この記事でわかること
- 異父・異母兄弟の相続割合がわかる
- 異父・異母兄弟と相続トラブルになりやすい問題がわかる
- 異父・異母兄弟との相続トラブルを回避する方法がわかる
相続が発生すると、今まで知らなかったことを知るケースがあります。
家族の知らない財産があったり、家族は全く知らなかった遺言書が出てきたり、その内容はさまざまです。
しかし、あまり悠長にしていられないケースもあります。
それが「異父や異母兄妹」が現れた場合です。
以前より存在を知っている場合は、事前にどのようなことが想定されるかを予測できますが、突然被相続人の葬儀などで現れた場合は大変です。
そこで今回は、異父・異母兄妹がいた場合に相続争いにならないよう未然に防ぐにはどうすればよいのか、という角度からお話を進めていきます。
目次
異父・異母兄弟でも相続権がある
例えば、被相続人が亡くなった時の配偶者には、相続の権利があります。
離婚等の理由で、亡くなった時点で配偶者でなかった者には相続の権利はありませんが、その間に生まれている子どもに対しては相続の権利があります。
もちろん受け取れる相続分は、現被相続人の配偶者の子どもの法定相続分と同じになっています。
そして、この異父・異母兄弟にも、著しく公平ではない遺産分割が行われた場合、「遺留分」を請求する権利があり、請求された場合にはそれに応じなければなりません。
ただし、「認知」を行っていない場合はこの限りではありませんので、認知されているのか否かをまず確認する必要があります。
認知されている場合は、内縁の妻との子、前妻との子について同等の扱いがされます。
異父・異母兄弟の相続分の割合
もちろん、遺産相続ですから遺言書やみなし相続財産といわれる死亡保険金などがあれば、その通りに分割されるわけですが、それがないといった場合、法律にのっとって分割されることになります。
では一体どのような分割方法が考えられるのでしょうか。
例を挙げて説明していきます。
親の遺産を異父・異母兄弟と分割する場合
例えば、被相続人には現在の妻、そしてその間に生まれた実子2人、前妻との間に子が1人おり、認知されていたとします。
ここで考えられるケースに、現在の妻が相続放棄を行った場合が考えられます。
もちろん前妻の子は認知されているので「子」としてカウントしますが、その母親である前妻については、相続の権利はありません。
通常、現在の妻である配偶者が相続を放棄していなければ、2分の1を配偶者が、残りの2分の1を2人の子と認知している1人の子とで分け合うことになります。
一方、この配偶者が相続放棄をした場合、本来この妻が受け取る予定だった2分の1の遺産が残ることになります。
相続では遺産が残ってしまうことはないため、必ずその財産を管理する人を見つけ出さなければならないという見方ができます。
分割方法は非常に簡単で、相続の権利がある合計3人の子どもたちで3分の1ずつ財産を分けることになります。
現配偶者が相続放棄をすると自分の子2人への遺産の配分も増えますが、認知している子にも通常より多い遺産が渡ることになります。
このような分割割合を考慮した上で相続放棄を検討するようにしましょう。
兄弟の遺産を異父・異母兄弟と分割する場合
被相続人に子がなく、両親などの直系尊属もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が法定相続人となります。
兄弟それぞれの両親が同じ場合には、法定相続分はすべての兄弟で均等になります。
例えば、被相続人に2人の兄弟がいた場合、それぞれの法定相続分は2分の1となります。
しかし、異父・異母兄弟がいる場合は、法定相続分の計算に違いが生じます。
民法の規定で、父母一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする規定があるためです。
例えば、被相続人に兄弟が2人いるほか、異母兄弟が1人いたとします。
この場合、相続人となる兄弟姉妹は全部3人となりますが、異母兄弟だけは相続分が半分になります。
そのため、それぞれの相続分は、父母双方が同じ兄弟についてはそれぞれ5分の2となり、異母兄弟については5分の1となります。
異父・異母兄弟との相続で大きな問題になりやすいこと
相続で「他人にわたって欲しくない財産」をおろそかに考えていると、大きな問題に発展する可能性があります。
現預金は、たとえ今の配偶者との間にできた実子であっても使って亡くなってしまうことを考慮すれば、誰に渡してもある意味同じということができます。
もちろん中には、異母兄弟には1円たりとも渡したくないという人もいるかもしれません。
しかし現預金ならまだしも、もっと重要なものも隠れています。
それが「会社を経営しており、その株式は一族で過半数以上を所有している」といったケースです。
この場合、万が一この株式を認知している子に渡すと株が外部に流出する恐れがあるので注意が必要です。
特に自分が経営している会社の株式を所有している場合は、その株式を、使えば無くなってしまう現預金などと同じように単純に扱えないということを十分自覚しておきましょう。
「会社が乗っ取られることもある?」外部への株式流出
会社の株式は重要です。
