この記事でわかること
- 誰も相続しない土地が発生してしまう理由がわかる
- 誰も相続しない土地を手放す方法・活用方法がわかる
- 誰も相続しない土地はどうなるのかがわかる
目次
誰も相続しない土地が発生する理由
被相続人が残した財産の全てが現金とは限りません。
被相続人の所有していた土地も相続財産に含まれます。
その土地に思い入れがあり、維持管理の目処がついていれば、配偶者や子どもが喜んで相続するかもしれませんが、配偶者が高齢で土地を持て余すケースもあるはずです。
若い人が相続した場合でも、既に子どもが独立し両親と離れて暮らしているのなら、故人が所有していた土地を相続し、維持・管理するのが難しい場合もあります。
このことから誰も相続しない土地が発生してしまうのです。
誰も相続しない土地を手放す方法
いったん土地を相続してしまうと、相続人が実際に使わなくても土地の固定資産税や維持管理費はかかってしまいます。
自分が被相続人となる場合、誰も相続を望まないと感じていたなら、事前に土地を売却したり、土地を寄付したりする等、生前に相続人の負担とならないよう対策をとっておくことが大切です。
一方、故人(被相続人)の遺言状で土地を相続する人物が特定されていたとしても、その土地の所有が法的に拘束されるわけではありません。
新たに他の相続人の同意のもとで遺産分割協議で決め直すことや、土地を相続して売却や寄付を行うことは可能です。
ここからは、誰も相続しない土地を手放す方法を見ていきましょう。
土地を売却する
被相続人が生前に売却するにしても、相続人が相続した土地を売却するにしても、その手順はしっかり把握しておく必要があります。
売却の流れは次のようになります。
(1)売却したい土地の情報をチェック
まずは売却したい土地が住居専用地域なのか商業地域なのか等を確認します。
この用途地域については自治体(市区町村)の都市計画課等を訪問すれば閲覧できます。
最近ではインターネットでも公表されているので、お住いの市区町村のホームページを見てみましょう。
(2)売却したい土地の適正価格をチェック
次は、土地の適正価格を調べます。
土地の適正価格を知らないと、正しい値段で土地を売ることができなくなります。
適正価格を知りたい場合は、お住まいの地域の不動産会社に査定依頼をするといいでしょう。
ご自分で大まかに土地の価格を調べたいなら、国土交通省のホームページを参考にしてください。
(3)不動産会社へ土地の売却を頼む
不明な点や心配な点を不動産会社と相談した上で、不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約には、専属専任外界契約(1社のみと媒介契約を結ぶ方法)、専任媒介契約(自分でも買主を探せる方法)、一般媒介契約(複数の不動産会社と契約可能な方法)の3つがあります。
ご自分が信頼できる不動産会社ならば、専属専任媒介契約を締結し、その1社に任せることも良いでしょう。
(4)土地の売買契約へ
不動産会社の売却活動が功を奏し、購入希望者が現れたら、その希望者と土地の売買契約書を締結します。
売買契約に係る手続きは不動産会社が行ってくれます。
土地を寄付する
土地の売却を検討はしてみたけれど、辺鄙な場所なので土地を購入したい人が現れるとはとても思えないケースもあるはずです。
このような土地であっても所有している限り、税金等はどうしてもかかってしまいます。
所有者となっているご自分の負担が重くなるくらいなら、その土地がある市区町村へ寄付することも検討してみましょう。
市区町村へ寄付する手順・必要書類
市区町村へ寄付する方法としては概ね次の流れとなります。
- 1.市区町村窓口(主に財務部または財務課が担当)に相談
- 2.市区町村の職員が売却土地等を調査
- 3.利用が可能な場合、必要書類の提出する
必要書類は次の通りです。
必要な書類
- 寄付申込書
- 寄附財産に係る売却等承諾書
- 土地の位置図・更正図・実測図
- 登記事項証明書
提出する市区町村によっては追加の書類を求められることがあります。
また、寄付を申し込んだからといって、必ずその土地の寄付に応じてくれるわけではありません。
