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最終更新日:2025/7/1

相続放棄するとお墓はどうなる?墓じまいの方法や費用について

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

この記事でわかること

  • 相続放棄とお墓の関係
  • お墓など祭祀財産を引き継ぐ人の決め方
  • 墓じまいと永代供養の手続きと費用

相続放棄するとお墓の引き継ぎはどうなるか、多くの人が抱える疑問のひとつです。

法律上、お墓や仏壇は「祭祀財産」とされ、一般的な相続とは別の扱いになります。
お墓は誰が引き継ぐのか、その決め方や手続きには独特のルールや注意すべき点があります。

本記事では、お墓に関する法律上の基本知識から、祭祀承継や墓じまいの実務までをわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。

相続放棄するとお墓はどうなる?

お墓は通常の相続財産とは異なり、「祭祀財産」として特別な扱いを受けます。
ここでは、お墓の相続についての法律や相続放棄との関係について解説します。

祭祀財産として扱われる

お墓は、民法第897条に基づき「祭祀財産」として扱われます。

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

引用:「民法第897条(祭祀に関する権利の承継)」(e-Gov法令検索)

祭祀財産は、具体的に以下のようなものがあります。
表にまとめましたので、参考にしてください。

祭祀財産 定義 具体例
系譜 先祖から子孫に至る系統を示す記録 過去帳、家系図など
祭具 祭祀を行うための道具など 仏壇仏具、位牌、神棚など
墳墓 先祖や故人を祀るための墓地 墓、墓の使用権など

祭祀財産は金銭的価値として相続分に含まれず、相続税の対象外でもあります。
遺産分割の対象にはならず、相続放棄の影響も受けません

また、相続財産のように分割や共有されることはなく、原則として単独承継とされ、一人の承継者に引き継がれます。

祭祀財産の承継者は先祖の祭祀を行うこととなり、多くは墓地の使用権も祭祀財産の一部として継承されます。

祭祀財産と相続放棄の関係

祭祀財産は、法律上は相続財産とは別のものとされ、通常の遺産分割の対象にはなりません。
そのため、お墓や仏壇などを誰が引き継ぐかは、他の財産とは切り離して考える必要があります。

相続放棄はあくまで相続財産に関するものであり、祭祀財産についての権利や義務には直接影響しません。
つまり、相続を放棄した場合でもお墓を引き継ぐことは可能ですし、引き継がないという選択もできます

なお、一般的にお墓の維持費や管理費は、引き継いだ人が負担します。
誰も引き継ぐ人がいない場合は、墓じまいや永代供養といった対応を検討する必要があります。

祭祀継承者の決定方法

祭祀継承者とは、お墓や仏壇などの祭祀財産を引き継ぐ人のことで、民法第897条に基づいて行われます。
ここでは、具体的な決定方法について詳しく説明します。

遺言書による指定・慣習・家族間の話し合い

祭祀継承者の決定は、まず被相続人の意思が優先され、遺言書で指定されている場合、その内容に従って決定されます。
遺言書以外にエンディングノートや生前の口頭での意思表示も有効ですが、後々のトラブルを避けるためには文書に残すことが望ましいでしょう。

被相続人の指定がない場合は、慣習に従って決められます。
たとえば、長男が継承する慣習がある地域もあります。
しかし、現代では明確な慣習がない場合も多いため、その場合は家族間での話し合いで決めることになるでしょう。

家庭裁判所による決定

被相続人が生前に祭祀承継者を指定していない場合や、家族での話し合いでも決まらない場合は、家庭裁判所が祭祀承継者を決定します。

その際は、祭祀承継者指定調停の申立てを行う必要があります。

調停では、当事者の話を聞きながら、被相続人との関係性、家庭内の事情、慣習や地域性、推定される故人の意向などを考慮して祭祀承継者を決定します。
この手続きは、通常の遺産分割とは別のものであり、専門的な内容が含まれます。
手続きをスムーズに進めるためには、弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。

