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最終更新日:2023/4/24

大人同士で養子縁組する際の手続きの流れ・必要書類と注意点を解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 養子縁組の種類、それぞれの特徴や違いについて知ることができる
  • 大人同士で養子縁組する際の手続きの流れがわかる
  • 大人同士で養子縁組する際の注意点について知ることができる

養子縁組というと、子どものいない人が子どもを迎え入れる手続きだと思っている方が多いでしょう。

しかし、実は子どもがいる人でも、そして大人同士でも養子縁組をすることはできます。

ただ、大人同士で養子縁組する際は、いくつかの注意点があります。

養子縁組する際に、どのような流れで進めていくのか、確認していきましょう。

養子縁組とは

養子縁組とは、法律上はどのようなことを指す言葉なのでしょうか。

また、養子縁組には種類があるのでしょうか。

養子縁組の概要を解説していきます。

養子縁組の種類

養子縁組とは、もともと親子関係にない2人が、新たに親子関係を生じさせるための手続きです。

養子縁組により親となる人を「養親」、子となる人を「養子」といい、法律上の親子関係が発生します。

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2つの種類があります。

このうち特別養子縁組とは、養子となる人は実親との親子関係が解消され、養親のみが法律上の親となる制度です。

特別養子縁組を行うには様々な要件がありますが、基本的に養子の年齢が6歳未満でなければなりません。

そのため、大人同士で養子縁組する場合には、特別養子縁組はできないこととされます。

一方、普通養子縁組は特別養子縁組に該当しない養子縁組のことをいいます。

普通養子縁組を行うと、実親との親子関係は残ったまま、養親との間に法律上の親子関係が生じることとなります。

特別養子縁組よりは厳しくありませんが、普通養子縁組にもいくつかの条件が定められています。

養子となる人は養親より年下であることが条件とされていますが、大人同士でも養子縁組をすることはできます。

そのため、大人同士で養子縁組を行う場合は、すべて普通養子縁組ということになります。

養子縁組の効果

養子縁組すると、法律上の親子関係が生じることとなります。

法律上の親子関係が発生すると、様々な権利や義務が発生します。

養子縁組で発生する権利・義務扶養義務

親子は直系血族として、互いに扶養する義務を負います。

相続権

養子は養親の遺産を相続する権利を有します。

また養子に子がおらず、養子が先に亡くなった場合には、養親は法定相続人となります。

親権

養子が未成年者の場合、養子は養親の親権に服します。

また、養子は原則として養親の戸籍に入ることとなるため、氏(苗字)が養親のものに変わります。

大人同士で養子縁組をするケース

大人同士で養子縁組が行われることは、決して珍しいことではありません。

それは、下記のような目的があるためです。

婿養子にするため

娘と結婚した婿はあくまでも義理の親子であり、法律上の親子関係にはありません。

そのため、相続権がないなど、親子とは大きな違いが生じることとなります。

特に、婿と一緒にお店や工場を経営している、あるいは農業を営んでいる場合は、財産を誰が相続するかが大きな問題となります。

そこで、婿が正式な後継者であり、かつ法的にも親子関係がある状態にするため、養子縁組することがあります。

相続人を増やすため

養子となった人は、養親との間に法的な親子関係が生じ、養親が亡くなった時にも法定相続人となります。

相続が発生して相続税の計算を行う時、法定相続人の人数が増えると、その分相続税の負担は軽減されます。

たとえば、相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。

養子縁組をして法定相続人の数が増えれば、それだけ基礎控除の額が大きくなり、相続税の金額は少なくなります。

そのため、相続税の節税のために養子縁組することもあります。

生命保険金の受取人にするため

生命保険金の受取人となることができるのは、被保険者の配偶者や子どもなど、一定の関係がある人に限られます。

そのため、誰でも受取人になれるわけではありません。

そこで、通常受取人にはなることがない関係の人を生命保険金の受取人にするために養子縁組をすることがあります。

大人同士で養子縁組をする際の手続きの流れ・必要書類

大人同士で養子縁組を行う場合、その養子縁組の手続きはすべて普通養子縁組として行われます。

普通養子縁組の手続きの進め方や必要になる書類などを解説していきます。

①普通養子縁組に必要な書類をそろえる

普通養子縁組する際には、いくつかの必要書類が発生します。

では、どのような書類を準備しなければならないか、確認しておきましょう。

養子縁組届

まずは、養子縁組届を入手する必要があります。

市町村役場の窓口で申し出れば、白紙の養子縁組届を入手することができます。

養親・養子それぞれの戸籍謄本

養親と養子それぞれの戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)が必要です。

養子縁組届を提出する際に、一緒に提出することになりますが、本籍地の市町村へ届出する場合は不要とされています。

窓口に来た人の本人確認書類

提出の際には、窓口に来た人の本人確認書類と、届出人の印鑑も必要です。

また、養子になる人が未成年者の場合は、家庭裁判所の許可の審判所が必要となります。

②書類の届け出

大人同士で普通養子縁組を行う際は、養子縁組届を提出するだけで養子縁組は完了します

養子縁組届の提出先は、養親または養子の本籍地または住所地とされています。

養親となる人、あるいは養子となる人が、自身の本籍地か住所地の市町村役場に必要書類を提出するだけで完了します。

なお、未成年者と普通養子縁組する際には、養子縁組届を提出する前に、家庭裁判所から許可を得なければなりません。

そのため、行うべき手続きは増えます。

しかし、大人同士の養子縁組であれば、家庭裁判所に行く必要はありません。

大人同士で養子縁組する際の注意点

前述したように、様々な目的のために、大人同士で養子縁組をすることがあります。

しかし中には、思惑どおりにその目的が達成できないケースもあります。

養子縁組する際には、どのような点に注意すべきか、確認しておきます。

実子との間にトラブルが発生することがある

養子縁組すると、養親と養子の間には法律上の親子関係が生じ、相続権が発生します。

そのため、養親の実子にとっては自身の相続分が減少することとなり、養子縁組することは大きなマイナスとなります。

実子の了解を得ずに養子縁組を行うことは、実子と養子との間に大きなわだかまりや争いが生じる原因となります

ただ、実子の了解を得て養子縁組することも難しい場合があり、スムーズに進められないことは珍しくありません。

相続税対策に利用するには上限がある

養子縁組すると法律上の子が増えるため、それだけ相続税の負担は軽減されます。

ただし、養子が大勢いる場合でも、相続税の計算に含めることのできる人数には制限があります

実子がいる人は養子の数は1人まで、実子がいない人も養子の数は2人までとなります。

この人数を超える養子がいても構いませんが、相続税の計算上は人数に制限があるため、注意が必要です。

まとめ

大人同士でも、婿と養子縁組を行い、婿養子となることがあります。

また、相続対策として養子縁組を行い、実際に相続税の負担が軽減できる場合があります。

大人同士で養子縁組することは簡単なことですし、特に厳しい条件もないため、これから利用を検討する方もいることでしょう。

ただ、養子縁組することで、実子とトラブルになるなどといったマイナス面の影響も見逃せません

養子縁組のメリットとデメリットをよく分析し、問題が起こらないようにしておきましょう。

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