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最終更新日:2022/12/13

お墓の相続で起きやすいトラブル3つと対処法【お墓を相続するのは誰?】

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

お墓の相続で起きやすいトラブル3つと対処法【お墓を相続するのは誰?】

この記事でわかること

  • お墓を相続する際し承継者とはどのような人なのか知ることができる
  • 祭祀承継者になるメリットとデメリットがわかる
  • お墓を相続する手続きの方法や必要書類を知ることができる

相続が発生した時にはあまり問題にならないものの、その後のトラブルになりやすいものとして、お墓があります。

先祖代々のお墓がある場合、そのお墓を誰が相続するのか、誰が管理していくのかで揉めることがあり得ます。

ここでは、お墓を相続する人である祭祀承継者について解説していきます。

また、お墓の相続手続きや、その際に必要な書類を確認していきます。

お墓は祭祀承継者が相続する

お墓を相続する人を、遺産分割の場で取り決めることは少ないでしょう。

なぜなら、お墓は相続税のかからない祭祀財産とされているためです。

祭祀財産は非課税であり、誰かの所有物という考えがないことから、誰が相続するかを決める必要性を感じない人が少なくありません。

また、お墓は遺族みんなで管理するものという意識が強く、特定の人が管理するという考え方にはなじまないと言えます。

祭祀財産であるお墓を相続する人は、祭祀継承者となった人です。

祭祀継承者を決定する際には、以下のいずれかに該当する人がいないかを確認していきます。

このいずれかに該当する人は、祭祀継承者となります。

  • 被相続人が指定した人
  • 慣習でお墓を管理することになっている人

このいずれにも該当する人がいない場合は、家庭裁判所で祭祀継承者を決定することとなります。

この場合、家庭裁判所で承継候補者の中から被相続人との関係や居住する場所などを考慮して、審理の上で決定されます。

ただ、実際には慣習などで祭祀継承者となる人が決定されることが多いと言えるでしょう。

祭祀承継者になるメリット・デメリット

お墓を相続する人は、祭祀継承者であることがわかりました。

ところで、この祭祀継承者となることには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット

祭祀継承者となるメリットは、お墓など祭祀財産の具体的な管理方法を、自らの希望に添って決定できることです。

お墓を自宅の近くに建てたい、あるいは自宅に仏壇や位牌を置いておきたいといった希望を叶えることができます。

故人の近くにいつまでもいたいと考える人にとって、祭祀継承者となることはとても大きなメリットと考えられます。

デメリット

祭祀継承者となるデメリットは、祭祀財産の管理にお金や手間がかかることです。

墓地の管理費の支払い、法要の支払いなどの金額は決して安いものではなく、大きな負担となる可能性があります。

また、墓地で自然災害の被害を受ければ、お金だけでなく管理者と連絡をとるなどの対応も必要となります。

このような役割を果たすために祭祀継承者が置かれているのですが、実際に祭祀継承者になると、かなり大変なことも多いと言えます。

お墓の相続で起きやすいトラブル3つと対処法

お墓の相続で起きやすいトラブル3つと対処法

お墓を相続した場合、祭祀財産であり相続税は非課税であることから、トラブルは起こらないと思っている方もいるのではないでしょうか。

ただ実際には、お墓を相続した場合に起こりやすいトラブルがいくつかあります。

具体的なトラブルと、そのトラブルに対する対処方法を解説していきます。

誰がお墓を相続するかで揉める

祭祀継承者になりたい人が何人かいると、誰が祭祀継承者になるかで揉めることがあります。

お墓の管理は、基本的に遺族が全員で行えばいいのですが、どうしてもその中心になりたいと言って譲らない人がいる場合があり得ます。

この場合、誰が祭祀継承者になるのか、あるいはどのように祭祀継承者を決めるのかで大きな揉め事になる可能性があります。

祭祀継承者となる人は、墓地の管理上、どうしても一人に決めなければならないことがあります。

ただ、祭祀継承者とならなかった場合でも、墓地の管理に関わることができないわけではありません。

むしろ祭祀継承者以外の人も、積極的に関わっていく必要があるでしょう。

このことを祭祀継承者となった人も理解し、形式的には祭祀継承者となった人も、「みんなで協力していく」とはっきり口にすることをおすすめします。

誰もお墓を相続したくなくて揉める

祭祀継承者になりたい人が、遺族の中に誰もいない場合があります。

お墓参りには定期的に行きたいが、自分が中心になって祭祀財産の管理を行うのは嫌だという人ばかりのケースです。

この場合、誰かが祭祀継承者にならなければいけないため、それを誰にするかで揉めます。

祭祀継承者になりたくないのが、遠方のお墓の管理ができないといった理由にある時は、墓仕舞い(はかじまい)も選択肢の1つとなります

遠方にあるお墓を墓仕舞いによって返還し、お墓とは別の方法で先祖を供養する方法です。

たとえば都市部に住む人が高齢化して、田舎のお墓の管理が難しくなる前に、都市部にある施設で永代供養を行うことを言います。

こうすることで、祭祀承継者を誰にするかで揉めなくて済み、かつ遺族が安心してお参りに訪れることができるようになるでしょう。

お墓の相続が遺産分割に影響する

お墓は祭祀財産にあたるため、相続税の課税対象にはなりません。

そのため、お墓を誰が相続しても、そのことが遺産分割を行う上で相続分の計算には影響しないはずです。

ところが、祭祀継承者となる人が、遺産分割の際に祭祀継承者としての義務を加味するよう求めることがあります

お墓の管理費やお墓への交通費などの支払い、あるいは墓地の管理者との連絡などの手間などの負担が発生するためです。

祭祀承継者にはこれらの負担が発生するため、遺産分割の際に多めに現金をもらっておこうと考える場合があり得ます。

遺産分割協議が成立する間際に、祭祀承継者となった人が遺産分割をやり直すように求めることもあります。

一度成立しそうな遺産分割をやり直す場合、なかなか成立しないことが多いので注意が必要です。

お墓の相続手続き・必要書類

お墓の相続手続きを行う場合、どのような手続きが必要になるでしょうか。

祭祀承継者になった人は墓地の管理者に連絡し、相続が発生したこと、そして新しい祭祀承継者が決まったことを伝えます

ただ、連絡を受けてすぐに名義変更が行われるわけではありません。

必要な書類を準備した上で、祭祀承継者であることが間違いないと確認された後にお墓の相続手続きが行われます。

したがって、墓地の管理者に対して提出しなければならない書類がいくつかあります。

実際には、それぞれの墓地で違いがありますが、主に以下のような書類が必要になります。

  • 名義変更申請書
  • 墓地使用権を取得した時に発行された墓地使用許可証や永代使用承諾証などの書類
  • 現在の名義人が亡くなったことがわかる資料(戸籍謄本など)
  • 墓地を承継する人の戸籍謄本や住民票
  • 墓地を承継する人の印鑑証明書
  • 祭祀承継者であることを証明する書類(遺言書や親族による同意書など)

また、お墓の相続手続きを行う際には、その手続きを行うための費用が発生します。

公営の墓地の方が、民営の墓地より安い傾向があります。

ただ、民営墓地でも手数料の額は数千円、高くても1万円を超える程度のところが多いでしょう。

まとめ

お墓の相続手続きは、他の遺産に関する手続きに比べて、後回しにされることが多いと言えます。

それは、相続税がかからず、相続分の計算を行う際にも特に考慮する必要がないからです。

しかし、お墓の管理を誰もしなくなるということは、できれば避けたいところです。

きちんとお墓の管理者を決めておき、どうしても難しい場合は墓仕舞いなど別の方法を考えておくようにしましょう。

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