この記事でわかること
- 代襲相続人は連帯保証人としての地位も相続することがわかる
- 被相続人が連帯保証人となっていたかどうかを調べる方法がわかる
- 代襲相続により連帯保証人となってしまった場合の対処方法がわかる
亡くなった人がいると、その人の遺産だけでなく債務についても、相続人が引き継ぐこととされています。
また、亡くなった人が連帯保証人になっている場合には、その連帯保証人としての地位も相続人が引き継ぐこととなります。
代襲相続が発生した場合も、代襲相続人は相続人と何ら変わりないため、連帯保証人の地位を引き継ぐ場合もあります。
ただ、代襲相続人は被相続人との関係が薄いケースもあり、できれば連帯保証人にはなりたくないと考えるでしょう。
そこで、被相続人が連帯保証人となっていたかを確認し、連帯保証人にならないための方法について解説していきます。
目次
代襲相続では連帯保証人の地位も相続してしまう
被相続人が遺言書を残していない場合、被相続人の遺産や債務については法定相続人が引き継ぐこととなります。
この時、遺産については、相続して困るということはそれほど多くはないでしょう。
しかし、債務については相続することでその支払い義務を承継することとなり、相続人の負担は非常に大きなものとなります。
また、被相続人が連帯保証人となっていた場合、その連帯保証人としての地位も相続人が相続することとなります。
相続人が連帯保証人になると、債務者が返済できなくなった場合には、その債務を支払う義務が発生しますので、常に大きな負担が発生するかもしれないという状態になるのです。
なお、引き継ぐ連帯保証債務は、法定相続人が法定相続分に分けて相続することとなります。
債権者からすると、特定の相続人が1人でまとめて相続するという考え方にはならず、すべての法定相続人は原則としていくらかの連帯保証債務を引き継ぐこととなるのです。
また、代襲相続が発生している場合、その代襲相続人にも同じように連帯保証債務が発生します。
もし、被相続人が連帯保証人であると知らずに相続手続きを進めてしまうと、連帯保証債務を免れることができなくなります。
そのため、相続が発生した段階で連帯保証人かどうかを確認することは非常に重要なのです。
まずは、被相続人が連帯保証人となっているかどうかを確認し、その後の方針を決定することが必要です。
被相続人が連帯保証人かどうか調べる方法
被相続人が連帯保証人になっているかどうかを確認するには、どのようにすればいいのでしょうか。
また、保証人にも様々なものがありますが、具体的にどのような保証人が相続対象になるのかも確認しておきましょう。
金融機関の借り入れの連帯保証人
被相続人が知人や親族に頼まれて、金融機関からの借り入れについて連帯保証人になっている場合があります。
この場合、連帯保証人となっているかどうかを調べるには、主債務者か債権者に確認するしかありません。
被相続人が連帯保証人として主債務者と連絡を取っている場合は、その記録が被相続人の遺品の中にあるかもしれません。
あるいは、金融機関に直接確認する中で、その事実が浮かび上がってくる可能性もあります。
なお、金融機関からの借り入れについて連帯保証人となっている場合、その地位は相続の対象となり、法定相続人全員が法定相続分に応じて引き継ぐこととなります。
不動産の賃貸借契約の連帯保証人
アパートなどの物件を借りる際に連帯保証人を求められることがあり、被相続人が連帯保証人になっている場合があります。
このような連帯保証人になっているかどうかを調べるのは、簡単なことではありません。
多くの場合、親族が部屋を借りる、あるいは事業用の店舗や事務所を借りる場合に連帯保証人となっていると考えられます。
そのため、まずは親族などに賃貸借契約を結んでいる人はいないかを確認し、直接確認してみるしかありません。
不動産の賃貸借契約を結ぶ際に連帯保証人となっている場合、その地位は相続人に引き継がれます。
借主が家賃を滞納した場合には、その支払請求が連帯保証人に来ることとなるのです。
また、滞納している月数が3か月になると、遅延損害金の請求を受けることもあるので注意が必要です。
なお、賃貸借契約が更新された時に連帯保証人が署名押印していなくても、その責任は引き続き負うとした裁判例があります。
生前に被相続人が連帯保証人になっていると、よほどのことがない限りその地位は亡くなるまで継続していると考えられるのです。
その他の保証人について
身元保証人という形で、第三者の保証人になっている場合があります。
この身元保証人は、企業に入社する際などに求められることが多く、保証する人とされる人の信頼関係によって成立するものです。
したがって、被相続人が身元保証人になっていたとしても、その地位は相続人に引き継がれるものではないとされます。
ただし、身元保証をした人が損害を発生させ、そのことについて保証人として支払義務が発生している場合があります。
このような支払義務については、相続人が相続しなければなりません。
連帯保証人の地位は相続放棄できる