土地に問題がある、行政が活用する価値または換価価値が無いと評価された場合等は、残念ながら申し込みを拒否されることもあるので注意しましょう。
個人や法人へも寄付は可能だが懸念点あり
もちろん地方自治体(市区町村)の他に、個人や法人等へ土地を寄付することも可能です。
ただし寄付した結果、思わぬ税負担が発生する場合もあります。
個人へ寄付した場合、寄付した側は何ら課税されませんが、逆に、土地を寄付された側の人には贈与税が発生する場合もあります。
この贈与税は、1年間に贈与された財産が110万円を超えたら課税されてしまいます。
「贈与された土地+他の贈与財産」が110万円を上回れば、納税しなければいけません。
一方、法人へ寄付する場合は、寄付する側が「みなし譲渡所得」として課税される可能性もあります。
課税される理由は、売却を検討している土地が取得した時より、価値が高くなった状態で寄付すれば土地を時価で売却したという扱いになってしまうからです。
そのため、土地の寄付を検討する場合は、非課税となる地方自治体(市区町村)への寄付を試みた方が良いでしょう。
土地の相続放棄
相続が発生し、相続人の誰もが遺産となった土地を相続したくないなら、「相続放棄」を検討しましょう。
この手続きを行えば、相続放棄をした人は最初から被相続人の相続人ではなかったことになり、将来重い負担が発生しうる土地の相続人から外れることを主張できます。
しかし、相続放棄をすると被相続人の預貯金や債券等の金融資産も相続できません。
また、相続放棄は放棄したい人の意思表示だけで成立するのではなく、家庭裁判所に申述し、手続きを進めることで、放棄の効果を誰に対しても主張できるようになります。
相続放棄の手続き方法
相続放棄を家庭裁判所に申述したい人は、被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。
ただし、相続放棄を申述する家庭裁判所はどこでも良いわけではありません。
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で行います。
なお、3ヶ月以内に手続きが難しければ、家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の申立てができます。
認められれば3ヶ月間にわたり期限が猶予されます。
相続放棄の必要書類
相続放棄をする場合は、必ずしも申述人単独で行う必要はなく、放棄をしたい相続人全員で行うこともできます。
申述の際は主に次の必要書類を作成・収集し、家庭裁判所へ郵送または持参で提出しましょう。
必要な書類
- 相続放棄申述書
- 収入印紙800円(申述人1人分)
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 申述人(放棄をする相続人)の戸籍謄本
被相続人からみた申述人の続柄によって追加の提出書類が必要となります。
参考:相続の放棄の申述|裁判所
提出後に2週間程度で「照会書」が家庭裁判所から送付され、こちらの書類に記載し返送します。
家庭裁判所へ出頭し質問に回答(審問手続)することを要請されたら、指示に従いましょう。
家庭裁判所が審理し、問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が申述人宅へ郵送され、ようやく相続放棄が成立します。
土地を相続放棄する場合に考えられるトラブル
土地の相続放棄をすると次のようなトラブルが起こる可能性があります。
よく検討した上で、手続きを進めてください。
(1)次順位の相続人が存在する
相続人として第1順位となるのは被相続人の子どもです。
彼ら全員が相続放棄すれば、誰も問題の土地や被相続人の遺した借金等を相続しなくて良いのかといえばそうとは言えません。
第1順位となる相続人全員が放棄すれば、次順位相続人(被相続人の尊属または兄弟姉妹)が相続権を有します。
相続放棄した人達にとって次順位となる相続人の方々は、疎遠になっていたり、その存在すら知らなかったりするケースもあるはずです。
前もって第1順位となる相続人達が相続放棄する旨を次順位の相続人に伝え、彼らが相続放棄を行いやすいよう配慮しましょう。
(2)債権者から反感を持たれる
