この記事でわかること
- 相続人代表者指定届の提出期限や効力
- 相続人代表者指定届の書き方
- 相続人代表者指定届の注意点
不動産の登記名義人が亡くなり、相続登記を固定資産税の賦課期日までに行わない場合、役所に相続人代表者指定届の提出が必要な場合があります。
相続人代表者指定届は、相続の手続で必ず提出しなければならない届出ではありません。
そのため相続人代表者指定届が具体的にどのようなものなのか、どのように記入するのかをご存知の方は少ないのではないでしょうか。
今回は相続人代表者指定届の提出期限や記入例、また注意すべき点などを解説します。
目次
相続人代表者指定届とは
不動産の登記名義人が亡くなると、相続人は固定資産税の納税義務者の地位を継承します。
複数の相続人がいる場合は、すべての相続人が納税の義務を負います。
固定資産税を納める役所は納税義務者に納税通知書を送りますが、複数の相続人が納税義務者である場合、すべての相続人に納税通知書を送らなければいけません。
相続人の中から代表者を指定すれば、代表者にだけ納税通知書を送ればいいため、手間を省けます。
相続人代表者指定届とは、相続人の中から指定した代表者を役所に伝えることで、納税通知書を代表者だけに送るようにする手続です。
ここでは、相続人代表者指定届とはどういったものかについて解説します。
相続人指定届の提出期限
相続人指定届を役所に提出しようと考えている方や、役所から相続人代表者を指定するように通知が届き、いつまでに提出しないといけないのだろうと心配されている方もいるのではないでしょうか。
実は相続人代表者指定届には提出の期限がなく、いつ提出しても構いません。
ただし以下のような場合には、相続人代表者指定届の速やかな提出をおすすめします。
- 固定資産税等の賦課期日の時点で登記名義を変更していない場合
- 登記名義人が亡くなった年の賦課期日までに新しい名義人に名義変更できない場合
相続人代表者指定届の効力
相続人代表者指定届の効力は、役所が固定資産税等の納税通知書を送付する代表者を認識することです。
そのため代表者に指定されたとしても、他の相続人を代表してすべての固定資産税を納税する義務を負うわけではありません。
相続人代表者指定届を無視した場合
前述のとおり、相続人代表者指定届には役所が代表者を認識するだけの効果しかありません。
そのため役所から相続人代表者を指定するように通知が届いた場合に、相続人代表者指定届を提出しなかったとしても罰則はありません。
ただし提出しない場合は、役所が相続人の中から代表者を指定することになります。
もし代表者に指定したい相続人がるときは、早めに相続人代表者指定届を提出するほうがよいでしょう。
相続人代表者指定届と相続放棄
相続放棄をしようと考えているときや相続放棄をした後に、役所から相続人代表者を指定するように通知が届く場合があります。
相続放棄をすると被相続人から何も相続しない状態になりますが、役所から通知が届いたということは納税義務者としてみられているのでしょうか。
相続放棄をすることで、被相続人の納税義務者の地位は承継されません。
役所が相続放棄したのを知らないために通知が届いたということです。
そのため、役所には早めに相続放棄した旨を伝えるようにしましょう。
相続放棄をする前に通知が届いた場合は、相続放棄をした後に役所に伝えるとよいでしょう。
相続人代表者指定届の記入例・必要書類
相続人代表者指定届は、役所に提出をする書類のため、所定の様式に記入する必要があります。
記入漏れや記入ミス等がある場合や、提出時に必要な書類を持参していないと受領されません。
そのため、相続人代表者指定届の正しい書き方や必要な書類を知っておくのはとても大事です。
ここでは、相続人代表者指定届の記入例と届出のときに必要な書類について解説していきます。
相続人代表者指定届の書き方
相続人代表者指定届の様式は、納税する役所のホームページからダウンロードするか、役所の窓口で入手できます。
様式は役所ごとに多少の違いはありますが、記入する箇所は概ね同じです。
下図は国分寺市の様式での記入例になります。
主に記入する箇所は、以下の項目です。
- 届出日
- 代表者の住所、電話番号、氏名、続柄
- 被相続人の住所、氏名、お亡くなりになった日
- 代表者以外の相続人の住所、氏名、続柄
記入する箇所は多くないため、記入例を見ながら丁寧に記入するとよいでしょう。
相続人代表者指定届の必要書類
相続人代表者指定届の届出をするとき、持参しなければいけない書類があります。
様式と同じく必要書類も役所ごとに細かな違いがありますが、ここでは一例として国分寺市で届出をするときに必要な書類を挙げておきます。
- 相続人の本人確認書類(運転免許証等)
- 相続人が手書きしない場合については印鑑(認印可)
上記2点(手書きの場合は1点)を持参して、届出に行くようにしましょう。
国分寺市以外で届出をする場合は、事前に役所に確認してから届出に行かれることをおすすめします。
相続人代表者指定届に関するトラブル
「相続人代表者」という言葉を聞いて、代表者になると何かデメリットやトラブルが発生するのではないかと不安になる方がいるのではないでしょうか。
「相続人代表者」は相続人を代表する者ではありますが、すべての相続手続きにおいて代表するわけではありません。
あくまでも固定資産税等の納税の通知を、他の相続人の代表者として受け取るだけです。
相続人代表者が、他の相続人の代わりに固定資産税をすべて納税する義務を負うわけではありません。
そのため相続人代表者になっても、デメリットやトラブルが発生する可能性は極めて低いです。
ただし可能性がまったくないわけではありません。
- デメリットやトラブルが発生する可能性があるとすれば、以下の手間が考えられます。
- 納税通知書を受け取った代表者が他の相続人に通知書が届いた旨を連絡する手間
- 納税額を徴収する手間
トラブルが発生しないためにも、代表者を指定するときに納税額の徴収方法など決めておくとよいかもしれません。
まとめ
相続人代表者指定届は、役所に納税の通知を送付する相続人を知らせるために提出する書類です。
そのため相続人代表者になることで、デメリットやトラブルが発生する可能性は極めて低いといえます。
相続人代表者指定届はいつでも提出可能で、記入例を参考にすれば時間をかけずに作成できます。
相続人代表者が必要な場合は早めに手続きをするとよいでしょう。
しかし相続には様々なケースがあるため、迅速に相続人代表者を決められないときもあります。
そのようなときは相続人代表者指定届に関すること以外にトラブルが発生する可能性もあるため、弁護士などの専門家へのご相談をおすすめします。