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最終更新日:2022/12/13

遺産相続トラブルでありがちな事例と防ぐ6つの対策

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

遺産相続トラブルでありがちな事例と防ぐ6つの対策

この記事でわかること

  • 遺産相続トラブルがどうして起こるのかがわかる
  • 遺産相続でよくあるトラブルの事例がわかる
  • 遺産相続トラブルを防ぐための対策がわかる

遺産相続の際にトラブルが発生して、相続人同士の争いになってしまうケースがよくあります。

遺産相続のトラブルは自分には関係のないと思い、何の対策も取っていないと、突然相続が発生した時にトラブルが起きる可能性が高くなります。

どのような理由で遺産相続のトラブルが発生するのかを知り、事前にトラブルを防ぐための対策をしておくことが大切です。

遺産相続でありがちなトラブル事例5つ

  • ・法定相続分や遺留分を考慮していない遺言書が残されている
  • ・不動産を分けることができない
  • ・想定外の相続人が現れた
  • ・被相続人の生前に面倒をみた人が寄与分を主張する
  • ・遺産分割協議で強硬に主張する人がいる

遺産相続のトラブルはどうして起こるのか

遺産相続は、亡くなった人が遺言書を作成していれば、その遺言書にしたがって行うのが原則ですが、遺言書を作成していない場合は、相続人の話し合い(遺産分割協議)によって遺産の分割方法を決めることとなります。

遺産の分け方は法律で決められているわけではなく、遺産分割協議では相続人同士の話し合いで自由に遺産分割の方法を決めることができます。

すべての相続人が合意しなければ遺産分割協議は成立しないのですが、話し合いがすんなりと成立することばかりではありません。

また、遺言書があっても、その内容に問題がある場合もあります。

遺産分割の方法は、そのまま相続人の金銭や財産の問題に直結するため、少しでも相続で損をしたくないとか、他の相続人と同じように、あるいはそれ以上に財産を相続したいと考えてしまい、どうしてもトラブルになりやすいのです。

遺産相続のトラブル例:法定相続分や遺留分を考慮していない遺言書が残されている

遺言書が作成されていれば、その内容にしたがって遺産分割を行います。

遺言書を作成していれば安心と思っている人も多いと思いますが、遺言書があっても、その内容によってはかえってトラブルを引き起こしてしまうことがあります。

たとえば、遺言書に「すべての財産は長男に相続させる」と書かれていた場合、他の相続人は一切相続できないこととなってしまうため、遺言書の内容について反発するだけでなく、遺言書が本物かどうかという疑いまで持つようになるかもしれません。

また、なかには、隠し子やまったくの第三者に遺産の大半を分けるとした内容の遺言書が作成されているケースもあります。

このような極端な内容の遺言書も、形式的に問題がなければ有効に成立しますが、その遺言書に書かれたとおりに遺産分割が行われるとは限りません。

本来、遺言書は法定相続分を意識した内容にする必要があります。

相続人の法定相続分

また、偏った内容の遺言書のために遺産を相続できなかった相続人は、遺留分を主張することができます。

遺留分とは、法定相続人に最低限の相続分として保障されている割合のことです。

遺留分

兄弟姉妹を除くすべての法定相続人には遺留分が認められるため、遺言書の内容によっては遺留分侵害額請求という新たな争いを引き起こしてしまう可能性があります。

遺産相続のトラブル例:不動産を分けることができない

被相続人が保有していたあらゆる財産が、相続財産として遺産分割の対象となります。

代表的なものとしては、現金や預貯金、土地や建物などの不動産、有価証券などがあります。

このうち現金や預貯金、有価証券などは、相続人間で簡単に分けることができるためトラブルになりにくいですが、不動産は簡単に分けることができません。

本来は、1人の相続人が1つの土地や建物を相続するのが理想ですが、相続財産となる不動産は自宅のみというケースが多く、その自宅を1人で相続すると、他の相続人とのバランスが取れないことも少なくありません。

特に土地の評価額が高くなるため、2人以上で1つの土地を相続する方法も検討する必要があるのです。

複数の相続人で1つの土地を相続する方法

  • 1.土地を分筆してそれぞれ相続する「現物分割」
  • 2.土地を売却してそのお金を分割して相続する「換価分割」
  • 3.土地を相続した人が他の相続人に金銭を支払う「代償分割」
  • 4.土地を複数の人で所有することとする「共有名義」

