この記事でわかること
- 車をもらった場合には贈与税が課されることがわかる
- 車をもらった場合の贈与税の計算方法がわかる
- 車をもらう場合にかかる贈与税の節税方法がわかる
車をもらうと贈与税がかかる
車に限らず、他人から財産として価値のあるものをもらうと贈与税がかかります。
贈与税がかかる具体例
基本的に他人から財産を受け取った場合、その財産を受け取った人に対して贈与税が課されます。
お金をあげる、もらうといったやりとりは、必ずしも親子間や親族間だけで行われるものではありません。
親子間でなくても、財産の移転があれば贈与税が課されることとなります。
ただ、財産をもらえば必ず贈与税が発生するとは限りません。
贈与税を計算する際には、財産をもらう人ごとに、1年間に110万円の基礎控除が定められているからです。
そして、1年間にもらった財産の総額が基礎控除以下の金額であれば、贈与税は発生しないこととされています。
車をもらったからといって、必ず贈与税が発生するわけではありません。
ただ、金額の低い車をもらった場合でも、他にもらった財産があると贈与税がかかる場合もあります。
どのような場合に贈与税がかかるのか、その具体例を確認しておきましょう。
① | 110万円を超える価値がある車をもらった |
---|---|
他にもらった財産がなくても贈与税が発生する | |
② | 現金100万円と50万円の車をもらった |
もらった財産を合計すると110万円を越えるため、贈与税が発生する |
贈与の無申告や申告漏れは税務署に気付かれる
車を贈与され、申告義務があるにも関わらず、贈与税の申告をしなかった場合にはどうなるのでしょうか。
この場合、贈与税の申告をしていない(無申告)こととなるため、後から税務署の指摘を受け、申告しなければなりません。
また、贈与税の計算においてはペナルティが科され、より多くの税金を支払わなければなりません。
このように税務署に知られる理由は、車の所有者の変更手続きがあるからです。
車検証の変更により、税務署が車の贈与があったことを把握し、それに基づく申告が行われているか確認できます。
常に車検証の記載をチェックしているわけではありませんが、他に相続や贈与があった場合に、あわせて確認されることで発覚することが多いです。
車をもらったときの贈与税計算方法
車をもらった場合、どのような方法で贈与税の計算を行うのでしょうか。
車をもらったときの贈与税の計算方法を解説していきます。
①車の評価額を求める
車の贈与税の計算は、贈与された財産の相続税評価額を基礎として計算します。
そのため、まずは車の相続税評価額を求めなければなりません。
車の相続税評価額については、明確な計算方法が定められていませんが、贈与された時の時価を用いると考えられます。
購入したばかりの車であれば、その購入価格がそのまま相続税評価額です。
一方、購入してから使用した車を贈与された場合は、その車の買取相場価格等をもとに相続税評価額を求めます。
たとえば、購入価格が300万円の車を父が5年間使用した後、時価が100万円となった時に、子(23歳)に贈与したとします。
この場合、贈与された車の相続税評価額は100万円です。
②他の財産の贈与を確認する
車の贈与税の計算を行う場合は、車以外にも同じ年に贈与された財産がないか、確認する必要があります。
そして、車以外に贈与された財産がある場合には、その財産もあわせて贈与税の計算を行わなければなりません。
たとえば、先ほどの父から子に、車の他に現金100万円が同じ年に贈与されていたとします。
この場合、対象の年に贈与された財産の合計額は200万円です。
③基礎控除を差し引いて課税対象額を求める
財産を贈与された人は、贈与された財産の合計額から基礎控除額を差し引いて、贈与税の課税対象額を計算します。
この時、誰から贈与されたかには関係なく、基礎控除の額は財産をもらった人ごとに1年間で110万円となることに注意しましょう。
先ほどの例では、車100万円と現金100万円が同じ年に贈与されていました。
この場合、贈与された財産の合計額200万円から基礎控除額110万円を差し引いて、90万円が贈与税の課税対象額となります。
ただし、贈与された財産の合計額から基礎控除額を差し引いて、その額がゼロあるいはマイナスとなれば、贈与税は発生しません。
この場合、贈与税の申告やこれ以上の手続きは不要です。
④速算表を用いて贈与税を計算する
贈与税は、課税対象額が大きくなるほど税率が上がる「累進課税方式」が採用されています。
しかし、課税対象額を区分した上で税率を何度も乗じて計算するのは非常に面倒です。
そこで、国税庁のホームページに公表されている速算表を用いて、贈与税の税額を計算します。
なお、速算表には特例贈与用と一般贈与用の2種類あります。
特例贈与とは、祖父母や両親などの直系尊属から、18歳以上の孫や子などに贈与された場合です。
一般贈与に比べて、贈与税の税負担が少なくなるように税率が定められています。
先ほどの例も特例贈与に該当するため、下記の特例贈与用の速算表を用います。
基礎控除後の価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
参考:国税庁
この場合、課税対象額90万円に対する贈与税の額は9万円です。
車の査定額がわからない時の評価方法
上記計算方法により車の価値を算定するのが困難である場合、特例として、減価償却方式を使って算定することが可能です。
車の査定額が困難である場合は、普通自動車は6年・軽自動車は5年の法定耐用年数で減価償却しましょう。
中古車で法定耐用年数を超過している場合は、
超過していない場合は、
で計算します。
中古車の場合はさらに、耐用年数に応じた償却率に基づいて減価償却費を計算し、新車価格から差し引く必要があります。
計算方法が複雑になるので、専門家に相談すると良いでしょう。
車の贈与税の申告方法・必要書類
