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最終更新日:2022/12/15

【家族信託で行う防止策】認知症で口座凍結になると家族の生活費はどうなる…?

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 口座凍結を防止する家族信託の仕組みについて理解できる
  • 家族信託せずに口座凍結されてしまったときの対応について理解できる
  • 家族信託や生活費に関して困った場合の対処法がわかる

認知症になった人の口座はどのようになってしまうのか、ご存じですか。

認知症となった場合、その本人の銀行口座は凍結し、一切の取引ができなくなります。

そのため、預金を引き出したり、他の口座へ送金できなくなったりする事態が発生するのです。

現在、認知症の有症率はますます上昇していて、この口座凍結のトラブルが相次いでいます。

特に困るのは、認知症患者本人が本人名義の口座で生活費を管理していたような場合、たとえ家族であっても、その口座から生活費を引き出すことができなくなってしまうということです。

このようなトラブルは、認知症患者本人とその家族にとって様々な弊害をもたらす恐れがあるので、未然に回避するよう対策を取っておくのが賢明でしょう。

そこで今回は、認知症による口座凍結の防止策として、「家族信託」という方法をご紹介していきます。

認知症で口座凍結してしまった場合の対応方法と、家族信託や生活費に関して困った場合の対処法についても解説しますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

口座凍結されると生活費が引き出せない

口座凍結とは、金融機関の制限によって、その口座内での取引がすべてできなくなることです。

凍結した口座では、入金・引き出し、振り込み、引き落としなどの行為ができなくなります

このような口座凍結は、口座を持つ本人が死亡した場合のみならず、認知症となった場合にも、引き起こされます。

これは、認知症になった場合に、法律上では意思決定能力がないものとされるためです。

意思決定能力がない人の口座を、その本人の意思とは無関係に誰かが扱えば、本人にとって不利益な状態が生じるリスクがあります。

金融機関では、そのようなリスクに備えて、意思決定能力がない場合には口座を凍結するようになっているのです。

たとえば、生活費を口座で管理していた人が認知症になってしまうと、その家族であっても、その口座から生活費を引き出すことはできません

本人の所有する口座での取引については、本人の意思決定があることが必須です。

本人の意思決定がないことには、誰であれ、周囲が無断でその口座を取り扱うことは許されないというわけです。

そのため、認知症患者本人の名義となっている銀行口座については、亡くなるまで凍結され続けることになります。

認知症患者名義の口座については、口座凍結が生じるということを念頭に置いておく必要あります。

家族信託でできること

認知症になると、その本人の口座が凍結してしまいますが、それを未然に防ぐための方法として、「家族信託(民事信託)」という方法があります。

認知症による口座凍結のリスクを回避するためには、家族信託とはどのようなものなのか、また、家族信託によってどのようなことができるのか、しっかりと把握して上手に活用していくことが重要です。

ここからは、家族信託の概要と、家族信託によって実現できることについて解説していきます。

家族信託とは

あらかじめ信頼のおける家族に財産を託し、その管理や運用、処分などを委ねる仕組みを家族信託といいます。

家族信託の目的は、自身と家族の利益や権利を保護することにあります。

この仕組みは、近年の高齢化社会に伴って急増している、高齢者の口座凍結のリスクなどを未然に防ぐ対処法として非常に有効です。

家族信託は基本的に、委託者(財産を託す人)と受託者(託された財産の管理運用や処分などを行う人)の信託契約によって成立します。

この手続きでは、信託契約書を公正証書として作成することや、信託する財産に不動産がある場合は不動産の信託登記をすることが必要です。

当事者は通常、委託者(財産を託す人)・受託者(託された財産の管理運用や処分などを行う人)・受益者(信託財産からの収益を受け取る人)の3者で構成されており、委任者本人が受益者となるケースが一般的です。

委託者は必要な状況に応じて、受益者の権利や利益を保護するため、信託管理人や信託監督人といった、受益者に代わって受託者を監督する立場の者を定めることができます。

この仕組みを活用することで、よりスムーズな資産継承が可能になり、資産についての様々なトラブルを予防・回避しながら、自身や家族の権利を守ることができます。

家族信託を活用する際に注意したいのは、家族信託の契約を行う時期についてです。

家族信託の信託契約は、認知症となる前に行っておく必要があります

認知症になった後では法律上で意思判断能力がないと扱われ、信託契約が無効となるからです。

そのため、家族信託は認知症になる前に、早いうちから行っておきましょう。

家族信託でできること

認知症となった場合に備えて、事前に信頼のおける家族に自身の財産の金額や管理方法、使用目的などを定めて契約しておくことで、万が一認知症になっても、その家族が本人に代わって、本人の財産を管理・運用していくことが可能になります。

家族信託を行うと、主に次のようなことが実現できます。

  • ・本人の財産を管理するために家族信託口座を開設できる
  • ・家族信託契約によって信託財産の使い道を決められる
  • ・信託財産を家族のために生活費として使うことができる

