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最終更新日:2023/2/10

孫に生前贈与をする場合の注意点とは?【メリット・デメリットと税金の計算や節税方法】

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 孫に生前贈与することのメリットとデメリットを知ることができる
  • 孫に財産を贈与した場合の贈与税の計算方法を知ることができる
  • 孫に財産を贈与する場合に節税になる方法がわかる

預貯金や不動産などの財産を多く所有していると、多額の相続税が発生してしまいます。

相続税の支払いは、相続人にとっては大変大きな負担となるため、できるだけ相続税を減らしたいと考えます。

そこで、財産を孫に生前贈与し、相続税の節税を行うことができます。

今回は、孫に生前贈与する場合のメリット・デメリットや、贈与税の計算方法など、孫への生前贈与のポイントを解説していきます。

孫に生前贈与するメリット・デメリット

相続税対策として、財産を生前贈与する方がいます。

自身の子どもに生前贈与することが多いのですが、中には孫に生前贈与することもあります。

子どもではなく、孫に生前贈与することのメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

孫に生前贈与するメリット

孫に生前贈与するメリットは、財産を一代飛ばして孫に引き継ぐことができる点です。

生前贈与を行わない場合、まずは子どもが相続して相続税を支払います。

その後、財産を相続した子どもが亡くなると孫が相続人となり、その財産を相続して相続税を支払います。

通常であれば、孫が財産を引き継ぐまでに相続税を2回支払わなければならないのですが、生前贈与すれば、税金の支払いは1回で済みます。

また相続税には、3年以内に被相続人から相続人に贈与された財産は、相続財産に含めるという規定があります。

しかし、通常孫は相続人にはならないため、孫に生前贈与した財産は、その後相続財産に含める必要はありません

孫に生前贈与するデメリット

孫に生前贈与することでデメリットとなる可能性があるのが、贈与は契約により成立するものである、ということです。

孫が未成年者の場合、贈与契約の成立には親権者の同意が必要です。

しかし、孫への生前贈与は結局、親権者に対する贈与ではないかと疑念を持たれることがあり得ます。

また、孫の名義で預金通帳を作り、その通帳に現金を贈与することがあります。

この時、孫の名義の通帳を贈与した人がそのまま管理していると、その通帳は名義預金と判断されることがあります。

名義預金と判断されると、そもそも贈与が行われていないものとされ、相続税の節税にはなりませんので注意が必要です。

孫への贈与で贈与税がかかるケース

孫に財産を贈与した場合、基本的に贈与税が課されることとなります。

贈与税がかからないケースと贈与税がかかるケースを比較しながら、どのような場合に贈与税がかかるのか確認しておきましょう。

2人の祖父からそれぞれ贈与を受けた場合

贈与税の計算を行う場合、贈与された財産の総額から110万円を控除します。

この110万円の金額を基礎控除といい、贈与を受ける人について毎年適用されます。

1年間に贈与される金額が110万円以内であれば、贈与税は発生しないこととなります。

基礎控除は贈与を受ける人について発生するものであり、贈与をする人ごとに計算するものではありません。

たとえば、1人の孫に対して父方と母方の双方の祖父から100万円の現金が贈与されると、合わせて200万円の贈与となります。

200万円の贈与となった場合、基礎控除額を超える贈与となることから、贈与税が発生してしまうことになります。

両家からそれぞれ孫に生前贈与をしたいと考えている場合は、時期を1年間はずらすようにしましょう。

10年後の教育費を贈与した場合

祖父母が孫のために教育費を支出した場合、その教育費が必要になる時に支払ったものであれば、贈与税はかかりません。

しかし、必要な都度直接準備した資金ではなく、将来的に教育費として利用するために贈与した資金は、贈与税の対象となります

たとえば10年後に大学に入学するため、小学生の孫に大学の入学金や学費を贈与すると、贈与税がかかります。

贈与したお金の使途が教育費であったとしても、必要となった時に贈与しなければ、贈与税はかかってしまうことになります。

毎年100万円の現金を贈与し続けた場合

1年間に100万円の現金を贈与した場合、その金額は基礎控除以内であるため、贈与税はかかりません。

しかし、100万円の現金を毎年贈与すると、贈与を1年ごとに考えるのではなく、トータルで考えなければならない場合があります

たとえば、トータルで500万円の現金を5年に分けて、毎年100万円ずつ贈与したとします。

この場合、最初から500万円の現金を贈与するつもりで贈与を行ったこととなります。

しかし、この場合、贈与税の課税を免れるため、1年あたりの贈与額を110万円以内に抑えれば、贈与税はかからないと考えてのことだと税務署からみなされます。

つまり税務署では、このような贈与を連年贈与として、最初の年に500万円の贈与を行ったものとみなされます

孫への贈与税を計算する方法

それでは、実際に孫へ財産を贈与した場合、どのように贈与税の計算を行うのでしょうか。

計算の方法を流れに沿って確認していきます。

①1年間に贈与された財産をリストアップする