これらの方法はいずれも一長一短があり、どの方法で相続するか、あるいはどのような割合で分けるかなど、相続人間で意見が合わないことも珍しくありません。

遺産相続のトラブル例:想定外の相続人が現れた

亡くなった人に離婚歴があり前妻との間に子どもがいる場合、日常生活ではまったく関わりがなくても、相続の際には法定相続人となり、他の子どもと同じ相続分を有します。

そのため、遺産分割協議を行う際には、その前妻との子どもも話し合いに参加し相続分を主張することができますし、遺留分侵害額請求を行うこともできます。

また、亡くなった時に隠し子がいたことが発覚するケースもあります。

被相続人がその隠し子を認知している場合、この隠し子も法定相続人となります。

前妻の子どもや隠し子が法定相続人となる場合、現在の配偶者やその子どもとは理解し合えず、遺産分割協議を行おうとしても最初は話し合いすらできないと考えられます。

話し合いができてもお互いの意見を主張するだけで、協議がまとまらないことがあります。

そのため、前妻の子どもや隠し子が法定相続人となる場合は、遺産分割の方法やその割合をめぐってトラブルになりやすいのです。

遺産相続のトラブル例:被相続人の生前に面倒をみた人が寄与分を主張する

寄与分とは、被相続人の生前に、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人の貢献の度合いのことをいいます。

具体的には、被相続人が営んでいた事業を手伝った場合や事業資金を提供した場合、あるいは仕事をやめて被相続人の介護や看護を行った場合などがあります。

寄与分が認められるためには、被相続人に寄与したと考える人が自ら主張する必要があります。

ただ、寄与分が問題となるのは寄与していた相手方が亡くなってからですし、実際に被相続人に対してどの程度貢献があったのか、後から証明できるような証拠がない場合も多いため、主張している寄与分をそのまま他の相続人が認めてくれるとは限りません。

結果的に、寄与分を主張する人がいると、寄与分をどのように金額で評価するのか、あるいは寄与分そのものがあるのかについて争いになる可能性が高くなります。

場合によっては、家庭裁判所での調停まで持ち込まれる可能性もあるため注意が必要です。

遺産相続のトラブル例:遺産分割協議で強硬に主張する人がいる

遺言書を作成する人は増加傾向にあるといわれますが、作成していない人も多いため、遺産分割協議によって遺産の分割方法を決めるケースが多いです。

遺産分割協議を行った場合、すべての相続人が協議に参加したうえで遺産分割案に賛成し、遺産分割協議書に署名押印をしなければ、その分割案は成立しません。

ところが、遺産分割協議を行っている時に、自分が有利になることだけを考えて主張を繰り返し、他の相続人のことを考えないような人がいると、遺産分割協議は成立せず、遺産分割協議書を作成することもできません。

遺産分割協議書がなければ、預貯金の名義変更をすることもできませんし、不動産の相続登記を行うこともできません。

また、相続税の申告・納税期限内に遺産分割が終わらなくても相続税を納めなければなりませんが、相続税の額を少なくできるような特例が利用できなくなります。

遺産分割の際にはお互いの立場を理解し合うことが必要ですが、協力的でない人がいると、遺産分割ができないまま何年も経過してしまうこともあります。

遺産相続トラブルを未然に防ぐための6つの対策

遺産相続トラブルを未然に防ぐための6つの対策

ここまで、遺産相続でトラブルになってしまういくつかのケースを紹介してきました。

実際には、これ以外にも遺産相続のトラブルの原因は考えられますが、この先トラブルになることを防ぐためには、まずはその主な原因を知っておく必要があります。

ここでは、遺産相続に関するトラブルを防ぐためにできる対策を6つ紹介します。

6つの対策のうち1つでも実行すればいいというわけではなく、できるだけ多くの対策を実行することで、トラブルにならない可能性がより高くなるといえるでしょう。

遺産相続のトラブル対策:財産目録を作成しておく

相続が発生してから亡くなった人の財産を調べるのは、とても大変な作業です。

財産のことを一番よく分かっている人がいない状態となっているため、自宅や普段使っている預金口座は把握できても、その他の財産については、何がどれだけあるのかを調べることがとても難しくなります。

もし、亡くなった人が財産について何も記録を残していない場合は、相続人が調べるしかありません。

預金通帳の取引明細や銀行・証券会社からの郵送物、故人の書き残したメモや手帳の記録から、どのような取引をどの金融機関で行っていたかを調べて問い合わせをします。

また、不動産を保有していた場合には、固定資産税の課税明細書を探して、どこにどのような物件を保有していたのかを確認したうえで、法務局で登記事項証明書を取得します。

ただし、いずれの財産についても、やみくもに調べていたのでは時間と費用ばかりかかってしまいますし、いくら調べてもそれですべてかどうかが分からないため、最後まで不安を感じることになってしまうでしょう。