これら3点について、それぞれ詳しく解説していきましょう。

本人の財産を管理するために家族信託口座を開設できる

家族信託契約を活用すれば、家族信託専用の口座を開設でき、口座凍結のトラブルを回避できます。

家族信託を行う場合、信託財産の管理は委託者本人の口座とは別に、受託者が信託専用の口座を開設して、信託された資産をその口座へ移管することになります。

信託専用の口座へ移管された資産は、その口座内で、受託者が管理・運用していくわけです。

信託設定後は受託者が資産の管理・運用を行いますが、実際の経済的な利益や損失については、引き続き本人に帰属するので、その点に留意が必要です。

この対策を取ることで、家族信託契約締結後に認知症になった場合でも、家族名義で預かっている信託口座から生活費などを引き出すことができ、口座凍結を避けることができます。

この家族信託口座の開設については、それぞれの家族信託のケースごとに、必要に応じて十分に考慮するようにしましょう。

家族信託契約によって信託財産の使い道を決められる

家族信託を行う際に、信託契約書の中で、信託財産の使用用途を事前に決めておくことができます。

信託契約書において、信託財産を受託者の裁量によって受益者に交付することができるようにしておけば、信託財産を生活費として引き出すことができます。

生活費だけでなく、次のような費用なども信託契約書に記載しておくとよいでしょう。

  • ・医療費
  • ・介護サービス費、介護施設等の施設利用費
  • ・受益者の死亡に伴う葬儀費

信託契約書に記載する内容についても、それぞれの家族信託のケースごとに、必要に応じて検討することをおすすめします。

信託財産を家族のために生活費として使うことができる

家族信託による信託財産は、本人だけでなく、その家族の生活費にも使用することができます。

認知症患者本人の扶養家族(妻や子など)のために生活費を使うことが可能で、扶養家族以外にも信託契約書の中で定めておけば、生活費として使うことができるようになります。

ただ、扶養家族でない場合、贈与税などの課税対象となる可能性もあるので注意が必要です。

家族信託せずに口座凍結されてしまったときの対処法

家族信託をせず、認知症になって口座が凍結してしまった場合には、どのように対処したらよいのでしょうか。

この対処方法としては、成年後見制度を活用することです。

成年後見制度には、任意後見人制度と法定後見制度があります。

任意後見制度は、本人の意思能力があるうちに、本人自身で後見人を選出して、あらかじめ後見人に与える権限の内容まで定めることができます。

事前に後見人との間で、相続の際に財産の処分を託すことを契約しておけば、本人が認知症になった場合、後見人が本人に代わって、その後の財産の管理を行い、相続対策を行うことが可能です。

一方、法定後見制度とは、本人の意思決定能力が不十分となった場合に、本人の利益を保護するため、裁判所が選出した後見人が、その本人に代わって意思判断を補う制度をいいます。

法定後見人が本人に代わって資産管理や契約行為を行うことができるのは、「本人の利益」に関するものだけに限られ、生活費は当然、その範囲に含まれます。

法定後見制度を活用すれば、認知症になった後でも、認知症患者本人の口座から生活費を引き出すことが可能になります。

注意しておきたいのは、認知症と診断されてからでは、法定後見制度しか使えないということです。

任意後見制度は家族信託と同様に、認知症となる前に行っておく必要がありますが、法定後見制度は、認知症になってしまった場合の事後対応策として活用することができます

家族信託や生活費に関して困った場合の対処法

家族信託について、また、認知症による口座凍結などのトラブルでお困りの場合は、弁護士への相談を検討されることをおすすめします。

相続専門の弁護士は家族信託においても豊富な経験を有しているため、認知症に備えた家族信託の手続きや、認知症による口座凍結で生活費が引き出せなくなるという問題について、適切なアドバイスを得ることが可能となります。

自身や家族の思いを反映する大切な家族信託では、きちんとした手順を踏み、手続きをスムーズに進めることが重要です。

その点、相続を専門とする弁護士は家族信託の実務経験を重ねているので、様々なケースに応じて柔軟に対応することが可能となります。

家族信託について弁護士に相談することで、信託契約の内容を設計する際や公正証書として信託契約書の作成する際、適切なコンサルティングを受けることができることに加え、信託登記の手続きの代行を依頼することができます。

信託契約の際には、弁護士を信託管理人や信託監督人に指定することも可能です。

また、認知症となった後の対応についても、弁護士を成年後見人に選任することができ、認知症となった被後見人の代理として様々な手続きをスムーズに進めることができます。

わかりやすい明瞭な報酬基準のもとで良心的な金額を定めている弁護士を選べば、安心して依頼ができるはずです。

弁護士によっては相談料を無料に設定しているところや、費用の分割支払いを可能にしているところもあります。

あらかじめ弁護士の報酬額をしっかりと把握した上で、必要に応じて依頼を考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、認知症による口座凍結の防止策「家族信託」について解説した他、認知症で口座凍結してしまった場合の対応方法と、家族信託や生活費に関して困った場合の対処法についても解説しました。

認知症になる前に、あらかじめ家族信託や任意後見制度を活用して対策を取っておくと、口座凍結のトラブルを未然に防ぐことができます。

認知症となって口座が凍結してしまった後であれば、法定後見制度の活用を検討すべきです。

裁判所での手続きを行うことで法定後見人を選出して、口座凍結のトラブルを解消することが可能になるでしょう。

家族信託の手続きや認知症による口座凍結などの資産トラブルでお困りの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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