この記事でわかること
- 平均遺産額について
- 相続が発生する年齢
- 相続が発生したときの流れ
相続は人生で何度も経験するものではなく、周囲の人と気軽に話せることでもありません。
そのため相続のことはよくわからない、と思う人が多いでしょう。
認識が曖昧なままで、いざ相続が発生してから知ることが多いと、戸惑うことにもなります。
事前に相続の実態を知っておくと、疑問や不安を解消することができるでしょう。
今回は、遺産額の平均や相続人について、データを用いて詳しく解説していきます。
相続発生後の流れも解説しているので、いつかくる相続に向けて参考にしてください。
目次
平均遺産額は?
相続の話になると「うちには相続するほど財産はない」という人が少なくありません。
実際にはどれほどの財産が相続されているのでしょうか。
ここでは2020年と2018年の調査結果をもとに、遺産額の平均や内訳について解説します。
2020年の調査の平均
2020年に国税庁が行った実態調査では、相続財産の平均は約3038万円という結果が出ています。
あくまでも平均であり、都市部の不動産など高額な財産を含んでいるケースもあるため、すべての人に当てはまるわけではありません。
相続財産と、相続財の課税価格や実際の納税額の平均は以下のとおりです。
- 相続財産の平均:3038万円
- 課税価格の平均:1894万円
- 納税額の平均:168万円
納税額はそれほど高くありませんが、これには理由があります。
相続財産が平均のとおり3000万円であれば、相続税の基礎控除内におさまり、相続税は課税されないためです。
また、令和5年に相続税が課税された割合は全体の9.9%でした。
2018年の調査の平均
2018年の実態調査によれば、相続財産の平均額は約3630万円でした。
全体の平均は以下のとおりです。
- 相続財産の平均:3630万円
- 課税価格の平均:2077万円
- 納税額の平均:179万円
年によって多少の増減はあるものの、相続財産の平均はおおよそ3000万円台で推移しています。
平均値と中央値
平均が3000万円もあるのなら、自分が相続する時も平均程度はあるだろう、と思う人もいるでしょう。
しかし実際には、平均値と中央値の違いに注意が必要です。
相続財産の平均額は、一部の高額財産の相続者が大きく引き上げている傾向にあります。
そのため、平均=多くの人が受け取っている額、とはなりません。
そこで、中央値をあわせてみてみましょう。
中央値は、相続人のそれぞれの相続財産額を順に並べたときに、中央にくる値のことを言います。
たとえば5人の相続人がそれぞれ100万円、200万円、500万円、800万円、5000万円の財産を受け取ったとすると、中央値は500万円です。
平均は1320万円となり、印象は大きく異なります。
2020年のデータでは、相続財産の中央値はおよそ1500万円程度と見られています。
- 平均値:約3000万円
- 中央値:約1500万円
平均値と中央値には1500万円の乖離があります。
中央値のほうが多くの人にとって実感に近いと言えるでしょう。
相続財産の内訳
相続財産には様々なものが含まれ、現金や預金だけとは限りません。
国税庁の調査などによると、相続財産の金額の構成比は現金預金が35%、次いで土地など不動産が32%となっています。
内訳を理解しておくことで、相続の準備にも役立つでしょう。
- 現金、預金:約35%
- 土地:約32%
- 有価証券:約17%
- 家屋:約5%
- その他:約11%
不動産は遺産分割しにくく評価も難しいため、相続では注意が必要です。
相続が発生する年齢は?
相続というと、40~50代で発生するものと考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、相続人の年齢が高くなっている傾向にあります。
被相続人は80代後半から90代で亡くなるケースが多くなっており、相続人である子ども世代も、すでに60代~70代ということが一般的になっています。
たとえば、PR TIMESが紹介しているデータでは、相続人の年齢は平均で69.4歳となっています。
高齢化に伴い、平均寿命が延びている影響から、相続が発生する年齢も相対的に上がっています。
高齢になってからの相続は、相続人本人の健康や介護の問題に加え、終活の準備なども重なるタイミングです。
また、先に相続人が亡くなっている場合もあり、代襲相続などにより相続人の関係が複雑になっているケースもあります。
相続はまだ先の話、と思わずに早めに対策をしておくことが大切です。
相続人の人数は?
相続において、誰が相続人になるのか、ということがとても大きなポイントになります。
相続人の関係や人数によって、遺産の分割方法や相続税の計算にも大きな影響が出ることがあります。
内閣府のデータによれば、相続人の平均人数は約2.97人となっており、3人以上のケースも珍しくありません。
相続人が2人のケースが最も多く約29%、次いで3人のケースが約27%となっています。
配偶者と子どもの組み合わせが多く、1人ですべてを相続するというケースはあまり多くありません。
相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
このため、相続人が多いと相続税の控除額が増えるため、相続税の節税効果も期待できます。
その一方で、相続人が多くなると、相続トラブルが発生するリスクも高くなります。
特に相続財産の中で自宅や土地など、不動産の占める割合が多い場合には、分割することが難しいためトラブルの原因になります。
誰が相続人にあたるのか、事前に把握しておくといいでしょう。
相続税の納めた人はどのくらい?