実際に車を贈与されて、贈与税の申告をしなければならない場合、どのように申告手続きを行うのでしょうか。
贈与税の申告に必要な書類とあわせて確認しておきましょう。
贈与税の申告方法
贈与税の申告は、財産の贈与をされた年の翌年2月1日〜3月15日に行います。
また、贈与税の納付もこの期間に行わなければなりません。
贈与税申告書を作成する
車の贈与税の計算をしたら、贈与税申告書を作成します。
贈与税申告書を作成する方法には、大きく分けて2つの方法があります。
1つは申告書を税務署の窓口や国税庁ホームページから入手し、手書きで記載する方法です。
もう1つは、国税庁ホームページのe-Taxを利用する方法です。
手書きで申告書を作成する場合は、自分で計算し、必要な項目を記載しなければなりません。
記載ミス、記載漏れがないように注意が必要です。
また、e-Taxを利用する場合は、パソコンを利用するのかスマホを利用するのかにより、その手順や必要なものが変わります。
あらかじめ準備が必要なものをよく確認してから利用しましょう。
贈与税申告書を提出する
贈与税申告書を作成したら、税務署の窓口に提出しましょう。
手書きで作成した場合は、その書面を郵送あるいは持参することで提出できます。
また、e-Taxを利用した場合は電子申告ができる他、印刷した書面を郵送や持参することも可能です。
どれが自分に最適な方法かよく考えて、期限内に申告書を提出してください。
贈与税を納付する
贈与税の申告を行うということは、贈与税の納付も必要です。
そこで、贈与税の額として申告書で計算した金額を、金融機関や税務署の窓口で納付します。
納付書は税務署で入手できる他、金融機関の窓口に置いてある場合もあります。
贈与税の申告に必要な書類
贈与税の申告を行うにあたっては、贈与税申告書が必要となります。
ただ、パソコンやスマホを使ってe-Taxを利用する場合は、書面の申告書は必要ありません。
また、書面の申告書を提出する際には、本人確認書類とマイナンバーの番号確認書類が必要です。
ここで電子申告を行う際は、その添付が省略できます。
なお、直系尊属から子や孫に対する特例贈与を適用する場合は、贈与者と受贈者の関係を証明する書類が必要です。
贈与を受ける人の戸籍謄本で、受贈者が18歳以上であり、親や祖父母から贈与されたことを明らかにします。
車にかかる贈与税を節税する方法
車の贈与を行うと、贈与税が発生するケースがあるとわかりました。
この贈与税の負担を少しでも抑える方法はないのでしょうか。
査定を複数の業者に依頼する
中古車の査定額は、業者により異なります。
車の買取には一定の基準があるものの、業者により取扱車種や中古車の販路に違いがあるためです。
査定を複数の業者に依頼し、一番安い査定額を選ぶことで、贈与税の負担を抑えられるでしょう。
また、評価額の相場が基礎控除額である110万円前後の中古車であれば、業者の違いで贈与税が非課税になるか決まる場合もあります。
複数の業者を回る、一括査定サイトを利用するなどして、中古車の価格は入念に調べましょう。
ただし、買取が前提でないと、簡易査定になる場合があるので注意が必要です。
受贈者が成人してから贈与し特例税率を適用する
贈与を受ける子供や孫が18歳になった翌年以降であれば、特例税率が適用できます。
特例税率が適用されると5〜10%程度の節税が可能です。
ちなみに、贈与される車の評価額によっては数十万円も税額が変わります。
たとえば600万円の車で計算してみましょう。
(600万円-基礎控除110万円)×税率30%-控除額65万円=82万円
(600万円-基礎控除110万円)×税率20%-控除額30万円=68万円
適用される税率により、14万円もの差が出ることが分かります。
名義変更せず使用貸借にする
車の名義変更はせずに、使用者だけを子供などにしましょう。
親が購入した車を無料で使わせてもらうことを、法的には「使用貸借」といいます。
車を使用貸借しても贈与税などの税金は発生せず、贈与してもらったのと同じように自由に車を使えます。
この場合は、任意保険の適用範囲に子どもを含めることを忘れないように注意してください。
中古車にしてから贈与する
車を購入してすぐに贈与するのではなく、一定期間使用してから贈与します。
わずかな走行距離であっても使用された車は中古車となり、新車と比べると評価額に差が出ます。
1年程度使用しただけでも、車種によっては半分以下の評価額となることもあり、節税効果はかなり大きいです。
ただ、車種によっては思ったほどの節税効果が得られない場合も考えられます。
事前に中古車市場の状況などを調査したうえで、適切な時期を見極めるようにしましょう。
車の購入資金を贈与する
車の購入資金として現金を贈与された場合も、贈与された金額に応じて贈与税が課されます。
そのため、車の購入資金を贈与したからといって、特別なメリットはありません。
ただし、車の贈与は何年かに分けることはできないものの、車の購入資金は何年かに分けることが可能です。
110万円の基礎控除が何度も適用されるように、2年、3年、あるいはそれ以上の期間に分けて贈与します。
1年あたりの贈与金額が基礎控除内であれば、贈与税は発生せず、申告の必要もありません。
しかし、はじめから車の購入資金を贈与することが決まっており、分割して渡しただけと判断される場合があります。
このような贈与を定期贈与といい、最初の年に購入資金全額が贈与税の対象です。
そうならないよう、贈与の度に贈与契約書を作成するようにしましょう。
まとめ
今回は車をもらった場合の贈与税、計算方法などについて解説しました。
車の価格は上昇傾向にあり、簡単には購入できないという人が増えています。
一般的には、親や祖父母などから資金援助を受ける、車を購入してもらうことによって車を贈与されるケースがあります。
しかし、多額の贈与税が発生する可能性があるため、少しでも余分な税金を払わずに済む方法を考えておきましょう。