この記事でわかること
- 相続関係説明図がわかる
- 相続関係説明図を作成する目的とメリットがわかる
- 相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違いがわかる
- 相続関係説明図の作成方法がわかる
- 相続関係説明図の活用方法がわかる
相続の手続では、相続人が集まって遺産分割協議書を作成しますが、そのタイミングで戸籍謄本の収集や相続関係説明図を作成します。
相続関係説明図は、相続関係を表した家系図のような図です。
一目で誰が相続人かが分かるようになっています。
相続手続きには、預金の解約など煩雑な手続きがあります。
相続関係説明図は、それらの手続をする際にも便利なものです。
相続関係説明図の目的やメリット、作成の仕方などを詳しく解説します。
目次
相続関係説明図とは
相続関係説明図とは、被相続人(亡くなった人)と相続人との関係を図式化したものです。
家系図のように、名前や生年月日などを記入し、夫婦や子供などを線でつないで関係を表します。
図式化されており、一目で被相続人と相続人、被相続人との関係(親子や兄弟、甥姪など)が分かるようになっているのです。
家系図は、決めた範囲内の親族をすべて記載しますが、相続関係説明図では、被相続人と相続人との関係のみを表すため、親子間の相続であれば、親の兄弟や甥姪までは記載せずに作成します。
家系図とは、記載する範囲が異なるので注意が必要です。
法務局や裁判所では、こうした図を家系図ではなく、相続関係説明図と呼びます。
相続関係説明図を作成する目的やメリット
相続手続きの際に、なぜ相続関係説明図を作成するのでしょうか。
作成することでどんなメリットがあるのか、詳しく解説します。
相続手続きをスムーズにする
相続手続きの際には、必ず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集します。
そこから、相続人となる人の戸籍をたどっていきます。
相続関係は、収集した戸籍を読めば分かりますが、ひとつひとつ読んでいくのはとても大変です。
相続人自身は関係を分かっていても、第三者がそれを理解するためには時間がかかります。
預貯金などの解約の際に、戸籍謄本のみを渡されても、担当者は戸籍を読み解くところから始めることになり、時間がかかってしまいます。
特に古い戸籍などでは、手書き文字が読みづらく、養子や結婚離婚を繰り返しているようなケースや、甥姪が相続人となる複雑な相続のケースでは、理解するのも一苦労です。
相続関係説明図があれば、被相続人と相続人との関係を簡単に理解することができます。
戸籍謄本の提出を受けた機関が、図と戸籍を照らし合わせて確認する際にとても役立ちます。
また、税理士や弁護士に相続の相談をする際にも、一目で関係が分かる図があれば、親族関係の細かい説明を省くこともでき、効率的です。
関係を口頭で説明して誤解される可能性を考えると、より適切なアドバイスを受けられます。
このように、相続関係説明図は第三者に相続関係を明らかにすることを目的として作成します。
提出した戸籍謄本の原本を返してもらえる
預貯金の解約などでは、被相続人や相続人の戸籍謄本の原本提出が求められます。
その際に、相続関係説明図を一緒に提出すると、戸籍謄本の原本を還付してもらえます。
通常還付される金融機関であっても、相続関係説明図があることで確認が早く終わり、手続きの時間を短縮できます。
不動産の相続登記で法務局に戸籍謄本を提出する場合は、相続関係説明図を添付すると、戸籍謄本のコピーを添付しなくても原本還付してもらえます。
戸籍謄本の数が多い場合であれば、コピー代やコピーを作る時間などを省くことができるでしょう。
相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違い
相続関係説明図とよく似たもので、法定相続情報一覧図というものがあります。
どちらも相続の際に利用されるものですが、どういった違いがあるのでしょうか。
どのように使い分けをするのでしょうか。
法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図とは、法務局が被相続人の法定相続人を証明してくれる書類です。
相続関係説明図と同じように、被相続人と相続人との関係を図で表したものですが、それを法務局が認証します。
法務局の認証を受けることで、被相続人と相続人の戸籍謄本の代わりとして使用することが可能です。
通常は、相続手続きの際に戸籍謄本一式を提出しますが、法定相続情報一覧図を提出すると、戸籍謄本の提出は不要になります。
戸籍謄本が沢山ある場合には、それらをすべて出す必要がなくなるので、とても便利です。
また、銀行等だけでなく、法務局などの手続でも使用することができます。
申請は、無料で行うことができ、複数枚写しをもらうことができます。
相続関係説明図を使った方がいいケース
相続関係説明図は、法務局の認証の手続が不要です。
自分で手軽に作成することができ、相続手続きの際に利用することができます。
預貯金の相続手続きや不動産の相続登記が必要な場合、件数が少なければ、相続関係説明図と戸籍謄本を提出し、原本還付を受けて相続手続きをすることができます。
相続手続きの件数が少ない場合は、法定相続情報一覧図の作成の手間を考えると、相続関係説明図を使う方が便利でしょう。
法定相続情報一覧図を使った方がいいケース
法定相続情報一覧図は、戸籍謄本の代わりに提出することができます。
決まった形式で作成した一覧図と戸籍謄本一式を、法務局に提出します。
提出後、数日で法務局から認証済の一覧図を受け取ることが可能です。
法定相続情報一覧図は複数枚もらうことができるため、複数の提出先に一度に提出することができます。
相続手続き先の件数が多い場合、戸籍謄本を提出して返還してもらう、を繰り返しているととても時間がかかるでしょう。
その手間がなくなるため、戸籍謄本の代わりに一度に提出することで、早く手続きを進めることができます。
