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最終更新日:2022/12/15

【生活保護と遺産相続】相続や相続放棄はできる?

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

【生活保護と遺産相続】相続や相続放棄はできる?

この記事でわかること

  • 生活保護受給者中に遺産相続ができるのかわかる
  • 生活保護受給者中に相続放棄はできるのかわかる
  • 生活保護を受けている間に相続すると受給停止になるのかわかる
  • 生活保護中に遺産相続したときのNG・避けるべき対応についてわかる

生活保護受給中に相続が発生しても、遺産を相続することはできますが、相続後も生活保護費を受給し続けるには、相続できる財産の内容や範囲に制限があります。

生活保護は、最低限の生活を維持することを目的とした公的な制度であるため、受給要件が国や自治体によってしっかり定められています。

そのため、生活保護を受給していない相続人のように、財産の内容に関係なく自由に相続したり、どんな場合でも相続放棄を行えるわけではありません。

この記事では、生活保護受給者の方が遺産を相続する場合、どのようなケースで相続が認められるのか、相続放棄ができるのはどのようなケースかについて解説していきます。

遺産相続をしたときに不正受給とみなされないためには、どんな点に気を付けるべきかを確認しておきましょう。

生活保護とは

生活保護とは、様々な理由で働くことができない人や極端に収入が少ない人が、最低限の生活ができるように支援する制度で、生活保護法に基づいて保障されています。

生活保護を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。

生活保護を受給するための要件

  • (1)生活に困窮する者であることです。
    病気や怪我により働くことができないなどの理由で、現に生活に困窮していることが必要です。
  • (2)最低限の生活を維持するために活用できる資産や能力などをもってしても、生活に困窮する場合です。
    預貯金や不動産といった資産を持っている場合には、生活保護に頼るのではなく、それらの財産を活用して生活していくのが原則です。
    また、年金を受給している場合には、年金が収入とみなされるため、受給額によっては生活保護を受けられないこともあります。
  • (3)扶養義務者の扶養があるときは、その扶養があっても生活に困窮する場合でないと、生活保護は受けられません。

生活保護受給者は原則として相続放棄できない

生活保護受給者は原則として相続放棄できない

生活保護受給者は、原則として相続放棄することはできません。

たとえば、相続財産の中に、最低限の生活を維持するための現預金や不動産が含まれていたとします。

もし、遺産を相続をし相続財産を活用することで、最低限の生活を維持することが可能となるため「活用できる資産をもってしても、生活に困窮する」という要件を満たさなくなります。

このようなときに、生活保護を受け続けるために、あえて相続放棄をすることを許してしまうと、生活保護を受けるための要件を満たしていないにもかかわらず、生活保護を受給していることになってしまいます

そのため、生活保護受給者が相続放棄することは、原則として許されていないのです。

しかし、どんな場合でも相続放棄ができないというわけではありません。

たとえば、以下のようなケースでは、相続放棄が認められることがあります。

借金ばかりでマイナスの相続財産がほとんどを占めている場合

生活保護受給者の相続放棄が認められるケース

相続財産が借金ばかりのときには、相続放棄が認められます。

相続することで借金を背負い込んでしまい、かえって最低限の生活を維持することが困難になるからです。

現金化することが難しい財産を相続する場合

また、現金化することが難しい財産が相続財産に含まれている場合にも、相続放棄をすることができると考えられています。

たとえば、山林や農地などを相続すると、現金化することが難しいだけでなく、管理や整備だけでも費用と手間がかかります。

築年数が古い空き家、買い手がなかなか見つからない骨董品などについても同様です。

このような売却が難しく、かつ、自分の住居としても利用困難な土地を相続すると、生活を圧迫し、最終的に生活が破綻する恐れがあります。

そのため、現金化することが難しい財産の場合は、相続放棄が認められやすいです。

生活保護受給中でも相続できる財産の例

生活保護受給中でも相続できる財産の例

  • ・少額の財産であれば相続できる
  • ・必要不可欠な不動産は相続できる
  • ・換金が難しい財産は、相続が認められることもある

生活保護を受給している間に遺産を相続しても、生活保護がすぐに停止されるとは限りません。

最低限の生活を維持するために必要な財産だと判断されるなら、生活保護の受給を継続しながら、相続することが認められています。

相続可能な財産の例をみてみましょう。

少額の財産であれば相続できる

相続したのが少額の財産であり、その資産を活用しただけでは、最低限の生活を維持することができないときには、相続することができます。

たとえば、少額の現預金を相続した場合など、一時的な収入だと認められる程度の財産であれば、生活保護を受給しながら遺産を相続することが可能です。

ただし、相続した金額によっては翌月の生活保護費が減額となることもありますので、担当のケースワーカーに問い合わせて心づもりをしておくことが大事です。

必要不可欠な不動産は相続できる

不動産は高価な財産なので、相続すれば生活保護の受給は停止されると思われがちですが、必ずしもそうではありません。

たとえば、最低限度の生活を維持するために住むための自宅であれば相続することができます。

また、事業用として必要不可欠だと判断される田畑などの土地の場合にも、相続が認められることがあります。

自宅などを相続した場合には、住宅扶助のみ減額されて支給され、生活保護の受給は継続できます。

しかし、資産価値が高く、かつ売却や容易な不動産である場合や、現在持ち家があるのに、もう1軒セカンドハウスを相続した場合などは、基本的に生活保護を継続することは認められません。