相続放棄をすれば、最初から相続人とならなかったことになるため、相続したくない土地も被相続人が遺した借金も放棄できます。
しかし、債権者はいずれお金が戻ってくると信じて貸した以上、相続を放棄した人達に反感を抱くのは当然と言えます。
債権者が相続を放棄した人達とも親交のある人なら、もはや信頼関係の修復は困難となるでしょう。
このようなリスクも十分踏まえて相続放棄は行われるべきです。
誰も相続しない土地はどうなるのか
相続放棄の手続きが問題なく進み、ご自分が相続人でなくなれば、土地にかかる固定資産税を支払う必要はなくなります。
しかし、その土地を放置していいことにはなりません。
当該土地を誰も相続しないことが明らかになれば、最終的にその土地は“国のもの”となります。
その土地の管理者が国となっても、別の誰かとなっても、管理者が決まるまで相続放棄をした人には管理責任が発生します。
この管理責任とは、ご自分の財産と同じように注意して、その土地の管理を継続しなければいけないことです。
当然、放置して土地が荒れ放題になることは避けなければいけません。
また、放棄した土地が荒れ地のようになれば、いつの間にかその場所へ不法投棄をするような人々が出てくる場合もあるでしょう。
土地の管理が不十分だったことが原因で、隣地や他人へ損害が発生した場合は、損害賠償責任を追うことになります。
相続管理人の選定
相続放棄した人にとって、次の土地の管理者がいつ現れるかわからない状況です。
放棄した土地と自宅がかなり離れているなら管理も一苦労でしょう。
自分以外の相続人も相続放棄をしたいなら、自分が他の相続人を説得して土地の所有者とする目途もたたないはずです。
被相続人を相続するはずだった方々全員が相続放棄をした場合は、「相続財産管理人」を選任し次の管理者とすることができます。
相続財産管理人を選任すれば相続放棄した方々全員が、その土地の管理者ではなくなります。
誰も相続しない土地の活用方法
土地の売却や相続放棄を検討したものの、「やはり先祖代々守ってきた土地を手放すのは抵抗がある」という人もいるでしょう。
そんな時には土地をいったん相続して、別の方法で固定資産税や維持費が賄われるよう工夫をすることも賢明な判断です。
その方法の一つとして「空き家バンク」が挙げられます。
空き家バンクは、空き家の賃貸・売却を希望する所有者と、空き家の利用・活用したい方々とを各市区町村が仲介する制度です。
空き家は人気が無い?
例えば古民家風の一軒家が残っていた場合、土地・建物を借りたい人と契約し、賃貸収入を得る方法もあります。
相続人の中には「古民家なんて誰が借りに来るのか」と、最初から賃貸という方法を諦めている人がいるかもしれません。
しかし、最近では、誰も住まなくなった住居を「空き家バンク」として売却したり、貸したりする動きが活発になっています。
地方自治体のサイトはもちろん、古民家の賃貸情報サイトもどんどん登場しており、日本全国の田舎に存在する古民家が、格安の賃料(1ヶ月3,000円~10,000円程度)で紹介されています。
古民家は、田舎暮らしに憧れる人や、子どもたちを自然の豊かな土地で育てたい家族に人気です。
もちろん、建物のみならず土地の利用も自由に認めれば、土地が荒れ地になることも無いでしょう。
空き家バンクへの登録方法
まずは地方自治体(市区町村)に誰も住まなくなった空き家を登録します。
詳細は市区町村の窓口(主に総合政策課等が担当)に問い合わせるべきですが、概ね次のような手順で登録手続きを進めます。
- 1.空き家登録の条件を確認:地方税の滞納がない・所有権を有することの証明書の有無をチェック
- 2.申請書等を取得:各市区町村のホームページからも取得できます。
- 3.窓口へ必要書類提出:申請先の市区町村の必要書類を取集し、申請書と共に提出
- 4.窓口で書類受理
- 5.登録完了後、物件登録完了通知書が申請者宅へ送付される
まとめ
土地を売却または寄付するにしても、土地の相続放棄をするにしても、土地を活用するにしても、それぞれに注意しなければいけない点は存在します。
被相続人が管理してきた土地をどうするか、相続人1人が独断で決めるのではなく、相続人同士でよく話し合い、最も納得できる方法を検討していくことが大切です。