この記事でわかること
- 遺産分割調停はどのようなことを行う手続きかを知ることができる
- 遺産分割調停を欠席してしまうとどのようなことが起こるかわかる
- 遺産分割調停をどうしても欠席する必要がある場合の対処法がわかる
目次
遺産分割調停とは
被相続人の保有していた遺産は、すべて相続人が引き継ぎます。
各相続人がどの遺産を引き継ぐのかを決定するのは、すべての相続人が参加して話し合いを行う遺産分割協議の場です。
しかし、遺産分割協議での話し合いで、すべての相続人が納得のいく結論が出るとは限りません。
いつまでも遺産分割協議が成立しないと相続の手続きが先に進まないため、遺産分割調停によって、遺産分割が成立するようにします。
遺産分割調停を申し立てると、家庭裁判所の裁判官と調停委員が相続人の間に入って、話し合いを仲介します。
相続人が個別に調停委員と話し合いを行い、それぞれの相続人の主張を調整して、遺産分割の成立を目指します。
遺産分割調停の呼び出し無視はおすすめできない
遺産分割調停を申し立てた相続人がいると、その相続人と家庭裁判所が第1回期日を決定します。
そして、他の相続人に対しては、家庭裁判所から日程の通知が届きます。
この調停の期日については、申立てを行った相続人以外の相続人にとっては、突然の知らせを受ける形となります。
そのため、仕事や予定があるため家庭裁判所で決められた期日に行くことができないということもあるでしょう。
遺産分割調停を欠席すると、どのようなことが起こるのでしょうか。
遺産分割調停を欠席してはいけない理由
遺産分割調停の呼び出しを受けたにもかかわらず、その日に出席できない場合、無視してしまうことはおすすめできません。
遺産分割調停の期日に正当な理由なく欠席した場合、5万円以下の過料が科されるとされているためです。
つまり、遺産分割調停の呼び出しを無視してしまうということは、法的に問題があるとされているわけです。
なお、実際には「正当な理由」についてかなり許容されていることもあって、過料が科されることはまれです。
遺産分割調停が成立しなかった場合の流れ
遺産分割調停を欠席しても過料が科されないからといって、調停を無断で欠席してもプラスになることはありません。
それは、遺産分割調停ですべてが終了するわけでなく、さらにその先の手続きがあるためです。
連絡なく遺産分割調停を欠席し、次回の調停期日の調整にも応じなければ、調停が不成立となってしまいます。
遺産分割調停が成立しないと、次に遺産分割審判が行われることとなります。
しかし、遺産分割調停を欠席し、自身の意見を裁判所に一切伝えていない相続人の意見は、遺産分割に反映されません。
その結果、遺産分割がまったく望まない形で決着することとなってしまう可能性があります。
遺産分割調停を無視・欠席したい場合の対処法
それでは、遺産分割調停を無視あるいは欠席したい場合には、どのように対処したらいいのでしょうか。
遺産分割調停をどのような理由で欠席したいのか、その理由別に対処法をご紹介します。
遺産分割に関わりたくない場合
遺産に興味がなく、どのような遺産を受け取ってもいいし、何も受け取らなくてもいいと考えている場合です。
この場合は、遺産分割調停に参加する必要は必ずしもありません。
そこで、相続放棄の申述を行い、遺産分割調停に関わらないようにすることができます。
ただし、相続放棄の申述は相続開始から3か月以内でなければできないため、遺産分割調停では期限が過ぎていることがあります。
この場合は、相続放棄の申述ではなく相続分の譲渡あるいは放棄を行うと、自身の相続分を他人に譲渡することができます。
相手方となる相続人の了承が必要ですが、期限はないため、遺産分割調停でも意思表示することができます。
家庭裁判所から送付される答弁書に、相続分の譲渡あるいは放棄を行う旨を記載し、連絡するようにしましょう。
自身の相続分について争いがない場合
自身が相続する遺産について争いがないため、遺産分割調停に参加する必要性がないと考えている方もいるかもしれません。
しかし、遺産分割のすべてが決定していなければ、決まっていたと思っていた内容がどのように変更されるかわかりません。
したがって、自身の相続分について争いがないと思っている相続人も、必ず遺産分割調停に参加する必要があります。
家庭裁判所から送付されてきた答弁書に、必要事項を記載して返送し、出席について相談するようにします。
どうしても期日に都合がつかない場合
何の相談もなく決められた第1回期日に出席できないという人は、実際かなりいるはずです。
ただし、欠席となってしまう場合でも、家庭裁判所から送付されてきた回答書に欠席の連絡を記載し、送付しなければなりません。
また、第2回期日の希望日を記載し、第2回期日には出席できるようにしましょう。
遠方に住んでいて家庭裁判所に行けない場合
遠方に住んでいて家庭裁判所の調停に参加できない場合には、電話会議システムを利用することができます。
これは、最寄りの家庭裁判所に行き、その家庭裁判所から電話会議システムで調停に参加するものです。
病気などの理由がある場合は、自宅から電話会議システムを利用することが認められることもあります。
平日に家庭裁判所に行くことができない場合
仕事などのため、期日に関係なく平日に行われる調停には参加できない人がいます。
この場合は、弁護士を代理人に立て、調停に参加してもらうことができます。
平日に参加することができる人でも代理人を立てることができ、多くのケースで利用されています。
まとめ
遺産分割協議は、すべての相続人が納得しなければ話し合いは成立しません。
そのため、遺産分割協議が成立せず、遺産分割調停に持ち込まれることも少なくありません。
遺産分割調停もすべての相続人が参加することが必要ですが、様々な事情で参加が難しい場合があります。
この場合は、書面で対処する、弁護士などの代理人を立てる、第2回期日以降に参加するなどの対処法を実行しましょう。
家庭裁判所からの通知を無視してはなりません。
すみやかな相続の決着と親族間のトラブルを避けるためにも、できる対処法を検討しておきましょう。