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最終更新日:2022/11/25

前妻の子に相続させない方法4つ【後妻や子どもに生前贈与するときの注意点】

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

前妻の子に相続させない方法4つ【後妻や子どもに生前贈与するときの注意点】

この記事でわかること

  • 前妻の子にも現在の妻との子と同様に相続権があることがわかる
  • 前妻の子に財産を相続させないような方法があることがわかる
  • 現在の妻や子に財産を贈与する場合の注意点を知ることができる

離婚歴がある男性の中には、以前の妻との間に子どもがいる場合があります。

離婚した妻との関係はすでになくなっていますが、夫婦が離婚しても親子の関係がなくなるわけではありません。

そこで問題となるのが、前妻との子にも相続権があることです。

前妻との子どもに発生する相続権をなくすことはできないため、現在の子どもや妻に多くの財産を残す方法を解説していきます。

前妻の子にも相続権はある

過去に離婚歴がある人の場合、離婚した配偶者との関係は離婚した時にすべて終了しています。

そのため、長年にわたって婚姻関係にあったとしても、相続が発生した時点で婚姻関係になければ相続権は発生しません。

ただ、離婚歴がある人は、以前の配偶者との間に子どもがいる場合があります。

たとえば、離婚した後、現在は母親と一緒に生活している子どもがいる元夫などです。

この場合、前妻との子どもと元夫が現在は一緒に生活していなくても、その子どもは法定相続人となります。

そのため、前妻の子にも相続権が発生することになります。

元夫が離婚後に結婚し、新しい妻との間に子どもが生まれたとしても、前妻との子の相続権が失われることはありません。

前妻の子に財産を相続させない方法

前妻との子にも相続権があるため、元夫が亡くなると前妻の子も財産を相続することができます。

しかし、中には何十年も前に離婚し、その後一度も会っていない子どもが相続するケースも考えられます。

前妻の子が相続することとなれば、現在の妻やその子どもの取り分が減ってしまう結果となります。

また、遺産分割協議に面識のない前妻の子が参加することとなるため、話し合いがまとまらないことも多いです。

その結果、前妻の子が相続することで、相続の際にトラブルとなる可能性が高くなります。

そこで、前妻の子にできるだけ財産を相続させないような対策を行うことが重要になります。

遺言書を作成する

遺言書を作成することで、前妻の子に多くの財産を相続させないようにすることができます。

亡くなった人がいると、その人が保有していた財産はすべて、法定相続人の話し合いにより相続する人を決定します。

しかし、亡くなった人が生前に遺言書を作成していた場合、その遺言書に従って遺産を分配することとなります。

遺言書には、その遺言書を作成する人が自由に、自身の財産を引き継ぐ人を決定することができます。

そこで、現在の妻や、その子どもが相続する財産が多くなるように記載し、逆に前妻の子の相続分を少なくすることができます。

こうすれば、前妻の子が相続する財産を最小限に抑えることができるでしょう。

なお、前妻の子も遺留分を有する法定相続人であるため、注意しなければならないことがあります。

それは、前妻の子の相続分をゼロにしてしまうと、後に前妻の子から遺留分を請求される可能性が高いということです。

遺言書を作成する際には、遺留分を有する法定相続人が、いずれも遺留分より多くの財産を相続できるようにしましょう。

すべての相続人が遺留分を上回る財産を手にすることができれば、遺言書通りに財産を引き継ぐこととなります。

生前贈与を行う

亡くなる前に、現在の妻やその子どもに財産を贈与することができます。

生前贈与を行うことで、亡くなった時に遺産分割の対象となる財産を減らすことが可能です。

また、妻や子どもに、自分の好きなタイミングで財産を選んで贈与することができるため、もらう方にも大きなメリットがあります。

生前贈与を行うと、贈与を行った年1年間に贈与された財産の合計額を求め、贈与税の計算をしなければなりません。

年間110万円を超える贈与が行われた場合には、贈与税の申告書を作成し、納税も行う必要があります。

贈与を行うことで、財産を前妻の子以外の相続人に渡すことができますが、贈与税や申告書の作成などの負担は発生します。

この他にも、生前贈与には注意点があるため、後ほど詳しく解説していきます。

相続放棄してもらう

相続放棄とは、法定相続人が被相続人の遺産を相続したくないため、相続人でないこととする手続きです。

被相続人が借金を多く抱えており、財産を相続するとその借金の返済義務を負ってしまう場合、相続権を放棄することがあります。

また、主な遺産が田舎の土地といった場合、相続しても後の維持・管理が大変なため、相続放棄することもあります。

前妻の子に相続放棄してもらうことで、前妻の子の相続権はなくなります

ただ、相続放棄するには、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出し、相続人でなくなるための手続きが必要です。