トラブル対策のために、まずは財産の額の大小に関わらず、保有している財産の目録を作成しておくようにしましょう。

財産目録があれば、突然相続が発生したとしても、相続人はあわてずに財産の所在や残高を確認することができます。

財産目録を作成して相続をスムーズに進めよう

財産目録を作成して財産の内容を明らかにすることには、様々なメリットがあります。

相続が発生した時に最初に問題になるのが、相続放棄をする必要があるかという点です。

相続の際には預貯金や不動産だけでなく、借入金などの債務も引き継がなければなりません。

そのため、債務の方が大きいのであれば、相続して借入金の返済を引き継ぎたくないと考えるでしょう。

また、相続財産に含まれる不動産の利用価値が極めて低い場合には、相続することはかえってマイナスになると考える場合もあります。

こういった場合、相続放棄をすれば債務や不動産を相続しないで済みます。

ただ、相続放棄には期限があり、相続が発生したことを知ってから3か月以内に決めなければなりません。

わずかな期間に、被相続人の遺産のすべてを把握することは難しいため、財産目録が大きな役割を持つのです。

また、相続対策として、生前贈与を行ったり遺言書を作成したりする場合があります。

この時、財産目録を作成しておくことで、どの財産を誰にいくら贈与したのか、あるいは誰にどの財産をどれだけ相続してもらうかを分かりやすく記録しておくことができます。

生前贈与を特定の人にだけ行っていないか、遺産を誰にいくら相続させるかを把握することは、遺産相続のトラブルを回避するために非常に重要なことです。

また、自筆証書遺言を作成する際、以前はすべて自筆で作成する必要がありましたが、2019年1月13日以降は財産目録をパソコンで作成することができるようになったため、より簡単に正確な遺言書を作成することができるようになりました。

さらに、財産目録を作成する際に相続人と一緒に作成すれば、財産の内容をより詳細に相続人に伝えることができます。

遺産の内容を相続人に知っておいてもらえば、相続人に前もって準備をしてもらうこともでき、相続の手続きをスムーズに進めることができるのです。

遺産相続のトラブル対策:法定相続人が誰で何人いるか確認する

あらゆる相続の手続きを進めるうえで、どのような遺産があるのかを知るのと同じくらい重要になるのが、誰が法定相続人になるかです。

法定相続人になる人や人数について、相続が発生する前に確認しておきましょう。

法定相続人となるのは、まず被相続人の配偶者です。

配偶者が健在である場合は、他に誰が法定相続人になろうとも必ず法定相続人となります。

一方、配偶者以外の法定相続人については、次の順番に該当する人がいるかを確認していきます。

  • 第1順位:子ども
  • 第2順位:直系尊属
  • 第3順位:兄弟姉妹

たとえば、第1順位の子どもに該当する人が1人でもいれば、第2順位にあたる親や第3順位にあたる兄弟姉妹には、一切の相続権はありません。

この場合、どうしても親や兄弟姉妹に遺産を一部分けたいと考えるのであれば、遺言書を作成しておく必要があります。

法定相続人になるかどうか判断に迷う場合

第1順位の相続人については、子どもが先に亡くなっていても、その子ども(被相続人の孫)、さらにその子ども(被相続人の曾孫)というように相続人の地位が引き継がれていきます。

このことを代襲相続といい、孫や曾孫、さらにその下の世代でも、該当する人がいれば第1順位の相続人となります。

離婚歴がある人の場合、もし前妻との間に子どもがいればその子どもも法定相続人となるため、前妻との間に子どもがいたかどうかで、法定相続人の人数や法定相続分の計算が大きく変わります。

相続の手続きを行う際には必ず連絡を取らなければならないため、その連絡先についても、早めに確認しておく必要があるでしょう。

また、血のつながりがなくても、養子縁組をしている子どもがいれば、実子と同じく第1順位の相続人となります。

他に認知している子どもがいれば、その子どもも法定相続人です。

一口に「子ども」といっても様々なケースが考えられるのです。

子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合は、その兄弟が法定相続人となります。

兄弟が亡くなっている場合は、その子ども(被相続人の甥や姪)に限って代襲相続することとなります。

おじさんやおばさんの財産を甥や姪が相続するということは、通常あまり想定していないと思いますが、第1順位の相続人が全員相続放棄をした場合など、そのような事例は決して少なくありません。

