メニュー

閉じる
無料相談0120-211-084
メール

最終更新日:2022/12/15

民事信託(家族信託)を行政書士に依頼する際のメリット・デメリットや必要な費用【弁護士や司法書士との違いも解説】

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 民事信託を行政書士に依頼するメリットとデメリットについて理解できる
  • 行政書士に民事信託を依頼した場合に必要な費用がわかる

認知症による資産凍結の回避手段の一つである民事信託(家族信託)は、新たな相続対策として注目を集めています。

この民事信託は信頼のおける家族間において行うことができますが、契約として法的な効力を持たせて、しっかりと後のトラブルを防ぐためには、その道の専門家に依頼をするのが得策と言えます。

今回は、民事信託を行政書士に依頼する際のメリットとデメリットについて解説していきます。

また、弁護士や司法書士との違いを紹介した上で、民事信託を行政書士に依頼する際に必要な費用の相場についても詳述します。

民事信託を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

民事信託(家族信託)とは?

民事信託(家族信託)とは、信頼のおける家族に財産を託して、その管理や運用、処分などを委ねる仕組みのことです。

この仕組みを活用することによって、近年の高齢化社会に伴って急増している認知症による資産凍結などのトラブルを未然に回避し、自身や家族の利益や権利を守る相続対策が可能になります。

あらかじめ信託する財産やその管理方法、使用目的などについて、信頼のおける家族と民事信託の契約を結んでおけば、万が一、自身が認知症などになった場合にも、その家族が自身に代わって、財産を管理・運用できるようになるというわけです。

民事信託は基本的に、委託者(財産を託す人)と受託者(託された財産の管理運用や処分などを行う人)の信託契約によって成立します。

この信託契約の手続きは通常、公正証書として信託契約書を作成し、信託する財産に不動産がある場合は、その不動産の信託登記などを行う必要があります。

民事信託の当事者は基本的に3者で構成されます。

委託者(財産を託す人)・受託者(託された財産の管理運用や処分などを行う人)・受益者(信託財産からの収益を受け取る人)です。

委託者は必要な状況に応じて、受益者の権利や利益を保護するため、受益者に代わり、受託者を監督する立場の者(信託管理人や信託監督人など)を定めることができます。

民事信託は当事者のみで行うことももちろん可能ですが、信託契約自体を不備不足のないように仕上げて法的な効力を発生させるためには、やはり専門家の知識やアドバイスが必要不可欠と言えるでしょう。