相続をすると、どれほど相続税がかかるのか気になる人も多いでしょう。
しかし実際は、相続税を納めている人は、相続全体の中でもごく一部にとどまっています。
国税庁の「令和2年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続税の課税対象となったのは、全体のわずか約9%です。
つまり9割以上の人は相続税を納めていないということになります。
前述したように、相続税には基礎控除があり、相続財産が控除額内であれば非課税となります。
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合、基礎控除額は以下のようになります。
- 3000万円+600万円×3人=4800万円
つまり相続財産が4800万円以下であれば、相続税を払う必要はありません。
一般的な家庭であれば、基礎控除の枠内に収まるケースが多いでしょう。
また、配偶者には配偶者控除があり、配偶者の法定相続分か、相続財産1億6000万円までは非課税となります。
そのため、ほとんどのケースで配偶者は非課税となることが多いでしょう。
相続が発生したらどうなる?

相続手続きには期限があるため、速やかに手続きを行う必要があります。
事前に手続きの流れや全体像が分かっていると、負担も少しは軽くなるでしょう。
ここでは相続が発生した後の流れを詳しく解説します。
相続人を特定する
相続が発生したら、まず誰が相続人なのか明らかにすることから始めましょう。
相続人全員に相続の権利があるため、一部の相続人だけで手続きをすることはできません。
もし勝手に手続きを進めると、相続トラブルにつながり、最悪の場合、訴訟などのリスクも考えられます。
相続人を調べるには、亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までのすべての戸籍を取得する必要があります。
被相続人が転居や結婚・離婚を繰り返していた場合や、親族が多い場合など、戸籍の収集に時間がかかることもあるため、速やかに手続きを進めましょう。
戸籍謄本には、除票謄本や改正原戸籍なども含みます。
どれが必要かわからない場合は、「役所で相続手続きに必要なため教えてほしい」と聞いてみると教えてもらえます。
親族も少なく、相続人は調べなくてもわかっている、と思うことは危険です。
認知した子どもがいる、養子がいるというケースもあり、予想していなかった人物が法定相続人になる場合もあります。
必ず戸籍を確認しましょう。
相続財産を特定する
相続人を特定すると同時に、相続財産を把握しましょう。
調査対象となる財産は非常に幅広く、不動産、預貯金、有価証券、保険金、自動車など様々です。
相続財産の調査は、以下のようなものを参考に探していきます。
- 被相続人の通帳、キャッシュカード
- 登記簿謄本
- 保険証券
- 借用書など
家に残っている資料や郵便物から確認しましょう。
銀行口座など特定が難しい場合は、金融機関で必要な手続きを踏むことで情報を開示してもらえます。
また、相続財産には、いわゆるプラスの財産だけでなく、借金やローンなどの負債もマイナスの財産として含まれる点に注意が必要です。
後になって実は不動産があった、借金も残っていたという問題が発覚すると、相続放棄や限定承認の判断にも関わるため、非常に大きな問題になります。
遺産分割や相続税の納付にも影響するため、しっかり調べましょう。
遺産分割協議、各種手続き
財産の内容がすべて明らかになり、相続人も確定できたら全員で遺産分割協議を行います。
もし遺言があれば、遺産分割協議を行わず、遺言通りに分割し手続きをすることもできます。
遺言がない場合や、分割方法に不満がある場合、相続人で内容を決めたい場合は遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要です。
遺産分割協議がまとまれば遺産分割協議書を作成し、金融機関や不動産などの相続手続きを行います。
相続税の計算・納税
各種手続きができたら、期限内に相続税の申告と納税手続きを行います。
相続税は、相続開始から10カ月以内に、現金で一括納付が原則です。
期限内に間に合うように、速やかに手続きを行いましょう。
まず確認すべきは基礎控除によって、課税対象になるかどうかです。
そのためには相続財産の評価額を適切に計算する必要があります。
不動産などは路線価などをもとに、評価額を算定します。
有価証券や貴金属類などは、基準日の相場をもとに評価額を導き出します。
また、税額の計算では配偶者控除、未成年者控除、小規模宅地等の特例など、様々な制度も関わってくるためとても複雑です。
税額の計算は専門的で非常に難しいものです。
計算が間違っていれば、修正申告や、追徴課税が課される可能性もあります。
相続税の計算や申告は、はじめから税理士に依頼することをおすすめします。
まとめ
なかなか相続事情を知ることがないため実態がわかりにくく、いざ相続が始まると慌てる人も少なくありません。
相続財産の平均や内訳、相続人の実態を知ることで、自分自身の状況にあてはめて考えると、事前に対策できることが見つかるでしょう。
いざ相続が発生したときにも慌てず、やらなければならないことを理解しておくことが大切です。
相続対策は、事前の知識と備えが重要です。
個人での準備が難しい場合は、早めに専門家に相談するとよいでしょう。