特に一族で経営している場合は議決権の問題もありたとえ1株でも他者へ渡したくないというのが実態かもしれません。
毎期黒字をたたき出す企業であれば配当の問題もありますし、会社を廃業する場合にも株式が一族内に集約されていれば非常に効率よく手続きが進みます。
ですが外部にわたってしまうと、場合によっては誰の手にあるかわからないということも考えられます。
異母兄弟も認知されているのであれば、相続の権利があるということは先の話で理解ができているところですが、この異母兄弟に株式が渡った場合、その時点で異母兄弟側に遺産は移ります。
当然相続の遺産分割の際に生じる順位も変わってきます。
被相続人の直結にその財産はないので、その部分について口出しをする権利はなくなります。
異母兄弟が亡くなった時は、その配偶者もしくはその子ども、場合によっては親へと変わっていくため、一度手放した株式が一族のもとへ戻ってこないものと考えておかなければなりません。
さてこうなると何が起こるのでしょうか。
議決権の問題が発生します。
誰が流出した株式を所有しているのかということがわかっている間はまだしも、それが把握できなくなってしまう可能性もあるのです。
誰がトップに立ち会社を引っ張っていくのかといったことが問題となるだけではなく、ある日突然この流出した株式を所有している人が会社をM&Aで知らない間に売却してしまうといったことも否定はできません。
ですから、誰が株式を所有しているかを把握しておくことも大切ですが、それだけ一族で所有しておかなければならないものが有るのであれば、初めから流出させない方法をとっておくことが大切です。
異父・異母兄弟に相続させない方法
さて、将来的にもうまく財産を分割しなければ多くの問題や争いが発生することが分かったうえで、これらを回避するための手段を考えてみましょう。
ここからは異父・異母兄弟に遺産を相続させない方法について解説します。
遺言書を作成する
実は、有効な手段の一つに「遺言書の作成」があります。
もちろん遺留分のことを考えるとそれなりに金銭の対価に置き換えて考えたときに平等にしておく必要があります。
そうでなければ結局家庭裁判所へ持ち込まれて、せっかくの遺言書が無駄に終わってしまう可能性があります。
しかし、もし公平に分割されていればこの遺留分は請求されないでしょう。
遺言書は、必ずしも相続人にその存在や中身を知っておいてもらう必要はありません。
また何度も書き直しができるため、一番初めに書いた遺言書から数えて現在の最新版までで何十枚という遺言書を管理している方がいるのも現実です。
公正証書役場へ行けば形式のしっかりとした遺言書を作成できるので、実際に相続が発生した時に、その遺言書に不備が見つかるということも防ぐことができます。
生前贈与をする
初めから生前贈与などで、外へ流出させたくないものは先に渡してしまうというのも得策だと言えます。
ただし贈与で先に渡している場合でも、後で発生する相続で公平性を問われる場合があるので、あまり露骨にはしない方が良いでしょう。
とはいえ、事業承継の特例制度がありますので、実際にそういったケースに当てはまりそうな場合は、これらも検討の材料として含めておくと選択肢の幅がひろがることはいうまでもありません。
異父・異母兄弟と相続でトラブルになった場合の対処法
異父・異母兄弟と相続でトラブルになった場合の対処法を紹介します。
遺産分割調停を申し立てる
遺産分割調停は、双方の話し合いだけでは遺産分割協議が成立しない場合に、家庭裁判所に申し立てることができます。
遺産分割調停は、調停委員を介して双方が話し合いを行います。
お互い直接面と向かって話し合いをする必要はなく、異父・異母兄弟で互いの立場の違いがあっても、淡々と話し合いを進めることができます。
また、調停委員から法的な考えに則った解決策を提案されることもあり、解決に導いてもらえる可能性が高くなります。
弁護士に相談する
どうしても相続人どうしでの話し合いで解決できない場合には、弁護士に話し合いを解決に導いてもらう方法を探るといいでしょう。
異父・異母兄弟での相続の場合は、特にお互いの立場を理解しあうことが難しく、感情的になりやすいことから、当事者どうしでの話し合いでは解決できないケースが多くあります。
そこで、弁護士に相続人の間に入ってもらい、お互いの主張を聞いてもらうようにしましょう。
弁護士は、法律に基づいて、双方が納得のいく解決方法を提案してくれます。
まとめ
異父・異母兄弟がいる場合は、認知しているか否かで相続する権利があるかどうかが分かれます。
認知されている場合は被相続人の遺産を受け取る権利が発生し、遺留分も請求することができます。
また、いくら認知されているとはいえ一族からは出てしまっている子ですから、渡す遺産によっては遺産分割以外の問題も発生するケースがあるのは言うまでもありません。
できるだけ揉め事やその後の問題が発生しないように、被相続人は事前に起こり得る可能性を潰しておく、事前に専門家に相談して対処方法を検討しておくなどの対策をしましょう。
また贈与を活用して事前に財産を移しておくことも大切です。
相続は別名「争族」ともいわれているため、しっかりとした対策と備えをしておくことをおすすめします。