この記事でわかること
- 夫婦間の贈与で贈与税がかかるケース
- 夫婦間贈与の未申告がバレたときのペナルティ
- 贈与税を払わずに贈与する方法
目次
夫婦間の口座移動による贈与はバレるのか?
夫婦間が口座移動により多額の現金を贈与する行為は、税務署にバレる可能性が高いです。
ただし、贈与税の対象にならない程度に夫婦間で多少口座移動する程度であれば、税務署からは指摘されません。
以下では、夫婦間贈与がなぜバレるかについて解説します。
税務署の調査方法・夫婦間贈与はなぜバレるのか
夫婦間贈与がバレるタイミング
- 税務署による「お尋ね」調査
- 相続
- 不動産登記
「夫婦間で黙っていれば贈与はバレないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、それは甘い考えで、夫婦間贈与は基本的にバレます。
相続や不動産登記のタイミングで、夫婦間贈与がバレることが多いです。
税務署は、大きなお金が動くタイミングに合わせて夫婦間贈与をチェックする傾向があります。
あくまで夫婦間贈与がバレやすいタイミングのため、これ以外のタイミングであれば夫婦間贈与がバレない訳ではありません。
夫婦間贈与がバレるタイミング(1)税務署による「お尋ね」調査
税務署によるお尋ね調査により、夫婦間贈与がバレる場合があります。
税務署のお尋ね調査とは、確定申告の内容に対する確認の問い合わせです。
税務署が確定申告の内容に疑問を持ったとき、該当者に対して行います。
つまり、お尋ね調査が行われた時点で、すでに贈与を疑われていると考えられます。
調査方法は、主に文書です。
用紙に記載された質問事項の回答を記載し、指定された期限までに、税務署へ返送します。
質問内容は、預貯金や購入した不動産の金額などについてです。
電話で調査が行われる場合もあります。
資産が大きく変動したときが、調査のタイミングとなる可能性が高いです。
例えば、確定申告で不動産所得の変動が激しいときが挙げられます。
また、お尋ね調査は行政指導のため、回答の義務はありません。
ただし、無視すれば税務調査の対象となる可能性が高いです。
「調査に答えない=何か隠している」と疑われ、強制捜査になる可能性もあるため、基本的に無視は避けましょう。
夫婦間贈与がバレるタイミング(2)相続
夫婦間贈与がバレるタイミングのひとつとして「相続」があります。
相続税を申告すると、税務署側では遺産について確認するとともに、財産の流れもチェックします。
税務署では、相続が発生した際に、夫婦間で行われた贈与に関する調査が頻繁に行われることが多いです。
相続においては、遺産の額に応じて相続税が課税される可能性があり、相続税を正確に課税するためにも、関連する贈与についての詳細な確認が必要だからです。
相続税の確認作業では、被相続人と相続人の口座の履歴などを追います。
そのため、過去に夫婦間贈与があれば即座にバレてしまいます。
遺産は被相続人の預金だけでなく、他財産も相続対象になるため、預金口座に履歴がなくても夫婦間贈与はバレてしまうしくみです。
実際、相続税の手続き時に夫婦間贈与を疑われ、税務調査に発展し、その結果、過去の夫婦間贈与がバレてしまうケースはよくあります。
夫婦間贈与がバレるタイミング(3)不動産登記
不動産購入時は「不動産登記」をすることになります。
不動産登記は法務局が管轄しますが、登記時は税務署に通知されます。
税務署は、購入者の不動産購入費用の捻出方法や職業・年収などの情報を確認し、夫婦間贈与に該当する資金の動きや夫婦間贈与を疑うような内容の調査に動きます。
将来的に夫婦間贈与はさらにバレやすくなる
夫婦間贈与は、将来的に現在よりも監視が厳重になると言われています。
その理由は、金融機関の口座にマイナンバーを連動させる動きがあることです。
2018年から新規開設口座に任意でマイナンバーを紐付けし、2021年以降既存の口座にもマイナンバーを連動させる準備が進められています。
マイナンバーと金融機関口座が連動すると、税務署などは資金の動きをより把握しやすくなります。
現状は相続や不動産登記など、財産の大きな動きに合わせて夫婦間贈与がバレることが多いのです。
しかし、将来的には日常的な口座の動きで夫婦間贈与がバレる可能性が高くなります。
贈与税の未申告がバレた場合のペナルティ
贈与税未申告の最大のデメリットは、精神的な不安です。
夫婦間贈与がバレないか、税務署から問い合わせがないか不安な気持ちを抱えるようになります。
