この記事でわかること
- 養子は実子と同じ扱いを受けること
- 養子が死亡した場合の相続人について
- 相続分の計算が自分でできる
- 全血・半血の考え方
目次
養子は実子と同じ扱い
そもそも養子とはどのような制度なのかをみてみましょう。
養子は実子と同じ扱いを受ける
養子の扱いについては、民法727条に以下の通り規定されています。
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
引用元:e-Gov 民法727条
したがって、養子は実子と同じ扱いを受けます。
また、成年に達すれば養子縁組をすることができます(792条)。
その他、尊属や年長者を養子とすることはできませんし(793条)、後見人が被後見人を養子とするには家庭裁判所の許可が必要です(793条)。
配偶者のあるものが縁組をする場合は、配偶者の同意を得る必要があり、さらに配偶者とともに縁組をしなくてはなりません(795条)。
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要です(798条)。
普通養子縁組
普通養子縁組は、単独、独身の人もすることができます。
普通養子縁組の目的には、相続対策や家の存続を図ることなどがあります。
養子の年齢に制限はなく、当事者の合意により、縁組の手続きができます。
また、離縁の手続きも当事者の合意によります。
未成年者は親権者の同意が必要で、元の父母との法律上の関係も続きます。
したがって、元の父母が亡くなったときは、元の父母の遺産を相続できますし、養父母が亡くなったときは養父母の遺産を相続できます。
戸籍への記載は、養子、養女と記載されます。
今回の記事は、普通養子縁組を念頭においてご説明していきます。
特別養子縁組
特別養子縁組は、子の福祉を図ることを目的としており、婚姻している夫婦で、夫婦のどちらかが25歳以上でなければできません。
養子の年齢は、原則として申し立て時に15歳未満である必要があり、父母の同意が必要です。
父母による養育が困難で、子供の監護が不適当な場合に認められます。
特別養子縁組の手続きは複雑で、6ヶ月の試験養育期間に加え、家庭裁判所による審判が必要です。
離縁は原則としてできませんし、養親からの離縁は不可能ですが、子どもにとって縁組が福祉を害するものである時は、検察官が離縁の申し立てをできます。
普通養子縁組との大きな違いは、元の父母との関係は終了するということです。
したがって、特別養子縁組をした場合は、元の父母が亡くなっても、元の父母の遺産を相続することはできなくなります。
戸籍へは特別養子縁組の場合は長男や長女と記載され、普通養子縁組の場合は養子や養女と記載されます。
しかしいずれにしても、相続分は実子と同じというところがポイントです。
養子が死亡した場合の相続人
ところで、養子が死亡した場合の相続人は、どのような関係になるのでしょうか。
養子に親などの直系尊属がおらず、配偶者も子どももいない状態で死亡した場合は、兄弟姉妹が相続することになります。
自然血族と法定血族
「自然血族」は、血の繋がりのある血族のことをいいます。
養子縁組によってできた血族は、「法定血族」と呼びます。
養子縁組先の兄弟姉妹との関係
父母と養子縁組をした養子の3人家族がいたとします。
父母は離婚し、他の女性と結婚し、実子を2人もうけました。
そのうち1人が死亡しました。
このケースでは、残りの実子と、死亡した実子は父母が同じなので全血兄弟と考えます。
一方で、養子は父親しか一緒ではありませんから、半血兄弟と考えます。
半血兄弟は、全血兄弟の相続分の半分です。
そこで、残った実子が2/3、養子が1/3を相続します。
元の兄弟姉妹との関係
元の兄弟姉妹との関係は、普通養子縁組の場合は切れていません。
したがって、養子縁組前の兄弟姉妹と、養子先の兄弟姉妹がいることになります。
養子縁組前の兄弟姉妹であっても、養子縁組後の兄弟姉妹関係であっても、相続人としての関係ができます。
死亡した兄弟姉妹の財産を相続するとき、半血の兄弟姉妹の相続分は、全血の場合の半分になります。
事例
父母がいて、実子1人、養子1人の4人家族を考えてみましょう。
養子には、血の繋がりのある父母の系統の兄弟が1人います。
いずれも先に父母がなくなり、次に養子がなくなった場合、相続人は養子に行った先の実子と、元の兄弟1人になります。
亡くなった養子の父母は、血の繋がりのある父母と、養父母の両方です。