家族信託を行政書士に依頼するメリット2つ

さて、ここからは家族信託を行政書士に依頼するメリットについて解説します。

家族信託の契約を行政書士に依頼するメリットは、主に次の2つです。

  • ・弁護士に比べて比較的安価であること
  • ・信託契約書の作成を一任できること

上記2つの点について、詳しく確認していきましょう。

弁護士に比べて比較的安価であること

民事信託を行政書士に依頼する1つ目のメリットは、弁護士に依頼するよりも比較的安価な値段で依頼することができることにあります。

一般的に、行政書士の報酬は、弁護士の報酬よりも安価に設定されていることが多いです。

この点については、後ほど詳しく説明していきます。

信託契約書の作成を一任できること

2つ目のメリットは、信託契約書の作成を一任できることです。

行政書士は契約書の作成に関しては、プロフェッショナルであるため、一任することで不備不足のない信託契約書を作成することが可能になります。

民事信託においては基本的に公正証書を作成することがほとんどなので、その際にも一任しておけば一連の手続きが滞ることなくスムーズに進むことでしょう。

家族信託を行政書士に依頼するデメリット2つ

民事信託を行政書士に依頼することで上記のようなメリットがありますが、デメリットはあるのでしょうか。

主なデメリットは、次の2つです。

  • ・訴訟などのトラブルになった場合には対処することが難しい
  • ・書類作成のみで、実際の登記はできない

上記の2つについて確認していきましょう。

訴訟などのトラブルになった場合には対処することが難しい

行政書士に民事信託を依頼することのデメリットとして考えられるのは、万が一、訴訟などのトラブルに発展してしまった場合、その対応を行うことが困難という点です。

家族信託で何かトラブルが起こった場合、弁護士であれば、訴訟や交渉に関して迅速に対応することができますが、行政書士では対応しきれないという可能性があります。

行政書士と提携している弁護士などに依頼する場合にも、引き継いで対応するまでに時間を要することでしょう。

書類作成のみで、実際の登記はできない

もう一つデメリットとしては、登記申請の手続きを行うことができないという点です。

民事信託の際、信託財産に不動産がある場合には所有権移転登記や信託登記の手続きが必要ですが、行政書士にはこの手続きを行うことができず、代行を依頼することができません。

行政書士に依頼できるのは信託契約書を作成して公正証書にする業務のみであり、実際の登記手続きの業務を行うことができるのは司法書士です。

司法書士や弁護士との業務範囲や費用の違い

ここからは、民事信託を行政書士に依頼した際の業務範囲と費用について、弁護士・司法書士と比較しながら紹介していきます。

これから紹介する費用の相場については、依頼する内容や信託する財産の額などによって変動しますので、あくまで一つの参考にしてください。

まずは、民事信託を各専門家に依頼した際の業務範囲について簡単に説明します。

民事信託における行政書士の主な業務は、信託契約書などの作成や信託契約書を公正証書にする手続きです。

信託財産に不動産が含まれている場合には、登記手続きを行うことができませんので注意しましょう。

弁護士は信託契約書などの作成や信託契約書を公正証書にする手続きに加えて、万が一トラブルになった場合の交渉や訴訟へ対応することが可能です。

司法書士は、契約書などの書類作成だけではなく、行政書士では行うことができない登記手続きまで行うことができます。

続いて、各専門家の費用について、それぞれ説明していきます。

行政書士に依頼した場合の費用の相場と種類

日本行政書士会連合会によると、行政書士に依頼した場合の費用の相場は次のようになっています。

  • ・遺言書の起案および作成指導 57,726円
  • ・遺産分割協議書の作成 59,807円
  • ・相続人および相続財産の調査 59,230円
  • ・相続運なきことの証明書作成 17,735円

参考:日本行政書士会連合会

上記のすべてを依頼した場合には、費用として、おおむね20万円が発生することになります。

これは弁護士に依頼するよりも非常に安価であるため、契約書などの書類のみの作成を依頼したいときなどは、行政書士に依頼することをおすすめします。

ここからは、行政書士に民事信託を遺体した場合の費用の種類について見ていきましょう。

民事信託を行政書士に依頼した場合にかかる費用の種類は、主に次のようなものです。

  • ・相談料
  • ・コンサルティング料
  • ・契約書作成費用
  • ・契約書管理費用

順を追って、それぞれ説明します。

相談料

民事信託を行政書士に相談をした場合には、まずそれに応じた相談料が発生します。

各行政書士の基準により異なりますが、一般的には1時間の相談に対して約5,000円程度と定めているところがほとんどです。

行政書士の中には、初回相談のみ無料としているところもあります。

コンサルティング料

民事信託では委託者自身の希望通りに、信託する財産の範囲やその使用目的、承継人などを自由に設計することが可能です。

しかし、その自由度の高さゆえ、どのようにするのが最善なのか、当事者だけでは民事信託の内容を設計するのが困難となることもあるでしょう。

その際には、行政書士のコンサルティングのもとで適切なアドバイスを受けることができます。

行政書士にコンサルティングを依頼した場合には、その費用が発生します。

コンサルティング料は、信託財産の評価額により変動します。

一般的に次のように定められています。

信託財産の評価額 コンサルティング料
1億円以下 1%
1億円以上3億円以下 0.5%
3億円以上5億円以下 0.3%
5億円以上10億円以下 0.2%
10億円以上 0.1%

