸籍謄本が欲しいと役所の担当者に伝えると、一度に取得することができます。
出生から死亡までに別の市区町村へ転籍したり、結婚などで他の市区町村で新たな戸籍を作成したりしている場合は、戸籍があった市区町村に請求する必要があります。
戸籍を移動している場合は、まずは、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本を取得し、出てきた戸籍謄本に記載のある前の戸籍を順に取っていくことになります。
戸籍の読み取り方
相続人を調査するには、戸籍謄本を読み解いていく必要があります。
戸籍謄本はどのように読んでいくのでしょうか。
戸籍謄本の記載内容
戸籍には、筆頭者(昭和以前の戸籍では「戸主」)、戸籍に入っている人の氏名が記載されています。
それぞれの人について、生年月日、父母、筆頭者との関係、従前の戸籍などが記載されています。
戸籍には、いつ出生して、どこに転籍したのか、誰と結婚したのかも記載されます。さらに養子縁組や認知などについても、記載されます。
現在の戸籍は、横書きで、項目ごとに必要な情報が記載されていますが、現在の横書きになる前は、縦書きで印字された戸籍、さらにその前の戸籍になると、縦書きで手書きされた戸籍になります。
縦書きの戸籍では、「何年何月何日出生につき入籍」や「何年何月何日に(本籍地の記載)(戸主の記載)の長男(名前)と婚姻につき除籍」など、項目ではなく、文で記載内容が記載されています。
戸籍謄本を読み解く方法
結婚や転籍で、本籍地が変わっている場合は、どこへ変わったのか、新本籍地の記載を探します。
結婚の場合は、親と同じ本籍地のケースも多々ありますが、結婚によって別の戸籍が作成されるため、同じ本籍地で筆頭者が別の戸籍を取得することになります。
婚姻で新たな戸籍が作成された場合、結婚する相手の戸籍に入るのか、その人の新たな戸籍が作られて結婚相手がその戸籍に入っているのかを判断して、次の戸籍を取得します。
あるいは、最近の戸籍から古い戸籍をたどる場合には、どこから入籍してきたのか、旧本籍地についての記載を確認します。
結婚の場合、名字が変わることがあるので、旧本籍地の筆頭者は、旧姓名の親族の名前になっていることが多くあります。
読み解く上で注意すること
被相続人の出生から死亡までの戸籍の中に、養子縁組や認知がある場合は、注意が必要です。
兄弟姉妹が相続人になる場合、被相続人の両親が養子縁組をしていて、知らない兄弟姉妹が判明することがあります。
兄弟姉妹は、把握しているだけ、と思っているかもしれませんが、調べたら新たな相続人が出てきた、といったケースは時々あります。
また認知は、自分の子供であると認めたことになり、認知した子も子供として相続人の一人になります。
戸籍を読み解いて相続人を調査する際には、様々なことに注意が必要です。
相続人の現在戸籍
被相続人の出生から死亡までの戸籍が揃ったら、相続人が誰になるかを探していきます。
配偶者と子供が相続人の場合は、配偶者と子供の現在戸籍をそれぞれ取得します。
配偶者については、被相続人の戸籍の中に入っていますので、被相続人の最後の戸籍に記載されていることが多く、その場合は兼用することができます。
もし、婚外子や養子などが判明した場合は、相続人になるため、その子たちの現在戸籍が必要になります。
被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合は、兄弟姉妹であることを確認するため、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍が必要になります。
それによって判明した兄弟姉妹の現在戸籍を準備します。
また、兄弟姉妹がすでに亡くなり、甥姪が相続人となる場合は、上記の被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍に加えて、死亡した兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍が必要になります。
兄弟姉妹や甥姪がいる場合など、相続人の人数が多ければ多いほど、収集する戸籍謄本の量は多くなります。
相続人調査は自分でできる?専門家に依頼すべき?
