この記事でわかること
- 代襲相続があったときに起こりやすいトラブルの例
- 代襲相続についてのトラブルを防止する対策
- 代襲相続についてトラブルになってしまった場合の対処法
代襲相続は、被相続人(亡くなった方)の子どもが先に亡くなっていた場合などに、孫へ直接行われる相続を言います。
また、亡くなった方の甥・姪にあたる方が代襲相続人になるケースもあります。
代襲相続があると、世代の2回りも違う者同士で話し合いが必要になることも多く、相続関係が複雑になりがちです。
そこで今回は、代襲相続で起こりやすいトラブル事例やその対処法などを解説していきます。
生前にできる対策もありますので、トラブルを防止したい方や解決したい方は参考にしてみてください。
代襲相続で起きやすいトラブル6つ
代襲相続で特に起きやすいトラブルとしては、以下のようなものがあります。
- 相続人が多く特定が難しい
- 相続人と連絡がつかない
- 代襲相続人が相続手続きに協力しない
- 親子間ほど世代が違い、まともに話し合いにならない
- 代襲相続人が不利益を被るよう話を進められる
- 代襲相続人が相続分に納得しない
分類としては、遺産の取り合いや手続きの難航、そして人間関係の悪化に分けられるでしょう。
代襲相続が発生するケースでは、親子ほど世代の違う者や、これまで疎遠だった者が話し合いに加わる場合が多くトラブルになる可能性が高くなります。
相続人が多く特定が難しい
代襲相続が絡む相続では当事者が多くなるケースが多く、相続人とその相続割合を特定するだけでも苦労する場合があります。
曾祖父や曾祖母あるいはそれ以前のご先祖の相続手続きを放置していたような場合はなおさらです。
その理由は、被相続人が亡くなった時点で施行されていた法律によって、相続人や相続分が決まるためです。
相続法(民法)は、たびたび改正されており、古い場合は家督相続と言って主に長男が相続するといった時代もありました。
しばらく相続による名義の変更がされていない不動産などは、相続人が100人を超えるケースもあり、家督相続の判断が必要になる場合もあります。
相続人を探している間にまた誰かが亡くなって相続が起こる場合もあり、その度に四十九日を待っていては、さらに手続きが進まなくなってしまいます。
代襲相続の対象が少ない場合にはこうしたトラブルにはなりませんが、相続人が多くなるケースでは相続人の特定から専門家に依頼する必要があるでしょう。
相続人と連絡がつかない
相続人が多数になると、面識のない親戚が代襲相続人になるケースがあります。
特に、甥・姪が代襲相続人になる場合に、相続人を特定できても電話番号がわからない場合も多く、スムーズに連絡を取るのは容易ではありません。
まずは身近な親戚からたどって、電話番号や住所を調査していくことになるでしょう。
親戚のうち誰も代襲相続人の連絡先がわからなければ、専門家に依頼して戸籍の附表等から住所を調査してもらう必要があります。
この場合は電話番号が分からないため、初めの連絡は手紙で行うのが一般的な方法です。
そして、初めに連絡する内容には相当に気を遣う必要があります。
疎遠の親戚から急に遺産相続の電話や手紙が来たら、不審に思われて切られたり、手紙を捨てられたりする場合もあるためです。
これまでの関係性によっては。関わりたくないためにあえて無視する方もいます。
また、連絡した際に『あなたには遺産を渡したくない』といったニュアンスを相手が感じてしまうと、感情的な対立を招く可能性が高くなってしまいます。
余計なトラブルが起こらないように、相続が発生した事実と、手続きのために協力して欲しい旨を誠実に伝える必要があります。
代襲相続人が相続手続きに協力しない
代襲相続人と連絡がとれても、相続の手続きに協力してくれない場合があります。
このトラブルは、やはり代襲相続人が疎遠だった場合に多くなります。
代襲相続人としては、急に遺産相続と連絡が来て実印押印や印鑑証明書の提出を求められても、抵抗があるのも自然です。
さらには「自分の相続分が本当に合っているのか?借金を背負わされないか?」などと不安になる人もいるでしょう。
こうした不安や疑念から警戒するパターンがある他、初めから親戚関係が悪く、非協力的なケースもあります。
親子間ほど世代が違いまともに話し合いにならない
代襲相続があると、被相続人の孫、あるいは叔父や叔母、甥・姪という世代違いの相続人が当事者になるケースが多くなります。
そのため、世代が大きく違う人同士での話し合いになり、話がかみ合わなくなってしまいがちです。
未成年者が相続人になる場合には、遺産分割はその法定代理人との話が必要になり、より当事者が複雑化する可能性もあります。
代襲相続人が不利益を被るよう話を進められる
