この記事でわかること
- 遺産分割調停とはなにか?
- 遺産分割調停の手続きと流れ
- 遺産分割調停で解決できないときの対処法
目次
遺産分割で相続争いが起きたら調停を検討
遺産分割調停とは、相続財産の分け方について相続人同士で話し合っても合意できない場合に、裁判所に申し立てて相続争いの解決を図る手続きです。
遺産分割調停では、裁判官が決定を下すことはなく、調停委員が間に入って合意に向けて話し合いをし、全員が合意したら調停成立となります。
遺産の分割を相続人同士で話し合っても解決できない場合は、家庭裁判所にて遺産相続分割調停または審判の手続きを検討してみましょう。
遺産分割調停の手続きの流れ
遺産分割調停の手続きは主に以下の流れで進みます。
遺産分割調停の手続きの流れ
- 1.相続人を把握する
- 2.問題となる相続財産を把握する
- 3.遺産分割協議がうまくいかなかった場合に、家庭裁判所に申し立てる
- 4.指定された日に調停委員と共に議論する
- 5.全員の同意が得られれば終了
(1)相続人を把握する
相続の手続きでは、まず法律的に相続人の過不足が生じないように、相続人を把握するための資料を揃えておく必要があります。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍、および相続人の戸籍を取得します。
戸籍を確認せずに進めてしまうと、実は誰も知らない間に愛人との子供ができていたというケースも考えられなくはありませんので、確実に証拠を準備して提出しなければいけません。
(2)問題となる相続財産を把握する
遺産分割において問題となるのは、相続財産が誰のものとなるかということですが、こちらも客観的に評価をし公平に解決を図るために、財産を明示することが求められます。
被相続人からの情報をもとに、おそらくこの人はこれだけの財産を持っていたであろうという推測を頼りにするのではなく、手順に基づいてしっかりと財産を調べ、それをもとに財産目録を作成しなければいけないことになっています。
(3)遺産分割協議がうまくいかなかった場合に、家庭裁判所に申し立てる
遺産分割協議がうまくいかなかったときに申し立てる家庭裁判所は、どこの裁判所にするか、相続人同士で確認しておく必要があります。
例えば、3人兄弟姉妹で、①遺産分割の相手方の一人(たとえば兄)が沖縄、②もう一人の相手方(たとえば姉)が広島、③相続人の方(あなた)が北海道にお住まいの場合には、遺産分割調停のための話し合いをするために、はるばる広島か沖縄まで出向かないといけないことになってしまいます。
申し立ての家庭裁判所の管轄は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所となるので、どこの家庭裁判所に申し立てることになるかについては、事前に確認をしておくようにしましょう。
なお、相続人全員の合意があれば、合意した裁判所に決めることができます。
(4)指定された日に調停委員と共に議論する
家庭裁判所に申し立てが受理されると、話し合いのための日程が通知されます。
この指定日に相続人全員が集まり、更に調停委員を加えて、より客観的な視点からの話し合いが行われることになります。
そこでは、遺産分割を行う上でどのような問題が生じているのか、生前に財産の贈与関係があったのかどうかなど、相続手続きに関するあらゆることが審議されることになります。
(5)全員の同意が得られれば終了
一日で話し合いが完結すればよいですが、万が一話し合いが当日にすべて終わりきらなかった場合には、他の候補日も設定して、改めて追加の話し合いが行われることになります。
相続争いを遺産分割調停で解決するポイント
相続争い審判に移行する前の遺産分割調停で合意するためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか?