上述のような現金化が容易な不動産の場合は、その資産を活用することで、最低限の生活を維持することが可能になるため、原則として、生活保護の受給は停止されます

換金が難しい財産は、相続が認められることもある

換金が難しい財産の場合も、相続できることがあります。

たとえば、前述したように買い手がなかなか見つからない山林や、取引の流動性がほとんどない骨董品などです。

これらの財産は、換金して最低限の生活を維持するために用いることが難しいため、生活保護の受給を続けながら相続できる可能性のある財産だといえるでしょう。

生活保護受給者が遺産相続したときにすべき対応

生活保護受給者が遺産相続したときにすべき対応

生活保護受給者の方の相続は、原則として相続放棄ができないなど、通常の相続とは異なる点もあります。

生活保護受給中の方が遺産を相続したときの対応方法について押さえていきましょう。

相続財産の内容を把握しておく

まずは、相続財産の内容を正確に把握しましょう。

どんな財産を受け取るかによって、現在受給している生活保護が受けられなくなる可能性があります。

財産の内容を把握するために、相続財産の評価と換価性に注目していきましょう。

たとえば、相続財産は現預金が多いのか、それとも、現預金はほとんどなく自宅や土地が主なものかなどです。

現預金は換価性が高いため、相続する額によっては生活保護を受け続けることができなくなります。

不動産の場合は、売却できる可能性の高い不動産であれば生活保護の受給を続けるのは難しくなりますが、山林や田舎の空き家などのように売却することが難しい不動産のときは、そのまま相続できることもあります。

また、マイナスの財産がないかについて確認しておくことも重要です。

相続財産のうち借金がほとんどを占める場合には、相続放棄をすべきかどうか検討することになります。

以上のように、相続財産の調査・評価・売却可能性の判断は、その後、生活保護を受給し続けることができるかどうかを大きく左右するため、慎重に行う必要があります

福祉事務所のケースワーカーに相談する

相続財産の調査を行った後は、福祉事務所に相談するようにしましょう。

生活保護を受給中の方は、収入の状況を毎月定期申告しなければなりません。

臨時でも収入の変動があれば、福祉事務所に届出なければならないことになっています。

そのため、少額の資産を相続する場合でも、相続する可能性のある財産については、福祉事務所に前もって相談しておくべきです。

届出をしたからといって、すぐに受給額が変更になったり、受給停止になったりするわけではありません。

受給額の変更や停止の判断は、相続財産の換金性や、その金額が生活費の何か月分に相当するかなどの計算をした上で、決定されます。

福祉事務所のケースワーカーに相談することで、相続した後の生活の見通しを立てることができます。

遺産の相続が、受給者自身が自立して生計を立てるきっかけとなるかもしれません。

生活保護受給者が遺産相続したときにしてはいけないこと

生活保護受給者が遺産相続したときにしてはいけないこと

生活保護受給者が遺産相続をしたときに、してはいけない対応があります。

不正受給にならないために、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

福祉事務所への届出を怠ってはいけない

生活保護を受給している方の収入に変動があった場合、福祉事務所へ届出をする必要があります。

たとえ相続した金額がわずかであっても報告が必要です。

もし、遺産を相続したことを届出ずに生活保護を受給し続けると、不正受給になる可能性があります

不正受給にあたると判断されると、不正に受給した生活保護の金額を返還しなければなりません。

福祉事務所のケースワーカーは、年に数回、生活の実態を調査するために自宅を訪問します。

バレないと思って届出を怠っていると、調査の時に発覚し、生活保護の停止や不正受給による返還命令が出されるかもしれません。

遺産を相続したときは、必ず福祉事務所のケースワーカーに相談し、届出を怠らないようにしましょう。

遺産分割協議で、あえて財産を少なくもらうと不正受給とみなされることがある

被相続人の遺言書がなく、相続人が複数いるときは、遺産分割協議を行なうことになります。

遺産分割は、相続人同士の話し合いで、相続する割合を自由に決めることができます。

しかし、生活保護を受給し続けるためにあえて相続分を減らしたという事実が発覚した場合、不正受給とみなされる場合があります

前述のように、不正受給分の生活保護費の返還を求められたり、今後、生活保護を受けられなくなったりする可能性もあります。

どんな場合に生活保護が停止されるかは、相続の内容や福祉事務所の判断によっても異なりますので、遺産分割協議の前に、一度ケースワーカーに相談しておくこと大事です。

相続で財産が得られることを知っていたのに申請すると受理されない

生活保護の申請をするとき、近いうちに相続が発生し、ある程度の財産を相続できることがわかっていた場合は、申請そのものが受理されません。

たとえば、親が亡くなったら多額の遺産を相続できるが、それまでの間は生活保護を受給するために申請していた場合です。

生活保護を受給するためには「扶養照会」というものがあり、申請者を扶養できる親族を探す手続きがあります。

現在関係が悪くて様々な状況を鑑みて扶養してもらうことはできないが、近いうちに相続が発生しそうなときには、その旨をきちんと報告することを怠らないようにしましょう。

そうすることで、現在の経済状態をサポートしてくれる別の制度を紹介してもらうことも可能です。

まとめ

生活保護を受給していても遺産を相続することはできますが、相続した財産によって最低限の生活を維持することができるとみなされると、生活保護が打ち切られることがあります。

これくらいなら大丈夫だろうと考えて、相続した財産を届け出ないでいると、不正受給とみなされる場合もあります。

そのため、遺産相続をしたときには、相続財産の内容・評価額・換価性などを把握した上で、事前に福祉事務所のケースワーカーに相談するようにしましょう。

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