依頼する内容や行政書士によって金額は異なるので、注意が必要です。

契約書作成費用

行政書士に信託契約書などの作成を依頼した場合は、その契約書の作成費用が発生します。

一般的には、おおよそ6万円前後で受け付けているところが多いようです。

また、信託契約書を公正証書にする手続きを依頼する場合には、公正証書にかかる実費の他、手続きの代行費用が発生するので留意しておきましょう。

契約書管理費用

信託契約書の管理を行政書士に依頼した場合には、その管理費用が発生します。

あらかじめ契約書の管理を依頼しておくことで、紛失のなどの不測の事態に備えることができます。

一般的には、信託財産1件につき約1万円としているようです。

弁護士に依頼した場合の費用の相場

弁護士へ依頼した際の費用の相場について見ていきましょう。

弁護士の費用としては、一般的に次のように定められています。

  • ・相談料は30分~1時間でおおよそ5,000円~1万円程度
  • ・着手金は経済的利益の8%~
  • ・報酬金は経済的利益の16%~

なお、弁護士に依頼する場合も、行政書士に依頼すると同様に契約書の作成費用などが発生することになります。

これらの費用の目安は、各弁護士の基準によって異なるので、事前に確認した上で依頼しましょう。

司法書士に依頼した場合の費用の相場

司法書士へ依頼した際の費用の相場についてみていきましょう。

司法書士の費用としては、一般的に次のように定められています。

  • ・承継対象となる財産の価格の1.2%~
  • ・信託契約書を公正証書にした場合の実費(信託契約書を公正証書にした場合)
  • ・司法書士登録および登録免許税(信託財産に不動産が含まれている場合)

なお、司法書士に依頼する場合も、行政書士に依頼すると同様に契約書の作成費用などが発生することになります。

これらの費用の目安も、各司法書士の基準によって異なるので、あらかじめ確認しましょう

行政書士だけでは解決しない場合には?

民事信託を行政書士に依頼した後、予期しなかった問題が発生してしまい、なかなか解決しないできない場合にはどのように対処すべきでしょうか。

その答えは、弁護士や司法書士などの他の専門家の力を借りることです。

弁護士に依頼することにより、民事信託を行う際に起こったトラブルについても対応が可能で、交渉や訴訟など迅速に進めることができます。

また、信託財産に不動産が含まれる場合には司法書士に依頼するのが賢明です。

行政書士は契約書を作成することはできますが、実際の登記申請を行うことができません。

登記の実務経験を豊富に有する司法書士に依頼をすることで、民事信託後の登記申請をスムーズに行うことができます。

各専門家によって、特化している分野が異なりますので、必要に応じて、各専門家に依頼することが大切です。

まとめ

今回は、民事信託を利用する際に行政書士に依頼するメリット・デメリットについて解説した他、弁護士・司法書士と比較検討しながら、その業務範囲と費用相場を紹介しました。

各専門家によってその業務範囲は異なり、その費用の相場は専門家ごとに、また依頼する内容によっても変化します。

信託契約書の作成のみを依頼するのであれば行政書士、万が一のトラブルに備え万全に対応したいのであれば弁護士、信託財産に不動産があり登記申請の必要があれば司法書士というように、自身の目的に合わせて、専門家を選択しましょう。

一つの専門家のみで対応できない場合には、他の専門家へ相談することが賢明です。

テーマから記事を探す

弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所ならではの専門性

多数の相続案件の実績のノウハウで、あなたにとって一番の頼れる味方となります。
ご自身でお悩みを抱える前に、ぜひ一度お気軽にご連絡ください。親切丁寧な対応を心がけております。

当サイトを監修する専門家

弁護士 川﨑 公司

弁護士 川﨑 公司

相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

弁護士 福西 信文

弁護士 福西 信文

相続手続等の業務に従事。相続はたくさんの書類の作成が必要になります。お客様のお話を聞き、それを法律に謀った則った形式の文書におとしこんで、面倒な相続の書類を代行させていただきます。

弁護士 水流 恭平

弁護士 水流 恭平

民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

弁護士 山谷 千洋

弁護士 山谷 千洋

「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。 初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。

弁護士 石木 貴治

弁護士 石木 貴治

メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

弁護士 中野 和馬

弁護士 中野 和馬

弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。 お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。 お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。