被相続人が連帯保証人となっている場合、連帯保証債務を引き継ぐことを回避することはできないのでしょうか。
実は連帯保証人の地位は、相続放棄することで回避することができます。
そこで、連帯保証人の地位を放棄する方法と、相続放棄の注意点について解説していきます。
遺産分割協議によって連帯保証債務をゼロにはできない
連帯保証債務は、相続人にとってはマイナスの財産であり、できれば相続したくないものです。
しかし、いずれの相続人も連帯保証債務だけを相続しないということは認められません。
また、何人か相続人がいる場合に、その中の1人だけに連帯保証債務をまとめるということもできません。
遺産分割の場では、特定の相続人が遺産を相続する代わりに、連帯保証債務をすべて引き受けるという決定をするかもしれません。
しかし、このような取り決めは債権者に対しては何の効力も持ちません。
もし、主債務者が返済できなくなった場合には、すべての相続人に支払いを求めてくることとなります。
そのため、相続放棄しない限り連帯保証債務がゼロとなる相続人はいないのです。
相続放棄で連帯保証人の地位を放棄する
連帯保証人の地位を引き継がないようにするためには、相続人は相続放棄する必要があります。
相続放棄した相続人は、連帯保証人としての地位を引き継がないこととなるのです。
ただ相続放棄すると、被相続人の債務を引き継がない代わりに、被相続人の財産を相続することもできなくなります。
そのため、連帯保証債務の金額とプラスの財産の額を比較して、相続放棄するかしないかを判断しなければなりません。
連帯保証債務が現実の債務として効果を持つのは、主債務者が返済できなくなった時です。
もし、主債務者が何の問題もなく返済できれば、連帯保証人に請求されることはありません。
そのため、主債務者の返済状況も、相続放棄するかどうかの大きな判断材料となります。
相続放棄の注意点
相続放棄は、相続が発生した日から3か月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
この期限内に申立てを行うことができなかった場合は、相続放棄することができないため、他の手立てを考える必要があります。
相続放棄は1人の相続人だけでも単独で行うことができます。
相続放棄した相続人は連帯保証人となることはありませんが、同順位の相続人の相続割合がその分増えます。
また、同順位の相続人が全員相続放棄すると、次順位の相続人が次の法定相続人となります。
そのため、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹が連帯保証人となることがあるのです。
相続放棄したことは、必ず他の相続人に連絡するようにしましょう。
代襲相続により相続人となった人(孫)が、被相続人(祖父母)の連帯保証人となっていることがまれにあるかもしれません。
このような場合、代襲相続人が相続放棄しても、自身が連帯保証人となっていることには変わりありません。
仮に相続放棄を行って借金を相続しなくても、連帯保証人であることに変わりはないため、返済義務はなくならないのです。
代襲相続で連帯保証人になってしまったときの対処法
相続放棄をすれば、代襲相続が発生しても連帯保証人としての地位を引き継がないで済みます。
しかし、相続放棄するには3か月という期限があり、それまでに相続放棄できない場合もあります。
その場合、どのような対処法があるのでしょうか。
連帯保証人として支払いを行う
連帯保証人としての地位を相続すると、主債務者が返済できない場合、債権者から返済を求められることとなります。
この時、返済せずにいると遅延損害金も発生し、さらに返済額が大きくなってしまうため、基本的には返済を行うしかありません。
なお、連帯保証人が返済した金額は、主債務者に対して請求することができます。
連帯保証人として返済を行うことを主債務者に通知して、その後の請求をスムーズに行うようにしましょう。
金融機関との交渉を行う
債権者である金融機関と話し合いを行い、少しでも返済額を減らしてもらうような交渉を行いましょう。
ただ、金融機関によっては交渉を行っても減額を認めてくれないことも考えられます。
また、連帯保証人は本来、返済義務があるため、どれだけ正論で交渉しても減額は認めてもらえません。
できるだけ情に訴えて交渉するようにしましょう。
法的整理を行う
代襲相続により連帯保証人として債務の返済を行うこととなったとしても、返済ができない場合があります。
このような場合は、弁護士などの専門家に相談した上で、法的整理を検討する必要があります。
任意整理、個人再生、自己破産という整理方法があり、その債務の金額や個人の状況に応じて最適な方法を選択します。
まとめ
代襲相続が発生することで、連帯保証人の地位を相続してしまう場合があります。
連帯保証人にならないようにするためには、相続放棄することが必要ですが、期限内に相続放棄できない場合もあります。
ここで大事なのは、被相続人が連帯保証人になっていることを早く把握することです。
そして、遺産の全貌を確認して、相続放棄するかどうかの判断をするようにしましょう。