この記事でわかること
- 養子縁組を解消できる理由とは
- 養子縁組解消の手続きについて
- 養子縁組に関するよくある質問について
養子縁組をしたものの、様々な事情から養子縁組を解消したいと考えることがあるかもしれません。
法律上、養子縁組は離縁という手続きによって解消することが可能です。
ただし、離縁にはいくつかの方法があり、状況に応じて適切な手続きを選ぶ必要があります。
また、離縁が認められるためには一定の理由が必要で、正しい知識を持っておくことが大切です。
この記事では、養子縁組を解消できる理由から、離縁の手続きや必要書類、実際によくある質問を解説していきます。
目次
養子縁組を解消できる主な理由
養子縁組は、養親と養子との間に法的な親子関係を築く制度であり、戸籍上も実親子と同等の扱いとなります。
そのため、離縁を希望する場合には、単に不仲になったというだけでは足りず、民法で定める明確な理由が必要とされます。
民法814条で規定されている養子縁組の解消が認められる理由は、以下のとおりです。
- 悪意の遺棄
- 生死不明
- その他縁組を継続し難い重大な事由
悪意の遺棄は、一方的に別居する、家事や育児をまったくしないなどがあげられます。
また、養親や養子の生死が3年以上不明な場合も、解消の理由になります。
中でも最も問題になるのが、縁組を継続し難い重大な事由といわれるものです。
いくつか具体的に見ていきましょう。
まず、養親または養子による暴行や虐待、重大な侮辱行為です。
たとえば、以下の場合が該当します。
- 養親が養子に対して身体的・精神的な虐待を行った場合
- 養子が養親に対して暴力や脅迫などの行為を繰り返している場合
これらの場合には、信頼関係が破綻していると判断され、離縁が認められる可能性があります。
次にあげられるのが、家業の継承や金銭に関する問題で、養親と養子の関係が悪化し、親子関係を継続することが困難になった場合です。
過去に、養子に家業を継ぐ意思も気力もなく、希望がないと判断され離縁が認められたケースがあります。
また、養親と養子が遺産をめぐって長期間対立していたことや、経済的確執が認められ離縁となったこともあります。
長期間、行方不明で連絡が取れない場合や、別居期間が長く交流がまったくない場合も、離縁の事由とされることがあります。
縁組後、一度も同居をしたことがなく、精神的・物理的にも交流をする意思がない場合や、養子が家出を繰り返し、同居を拒絶している場合などがあげられます。
そして夫婦関係の破綻も、継続し難い重大な理由となる場合があります。
たとえば娘の結婚相手を婿養子として迎えたものの、娘夫婦の関係が破綻した場合、離婚と同時に離縁も認められる場合があります。
また、連れ子を養子にした場合、親の夫婦関係が破綻したことから縁組解消が認められることがあります。
縁組解消が認められるかはケースバイケースで、裁判所の判断によるところが大きいでしょう。
養子縁組を解消する手続き・必要書類
養子縁組を解消するには、離縁の手続きを行う必要があります。
離縁には4つの方法があり、当事者間の合意の有無や、話し合いの状況に応じて段階的に手続きを進めていくことになります。
ここでは、それぞれの手続きの内容と必要書類について解説します。
協議離縁
協議離縁とは、養親と養子が双方の合意によって離縁する方法です。
当事者が話し合いで離縁に同意すれば、家庭裁判所を通さずに手続きを行うことができます。
協議離縁の主な手続きの流れは、以下の通りです。
- 協議離縁届を作成し、市区町村役場に提出する
- 成年の証人2人の署名が必要
- 養子が未成年の場合は、法定代理人(親権者)が代理で手続きを行う
【必要書類】
- 協議離縁届
- 本人確認書類
調停離縁
調停離縁は、当事者間で協議がまとまらない場合に、家庭裁判所の調停を通じて合意を目指す手続きです。
家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を交えた話し合いを行います。
- 調停が成立すれば、調停調書を作成
- 調停調書の謄本と離縁届を役所に提出
- 調停成立から10日以内に手続きが必要
【必要書類】
- 調停調書の謄本
- 養子離縁届
- 本人確認書類
審判離縁
審判離縁は、調停が不成立で終わった場合に、家庭裁判所が公正な判断を下す手続きです。
双方の主張や証拠を考慮し、裁判官が判断します。
- 裁判所に審判を申し立て、審判が確定
- 審判書謄本と確定証明書の発行
- 役所に提出
【必要書類】
- 審判書謄本
- 確定証明書
- 養子離縁届
- 本人確認書類
裁判離縁
裁判離縁は、調停・審判でも解決しなかった場合に、家庭裁判所に訴訟を提起して離縁を求める手続きです。
裁判離縁は最も手続きが複雑で、法的主張と証拠に基づいて争う必要があります。
離縁理由が法律で定められた要件に該当していることが必要であり、判決により最終的に離縁の可否が決まります。
【必要書類】
- 審判書の謄本または判決の謄本
- 確定証明書
- 養子離縁届
- 本人確認書類
養子縁組の解消に関するよくある質問

ここでは、養子縁組を解消する際によくある質問を3つ解説します。
トラブルを避けるためにも、よく理解しておきましょう。
養子縁組を解消したら名字はどうなる?
養子縁組を解消すると、原則として縁組前の名字に戻ることになります。
ただし、養子縁組から7年以上が経過している場合には、離縁の際に称していた氏を称する届を提出することで、養子縁組時の名字をそのまま継続して使用することもできます。
届は、養子離縁届と一緒に役所に提出しましょう。
また、戸籍は元の戸籍に戻る、もしくは新しく戸籍を作るを選択することができます。
養子縁組は一方的に解消できる?
養子縁組は、当事者の一方的な意思だけでは解消できません。
解消するには民法の規定に該当する理由があることが前提で、必ず離縁手続きを踏む必要があります。
養親・養子の双方が合意していれば、協議離縁で対応できます。
しかし合意に至らない場合は、家庭裁判所で調停や審判、最終的に訴訟による離縁手続きをすることになるでしょう。
トラブルを避けるためのコツとは?
養子縁組の離縁にあたっては、法的なトラブルや感情的な対立を避ける工夫が重要です。
特に意識しておきたい点は、以下のようなものです。
- 協議離縁を目指すなら、事前に書面で合意内容を整理しておく
- 調停や裁判になった場合に備えて、関係悪化の経緯や証拠資料を用意しておく
- 手続きに不安がある場合は、最初から弁護士など専門家に相談する
離縁に至るまでには、相当の理由がある場合がほとんどです。
当事者同士の話し合いは非常に困難であると考えておいた方がいいでしょう。
申し出た側が不利益を被らないよう、はじめから弁護士など専門家を頼ることも検討するといいでしょう。
まとめ
養子縁組は、法律上の親子関係を築く大切な制度ですが、やむを得ない事情がある場合には、離縁という手続きを通じて解消することが可能です。
離縁には法律で定められる理由が必要であるため、自分の状況を整理し、解消の理由に該当するか確かめることからはじめましょう。
縁組の解消は手続きが複雑になることもあるため、離縁を検討する場合は弁護士などに相談することをおすすめします。















