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最終更新日:2023/10/18

現金300万円の生前贈与にかかる贈与税はいくら?節税方法と注意点を解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 現金300万円を生前贈与した場合にかかる贈与税の額がわかる
  • 生前贈与を行う場合に節税ができる方法について知ることができる
  • 現金を贈与する場合に注意しなければならないポイントがわかる

亡くなった人の遺産に対しては、遺産を受け取った相続人が相続税を納付することとなります。

遺産の額が大きいほど相続税の額は大きくなるため、相続税対策として、生前贈与を考えることがあるでしょう。

しかし、生前贈与にも贈与税がかかります。

できるだけ、支払う贈与税は少なくしたいものです。

そこで、本記事では、生前贈与を行った際に発生する贈与税の額と贈与税を節税する方法、節税するための注意点について解説します。

現金300万円を生前贈与した時にかかる税金

生前贈与を行う際に、最も簡単に贈与できるのは現金です。

手渡しすれば贈与は成立し、特別な手続きは必要ありません。

また贈与された人も、現金であれば様々な用途に利用することができるため、非常に喜ぶでしょう。

ただ、贈与された財産の額によっては贈与税がかかることとなります。

ここでは、現金300万円を生前贈与された人にかかる税額の求め方について解説します。

①贈与された財産の金額を計算する

現金300万円を贈与された場合の贈与税の計算を行う前に、1年間に贈与された財産の額がいくらかを確定します。

そのすべての贈与について、漏れがないように把握しなければなりません。

現金以外にも、不動産や有価証券を贈与された場合は、その財産の評価額も計算しましょう。

そして、贈与された財産の合計額を基に贈与税の計算を行います。

②基礎控除額を差し引く

贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を控除します。

現金300万円の現金を贈与された場合は、基礎控除額を差し引いた残額190万円が贈与税の計算対象となります。

仮に、贈与された財産の額が基礎控除額より少なければ、贈与税の対象となる金額は発生しません

③速算表から税額を計算する

贈与税の税額は、贈与された財産の金額により税率が変わります。

また、贈与した人と贈与された人との関係によっても、税率は変わります。

300万円を贈与された場合は、基礎控除110万円を差し引いた後の金額190万円に贈与税がかかります。税率は10%で、贈与税額は19万円となります。

税率は、国税庁のホームページ「贈与税の計算と税率(暦年贈与)」にある速算表で確認できます。

参考:贈与税の計算と税率(暦年贈与)

親や祖父母から子や孫に贈与された場合、「特例贈与財産」に該当するため、以下の速算表を用います。

基礎控除後の金額 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

特例贈与に該当しない場合は、下記の「一般贈与財産」用の速算表を用います。

基礎控除後の金額 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

生前贈与の贈与税を節税する方法5つ

生前贈与で贈与税が発生する場合には、申告書を作成し、所轄の税務署または税務署管内の金融機関に贈与税を納める必要があります。

しかし、支払う贈与税の金額はできるだけ抑えたいものです。

そこで、生前贈与でかかる贈与税を節税する方法を5つ紹介します。

生前贈与の贈与税を節税する方法

  • 実際に必要となる生活費や教育費は無税で贈与できる
  • 基礎控除内の贈与を行う
  • 住宅取得等資金の贈与の特例を利用する
  • 教育資金の一括贈与の特例を利用する
  • 結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する

実際に必要となる生活費や教育費は無税で贈与できる

親や祖父母が子や孫のために、生活費や教育費を支出することは生前贈与ではありません。

このことは、国税庁ホームページ「贈与税がかからない場合」にも明確に書かれています。

参考:国税庁ホームページ「贈与税がかからない場合」

そのため、子や孫が必要とする生活費や教育費を、必要とするタイミングでその都度贈与される場合であれば、贈与税はかかりません。

たとえば、1年間の大学の授業料150万円を祖父母に出してもらったとしても、贈与とはならないということです。

しかし、1年間150万円の授業料をまとめて4年分贈与された場合は、贈与税の対象となると判断されます。

すぐに使わなかった450万円をそのまま銀行に預けていたとしても、贈与税の対象となります。

基礎控除内の贈与を行う

贈与税の計算においては、毎年110万円の基礎控除の金額を使うことができます。

そこで、贈与される財産の金額を110万円以内に抑え、贈与税が発生しないようにすることができます。

1年あたりの基礎控除額は110万円に過ぎませんが、毎年基礎控除の適用を受けられます。

その結果、5年で550万円、10年では1,100万円の財産を、非課税で贈与することができます。

住宅取得等資金の贈与の特例を利用する

住宅取得等資金の贈与の特例は、マイホームを購入する子や孫が、住宅の購入資金の贈与を受けた場合に適用できる特例です。

最大で1,000万円の贈与に対する贈与税が非課税となります。

親や祖父母などの直系尊属から、子や孫に対して生前贈与された場合にのみ適用を受けることができます。

また、適用にあたってはいくつかの要件が定められています。

  • 購入される人が贈与された年の1月1日時点で18歳以上である
  • 贈与された年の所得金額が2,000万円以下である
  • 贈与された年の翌年3月15日までに贈与された資金の全額を使って住宅を購入する
  • 住宅の床面積が40㎡以上240㎡以下である