また、贈与税未申告がバレたときのペナルティもあります。
税金の加算
夫婦間贈与未申告の場合、ペナルティとして延滞税と加算税が上乗せされます。
延滞税と加算税
延滞税は最大年14.6%で、加算税は15%~40%です。
普通に贈与税を申告して贈与税を支払うより、かなり高い税金の支払いになってしまいます。
時効の追加
贈与税の時効は基本的に6年ですが、贈与隠しなどの悪質なケースでは、時効が追加されて計7年とかなり長い期間になります。
この間、相続が発生して財産の情報や履歴を追われると、夫婦間贈与未申告があっさりバレてしまうでしょう。
夫婦間贈与未申告でペナルティを課されたり精神的な不安を味わうより、早い段階で申告してしまう方が、出費的にも精神的にも負担が少ないです。
贈与税の申告期限
贈与税の申告期限は、贈与された翌年の2月1日〜3月15日です。
贈与税を郵送で申告する場合は、通信日付印の表示日もしくは到着日が提出日となるため注意が必要です。
期限内に申告できるよう、早めに準備しましょう。
夫婦間の贈与に贈与税がかかるケース
個人への財産の贈与は、基本的に贈与税の課税対象です。
これは、夫婦間の贈与であっても同じです。
ただし、夫婦間の場合は、金銭などの受け渡しがあっても即座に贈与税がかかるわけではありません。
夫婦や家族の間には扶養義務があるため、生活費や教育費など生活に必要なお金の受け渡しについては、贈与税の課税対象外です。
しかし、夫婦間の贈与に贈与税がまったく課税されないわけではないため、注意が必要です。
夫婦間の贈与に贈与税がかかる代表的なケースについて紹介します。
夫婦間の贈与として金銭や不動産を贈与されたケース
生活費や教育費として受け取れば非課税ですが、財産を贈与として渡すと贈与税がかかる可能性があります。
また、生活費などの名目で金銭を渡されているのにも関わらず、別の目的に使った場合も贈与税の対象になる可能性があります。
夫婦間で過大な額の金銭の授受があったケース
夫婦間での過大な財産の授受にも、贈与税がかかる可能性があります。
あまりに過大な金額の場合、税務署側に「これは本当に生活費なのか」と疑われやすいためです。
実際に生活費の名目で夫婦間贈与が行われる場合があるため、税務署も厳しくチェックしています。
過大な金額が具体的にいくらを指すのかは決められていませんが、生活費として妥当と認められる範囲を超えると、夫婦間でも贈与とされてしまいます。
夫婦間で頻繁に口座移動しているケース
口座移動をして金銭の授受を夫婦間で頻繁に行っている場合も、贈与税の課税対象になるケースがあります。
金額によっては「生活費です」と主張しても信じてもらえない場合があるため、注意してください。
こちらも過大な財産の授受同様、課税対象の回数・金額については明確になっていません。
口座を通して金銭のやり取りが何の目的で行われたかが大事になってきます。
生活費としていても、実態は贈与とされる場合もあるため注意してください。
夫(妻)が不動産を取得し持分を設定したケース
夫婦で不動産を取得した際に、購入費用を片方が払い、もう片方も持分を設定した場合などでは、贈与税がかかるケースがあります。
マイホーム取得の際に、よく問題になるケースです。
たとえば、取得費用5,000万円のマイホームを夫が購入し、持分を夫2分の1、妻2分の1と設定したとしましょう。
妻はマイホームの取得費用を払っていないため、夫が妻に2,500万円贈与したと解釈され、贈与税の課税対象になる可能性が極めて高くなります。
一方、マイホームの取得費用として夫が2,500万円支払い、妻も2,500万円支払った上で、夫と妻がそれぞれ持分を2分の1ずつ設定する場合は、夫も妻も持分に見合った金額を払っているため、贈与税の問題は起こりません。
夫婦間贈与で贈与税を払わない方法
贈与税を払わずに贈与する方法を4つ挙げます。
贈与税を払わずに贈与する方法
- 贈与税の非課税枠を利用する
- 相続時精算課税を利用する
- 配偶者控除内で贈与する
- 税金の特例を活用する
1つずつみていきましょう。
贈与税の非課税枠を利用する
贈与税には110万円までの非課税枠があり、範囲内で贈与すれば、原則的に贈与税はかかりません。
この非課税枠を利用して、夫婦間での贈与金額などを調整する方法があります。
なお、もらう側の枠が110万円のため、複数人から110万円もらった場合は枠を超えてしまいます。
相続時精算課税を利用する
2つ目の相続時精算課税は生前贈与の税金を相続時に清算する方法です。