贈与税は、1年間に贈与された財産の合計額から計算します

そこでまずは、1年間に贈与された財産をすべてリストアップします。

財産の種類には、現金、預貯金、土地、建物、有価証券などがあり、そのすべてが贈与税の対象となります。

贈与の事実を確認するには、預貯金の通帳の動きや登記簿謄本の情報を確認する必要があります。

なお、現金を贈与された場合は何も証明するものがないため、受取証のような書類を作成するようにします。

また、贈与を行った場合には、贈与した人と贈与された人との間で贈与契約書を作成しておきます。

②贈与された財産の評価額を求める

贈与された財産の確認をしたら、その財産の評価額を計算します

なお、贈与税の計算は相続税評価額を用いて行うため、それぞれの財産の相続税評価額を求める必要があります。

相続税評価額を求める際に、特に注意が必要なのは土地です。

土地の相続税評価額の計算方法には、路線価方式倍率方式の2つの方法があります。

路線価方式は、国税庁が定める路線価が付された土地について、相続税評価額を計算する方法です。

国税庁ホームページで路線価を確認し、その路線価に面積を乗じた後、必要な調整を行って評価額を求めます。

一方、倍率方式は路線価が付されていない土地について、固定資産税評価額を基に計算する方法です。

固定資産税評価額は、市町村から送られてくる固定資産税課税明細書で確認できるため、捨てずに保管しておきましょう。

贈与されたすべての財産の相続税評価額を求めたら、その合計額を求めます。

③速算表で贈与税を計算する

贈与された財産の相続税評価額を求めたら、その相続税評価額を基に贈与税の計算を行います

贈与税を計算する際には、まず相続税評価額の合計額から基礎控除額110万円を控除します。

たとえば、贈与された財産の相続税評価額が1,000万円であった場合、そこから110万円を控除すると、残りは890万円となります。

基礎控除額を控除した後の金額が贈与税の課税対象となるため、この場合は890万円に対して贈与税が課されます。

贈与税の税率は、財産の額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税方式が採用されています。

そのため、贈与税額の計算は速算表を使って行います。

なお、贈与税の税率は贈与する人とされる人の関係により2種類あるため、間違えないようにしなければなりません。

特例贈与財産

贈与する人が祖父母や親など、贈与された人の直系尊属である場合が該当します。

また、贈与される人は成人でなければなりません。

基礎控除後の金額 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

一般贈与財産

特例贈与財産に該当しない場合は、すべて一般贈与財産となります。

直系尊属からの贈与であっても、贈与された人が未成年者の場合は、一般贈与財産となります。

基礎控除後の金額 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

参考:国税庁

孫への贈与で節税する方法5つ

孫に贈与を行うと、その財産の額に応じて贈与税が発生します。

しかし、相続税対策として生前贈与しても、贈与税が発生するのでは意味がないどころか、かえって税額が増えることもあります。

そこで、贈与税ができるだけかからない贈与の方法・特例をご紹介します。

住宅取得等資金の贈与の特例

孫がマイホームを購入する時に、その購入資金を贈与した場合、基礎控除とは別に最大1,000万円まで非課税で贈与できます

基礎控除と合わせて1,110万円を非課税で贈与できるため、非常に大きなメリットがあります。

教育資金の一括贈与

将来発生する孫の教育資金に使えるよう、最大1,500万円を非課税で贈与することができます

この場合の贈与の手続きは、金融機関で行う必要があります。

孫が30歳までに使い切れなかった金額があると、その残額に対しては贈与税が課されるため、注意しなければなりません。

結婚・子育て資金の一括贈与

孫が結婚し、出産・子育てを行う際の支出に使えるよう、最大1,000万円を非課税で贈与できます

教育資金の一括贈与と同じく、手続きは金融機関で行います。

こちらは孫が50歳になった時点での残額に、贈与税が課されることとなります。

相続時精算課税制度

生前贈与を行った時に、最大2,500万円まで非課税となる制度です。

ただし、相続時精算課税制度により贈与された財産は、すべて相続税の課税対象となります。

そのため、相続税の節税にはならない点に注意が必要です。

相続税が発生しない場合には、財産の早期移転を実現できるというメリットがあります。

学費など必要に応じてお金を渡す

孫の教育費が発生した場合に、その都度必要なお金を孫に渡すようにします

このようにして渡した金額は、贈与税の課税対象にはなりません。

そもそも贈与税の対象ではないため、基礎控除額を気にする必要もありません。

まとめ

生前贈与をすれば相続税が安くなると聞いて、生前贈与を行っている人、これから生前贈与しようとしている人は少なくないでしょう。

生前贈与を行うことで、相続税の負担が軽減されることも少なくありません。

しかし、生前贈与すれば、トータルの税負担が必ず減少するわけではありません

全体の財産の額、相続税として発生すると想定される額を意識して、孫への贈与を行うようにしましょう。

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