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最終更新日:2022/12/15

介護で頑張ったので多く相続したい! 「寄与分」を主張しましょう

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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人が亡くなった場合、亡くなった方(被相続人といいます。)の財産は被相続人と一定の身分関係がある人に相続されます。
その場合の相続分は、遺言等による指定がない限り、民法の定める相続分によることになりますが、その割合は被相続人との親等などに応じて一律に定められていて、生前の貢献度などは考慮されていません(民法第900条)。
ただ、一方で、民法はその相続分とは別に、被相続人の財産の維持・増加に貢献した人について「寄与分」という特別の取り分を認めています(民法第904条の2)。
ここでは、その「寄与分」について基本的な事項を確認しておきましょう。

寄与分とは

寄与分とは、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」について、相続財産からの先取りを認める制度です(民法第904条の2)。
寄与分が認められる場合、寄与分として認められた財産は最初に相続財産から除外され、寄与分を認められた相続人が取得することになります。
その上で、残った財産を相続分に従って相続人が相続することになります。

具体的に見てみましょう。
被相続人が亡くなった時に有していた財産が3,000万円、相続人は妻、長男、長女の3人とします。
このうち、長女が病気だった父親(被相続人)を引き取って、長年その療養看護を行ってきたことから、寄与分として600万円が認められたとします。
この場合、各相続人の具体的な取得金額は以下のようになります。
①寄与分として認められた600万円は相続財産から除外され、相続財産は3,000万円から寄与分600万円を控除した2,400万円として遺産分割がなされます。
②妻は相続財産である2,400万円の1/2である1,200万円を取得します。
③長男・長女はそれぞれ相続財産2,400万円の1/4である600万円を取得します。
④その結果、相続人の最終的な財産の取得額は、以下のようになります。
妻 :相続分として1,200万円
長男:相続分として600万円
長女:相続分として600万円、寄与分として600万円の合計1,200万円

寄与分が認められるのはどんな人か

(1)寄与分が認められる人
寄与分が認められるのは、法定相続人に限られます。
法定相続人以外の者は、いくら被相続人に尽くしたとしても、「寄与分」として財産取得が認められることはありません。
これらの相続人以外の者に財産を遺すためには遺贈等をする必要があります。
(2)寄与分が認められる人
寄与分が認められるのは、被相続人の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした人です。
・被相続人の事業に関する労務の提供
・被相続人への財産上の給付
・不相続人の療養看護
・その他
被相続人の事業に従事したり、被相続人の療養看護をしたりしたとしても、相応の対価を得ていた場合や、家族として通常行うべき介護をしただけでは寄与分は認められません。
寄与分が認められるのは、寄与者が無償またはそれに近い形で労務提供や療養看護を行ったことにより、被相続人の事業が発展したとか、介護等を委託する費用を節約できて被相続人の財産減少を免れたというように、具体的な被相続人の財産の増加・維持に寄与した人に限られるのです。

寄与分の主張方法

寄与分は、相続に際して共同相続人間で協議して決定します(民法第904条の2第1項)。一般的には、遺産分割協議の場で協議することになるでしょう。
ただ、通常の遺産分割でさえ揉めることがあるのに、寄与分の主張がなされた場合にはさらに合意に至らない場合が十分に考えられます。そこで民法は、相続人間で協議が整わない場合には、寄与分を主張する人は家庭裁判所に寄与分の決定を求めることができるとしています。
この場合、家庭裁判所は遺産分割の調停および審判の中で寄与分を判断することになります(民法第904条の2第4項、民法第907条第2項)。

まとめ

寄与分の制度は、共同相続人間で被相続人の財産の増加・維持に貢献した人と、そうでない人との間の実質的な平等をはかる制度といえます。
ただ、寄与分を認めるか否か、その額をいくらとするかは、原則として相続人間の協議で決定されるという点には注意が必要です。
そのため、寄与分を主張しようとする人は、自らが行った寄与行為の具体的な内容や頻度を記録するなどして、他の相続人が異論を差し挟む余地がないようにしておくことが必要です。これらの情報は、家庭裁判所の審判になった場合にも裁判所を納得させるだけの証拠となります。

<参考文献>
内田 貴(著)「民法Ⅳ」(東京大学出版会)

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