代襲者が被相続人の甥・姪である場合、遠方に暮らす人も多く、介護実績等もない場合が多いでしょう。
それでも、代襲相続は法で定められた権利であり、他の相続人から一方的に相続分を破棄させることはできません。
しかし、被相続人の妻または夫としては、疎遠の甥や姪に相続分があることに納得できないと考えるのも自然でしょう。
このような場合、代襲相続人に相続の話をする段階で先に財産隠しをしてしまう人もおり、代襲相続人が一方的に不利益を被るケースがあります。
その他、一方的に相続放棄するよう求められ、トラブルになるケースもあり得ます。
代襲相続人が相続分に納得してくれない
上記の事例とは反対に、代襲相続人が適法な相続分に納得せず、そのため手続きも進めたがらないケースがあります。
代襲相続人となる孫または甥・姪が、現に被相続人の生前に介護を行っていたようなケースでは、法定の相続割合よりも多く相続したいと考えると、こうしたトラブルになりがちです。
看護・介護実績の有無は、しばしば相続で揉める原因になります。
代襲相続でトラブルを回避・防止する方法
ここからは、代襲相続でトラブルになるのを防ぐためにできる対策を紹介します。
人間同士の話し合いであるため100%防止するのは難しいですが、話し合いの土台を作って交通整理をしておくことは可能です。
下記の対策を上手に使い、代襲相続のトラブル防止に努めましょう。
- 財産目録を作成しておく
- 遺言を作成しておく・作成してもらっておく
- 普段から他の親族とのコミュニケーションを大事にする
- 相続人の廃除を行っておく
- 各専門家に相談する
では、一つずつ解説していきます。
財産目録を作成しておく
生前に自己の資産について財産目録を作成しておくと、遺産を確認する手続きが簡単になり、財産隠しのトラブルを予防する効果があります。
前提として、相続が発生すると、相続人は被相続人の資産を確認しなくてはなりません。
資産が分からない場合、可能性のある銀行や生命保険会社、各自治体に対して、それぞれ口座・保険・土地建物の有無などを細かく探していきます。
このとき、財産目録があると、資産を探す手間が省けて相続人の負担が減ります。
疎遠な相続人から財産隠しを疑われた場合にも、被相続人本人作成の目録を定時すると、総資産の確認についてすぐに納得してもらえる可能性が高くなります。
遺言を作成しておく・作成してもらっておく
財産目録の他、遺言を作成しておくのもトラブル防止に有効な対策のひとつです。
遺言では、相続分の指定(割合による指定)の他、特定の不動産を特定の者に相続させるような指定も有効です。
また、寄付や信託契約、財団法人の設立によって遺産の使い道を定めておくこともできます。
適切な方法であらかじめ遺産の用途を定めておくと、遺産分割の対象となる財産を減らしておけるため、相続人同士での争いを防止する効果があります。
なお、遺言は民法で定められたルールに従って作成する必要があり、要件が欠けると無効になる可能性があるため注意が必要です。
せっかく作成しても、不備があると遺言が有効か無効かの判断が必要になり、むしろ揉める原因になってしまいます。
遺言を作成する際は、専門家に依頼して公正証書で作成するなど、間違いがない方法で行いましょう。
なお、遺言は本人の自由な意思に基づくものであり、その他の家族や相続人が内容に口出しできるものではありません。
相続人が遺言の内容を改変・偽造すると、相続人としての資格そのものを失う可能性があります。
家族に遺言を勧めたいと思ったら、内容には触れずに作成を促すに留めましょう。
普段から他の親族とのコミュニケーションを大事にする
普段から他の親族とコミュニケーションを取っておくと、味方が増え、トラブルの解決に役立つ場合があります。
普段から言いにくい事や不満をためてしまうと、一気に爆発して収集がつかなくなるケースもあります。
相続分で揉めるのはたいていお金のことですので、そのタイミングで不満が爆発すると遺産分割協議や手続きに影響してしまうでしょう。
そうなってしまわぬよう、日常のコミュニケーションを大切にしましょう。
相続人の廃除を行っておく
生前対策として、特定の相続人を相続の対象にならないよう廃除しておく方法があります。
ただし、廃除には前提として以下の要件が必要です。
- 被相続人に対して虐待したとき
- 被相続人に重大な侮辱を加えたとき
- 推定相続人にその他の著しい非行があったとき
廃除の方法は民法に定められており、以下の2パターンあります。
- 遺言によって廃除する
- 家庭裁判所に請求してあらかじめ廃除しておく
廃除を行うのは被相続人本人です。
他の相続人からの廃除請求はできません。
各専門家に相談する
相続トラブルの予防については、税理士・司法書士・弁護士等の専門士業に相談しておくのが有効です。