この他にも様々な要件があるため、適用を受けられるようなマイホームの購入を検討する必要があります。

教育資金の一括贈与の特例を利用する

教育資金の一括贈与の特例は、教育費として利用できる資金を最大1,500万円まで非課税で贈与できる制度です。

教育費については、必要な都度贈与すれば贈与税はかからない一方、まとめて贈与した場合は名目に関係なく課税されます。

しかし、この特例を利用すれば、将来的に教育費として利用できる資金をまとめて贈与できます。

ただ、この特例を適用するためには、信託銀行で教育資金管理契約を締結し、その資金を預けなければなりません

親や祖父母から子どもの預金口座に、直接送金しても適用されない点に注意しましょう。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する

結婚・子育て資金の一括贈与は、結婚・子育てのために利用できる資金の贈与を、1,000万円まで非課税とできる特例です。

結婚式や子育てに関する資金は、必要な時に贈与してもらえれば、贈与税は非課税となります。

しかしこの特例では、最大1,000万円までのまとまった資金を一括で贈与してもらっても、贈与税は非課税になります。

教育資金の一括贈与と同じく、信託銀行で結婚・子育て資金管理契約を締結しなければならないことに注意しましょう。

現金を贈与する時の注意点

現金を贈与する場合には、他の財産を贈与するのとは違う点があります。

そこで、現金を贈与する場合の注意点について解説していきます。

契約書を作成しておく

不動産を贈与した場合は、法務局の登記の情報が変更になるため、いつ贈与したかを知ることができます。

しかし、現金を贈与する場合は、その事実を客観的に証明することが非常に難しくなります。

そこで、贈与契約書を作成し、生前贈与の事実を証明できるようにしておく必要があります。

贈与契約書は、贈与を行った日、贈与した財産の種類と金額、贈与者と受贈者の住所や氏名を記載しておきます。

現金を直接渡すのは避ける

現金の生前贈与の場合、贈与者の口座から現金を引き出し、その現金を直接渡すことがあります。

この方が、振込手数料の金額が少なく済むためです。

しかし、現金の直接手渡しは、実際にいつ、どれだけの現金を渡したか、証明することができません。

贈与の事実が証明できなければ、結果的には贈与がなかったものとされ、相続税の負担が増える可能性があります。

さらに、相続発生直前の贈与については、その贈与がなかったものとして相続税の計算を行わなければなりません。

そのため、現金手渡しでの贈与は避け、銀行口座での振込を行うようにしましょう。

生前贈与も相続税の対象になることがある

生前贈与を行えば、必ず相続税の節税になるとは限りません。

相続が発生した時には、相続発生前3年間に贈与した財産について、相続財産に含めなければならないからです。

相続発生直前に行われた贈与は、結果的に意味がなくなることもあるため、早めに生前贈与を行うようにしましょう。

無申告だった場合は加算税が課される

「預金で振り込んだ場合はともかく現金で手渡しすれば申告しなくてもバレないのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、税務署は贈与者の預金口座を職権で調査することができるため、使途不明の出金があった場合は贈与税の課税対象と扱われることがあります。

その場合、一般の贈与税が課税されるだけではなく、無申告加算税や過少申告課税といったペナルティの税金が加算される可能性もあります。

さらに、書類の偽造など悪質と判断される行為があった場合は、無申告加算税よりさらに税率の高い重加算税が課せられたり、納期限の翌日から納付日までの延滞税が課せられる可能性もあります。

口座開設は受贈者が行う

生前贈与を振込の方法で行う場合、受け取るための口座は受贈者が開設しなければなりません。

贈与者である被相続人が、受贈者の名義の口座を作成しその口座に入金した場合は、生前贈与のつもりで手続きを取ったとしても、名義預金(贈与者が受贈者の同意なく受贈者の口座を作成し、そこへ入金し、その後も贈与者が管理すること)への入金と扱われ、相続税の課税対象になる可能性があります。

また、そもそも贈与は、贈与者と受贈者の合意により成立する契約ですので、受贈者の同意のない行為は贈与とは扱われません。

ですので、受贈者が自ら贈与財産を受け取る口座を開設しないと、税務署から資産隠しと疑われる可能性も出てきますので、注意が必要です。

まとめ

現金300万円を生前贈与した時にかかる贈与税額は、19万円です。

相続税対策として生前贈与を行う場合は、控除や特例を利用すると税額が抑えられるので、現金以外の贈与も検討することをおすすめします。

もし現金で生前贈与をする場合は、手渡しでの贈与は避け、贈与契約書を作成しておくといいでしょう。

生前贈与をしても必ず節税になるとは限らないため、その方法や時期についてもよく考えておく必要があります。

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