相続が発生してから3か月以内に相続放棄の申述書を提出しなければなりません。

相続が発生しバタバタとする中、非常に短い期間で相続放棄するかどうかの判断をしなければなりません。

しかし、前妻の子にこの短い期間内に相続放棄してほしいといっても、相続放棄してくれないことが多いでしょう。

そもそも、相続放棄は相続人がするかしないかを決定するものであり、前妻の子に対する相続対策として利用するのは難しいかもしれません。

相続人排除を行う

相続人排除とは、過去に被相続人に対して虐待や重大な侮辱をした人を相続人から外すことです。

被相続人が過去に嫌な思いをした場合、被相続人が生前に排除を行うことができます。

また、被相続人が遺言書を作成しておき、その遺言の中で相続人を排除することもできます。

相続人の排除を行うには、家庭裁判所が虐待などの行為があったと判断する必要があります。

そのため、被相続人が相続人の排除を希望しても、必ずしもその通りにはならないこともあり得ます。

後妻や子どもに生前贈与するときの注意点

後妻や子どもに生前贈与するときの注意点

前妻の子が多くの財産を相続することのないように、後妻である現在の妻やその子どもに生前贈与することができます。

ただ、生前贈与する際には、いくつかの注意点があります。

これらを考慮せずに贈与すると、かえってトラブルが大きくなることもあるので注意しましょう。

贈与税がかかる

生前贈与すると贈与税が発生します。

贈与税の額は、1年間に贈与した財産の金額から基礎控除110万円を差し引いた後の金額に対して計算されます。

1年間に贈与した財産の額が110万円以下であれば贈与税は発生しませんが、110万円を超えると申告・納税が必要です。

相続税の税率に対して、贈与税の税率は高めになっています。

そのため、同じ財産でも相続ではなく贈与することで税額が高くなることがあるので、注意が必要です。

一方で、贈与税の計算は1年ごとに分けて計算されます。

そのため、110万円の基礎控除は毎年適用を受けることができます

贈与する時期を分ければ、その分非課税で贈与できる金額が増えるため、計画的に贈与するのがおすすめです。

登記費用や不動産取得税がかかる

土地や建物などの不動産を贈与した場合、法務局で登記の変更をしなければなりません。

登記事項の変更を行う際は、変更の原因となった理由に応じて登録免許税を負担しなければなりません。

相続登記を行う場合に比べて、贈与があった場合の登録免許税は高くなるため、注意しましょう。

また、不動産を新たに取得した人は、不動産取得税を負担しなければなりません。

ただし、不動産を相続した場合は、不動産取得税がかからないこととされています。

逆に言えば、贈与により不動産の名義変更が行われた場合には、不動産取得税が発生することとなります。

不動産取得税の負担を考えると、贈与しない方が良かったということも考えられます。

不動産を贈与する場合は、不動産取得税がどれくらいの金額になるのか、あらかじめ試算しておくといいでしょう。

特別受益に該当することがある

相続発生前に特定の相続人だけに贈与を行うと、相続人の中で財産をもらった人ともらわなかった人とで不公平になります。

そこで、事前に財産をもらったかどうかで、不公平が生じないようにする制度があります。

その制度が、「特別受益」です。

財産を保有している人が、将来的に相続人となる人に財産を贈与した場合、相続財産を先に相続人に移転したのと結果は同じです。

そこで、相続人になる人に対して贈与した財産については、相続財産に含めることとします。

その上で、各相続人の法定相続分や遺留分の計算を行います。

生前贈与がないものとして法定相続分や遺留分の計算を行うため、生前贈与されたからといって有利になるわけではありません。

ただ、特別受益を主張する人がいてはじめて問題になる上、特別受益としてどの金額を含めるのか、相続人により解釈が異なります。

そのため、特別受益の主張をする相続人がいると、遺産分割は揉める可能性が高くなります。

特別受益が問題にならないよう、生前贈与は行わずに生命保険などを利用するのも選択肢に入れておくといいでしょう。

まとめ

前妻の子は長年にわたって音信不通である場合や、離婚してから会ったことがない場合もあります。

しかし、そのような実態があっても、法定相続人であるため相続権をなくすことはできません。

前妻の子も一定の財産を引き継ぐことを前提として、現在の妻やその子に財産を残す方法を考える必要があります。

生前贈与は、確実に財産を引き継ぐことができる一方、現在の妻や子に財産を多く残すことができない可能性もあります。

そのため、生前贈与以外の方法についても検討し、いくつかの方法を利用するようにしましょう。

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