誰が法定相続人となるのか、あるいは誰が法定相続人になる可能性があるのかを、事前に確認しておくことが重要です。

遺産相続のトラブル対策:法定相続分の計算方法を知っておく

法定相続人が確定したら、その法定相続人で遺産分割を行った時の法定相続分を計算してみましょう。

法定相続分の計算方法は難しくありません。

法定相続分の計算方法

配偶者と第1順位の法定相続人(子ども)が相続する場合
配偶者2分の1、子ども全員で2分の1

配偶者と第2順位の法定相続人(直系尊属)が相続する場合
配偶者3分の2、直系尊属全員で3分の1

配偶者と第3順位の法定相続人(兄弟姉妹)が相続する場合
配偶者4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1

実際の遺産分割は法定相続分のとおりに行う必要はありませんが、法定相続分は、遺産分割の際の目安と考えておく必要があります。

法定相続分に満たない遺産しか相続できなかった人は不満に思うことが多く、法定相続割合と大きく異なる割合で分ければ、トラブルを生む原因となることは覚えておきましょう。

遺産相続のトラブル対策:相続税が発生するかどうか事前に試算

法定相続人が確定すると、相続税が発生するかどうかを知ることができます。

相続財産の評価額から基礎控除額をマイナスし、それでも残った金額があれば相続税が発生します。

このうち、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、法定相続人の人数が確定すれば、相続税が発生するか発生しないかが分かります。

相続税が発生する場合に気を付けなければならないこと

相続税が発生しそうだということが分かった場合は、特に以下のような点に注意して相続の手続きを行う必要があります。

相続税の申告期限は10か月以内

相続税が発生する場合、相続が発生してから10か月以内に所轄の税務署に申告のうえ、納税もしなければなりません

申告期限に間に合わなかった場合は、延滞税などのペナルティが課されることとなり、余計な負担が増えてしまいます。

申告期限内に相続税の申告書を提出し、納税も済ませるようにしましょう。

遺産分割は申告期限内に完了させる

相続税が発生する場合、一定の要件を満たせば相続税が減額となる特例が適用されるケースがあります。

代表的なものには、自宅の敷地や被相続人が事業のために使っていた土地を相続した場合、一定の要件を満たせばその土地の評価額が最大で8割減額される「小規模宅地等の特例」や、被相続人の配偶者が相続した相続財産については、法定相続分か1億6,000万円のいずれか大きい方の金額まで相続税の負担がゼロとなる「配偶者の税額軽減」などがあります。

これらの特例の適用を受けるためには、申告期限までに申告書を提出していることが要件とされています。

またこの時、遺産分割が確定していなければ、いくら相続税の申告書を提出しても特例の適用を受けることはできません。

相続税の納税を意識した遺産分割や納税資金の準備をする

相続税の納税は、原則として現金で行う必要があります。

そのため、遺産分割の際に多くの相続税を負担する必要がある人には、納税用の現金や預貯金を相続させるといった遺産分割を考えておくようにします。

また、相続人自身が納税資金を持っていないうえに、相続財産に現金や預貯金が十分にない場合には、どのように納税資金を準備するかも大きな問題となります。

具体的には、相続した不動産を売却して納税資金を確保するのか、あるいは延納や物納の制度を利用して相続税を納めることとするのかといったことを検討しなければなりません。

いずれの方法を選択したとしても、申告・納税期限である10か月以内に相続税の納税のめどをつけるためには、早い段階で行動を開始する必要があります。

遺産相続のトラブル対策:被相続人との関係や相続人同士の関係を密にする

相続が大変なのは、法定相続人の有無や遺産の内容など、相続に関するすべてのことを知っている張本人が亡くなった状態で、その人のことを調べなければならないからです。

しかし、子どもなど相続人になると想定される人は、親が亡くなる前にきちんとコミュニケーションをとっておくことで、遺産の内容を事前に把握することができ、遺産分割についてどのように考えているのかをあらかじめ知ることができます。

また、兄弟間で連絡をとっていない人は意外に多いと思います。

相続人同士でコミュニケーションをとっていないとお互いの状況が分からないため、介護をしている人がいてもそのことが他の相続人に伝わらず、寄与分を主張する人が現れるなど、遺産分割の際の争いの原因となる可能性があります。

また、相続や遺産分割についてどのように考えているのかについて相続人同士で話す機会がないと、実際に相続が発生してはじめて話すこととなるため時間がかかり、相続税の特例の適用ができなくなることもあります。