税理士は相続税、法人税、生前贈与等の税金対策が必要な場合に必要です。
司法書士は、事業承継や事業ローンの引継ぎ、不動産、遺言書作成、信託等について相談できます。
弁護士はオールマイティですので、より相続に専門的な弁護士か、他の士業と合同で活動するグループ体制の法人を選ぶといいでしょう。
代襲相続でトラブルが起きてしまったときの対処法
代襲相続でドラブルが起きてしまったときは、その原因に合わせて以下のような対処方法が考えられます。
- 遺産の内容および相続権を正確に理解する
- 相手の立場や事情を理解し、尊重しあう
- 感情的にならず、長期的な視点で考えて妥協点を探す
- 安易に遺産分割協議に同意しない
- 相続放棄する
- 弁護士に解決を依頼する
では、1つずつ解説していきます。
遺産の内容および相続権を正確に理解する
まず話し合いの土台となる、相続人の範囲および相続割合を勘違いしていては話になりません。
無用な争いを生む原因にもなってしまうでしょう。
相続人が多くなる場合は専門家に依頼するなどして、正確な状況把握に努めましょう。
相手の立場や事情を理解し、尊重しあう
相続割合は民法で決まっているとはいえ、同居または通所して介護・看護していた相続人は、より相続分を多く欲しいと思うのも自然です。
代襲相続人となる孫・甥・姪の方が積極的に介護・看護に参加するケースもあります。
このような場合、自らの権利主張だけでなく相手方の話も聞き、互いに尊重して話を進めると、よりまとまりやすくなるでしょう。
感情的にならず、長期的な視点で考え妥協点を探す
相続についての話し合いが揉めると、解決しないまま1年以上かかることも珍しくありません。
話し合いが長期化するとストレスになる他、さらに子の世代に問題を残したままになる可能性もあります。
問題解決のためには、このような長期的なリスクを考慮して妥協点を探すことが大切です。
どういった道が自分や家族にとって一番いいのか、目的から逆算して長期的な目線で解決方法を考えるといいでしょう。
それでも譲れない部分がある場合は、専門家に相談し、解決方法を探す必要があります。
相続人・代襲相続人間で話し合いをする際には、できるだけ早めに弁護士等に相談し、問題を正しく整理するといいでしょう。
安易に遺産分割協議に同意しない
十分な話し合いもなく遺産分割について相手方から提案された場合、安易に同意しないことが大切です。
もちろん、円満に解決できる内容なら問題ありません。
しかし、一度サインや押印を行うと、あとから覆すのは相当難しくなります。
遺産分割ヘの同意は慎重に行いましょう。
相続放棄する
話し合いに巻き込まれるのがとにかく面倒であれば、相続放棄するのも一つの方法です。
相続放棄とは相続に関する一切の権利を放棄する方法であり、成立すると初めから相続人でなかったことになります。
直系である自分の子や孫への代襲相続も発生しなくなるため、相続権もなくなりますがトラブルの元を完全に遮断できます。
相続放棄が成立するには家庭裁判所への申述が必要で、相続放棄したいと相手に伝えるだけでは足りません。
また、一部の財産を放棄したり、借金だけを放棄したりはできません。
相続放棄は、期間制限がある中で慎重な判断が必要になるため、お考えの場合は専門家に相談して行うといいでしょう。
弁護士に解決を依頼する
トラブルになってしまった後は、解決を弁護士に依頼する方法があります。
税理士や司法書士は、生前対策または相続後の一部手続きを行うことができますが、トラブル解決のための相手方との代理交渉はできません。
弁護士に依頼すると前提となる相続人の範囲や相続分を間違いなく整理できるため、トラブルの予防にも繋がります。
弁護士相手方との代理交渉も可能なため、互いに感情的になることを避け、本人交渉のストレスも緩和されるでしょう。
相続でよくあるトラブルは、基本的に同じようなトラブルを誰かが過去に経験しています。
その際に解決に至ったノウハウが、弁護士にはあります。
早めに専門家に相談することで無用なトラブルや複雑化を避け、スムーズな解決を目指せるでしょう。
まとめ
代襲相続が発生すると、相続人が多くなりやすく、疎遠な人や世代の違う人との話し合いになるため、トラブルになる可能性が高くなります。
普段から親戚同士でのコミュニケーションを大切にし、トラブル防止に努めましょう。
また、遺言や相続人の廃除の他信託契約や法人設立を利用するなど、相続トラブルを防止するには様々な生前対策があります。
個別の状況に合わせて最適な方法を探したい場合、早めに専門家へ相談するといいでしょう。
代襲相続についてご不明な点やご不安な点があれば、まずはベンチャーサポートグループへご相談ください。