相続手続きが3件以上あるといった、件数が多い場合におすすめです。
相続関係説明図の作成方法
相続関係説明図は、法務局に行くことなく、自分で作成することができます。
どのように作成すればいいのでしょうか。
まずは戸籍謄本等で相続関係を確認する
相続関係説明図を作るためには、戸籍謄本を収集して、相続人を確認します。
相続関係を明らかにするためには、基本的には下記の戸籍謄本等を収集します。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本すべて
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍の附票
ただし、相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合は、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本も必要です。
また、甥姪が相続人になる場合は、甥姪の親、つまりは被相続人の兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本も必要になります。
戸籍謄本を収集して、相続人が誰になるのか、しっかりと確認しましょう。
相続関係説明図の書き方
相続関係説明図は、法務局が記載例を紹介しており、それを参考に作成していくと自分でも簡単に作成することができます。
参考:法務局「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」記載例PDF(4ページ目)
エクセルを使うと枠を作りやすく、線も引きやすいので便利です。
被相続人、相続人の名前を記入して大枠を作る
それぞれの名前を記入して、関係が分かるように並べて記載します。
夫婦であれば同列にし、間を二重線でつなぎます。
夫婦間の子供は、夫婦の間の二重線の真ん中から一本線を伸ばし、その子供を記載するのです。
相続人が兄弟姉妹の場合は、被相続人の父母を記載し、被相続人、相続人になる兄弟姉妹を並べて書きます。
甥姪の場合は、兄弟姉妹からさらに線を伸ばして記載しましょう。
離婚をした場合は夫婦間の二重線に×を入れ、再婚すれば別の二重線で再婚相手と結びます。
養子の場合は、実子と同等なため、実子と並べて記載します。
名前の横に、それぞれの生年月日などを記入する
大枠が決まったら、それぞれの名前の横に生年月日や続柄(妻、長男、長女など)を記載します。
養子になっている場合には、養子と記入しましょう。
被相続人のところについては、死亡年月日ともに、最後の本籍地、最後の住所地も記載します。
相続手続きの際には、最後の本籍地と住所地が必要になるため、あらかじめ相続関係説明図に記載しておくと確認しやすくなります。
相続人については、現在の住所地も記載しましょう。
住所地は住民票に記載された表記のまま記入すると本人確認しやすく、おすすめです。
相続関係説明図が利用できるシーン
相続関係説明図は、どのような時に利用できるのでしょうか。
不動産の相続登記申請
不動産を相続すると、誰が相続したのか登記する必要があります。
登記申請の際には相続関係が分かる戸籍謄本一式をすべて提出しますが、相続関係説明図を添付すると、戸籍謄本の写しを添付することなく戸籍謄本の原本を返還してもらえるのです。
法定相続情報一覧図を提出すれば、戸籍謄本自体を提出しなくてすみます。
しかし、法定相続情報一覧図を作成するために一度法務局に行かなければならないため、登記申請と合わせると二度手間になってしまいます。
相続財産が不動産しかなく、登記手続きのみ必要な場合は、相続関係説明図を使う方が便利です。
預貯金の解約などの相続手続き
遺産に預貯金がある場合、銀行などの金融機関で相続手続きを行いますが、その際にも相続関係説明図を使うことができます。
複数の口座があったとしても、手続きする銀行が一ヶ所という場合には、戸籍謄本に相続関係説明図を添付して提出すると、受付担当者も相続関係をすぐに理解することができ、スムーズに手続きを進めることができます。
家庭裁判所での遺産分割調停申立
万一、相続人同士でうまく遺産分割することができなかった場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、家庭裁判所で話し合いをします。
遺産分割調停申立の際には、相続関係が分かる戸籍謄本の提出が求められます。
その際にも相続関係説明図を添付して提出が可能です。
裁判所への申立では、戸籍謄本の代わりに法定相続情報一覧図を提出することはできないため、相続関係説明図を提出します。
弁護士や税理士などへの相談
弁護士や税理士など、士業へ相続の相談をする際には、相続関係説明図がとても役立ちます。
相談時に相続関係を口頭で説明することも可能ですが、図を見せれば、すぐに理解することができ、長々と説明をする必要がなくなります。
相談される側も、アドバイスの前提となる相続関係が一目瞭然であれば、それを踏まえて的確なアドバイスをすることができるでしょう。
まとめ
相続関係説明図は、相続手続きの際に役立つ家系図のような図式です。
法定相続情報一覧図のように法務局の認証を受ける必要はなく、自分で作成することができます。
不動産登記申請の際には、戸籍謄本の原本還付を受けることが可能です。
金融機関などでは、相続関係説明図を添付することで、戸籍謄本の確認がスムーズに進み、手続きを少しでも早くすることができます。
相続関係説明図は、見本やテンプレートなどがありますが、相続関係が複雑であれば、作成が大変なケースもあります。
図を作成するために前提となる戸籍謄本の収集も、遠方に戸籍があると、時間や手間がかかるでしょう。
兄弟姉妹や甥姪、結婚離婚、養子縁組など、複雑な相続の際には、分かる範囲の相続関係図を作成し、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。