相続については、誰か1人に任せておけばいいというものではなく、すべての相続人が協力してすべきものだということを覚えておきましょう。

また逆に、1人ですべての情報を抱え込んで、他の兄弟に情報を伝えないのもトラブルの原因になることは知っておきましょう。

遺産相続のトラブル対策:争いを防ぐための相続対策を実行する

相続対策には様々なものがあります。

相続人同士で揉める可能性が高い場合は、生前贈与を行って、自分が生きているうちに財産を相続人やその子どもなど次の世代に引き渡しておくこともできます。

また、不動産を多く持っている人の中には、相続対策の一環として、その一部を売却して相続人同士で分割しやすいようにしておいたり、相続税の納税資金にあてることができるように準備しておくこともあります。

そこまで大量に遺産がない、あるいは自宅以外の不動産がないという場合は、生前贈与や売却を考えることはあまりないかもしれませんが、遺言書を作成することで相続人同士の争いを防げる可能性は高くなります。

遺言書の作成は有効だがすべての相続人に配慮も必要

遺言書の作成が相続対策に有効な理由には以下のようなものが考えられます。

遺言書が相続人の存在や財産の内容を明らかにしてくれるため、その調査に時間がかからないこと

前妻の子がいる場合や、現在の家族の他に認知している子どもがいるような場合、遺言書などに記載があればその存在を知ることができますが、何も手掛かりがないと、その存在を知らないまま遺産分割を行ってしまうことがあります。

なかには、遺産分割協議が成立した後に隠し子が現れるケースもあり、トラブルの原因となってしまいます。

また、財産目録がないと、すべての財産を把握するだけで多くの時間を費やしてしまいます。

遺言書自体が財産目録の役割もしていれば、そのような時間のロスを少なくすることができます。

遺言書にすべての法定相続人と財産についての記載があれば、スムーズに遺産分割に関する手続きを開始することができるのです。

遺言書に書かれた内容に沿って遺産分割が行われること

遺言書がなければ、すべての財産について誰が相続するのかを決めなければなりません。

相続人全員の話し合いによって協議が成立すれば、どのような分け方でも問題はありませんが、それぞれが自らの言い分を主張することになってしまうと、なかなか協議は成立しません。

法定相続分や遺留分も意識した分け方にする必要がありますし、争いに発展するケースは決して少なくありません。

一方、遺言書がある場合は、記載された内容に沿って遺産分割を行います。

遺言書に書かれた内容に反対する人がいても、原則的には記載どおりに遺産分割を行わなければなりません。

そのため、遺産分割協議でもめる可能性を格段に減らすことができます。

ただし、遺言書があれば絶対にトラブルにならないわけではありません。

たとえば、遺言書で1人の相続人に対してのみ財産を相続させるという内容になっていた場合、財産をもらえなかった他の相続人は強く反発し、遺留分を主張して最低限の財産を相続しようとすることが考えられます。

遺留分をめぐる争いになった場合は、すでに相続人同士の感情は最悪の状態になっているため、遺留分侵害額請求を受けても話し合いでは解決せず、家庭裁判所まで持ち込まれることも覚悟しておかなければならないのです。

遺言書の内容によっては、かえって争いの火種となってしまう可能性もありますので、せっかくの遺言書がトラブルの原因とならないよう、特定の相続人だけが得をしていないか、遺留分を侵害される人はいないか確認しなければなりません。

遺言書を作成する人は、それぞれの相続人の立場になって、内容を確認しながら作成するようにしましょう。

まとめ

本来、遺産相続は自分の権利を主張するだけでなく、他の相続人の立場も思いやる必要があります。

時には譲り合いの気持ちも必要ですが、実際には遺産相続にトラブルはつきものです。

相続人同士の関係は、親子や兄弟など遠慮のいらない関係であるため、お互い自分の利益になるような主張を繰り返す人がいますし、遺産相続の問題はお金の問題であるため、なかなか譲り合うことが難しいのです。

そのため、遺産相続で争いになる可能性はどのケースでもありますので、トラブルが大きく発展しないような対策を事前に行っておくことが重要になります。

遺言書を作成しておくことや相続についての考え方を知っておくこと、遺産や相続人についての情報を相続人同士で共有することなど、簡単なことでも、その後の相続を円滑に進めるためには大きな意味があるのです。

まずは親子間や兄弟間の会話から始めてみてはいかがでしょうか。

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