ここでは、遺産分割調停をうまく活用するためのポイントを見ていきたいと思います。
率先して申し立てを行う
遺産分割調停は、相続人であれば誰でも申し立てを行うことができます。
遺産分割協議は長期化すればするほど厄介なことになりますので、相続争いを早期に解決することができるのであれば、それに越したことはありません。
ご自身が申し立てをすることができる立場にあるのでしたら、それを利用してできるだけ早く申し立てを検討してみるのがよいかもしれません。
遺産分割調停では、相続人だけでなく第三者として調停委員の方もいるため、客観的な視点から話し合うことができます。
相手の立場も考慮した柔軟な対話を心掛ける
相続人同士の話し合いでは、言いたい放題好きなことをぶつけていたかもしれませんが、それをそのまま遺産分割調停の場でもしていると、調停委員の印象も悪くなってしまいます。
遺産分割調停の場では、調停委員も解決の一端を担っているということを認識しておきましょう。
自分の意見を主張するだけでなく、相手の立場を考慮して、柔軟な姿勢で話し合うことが大切です。
正直に事実を伝える
遺産分割調停を有効に進めるためには、真実を伝えることが重要です。
自分に少しでも有利にするために、事実ではない内容を伝えると、後々それがばれてしまった際に、取り返しのつかないことになってしまう可能性があります。
そのような事態を避けるためには、正直に話すことが必要です。
また、話し合いを行う過程において、調停委員の方から相続人に対して、何点か質問をされることもあるかもしれません。
そのようなときに、いい加減な対応をしてしまうとマイナスの評価をされてしまいますので、聞かれたことに対しては、しっかりと正直に回答をするようにしましょう。
調停委員に悪い印象を与えない
遺産分割調停の意義は、相続人同士で上手くいかなかった話し合いを第三者である調停委員を交えて行うことが目的ですので、調停委員に悪い印象を持たれてしまうような言動をすると、結果的に不利になってしまうかもしれません。
話し合いの際には、なるべく調停委員に悪い印象を与えないように注意しましょう。
遺産分割調停で相続争いを解決できないときの対処法
遺産分割調停で相続人全員の合意が得られることになれば、そこで調停は終了ということになりますが、万が一そこでの話し合いで決着がつかなかった場合には、審判に移行します。
審判に移行すると、より詳しい証拠などを集めて再度同じ内容を裁判所で審議するため、時間的にも金銭的にもコストがかかることになってしまいますので、なるべく調停までに終わらせてしまいたいものです。
遺産分割調停と遺産分割審判の違い
遺産分割調停と遺産分割審判は、ともに裁判所で行う手続きであり、一見すると違いはほとんどないように思うかもしれません。
しかし、この両者はまったく異なる手続きであり、法的な効力などにも大きな違いがあります。
く遺産分割調停は、相続人同士の話し合いを裁判所で行うものです。
調停委員と呼ばれる人が相続人の間に入り、それぞれの相続人の意見を聞く形で話し合いが進められます。
あくまでも話し合いによる合意形成を目的とするため、1人でも遺産分割案に反対する人がいれば、調停は成立しません。
これに対してく遺産分割審判は、裁判官が遺産分割案を提示し決定します。
相続人の中に反対の人がいても、審判により決定された内容には従わなければなりません。
遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット
遺産分割調停について解説してきましたが、遺産分割調停には弁護士なしでも大丈夫なのでしょうか?
ここからは、遺産分割調停に弁護士を入れるメリットについてご紹介します。
スムーズな申し立てが実現する
遺産分割調停申し立てには、いくつかの必要書類を提出しなければなりません。
しかし、弁護士なしで相続人自身が書類を作成するには手間と時間がかかってしまいます。
そこで、専門知識のある弁護士を活用すると、書類を作成する時間を大幅に短縮することができるというメリットがあります。
調停委員に対する対応も好評価となりやすい
遺産分割調停のときに弁護士をつけると調停委員もあなたの意見を聞いてくれやすくなります。
なぜなら、法律専門家が適切に意見を述べることによって、調停委員が誤った認識をしたり、悪い印象を抱いたりすることが少なくなるからです。
また、法律家の立場から根拠をもって主張をすることができますので、多くの場合、好評価を得やすいものと考えられます。
遺産分割審判になったときも有利に進められる
調停による話し合いが行われたからと言って、相続争いが必ずしも円満に解決されるとは限りません。
調停が不成立に終わってしまい、その後の審判手続きにて解決されることになった場合には、法律的な立場から、きちんとした根拠のある主張をしている方が信頼性の面からも有利になりやすいということが言えるでしょう。
調停手続きは、裁判所において行われますので、裁判所の手続きに詳しい弁護士に主張をしてもらう方が弁護士なしの場合よりも多くのメリットを享受しやすいということが言えます。
まとめ
相続人同士で行う遺産分割協議は、遺産分割調停にまで発展してしまうと、話し合いで解決するのが難しくなってきます。
そこで、冷静な立場からあなたの代わりにきちんとした法律的根拠をもって代弁をしてくれる弁護士がいれば、心強い味方になります。
しかし、弁護士だからといって、必ずしも相続手続きの調停に対応してくれるとは限りません。
相談をしてみると、専門外ということももちろんあります。
誰に依頼すべきかについて検討した上で、信頼できる弁護士を見つけて依頼をすると非常に強力な味方になってくれることでしょう。
是非、弁護士を積極的に活用をして、遺産分割調停を乗り切っていただきたいと思います。