この記事でわかること
- 養子縁組で苗字が変わる場合と変わらない場合
- 養子縁組の苗字を変えない方法
- 養子縁組における戸籍内容の変更
養子縁組をする理由は様々にあり、相続税の節税対策でする場合もあります。
相続税の節税対策で養子縁組をするときは、一般的に子どもの配偶者や孫を養子に迎え入れて行うケースが多いです。
まったく面識のない人の養子になるわけではないため、すんなりと養子縁組の手続きをされる方もいらっしゃいます。
一方で、養子縁組をして配偶者や家族と別姓になることに抵抗があり、なかなか行動に移せない方もいらっしゃいます。
養子縁組は法律で定められた制度ですが、一般の方には正確に理解するのが難しい部分があると言えます。
この記事では養子縁組の苗字について、わかりやすく解説していきます。
また養子縁組の苗字を変えない方法や、養子縁組をすると戸籍はどうなるのかを紹介します。
目次
養子縁組で別姓になる?
苗字を変更したくない方にとって、養子縁組で家族や配偶者と別姓になることは大きな問題です。
別姓になりたくないという理由で、養子縁組をすることを躊躇している方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、養子縁組をすると原則として養親の苗字に変更されます。
ただし、例外として変更されない場合もあります。
養子縁組で苗字が変更されない場合
養子縁組より前に婚姻で苗字を変更していた場合は、養親の苗字にはなりません。
たとえば、AさんとBさんが結婚をして、Bさんの苗字がAさんの苗字に変わったとします。
その後、BさんがCさんの養子になっても、Cさんの苗字には変更しません。
Aさんの苗字のまま養子になります。
反対に、結婚して苗字が変わらなかったAさんが養子になった場合は、Cさんの苗字に変更されます。
また、Aさんの配偶者であるBさんもCさんの苗字になります。
結婚で苗字が変わった場合と変わっていない場合で結論が異なるため、注意が必要です。
ちなみに、どちらのケースでも夫婦は別姓になりません。
ではAさんとBさんとの間に子どもがいた場合、子どもの苗字はどうなるのでしょうか。
養子縁組をした養子の子どもの苗字はどうなる?
養子縁組をした養子の子どもは、養親の苗字に変更されません。
先程の例でいうと、Aさんが養子縁組をすると配偶者のBさんの苗字は変わりますが、子どもの苗字は変わりません。
そのためAさんが養子縁組をすると、子どもと別姓になります。
反対にBさんが養子縁組をした場合は、Bさんの苗字が変わらないため、子どもと別姓にはなりません。
少し複雑な話になりましたが、親が養子になっても、子どもの苗字に変更はないと簡素に覚えておくといいかもしれません。
養子の苗字を変えない方法
養子縁組をすると、原則として養親の苗字に変更されます。
しかし事情があって、配偶者や家族と別姓になりたくない方もいらっしゃるでしょう。
養子縁組で変更された苗字は、家庭裁判所で手続きをして元の苗字に変えることも可能です。
ただし、必ずしも苗字を変更できるわけではないため、注意が必要です。
家庭裁判所で苗字を変更する手続
養子縁組で変わった苗字を元の苗字に変更するには、家庭裁判所で氏の変更許可申立てをします。
どこの家庭裁判所でも手続きを行えるわけではなく、住所地を管轄している家庭裁判所で行います。
費用は家庭裁判所ごとに異なりますが、概ね1,500円から2,500円程度です。
必要書類は申立書や戸籍謄本など数種類しかないため、時間やお金を掛けずにできる手続きとなっています。
家庭裁判所の苗字変更の要件
家庭裁判所で苗字変更の許可を受けるには、「やむを得ない事由」が必要です。
「やむを得ない事由」とは、養子縁組前に使用していた苗字の期間が長いため、養親の苗字では不都合が生じるなどが該当します。
この理由を申立書に記入して、家庭裁判所に提出します。
苗字変更の許可は「やむを得ない事由」をもとに判断されます。
「やむを得ない事由」は苗字変更の許可を受けるための大切な要件になるため、過不足や矛盾がないように記入しましょう。
養子縁組すると戸籍はどうなる?
養子縁組をすると、戸籍にどう記載されるのかは気になるポイントでしょう。
養子縁組の戸籍は、養子になる前が単身者だった場合と結婚していた場合で、記載方法が異なります。
戸籍の記載方法は、次の3つのケースに分類されます。
- 単身者だった場合
- 結婚して戸籍の筆頭者になった場合
- 結婚して苗字が変わった場合
それぞれのケースごとに説明していきます。
単身者が養子縁組をした戸籍
単身者が養子縁組をすると、養親の戸籍に入籍するケースが多いです。
養親の戸籍に入籍するため、このケースでは苗字が変更されます。
ただ、上記以外のケースもあります。
再婚相手の連れ子は、通常であれば戸籍の変更はありません。
連れ子の戸籍は、再婚前と同じです。
ただし、手続きをして、再婚相手と同じ戸籍にすることは可能です。
また養親が戸籍の筆頭者やその配偶者でない場合は、新しく編成された戸籍に入籍します。
単身者が養子縁組をする場合は、いくつかパターンが存在すると覚えておくとよいでしょう。
結婚して戸籍の筆頭者になった人が養子縁組をした戸籍
結婚して戸籍の筆頭者になった方が養子縁組をすると、養親の氏で養子を筆頭者とした新しい戸籍を編成し、養子の配偶者も入籍します。
養子とその配偶者は同じ新戸籍に入るため、別姓にはなりません。
しかし子どもがいた場合、その子どもは入籍せずに元の戸籍に残ります。
同じ苗字にすることは可能ですが、家庭裁判所での手続きが必要になることに注意しましょう。
結婚して苗字が変わった人が養子縁組をした戸籍
結婚して苗字が変わった人が養子縁組をした場合、戸籍の変動はありません。
そのため養子縁組をしても、苗字の変更はありません。
ただし、戸籍の身分事項欄に養子である事実は記載されます。
まとめ
養子は法律上、実子と同じように扱われます。
たとえば、養親が亡くなったとき、養子と実子は同じ割合で財産を相続します。
相続対策で財産を分散させたい場合には有効な手段と言えるでしょう。
ただ、養子縁組には、複雑な規定も存在します。
そのため、解釈違いでトラブルが発生することもあります。
養子縁組で困りごとやお悩みがあれば、弁護士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。