実の兄弟姉妹は、全血の兄弟姉妹となりますが、血の繋がりのない養親の子どもである実子とも父母を共通することになります。
この場合は、実の兄弟姉妹と、養親の子どもである実子と同じ相続分になります。
全血・半血の考え方
半血、全血の兄弟姉妹の関係については、実の親子であっても、養親であっても父母が同じであれば全血の兄弟関係と考えます。
養父か実父かを問わず同一の父、養母か実母かを問わず同一の母であれば、「両親を同じくする兄弟姉妹」とみなされます。
相続関係説明図を使って考える
相続関係説明図(以下、相関図)を使って考えてみましょう。
事例
最初の事案を考えてみます。
- 1.まず父母がいます。
- 2.実子が2人、養子が1人います。
- 3.養子は、養子自身の父母と、1人の兄弟がいます。
- 4.この後、父母は離婚し、父が再婚し、再婚相手との子どもが1人生まれました。
- 5.父が亡くなりました。
- 6.母1は離婚したので、相続人にはなりませんが、父の子は相続人になります。
- 7.再婚相手の母2は父より先に、すでに亡くなっているものとします。
この場合、実子と養子のすべてが相続人になります。
相続分の割合は平等です。
事例
もう一つの事案を考えてみましょう。
- 1. すでに父、母1、母2が全員死亡し、残ったのは実子と養子のみです。
- 2. 養子が亡くなりました。
- 3. 父母を共通する実子は相続人になります。
- 4. 父だけ共通の実子も相続人になりますが、半血兄弟なので相続分は半分です。
したがって、この場合の相続分は、実子2人、再婚先の実子は半分ということで、実子:実子:再婚先の実子=2:2:1となります。
再婚先の実子は1/5を相続します。
父母を共通する実子は、それぞれ2/5を相続します。
半血兄弟を判定するポイント
半血兄弟かどうかを判定するには、養子、実子に関係なくまずは父母が誰なのかをたどってください。
再婚をしている場合は、半血兄弟姉妹がよく生じます。
というのも、再婚相手と子どもができると、半分血の繋がっていない兄弟姉妹が生じるからです。
もし、父親が離婚して、再婚した後、再婚相手の子どもを養子縁組したとします。
すると、養子縁組したことによって、実子と同じように相続が可能になるため、再婚前の家庭の子どもと、再婚後の家庭の子どもの血の繋がりがなかったとしても、相続が発生することになります。
上の図の、再婚後の実子が、母2の実子であり父の養子であった場合に、このようなことが起こります。
再婚前の家庭の子どもとしては、再婚後の家族については知らないケースが多いのではないでしょうか。
再婚後の家庭で、養子縁組や子どもが生まれていたりした場合は、相続関係が複雑になるので要注意です。
また、半血兄弟については見落としが発生しやすい分野でもあります。
離婚や再婚が繰り返されている場合は、さらに複雑になり、相続人の見落としが発生しやすくなります。
事例
例えば、上の図で、母1が再婚して、相手(父2)の子どもが生まれたとしましょう。
この場合はどうなるのかというと、母1と、父2の組み合わせの子どもが出てくることになります。
母1と父2の子どもは、父と母1の組み合わせの子どもとの関係では、半血兄弟姉妹になります。
ちなみに、父2の連れ子を母1が養子にした場合は、父・母1の組み合わせの子どもにとっては、血の繋がりのない、半血の兄弟姉妹ができることになります。
さらに、養子の場合は養子に来る前の兄弟姉妹とも関係が切れていませんから、養子に来る前の兄弟姉妹がいれば、相続人となります。
上の図が複雑になってしまうので書きませんでしたが、養子の前の親子、兄弟関係は継続するというところがポイントです。
まとめ
今回は、養子縁組と相続との関係についてご説明しました。
主に普通養子縁組を念頭において、養子が養子に来る前の親子、兄弟関係を継続しつつ、養親と義理の兄弟姉妹との関係を考慮して、相続分を計算しました。
さらに、離婚と再婚を繰り返し、その度に子どもが生まれたり養子にしたり、ということをすると、半血兄弟姉妹が登場することになります。
このように、計算がかなり複雑になりますので、不安になったら専門家を頼ったほうがよいでしょう。
相続時に、万が一にでも見落としがないように、図を書きながら整理していくとよいでしょう。
再度言及しますが、半血の兄弟姉妹の相続分は、全血の兄弟姉妹の半分です。
養親か、実の親かは関係ありません。