相続時精算課税では2,500万円までは非課税で、枠を超えた部分が課税対象になるため、相続時精算課税を活用して贈与税対策する方法もあります。
配偶者控除内で贈与する
3つ目は、配偶者控除内で贈与することです。
贈与税の配偶者控除を使えば、2,000万円まで非課税になります。
ただし、対象は居住用の不動産か住宅購入資金の贈与のみです。
また、「結婚してから20年以上経過している」「一度しか使えない」など適用には条件があります。
タイミングを考慮すれば大きな節税に繋がるため、上手に活用しましょう。
税金の特例を活用する
4つ目は、税金の各種特例を利用する方法です。
特例には種類があり、特例ごとに利用条件があります。
住宅や教育、結婚資金など、いろいろな資金に対しての特例があるため、先に特例を確認してから贈与を進めましょう。
「150万円贈与」で一番得する方法は?振込やお小遣いはNG
仮に150万円を夫婦間贈与するとして、一番得する方法を考えてみましょう。
150万円を一度に夫婦間贈与すると、110万円の贈与の非課税枠から飛び出してしまいます。
それを防ぐ方法として、以下の2つが考えられます。
- 非課税枠の範囲内で分割にする
- すでに受け取っている場合は一旦返却してもらう
1つ目は、150万円を非課税枠である110万円の範囲内で分割して贈与する方法です。
金額や分割回数を工夫し、110万円の枠内で贈与すれば贈与税はかかりません。
2つ目は、受け取った金額を返却する方法です。
すでに受け取って消費してしまった分については、非課税枠を超えていたら夫婦間贈与を申告し、消費していない分については返却して110万円の枠を踏まえて渡し直します。
すでに消費している額が大きい場合は、早めに申告を済ませましょう。
なお、150万円を贈与するときには、一気に全額を渡したり、何度も振込すると、それだけ贈与税がかかるリスクが高くなります。
心配なときは税理士に相談し、正しい贈与税対策をしながら進めましょう。
夫婦間の贈与における贈与税についてよくある質問
夫婦間の贈与についてよくある質問を紹介します。
贈与税がバレるタイミングや贈与税がかかるプレゼントについても解説しています。
参考にしてください。
贈与税は何年後にバレる?
贈与税は高額な商品や不動産を購入した1年後にバレる場合があります。
確定申告の内容に疑問をもたれ、お尋ね調査が行われるためです。
また、贈与から6年以内に税務調査が行われ、バレるケースもあります。
贈与税の時効(除斥期間)が原則6年、不正が疑われている場合は7年と定められているためです。
税務署は贈与税の時効を成立させないために、何度も厳しい調査を実施しています。
贈与から数年後に突然税務調査が行われるケースもあるため、注意してください。
手渡しで贈与してもバレる?
現金を手渡しして贈与しても、バレるケースがあります。
税務署は預貯金がある銀行口座の入出金履歴を調査しているためです。
贈与した側の出金履歴を把握し、贈与した事実を確認します。
手渡しした現金が贈与として認められた場合、悪気はなくても脱税として指摘されてしまう場合があります。
脱税と認められた場合は、重加算税の対象となるため注意しましょう。
プレゼントにも贈与税はかかる?
プレゼントにも、贈与税がかかる場合があります。
贈与税の対象となるプレゼントは、現金だけではありません。
宝飾品や自動車などの高額な物品も含まれており、プレゼントの金額が110万円を超える場合に、贈与税がかかります。
ただし、結婚指輪やお年玉など、社会通念上認められており贈与に含まれないプレゼントもあります。
また、複数のプレゼントや金銭を同じ年に贈った場合、合計金額が110万円を超えると贈与税が発生するため要注意です。
他にも、もらったプレゼントを売却した際に、税務署に贈与がバレるケースがあります。
税務署に対し、売却先から法定調書が提出されるためです。
売却した金額が高額になるケースは注意してください。
まとめ
夫婦間贈与は黙っていればバレないと考えるかもしれませんが、相続や不動産登記などのタイミングでバレるケースが非常に多い実情があります。
今後はマイナンバーとの連動により税務署がさらに情報を取得しやすくなるため、将来的にはさらに夫婦間贈与の無申告がバレやすくなるでしょう。
夫婦間贈与の無申告にはペナルティがあります。
夫婦間贈与で贈与税の申告が必要なら、隠さずに手続きし、心配なときは税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。