お墓を引き継がない方法

核家族が進んだ現代では、様々な理由でお墓の引き継ぎができない事情が多くなっています。
ここでは、墓じまいと永代供養(えいたいくよう)について説明します。

墓じまい

墓じまいは、現在のお墓を撤去し、墓地を更地にして管理者に返還する手続きです。
たとえば、跡継ぎがいない場合や遠方で管理が難しい場合、家族構成の変化によりお墓の継承が困難になったケースなどに検討されます。

墓じまいは、まず親族の同意を得ることから始まり、墓石の撤去と遺骨の取り出し、墓地の返還手続きを完了させます。
墓じまい後の遺骨の取り扱いは、改葬、手元供養、永代供養などの選択肢があります。

何らかの形で供養を続け、「無縁墓(むえんぼ)」にならないよう配慮することで、家族の精神的な安心にもつながるでしょう。

永代供養(えいたいくよう)

永代供養とは、寺院や霊園が遺骨の管理と供養を長期的に行うシステムで、遺族に代わって、施設が故人を供養し続けます。
跡継ぎがいない方や子孫に墓守の負担をかけたくない方に適しているでしょう。

以下に、永代供養を種類別にまとめましたので、参考にしてください。

種類 概要 料金の目安
個別墓 単独の墓石を使用。自由度が高い。 約80万~150万円
合祀墓
合葬墓
多くの遺骨を土に還す埋葬。費用が安い。身寄りがないなど墓じまいで利用する人が多い。 約5万~30万円
集合墓 個別の骨壺に入れて一斉に保管。一定期間後に合祀。 約20万~60万円
個別安置墓 屋外の石材の納骨壇に個別に区切って遺骨を安置。 約50万~100万円
樹木葬 樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬。合祀型と個別型がある。 約20万~110万円
納骨堂 屋内施設に遺骨を安置。ロッカー型、仏壇型、位牌型、自動搬送型など。 約20万~150万円

墓じまいの手続き・費用

墓じまいの手続きは、一般的に以下のような流れになります。

  • 親族の同意を得る
  • 自治体で必要書類を確認
  • お墓の管理者で必要書類を提出
  • 閉眼供養
  • 遺骨を取り出す
  • 墓石を撤去
  • 更地にして墓地管理者へ返還

以下は、費用の例です。

  • 墓石撤去費用:1㎡あたり10万円~15万円
  • 閉眼供養のお布施:3万円~5万円程度
  • 寺院の場合の離檀料:5万円~20万円

さらに改葬する場合は、一般的な総額は30万円~150万円程度で、ケースによって異なるため、事前に複数の業者から見積もりを取りましょう。

相続放棄とお墓に関するよくある質問


以下に、相続放棄とお墓に関するよくある質問と、その回答を記載しています。
参考にしてください。

Qお墓を誰が継ぐかでトラブルになった場合、どうしたらよいですか?

A:家庭裁判所に申し立て、調停や審判で決定します。

Q相続放棄したら、お墓や仏壇も放棄できますか?

A:相続放棄は影響しません。慣習に従うか、家族で話し合って決めます。
ただし、遺言書に指定があれば、指定された人が承継します。

Q相続人全員が相続放棄したら、墓地使用権は誰が支払いますか?

A:墓地使用権を支払う人は、故人の意思を最優先し、次に慣習や家族の話し合いで決めます。
お墓の管理と使用権を支払う人を分けることもできます。
該当者がいない場合は、墓じまいや永代供養を検討しましょう。

まとめ

相続放棄とお墓の問題は、法律的にも感情的にも複雑な側面があります。
家族と話し合い、お墓の管理者や寺院、自治体の担当窓口に相談するのもよいでしょう。

争いやトラブルになっている場合、お墓の承継や管理について悩んでいる方は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

相続や墓じまいなどの問題は一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら自分に合った解決策を見つけましょう。

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