戸籍謄本を取得していく相続人調査ですが、自分でできるのでしょうか。
それとも専門家に依頼した方がいいのでしょうか。
自分でやると、かなり大変
戸籍謄本自体は、本籍地の市区町村の役所に請求して行います。
郵送請求もすることができ、遠方の役所に出向くことなく取得することができます。
ただし、郵送請求をする場合には、手数料を郵便小為替にして同封する必要があります。
郵便小為替は、平日昼間に郵便局で購入しなければならず、手間もかかります。
さらに、昭和以前の古い除籍謄本は、手書きになっており、読みにくい字も多々あります。年月日等の数字もすべて漢字表記され、何が書いてあるのかを読み取るだけで、一苦労です。
転籍先の本籍地がどこに書いてあるのか、どれが必要な戸籍なのかは、戸籍謄本の読み方に慣れていない人では、読み解くのが難しく、時間がかかります。
何より、誰が相続人になるかの判断を誤ってしまうと、再度追加で戸籍謄本をとることになり、何度も手間と時間がかかる場合があります。
専門家に依頼するメリットは大きい
専門家に依頼をすると、相続人調査をすべて任せることができます。
相続人である依頼者の名前と住所、生年月日から、相続調査を行い、必要な戸籍謄本一式を揃えてくれます。
戸籍謄本を揃えるだけでもかなりの労力を使うため、それだけでも専門家に依頼するメリットがあります。
また、専門家であれば、戸籍の読み取りにも慣れており、確実に相続人を調べることができます。
特に、甥姪相続の場合や、結婚離婚を繰り返して、前婚での子がいる場合など、相続人当事者には請求しにくい戸籍もあります。
専門家であれば、そういった戸籍も請求することができ、相続人全員を把握することができます。
専門家への依頼は、相続調査だけでなく、相続手続きに便利な法定相続情報証明書も作成してもらえます。
相続人が多くなりそうなケースや親族関係が複雑で、相続人調査が大変なケースでは、専門家に依頼した方がいいと思われます。
相続人調査を専門家に依頼した場合の費用
専門家に依頼すると、どのくらい費用がかかるのでしょうか。
自分で取得してもかかる費用
戸籍謄本を取得する際には、手数料がかかります。
自分で取得する場合であっても、戸籍謄本の手数料はかかるため、その金額は最低限かかることになります。
専門家に依頼する場合は、戸籍謄本の手数料に加えて、専門家への報酬が必要になります。
戸籍謄本の手数料は、全国一律です。
現在戸籍は1通450円、除籍または原戸籍は1通750円です。
現在戸籍は、相続人の人数分必要になることが多いでしょう。
除籍や原戸籍は、被相続人のものだけでも2~3通取得することになります。
兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合には、さらに戸籍謄本の数が増えることになり、兄弟姉妹が多い場合などは、戸籍謄本の手数料だけでも2~3万円かかるケースもあります。
すべて近くの役所で取得できればいいのですが、遠方に本籍がある場合は、往復の送料や小為替の手数料(1枚200円)が必要となり、戸籍謄本の手数料よりももっとかかることになります。
行政書士に依頼する場合
相続人調査は、弁護士、司法書士、行政書士などができますが、弁護士は相続人間で争いがある場合、司法書士は不動産登記の必要がある場合、行政書士はそれ以外の場合に依頼します。
行政書士に依頼する場合には、上記の戸籍謄本取得のための実費に加えて、報酬が必要になります。
報酬の相場は、3~8万円ですが、相続人の人数などによっても変動があります。
統一の規定があるわけではないので、行政書士それぞれの金額になります。
また、単に相続人調査のみならず、相続手続きについて相談することもでき、遺産分割協議書の作成サポートもしてもらえます。
相続人調査に加えて、法定相続情報証明や遺産分割協議書作成などと合わせて依頼されることが多いようです。
弁護士であれば、相続人同士の争いや裁判手続き、司法書士であれば登記手続きの一環として相続人調査を行うため、相続人調査のみを受けるというのは少ないようです。
まとめ
相続手続きをするためには、相続人調査が不可欠です。
相続人調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人の各現在戸籍謄本を収集します。
戸籍謄本は、本籍地の市区町村に請求しますが、遠方の場合は、郵送請求もすることができます。
相続人調査では、兄弟姉妹が相続人になるケース、甥姪が相続人になるケース、離婚結婚を繰り返しているケース、転籍を繰り返ししているケースでは、時間と手間がかかります。
専門家である行政書士に依頼すれば、やっかいな戸籍謄本の読み取りや相続人の判断をしてくれます。
専門家の報酬はかかりますが、相続調査だけでなく、相続手続き全般のサポートもしてもらえるため、大きなメリットがあります。
相続人調査をする際には、行政書士に依頼することをおすすめします。